「SYAAAA!」
時間は流れ、冬、中学3年生は高校受験という正念場。かく言う俺はと言うと
「こんの、クソ大事な時期に暴れてんじゃねえ!」
コブラインベスを相手に受験のストレスをぶつけていた。そもそも、コブラの特性を有するコブラインベスが冬場に出現している。こいつ、頭おかしいだろ。動きが明らかに鈍い。こんなに無傷なのは初めてなくらい。というか、目に見える程弱っているのですぐさま、ライダーキックを発動して倒しました。
「たくっ。志望校の受験まで時間が無いっつーの。」
俺はハイビスカストライカーを起動して、織斑家へ帰った。帰ってすぐに部屋にこもって勉強していました。俺の志望校は私立藍越学園。一夏が志望して、当日試験会場を迷ってISを動かす羽目になったあの受験高である。まあ、今回は一夏を見張って一緒に行動すれば大丈夫だろう。前世は忌まわしくも、一夏がISを動かし、それの余波でせっかく合格したのに俺もIS学園に入学することになった。ちなみに、束姉ちゃんに男がISを動かす可能性を聞いた。
「う~ん、束さんにもなんとも言えないからねぇ。純粋に計算すると0より高い確率だけど1より低い確率だね。」
少なからず、奇跡的な確率らしい。今世では動かしませんようにと祈るほかない。
「大ちゃん、大丈夫?かなり、根を詰めているけど、、、。」
「大丈夫。あとは免疫力と運だけだから。」
俺の様子に皆、心配している。大丈夫だよ、俺は。一夏が奇跡的な確率を引き当てISを動かしたりしなきゃな。あとは受験当日まで風邪をひかずに行くことだ。万夏はというとIS学園を志望していた。適正が千冬姉ちゃんと同じS。政府筋だのなんだのは結構しつこかったらしいが自分の意思で千冬姉ちゃんと束姉ちゃんが切り開いた世界に関わりたいと言っていた。
クリスマス、勉強、大晦日、勉強、正月、最後の砦・神頼みを経て、遂に来たぞ、受験当日。気力十分、あとは覚えている知識をフル活用で試験に取り組むだけ。いざ行かん、中学校生活最大の戦いへ!
「あれ、一夏?」
あいつ、はぐれやがった。俺が見た翌日の新聞の1面は男性操縦者現るだった。
「帰りてえ。」
「大樹、そう言わずにやろうぜ、ワンチャン、ハーレムだぞ。」
「弾、蘭ちゃんにこのやり取り、全て話すぞ。」
「全く、いい加減覚悟を決めろ、大樹。」
「数馬、おれね、志望校受かったの、こんな時期に入学する高校変えたくないの。お分かり?」
「流石に一夏のようなことは起きないと思うけど。」
「箒、すでにとんでもないことが起きてんの。それが自分の可能性も有るの。」
「良いから、さっさと行きなさいよ、男でしょ。」
「鈴、俺今、すごく神様に祈ってんの。」
篠ノ之神社内の束姉ちゃんの個人研究所でISの適性診断を友人メンツでやっています。ちなみに、弾と数馬は終わっている。適正なし。残るは俺、前世の通りなら動かす、動かしたくないけど動かす。
「動くな動くなう動くな動くな。」
そう言いながら、少しずつISに近づいていく。
大人メンツはそうそう、起きないでしょと言わんばかりにお茶を飲んでいる。鈴と弾の家の人達、食べ物一杯、持ってきてて、プチパーティみたいになっている。そこに友人たちが皆加わっている。てめえら、人の気も知らないで(# ゚Д゚)。神よ、今だけ我の願いを聞き入れ給え!俺に普通(仮面ライダーになっておきながら、今更だが)の高校生活を送らせ給え!
大樹の様子を見る友人たちは
「あれ、動かすな。」
「俺も動かすと思う、俗にいうフラグがビンビンに乱立しているからな。」
「大樹さん、変に意識しちゃっているから逆にやっちゃいそう。」
「大樹の奴、いい加減触れなさいよ。」
「そういえば、万夏は大樹がISを動かせる方が良い?それとも、動かせない方が良い?」
「ええと、私は、、、。」
「そういえば、万夏さん、大樹さんと会えなくなるって言ってましたよね。」
「これで、あいつが動かしたら、万夏と高校でも一緒か。良かったじゃない。」
「私は、大ちゃんがしたいことを出来れば、それで、、、。」
「畜生、なんでえあいつばかりにこんなかわいい幼馴染いるんだよ!」
「お兄、ウルサイ。」
「おい、皆。大樹の奴が動かしたぞ。」
と言いながら大樹がISを動かす一部始終を見ていた。当の大樹は
「ウゾダドンドコドン!」
ISを纏って数秒で地面にうずくまって、悔しがっていた。これで大樹の運命は全く変わらずにIS学園への入学が決まった。
「は~い、それじゃあ、大くんには私が所長、マサ君が副所長をしている日本先端宇宙開発技術研究所の専属パイロットになってもらいま~す。ついでに来ている皆にも企業所属のメリットや今回の大くんにおける権利関係を護るための手続きなど様々なことを覚えてもらいま~す。」
「はい!束さん!」
「はい、五反田君!」
「束さんたちの研究所って何をしているんすか?」
「それはググりなさい、五反田君。」
「ええと、束さん。」
「はい!リンリン!」
「その呼び名は、っていいか。大樹の権利関係を護るって言ってたんですけどそれってどうして?」
「今回、いっくんがISを動かせるということで世界各国で男性を対象に適性検査を行っているのは、皆も知ってる通りだね。いっくんの方はちーちゃんの関連もあるから、簡単に言えばIS側がいっくんをちーちゃんと誤認識したっていう可能性があるんだよね。いっくんの方はそういうことを考えれば女性権利団体に目を付けられやすいけど技術的には大して重要視する必要は今の所は無いんだよねえ。
も・ん・だ・い・はいっくん以外でISを動かせる男性操縦者にあるんだよ。特に大くんは存命している親戚が居ないこととISに関連する女性の親族が誰もいないということから技術的には大くんを解析した方が必要なんだよね。つまり、大くんの方は束さん達が出来る限り、大くんを狙う奴らからのガードを固めないといけません。日本のIS関連企業は流石に大くんを拉致して、実験台にすることはしないと思うけど、女性権利団体や外国の過激派は喉から手が出るほど欲しいから、出来る限りガードする必要があるんだよね。」
束から今回の大樹の保護に関して行うこと、そしてその目的を説明される。今回、束たちが自身の研究所で適性検査を行ったのは即座に二人目の男性操縦者を保護するのが目的であった。
「詰まるところ、一夏君は下手をすると千冬や束を敵に回す危険性が高いからね。下手に手を出す奴らはいないだろう。問題は大樹君はそう言った守ってくれる関係者が近親者にいない、さらに存命中の近親者がいないことだ。大樹君を護る後ろ盾が無いのはそう言う輩にとっては好都合だからね。」
ここまでの話で大樹に適性があるから、即座に企業所属というのはなぜと思っていた面々だったがその理由を聞いて納得する。ただ、当の本人は
「まじかあああ。あいつの女性トラブルの面倒を見ないといけないじゃんかあ。面倒臭ええええ。」
先に学園行きが決まった幼馴染の女性関係のトラブルが待っていると考えるだけで憂鬱になっている。
「篠ノ之博士。」
数馬が束に質問する。
「何々?」
「IS学園って女子高の印象が強いんですけど、建前上は男子生徒って入学は出来るんですよね?」
「建前も何も実際に入学する男子生徒は多いよ。皆、将来は整備科に進むからね。実際の男女比は3:7くらいでそれでも女子が多いけど。」
「姉さん、実際のところは一夏と大樹は整備科に行くの?」
「その可能性は低いかなあ。きっと、選手科の方だよ。大くん、やったね、ハーレムだよ!」
「おお、向こうに行っても一夏の後始末頑張れよ!」( ´艸`)
「はああああ、腹立つ!弾の今の顔が腹立つ!」(# ゚Д゚)。
「あの、束さん。」
「何々?マーちゃん、どうしたの?」
「企業所属のメリットって?」
「私たち企業側は開発した装備のテストが出来ることと企業の広告塔になってもらえることだね。箒ちゃんも便宜上は私たちの企業所属になっているんだよ。操縦者側にとってはスポンサーが付くし、自分専用の装備の開発もしてもらえるし良いことずくめだよ。」
束の説明の後ろで大樹の後見人である秋人・春奈夫妻が正則の説明を聞き、必要書類にサインをしていく。着実に外堀が埋められているのを大樹は抵抗できずに受け入れるしかなかった。
「さあ、この書類に一筆しよう!」( ^∀^)
束が大樹にずずいっと所属の意思を表明する書類を近付ける。当然、ここまでの流れでサインをしないという選択肢を選ぶほど大樹はバカでは無いし、サインをしなかったところでいくらでも方法を考える束を相手にするほどの気力はとうに失っている。
「はい、、、、。」
こうして、大樹は束たちの企業に正式に所属することになった。そのあとは、友人家族一同で大樹の就職祝いと称して飲めや歌えやのバカ騒ぎになっていた。とうとう、大人たちはアルコール類を持ち出し、子ども達は子どもたちで今回の話の中心の大樹を話のネタとして、わいわい騒ぎ。子ども達も篠ノ之家が作った甘酒を飲むという全員がアルコール類を摂取するという神社で行うべきではないバカ騒ぎになった。
結局、俺の一足早い就職祝いと題して大人たちがお酒を持ち出した。小父さん、小母さんはいつまにか持ってきていた俺のアルバムを皆に見せて回っていた。今回の宴会の発端になった俺は皆から距離を取って、一人でここまでのことをぼーっとしながら考えていた。
「気楽なもんだよな、皆。」
俺の背後から誰かが声を掛けてきた。俺は背後を振り返ると予想外の人物に驚いた。
「お前、どうして、、、。」
そこには白髪に浅黒い肌、血を思わせる赤い瞳の俺が居た。
「ほら、ちょうど前の世界でもこの時期に動かしただろ。この世界なら束姉ちゃんが適正試験を行う可能性があったからな、少し興味があったから寄って来ただけだ。」
「お前は紘汰さんが、、、。」
「あの人がやったのは俺とお前を分離させただけだ。なぜ、消さずに肉体を与えたのか、俺にも分からないけど。」
「何が目的だよ。」
「俺はお前だぞ。俺だってな、お前と同じように皆を護りたいんだ。分かるだろ。」
そう、こいつは俺だ。皆を護るためなら何でもする俺(修羅)だ。
「まあ、あれだ。お前はお前の守りたいもののそばで戦えばいい。俺は俺でやり方がある。」
「もし、俺が邪魔をすれば、どうなる?」
「分かっているだろ、容赦はしない。」
そういうともう一人の俺は漆黒のドラゴンフルーツロックシードを見せる。
「まあ、よほどのことが無い限り、お互いに邪魔をするのは無しだ。それじゃ、あの唐変木の面倒、頑張れよ。」
「ま、待て!」
もう一人の俺はそう言うと神社から離れていく。当の俺は呼び止めるも追いかけることはしなかった。追いかけたところで止める理由も言葉も持ち合わせていないのだから。ただ、もう一人の俺がやろうとするは分かっている。
「兄貴を探しているのか、、、。」
「大ちゃん。」
「万夏、どうしたの?」
「大ちゃんこそ、誰かと話していたみたいだけど。」
「学校の知り合い、何だか神社が騒がしいって言って、様子を見に来たらしい。」
「ふ~ん。」
俺はその場でもっともらしい嘘をついた。先程までのやり取りを知らない皆のバカ騒ぎがここまで響いてくる。
「ねえ、戻らないの?」
「今、戻れば確実に面倒なことになるって。小父さんたちのテンション、今のタイミングで行ったら、確実に面倒なことになる。」
「じゃあ、しばらくはここにいるの?」
「そうじゃなきゃ、道場かな?今なら、皆そこまで来ないだろ。」
「私もいい?」
「良いよ。」
そういうと俺たちは道場の方へ足を進める。その時に万夏がやたら機嫌がいいことに気が付いた。
「俺の就職と入学先の変更がそんなにうれしいの?」
「ふえ!」
「やたら、上機嫌に鼻歌を歌っているからさ。」
「ええと、その、大ちゃんは、、、?」
俺の機嫌が悪いと思ったのか、不安そうに俺に聞く。
「あんなに勉強したのに、それが無意味になって、不満よりも呆然とする方が大きいよ。それに、女子が多いからさ、一夏の面倒をみるって考えたら、憂鬱だよ。」
俺の発言にさっきまでの上機嫌がどこへやら、がっくりとうなだれる万夏。
「まあ、万夏もいるなら、そんなに不満は無いよ。」
俺の言葉に俺の顔を見る万夏。
「4月からよろしく。」
「うん!」
終始、万夏は笑っていた。ただ、俺も万夏も油断していた。二人で仲良くしていたところを完全に酔っぱらっている大人たちに見つかって、結局最後まで宴会で大人たちに絡まれる結果になった。その中で小父さんと小母さんが小さい頃の俺と万夏が書いた婚姻届けのコピーを持って来た時が一番恥ずかしかった。
3月の終わりごろ、亡国機業本部、大勢のIS乗りを擁するテロリスト集団の本拠地に一人の襲撃者が居た。
「くっ、貴様!」
「おい、早く、スコール・ミューゼルを呼べ。俺の気もあまり長くはもたないぞ。」
男は漆黒の鎧を身にまとっていた。その姿は色を除けば、炎竜と瓜二つだった。男の手により、亡国機業のIS乗りの大半は完全に無力化されていた。
「私に用があるのなら、部下を開放しなさい。」
第3世代IS、ゴールデン・ドーンを装着したスコールと第2世代IS,アラクネを装着したオータムが襲撃者をいつでも攻撃できるようにしていた。
「分かった。それに、こちらの方が手っ取り早いからそうしただけだ。」
「私にいったい何の用があるのかしら?15年前の戦極博士の骨董品を使っているあなたは何者?」
「その骨董品を制圧できないあんたの部下に落ち度があると思うが。」
男はそう言うと変身を解除する。
「俺は柏葉大樹、の一部だったものだ。あんたらに用があったのは柏葉勇吾を殺すために俺を亡国機業に入らせてもらいたいからだ。」
男、大樹は不遜にも自分を亡国機業に入れろと言った、兄勇吾を殺すために。
「それに私達が了承するとでも?」
「なら、部下と同様に力づくで認めてもらうしかないな。ああ、もしかすると、、、。」
大樹は近くにあった無人のISに手を触れる。すると、
「やっぱりな、俺をこの組織に置いておいた方があんたらにとって得だぞ。」
ISを身にまとっていた。
「あなた、一体、、、?」
さすがのスコールもこの襲撃者が謎の多い人物であることが分かって来た。
「言っただろ、柏葉大樹の一部だって。正確には、心の闇、修羅、そういったものだがな。」
「心の闇、、、。」
「少なくとも、協力してくれるならあんたらの指示に従う。だが、協力をしないなら、俺の邪魔をするなら、ここを、あんたらを徹底的に殲滅する。塵一つ残さずに消してやる。」
男の瞳から、狂気ではなく本気でやるつもりだとスコールは分かった。隣の信頼する部下で恋人のオータムでもそれは分かったようだった。
「分かったわ。あなたを私達の仲間に引き入れるわ。そうなった以上、私の指揮に従ってもらうわ、柏葉大樹。」
「ああ。だが、その名前は辞めてくれ、俺は本当の柏葉大樹じゃない。それにここに来た以上、その名前は捨てるつもりだ。好きに呼んでくれ。」
「なら、黒崎修羅というのはどう?」
「ああ、今の俺にふさわしい。あんたに協力するよスコール・ミューゼル。だが、さっきの俺の言葉、忘れるなよ。」
「ええ、分かっているわ。」
こうして、大樹の心の闇、修羅は、スコール・ミューゼルにより黒崎修羅の名を与えられ、亡国機業に入った。
前世と同じくIS学園に入学した大樹。早々に起こる、イギリスの国家代表候補生、セシリア・オルコットとのクラス代表決定戦。そして、大樹は戦う心が凍り付いた若き仮面ライダーと出会う。