IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 IS学園に入学した大樹は初日に早々、一夏とセシリアの争いのとばっちりを食らい、代表決定戦に出場する羽目になった。さらに大樹は専用機を与えられることからISの整備ドッグへ向かい、若き仮面ライダー、留芽颯斗と出会った。颯斗は過去の戦いから変身することを辞めていた。


仮面ライダー炎竜 第13話

 俺と万夏は目の前のしゃべる謎のミニカー3台に目を離せなかった。俺と万夏を除いた全員はミニカーを見ても、驚くことなんてなかった。むしろ

 

 「皆!?なんでここにいるの!?僕の部屋にいてって言ったじゃないか!」

 「わあ、皆来てる~。」

 「お姉ちゃんが連れてきたの?」

 「仕方ないじゃない。柏葉君の情報を調べるのに、ハートたちの力を借りないといけなかったのよ。」

 「そういうことだ、颯斗。それに俺達も新しい仮面ライダーに興味があったからな。」

 「申し訳ありません、颯斗。刀奈の頼みとなれば私達も断れなくて。」

 「全く、ハート以外にこの頭脳を使うのは控えたいのですが。」

 

 普通に話している。このやり取りが普通らしい。そして、俺はこの光景と似たものをIS世界に転生する前にテレビで見たことがある。それと貴虎さんから借りた資料で一度目を通したことがあったからこのミニカーたちが何者かがすぐに分かった。

 

 「ロイミュードの幹部、ハート、ブレン、メディックなのか?」

 「そういうことだ、仮面ライダー炎竜、柏葉大樹。」

 

 赤いミニカー、ロイミュードのリーダー、ハートが答えた。

 

 「大ちゃん、ロイミュードって?」

 「俺たちが生まれる前に起きたグローバルフリーズを引き起こした機械生命体。ここにいるハート、ブレン、メディックはその中心メンバー。」

 

 万夏の問いに答える。

 

 「あら、結構知っているのね、私達の頼れる仲間のこと。」

 

 楯無先輩が挑発するように言った。

 

 「彼らが根っからの悪人では無いのは知っています。俺の知っている限り、ロイミュード側で最も信頼のおけるメンバーですから。」

 「まさか、あの戦いを直接知らないあなたのような若い方にそう思われているなんて光栄ですわ。」

 「我々を知っているということは泊進ノ介、仮面ライダードライブと面識が?」

 

 俺の言い分にメディックが喜びの気持ちを言い表す。そして、俺がロイミュードのことを知っていることから、かつて、彼らと戦った仮面ライダードライブとの繋がりをブレンは疑った。

 

 「いや、ヴァルハラの資料を見て、知っていただけ。まさか、こんな形で復活しているなんて。」

 

 俺が驚いていたのは彼らがシフトカーに似た形態で復活していたことだった。破壊された彼らのコアがなんらかの要因で復活することはテレビ本編の後の彼らの戦いで知っていたため、復活自体は俺は特に驚かなかった。

 

 「バイラルカー、若しくはシフトカーの作成技術は再現できなかったはずだぞ。」

 「俺たちのこれまで蓄積したデータから作成技術そのものを再現することは出来るさ。肝心の技術は颯斗が全て習得したのさ。」

 「えっ、、、。」

 

 俺は彼らの新たな体の作成者が俺と同い年の颯斗だということに驚いた。

 

 「さらに、颯斗は俺たちの活動のためのコアドライビアの再現にも成功した。」

 

 ハートさん、それ以上は辞めて。この俺と同い年の眼鏡のオタク(?)、めちゃくちゃ頭いいじゃない。ついさっきの僕普通です発言が消えるわ。俺の近所の天災ならぬ天才ウサギと同じくらいだぞ。てか、それほどでもって反応するな。その顔、嵐を呼ぶおませな5歳児と同じだぞ。

 

 「待てよ、復活したのはいつだよ?」

 「今から、4年前ですわ。この体になったのは2年前になります。」

 

 メディックの発言から二度目の消滅から11年後に復活、今の体を得たのは俺が戦い始めるよりも前になる。そのことから、クリムさんと蛮野が生み出した技術を颯斗は小学校の終わりから中学校の半ばで完全習得したことになる。

 

 「デジャブる。」

 「私もなんか、うん、すごいとしか、、、。」

 

 俺も万夏も颯斗が束姉ちゃんと同じかそれ以上の天才であることがここまでの情報で分かる。

 

 「お待たせ~、大くん~。」グター

 「うちの妻が迷惑を掛けました、、、。」ボロボロ

 

 俺の所属する企業のトップ二人が満身創痍で俺のISを格納しているコンテナを引っ張っている。うん、間の悪いタイミングだ。そっちに気を取られていたら、ハートたちが居なくなっていた。とりあえず、俺は自分の専用機の方だ。

 

 「お疲れ様。どうして、二人で引っ張んてんの?」

 「車で搬入したのは良いんだけど、搬入場所を間違えて、車に積みなおすとさらに時間が掛かるから、二人で引っ張ってきました、、、。」

 

 割と大したことが無い理由だった。自分たちの凡ミスでやったことじゃん。

 

 「ねえ、大樹。この二人とはどんな関係?」

 

 俺とこの二人の関係がいまいちわかっていない颯斗、簪、のほほん。

 

 「俺の所属する企業のトップ。あと、俺の近所の神社の跡取り。まあ、この人の妹とは小学校からの付き合いで、その関係で普段から良くしてもらっている。」

 

 人とのつながりって、最大の武器ですね、はい。

 

 「じゃあ、ここで俺の専用機の調整とかやんの?」

 「ちーちゃんから事情は聴いているよ。早い内に大くんがどこまでISを動かせるか確認して、大くんに合わせた装備の開発をしないと。大くん、勝つ算段はあるの?」

 「俺がどれほどISの操縦に慣れることが出来るかにかかっているんじゃないのかな?こないだの適正検査でD寄りのCて言っていたから、この1週間でどれほど動かせるかにかかっているんじゃないかな?ただ、向こうはずっとISの訓練をしていた代表候補生、こっちは素人、ハンデなしに勝てる相手じゃないよ。」

 

 俺が勝てるかどうかはISがどれだけ動かせるのかということを俺がどれほど把握できるかにかかっている。

 

 「柏葉君、勝つつもりでいるの?」

 

 簪が聞いてくる。そりゃそうだよな、仮面ライダーとは言え、ISに関してはずぶの素人だ。勝てる道理があるかどうかだ。てか、無い。前世の経験上、仮面ライダーとして戦うこととISに乗って戦うことは全くの別物だ。だが、

 

 「常に考え続ける。実戦の場で相手が自分より格上の時には常にその場の変化を観察し続ける。そこから、相手の動きを予測して、戦う。格上相手に勝つには力は必要じゃないわけじゃないけど、一番必要なのはよく知ることだよ。」

 

 前世と現世がどこまで同じかは分からないが、一夏、セシリア、箒の動きを予測するのはそれほど苦労しない。相手を知っているということはこっちにとって最大のアドバンテージだ。対する相手はこちらをよく知らない。付け入る隙は必ずある。

 

 「大くん、悪い顔をしているね~。大くんの相手になる箒ちゃんたちがかわいそう。」

 「俺としては、先に俺を巻き込んだ一夏を徹底的につぶしたい。」

 

 まあ、今の俺はさぞ悪い顔をしているだろう。真正面から正々堂々?こっちが勝つためには利用できるものは何でも使う。相手の考えや性格、使える者は何でも使って戦ってやる。戦いはいかに自分がやりたいようにできるかに勝敗が関わる。仮面ライダーとして戦う時は状況によるが基本、あくどい戦い方はしない。と言うよりもする必要が無かったからだけど。剣道の試合ではいかに相手のやりたいことを徹底的に潰していけるかに勝敗が関わってくる。まあ、一夏、箒、千冬姉ちゃんを相手にするともう読み合いになってきていて、そう簡単には出来なくなっているけど。万夏を相手にそんなあくどいことを一度したけど、その次から俺が動く前に瞬殺されるようになってからはしていない。

 

 「勝てなくても、徹底的に嫌がらせをして戦う。」

 

 俺の発言に颯斗たちがドン引きしている。

 

 「束姉ちゃん、俺の専用機見せてよ。」

 「良いよ~。」

 

 束姉ちゃんはコンテナを開ける。そこには前世の俺が乗っていた、最後の最後まで乗りこなすことが出来なかった愛機が鎮座していた。

 

 「零式、、、。」

 

 その俺の愛機の名を万夏が口にした。

 

 「万夏?」

 「マーちゃん、知っているの?」

 

 俺と束姉ちゃんは万夏が口にしたのにすぐに気づいた。

 

 「うんうん、このISを見て、そう名前が浮かんで。」

 

 万夏の発言に俺は少々、違和感を覚えた。俺の専用機は打鉄のプロトタイプで見た目は普通の打鉄とほとんど変わらない。それなのに打鉄ではなく、零式と呼ぶのは開発に関わっていた人物たちと前世の記憶を持つ俺くらいだ。なぜ、万夏が、、、。

 

 「まあ、これは打鉄のプロトタイプだからそう呼んでも良いよね。むしろ打鉄試作機改修型なんかより格好いいじゃない?じゃあ、マーちゃんが名付け親でこの子は零式ね。大くん、良かったね、マーちゃんがつけてくれたんだよ、嬉しいでしょ?」

 

 この流れでその案を飲むのを辞めてくんねえかなこのお姉さん。つか、試作機改修型ってまんまジャン(#^ω^)開発者、もっとまし名前を考えろ。あと、万夏が名付けてくれたところをやたらに強調するな、恥ずかしいでしょうが。

 

 「じゃあ、フィッテイングとかお願いします。」

 

 束姉ちゃんの茶化しに反応せずに俺は零式に近づく。ドラゴンの絵が描かれた俺の愛機、零式に

 

 「今度こそ、ちゃんと乗りこなせてやるからな。」

 

 小さな声でそう優しく言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所変わってアリーナ。俺は上下一体型のダイビング用スーツに似たISスーツに身を包み、零式を装着している。万夏たちはアリーナの観客席で観戦、束姉ちゃんと正則さんも観客席で俺の操縦データの収集、で、俺の初操縦の記念すべき最初の相手は

 

 「それじゃ、かかってらっしゃい。」

 

 学園最強の楯無先輩です。まあ、分かりますよ、新しく来た生徒が仮面ライダーでIS操縦者ならどれほどの技量を持っているのか把握したいですよねぇ。

 

 「お手柔らかに頼みます、、、ね!」

 

 俺は零式に搭載されているIS用刀剣、竜牙を構えて、一気に先輩へと接近する。だが、

 

 (やっぱり、俺の動きと零式の動きにタイムラグがある。)

 

 それぞれの動作に若干ながらのタイムラグがある。前世でも同様に俺はISの操縦時に必ずと言って良いほど動きにワンテンポの遅れが生じる。そんな状態で現ロシア代表と初対戦、つまるところ勝てる要素なんか何一つない。

 

 「そんな動きじゃ、当ててくださいって言ってるようなものよ!」

 

 その言葉の通り、俺が一度動くたびに楯無先輩は倍以上の攻撃を当てていく。俺の愛機のシールドエネルギーもみるみる減少していく。流石に、今回は実戦を想定してのものではなく、俺の操縦データの収集がメインなのでシールドエネルギーが5割になったところでやめることになった。

 

 「惨敗だな。」

 

 やはり、これだけは一朝一夕でどうにかなる問題ではない。そもそも、俺の想定する動きとIS側で想定される動きにずれがあるということ自体、かなり致命的である。

 

 「お疲れ様。どう、現役の国家代表選手との試合は?」

 「全くもって予想以上でした。戦術の構築、相手の動きに対する動き、そしてISの特性を十二分に発揮する技術、どれをとっても圧倒的としか。」

 

 ISの装備を解除した俺に先輩は飲み物を渡しつつ、感想を聞く。いやあ、ISスーツも下手したら水着だよ、あの抜群のプロポーションを拝めるんだから。

 

 「やっぱり、仮面ライダーね。あの動きで私に何度か肉薄するなんて。」

 「それでも、全ての攻撃が読まれました。むしろ、俺が変身しても、先輩でしたら俺を追い詰めることもできますよ。」

 

 先輩は俺があのような動きしかできない状況で何度か良い攻撃を出していたことを称賛していた。俺としてはこの人の技量がかなりのもので俺が変身しても普通にいい勝負を出来るくらいものに驚いている。

 

 「柏葉君、クラス代表決定戦まで1週間でしょ。正直、今の動きのままじゃ勝てる見込みなんてないわね。」

 「そうですね、俺も予想以上に動けないことに驚いています。これじゃあ、的になりに行くようなものですね。」

 

 目下の問題は俺の操縦時の動きだ。あんな動きではセシリア相手にハチの巣にしてくださいと言っているようなものだ。前世ではハチの巣になった後、自分で地面に激突するという終わりを迎えた。これも全て織斑一夏と言う奴が悪いんだ(血涙)。

 

 「お~い。」

 

 観戦していたメンバーがやって来る。

 

 「いや~、大くん、予想以上だね。」

 「零式のデータを見る限り、不備はないけど、詳しく見るよ。」

 

 俺は待機状態(サングラス)になっている零式を正則さんに渡す。俺の動きを見た束姉ちゃんと正則さんはかなり切羽詰まっている。軽い感じで話しかけてきた束姉ちゃんがかなり慌てているのが証拠。自分たちが整備したISがあんなパフォーマンスしかできないなら、操縦者の生命の危機に関わる。この二人はISの実現、そしてまだ見ぬ宇宙(世界)へ至るために心血を注いでいる。心血を注いだISで親しい人を危険にさらすのは絶対に許さない二人だ。この問題を解決しようと熱心に取り組むだろう。

 

 「ちょっと、良いですか?」

 

 ここで颯斗が口を開いた。

 

 「僕の見たところ、IS側の問題じゃないと思います。」

 

 俺の操縦を見て、思ったことを話し出した。

 

 「おそらく、IS側が大樹のパフォーマンスについていけていないと思うんです。動作不良というよりは大樹の動きにIS側がついて行くのに時間が掛かっているということかと。つまり、大樹の動きにIS側がすぐに対応できるように修正プログラムを組む、ないしはISスーツの方に何かしらの改造を施ことで解決できると。」

 

 颯斗の考えから束姉ちゃんたちが目の色を変えて、パソコンを操作しだした。タイピング速度がおかしい。パソコン側が受け付けられる最大のスピードでやっている時点でこの二人も人外である。

 

 「流石、颯斗♡それとこの後、私のISの整備もお願いできる?♡」

 

 どさぐさに紛れて幼馴染にあの巨乳を押し付けて、猫撫で声で誘う先輩。簪がめちゃくちゃ睨んでいるし、当の颯斗は「あうあうあう。」と顔を真っ赤にして、

 

 「ぶへえええええええええ!」

 

 変な叫び声をあげて、鼻から真っ赤な噴水を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、颯斗は保健室へ連れていかれ、俺の方はISに修正プログラムがインストールされ、ひとまずはIS操縦時のタイムラグが短くなった。さらに決定戦までの1週間、先輩が俺のコーチを買って出てくれた。のほほん、簪、颯斗は打鉄弐式の開発と同時進行して、俺のISの調整もしてくれることになった。

 現在夕方、俺は寮の自室にいる。あのやり取りの後、俺は山田先生から家から小父さんたちがまとめてくれた荷物を受け取り、寮の自室の鍵を受け取った。その相手は

 

 「ふんふ~ん♪」

 

 ご機嫌に鼻歌を歌っている万夏です。

 

 「万夏、そろそろ夕飯食べに行く?」

 「うん。」( ´∀` )

 

 千冬姉ちゃんかな、万夏の同室に俺を当てたのは。山田先生の話では今後の変更もない訳ではないけど基本はこれで確定みたいだった。大丈夫かな、特に俺の理性。頑張れ、俺の鋼の理性、保てなくなったその時が俺の破滅の時だ。てか、年頃の男女二人が同じ部屋は問題大ありだろ、良いのか、IS学園。ちなみに一夏は箒と同室になったらしい。流石に前世のようなことは起きないだろうかと思っていたけど、箒の着替え中に部屋に入ったらしい。ビンタされたらしい、全て万夏から聞いた話だけど。

 

 「ちょっと、良いかしら?」

 

 俺と万夏が食堂に行こうとした時、楯無先輩と簪が俺たちの部屋に来た。この二人が俺たちの部屋に来た=ナニコレ、わけわからん。とりあえず、俺と万夏は二人を部屋に招き入れる。

 

 「ええと、御用件は?」

 

 さすがの俺もこんな突然の来訪に疑問が否めない。

 

 「実は、颯斗のことで、、、。」

 

 簪が答える。

 

 「そういえば、颯斗はあの後大丈夫?やけに大量に出血していたから。」

 「それは大丈夫。というより、もうお馴染と言うか。」

 

 あの光景がお馴染、ギャグマンガでしか見ねえよ。

 

 「私達が言いたいのはそのことじゃなくて、颯斗が仮面ライダー、だったことよ。」

 「今は変身していないってことなんですか?」

 

 万夏が先輩の言葉に疑問を持った。

 

 「また、戦えるようにしてほしい、という頼みでしたら俺は力になれませんよ。そういうのは颯斗の問題です。周りがとやかく言って解決するものではないです。」

 

 これは、俺の経験からも言える。何かしらの理由で戦うことに迷いが生じている奴は周りが無理矢理戦わせようとしたところで戦うわけではない。俺の場合、周りが俺が立ち直れるまで戦いの場から距離を置かせてくれたこととその間に自分の中で戦う理由、正確には本当の意味で覚悟を決めた理由を再確認できたことからまた戦えるようになった。これに至っては人それぞれだから同じ方法を使えるわけではない。

 

 「私達は颯斗の相談相手になって欲しくて、その、大樹に。」

 「相談相手ね。」

 「大樹君も仮面ライダーでしょ、同い年の男友達で同じ仮面ライダーなら私達に言いにくいことも言えるかもしれないでしょ。」

 「そうですけど、何があったんですか?余程の相手と戦っていたか、若しくは、、、。」

 

 俺は二人の表情から颯斗が戦いに出れなくなった理由を予測する。

 

 「誰か、近しい人、特に友達、家族を巻き込んでしまったからでしょ、簪。」

 

 一番、表情が思わしくない簪にそう言った。

 

 「どうして、分かったの?」

 

 その発言ははいそうですって言っているようなものだよ、簪。

 

 「大体、戦えなくなった理由は俺の言ったとおりだよ。その中でおおよその検討を付けただけ。ハートたちがいるなら大抵の相手とは苦戦することは無いはず。そうじゃないなら、誰か大切な人が危険な目に遭った、それもかなりの。そして、その場で何もできなかった、だから戦いから遠ざかっている。」

 

 俺の発言に更識姉妹がまるで超能力者かという視線を投げかける。そりゃ、前前世は散々仮面ライダーとかを見ているからおおよその理由も予想着くし、大体はこの二つ理由だよ。まあ、例外もあるが。

 

 「俺は本人が言いたくないことには極力介入することは無いです。と言うより、俺自身もそういったことは他人にぶしつけに勘繰られるのは嫌なんで。恐らく、今の颯斗に俺や一夏が不躾にそのことに触れて、戦ってくれなんて逆効果ですよ。今の俺がするべきなのは颯斗が自分で立ち上がれるように引っ張ることじゃないです。」

 

 俺の発言で二人が俺が断っているように感じているだろう。

 

 「ただ、友達として普段から相談に乗るのは俺としてもやるつもりです。忙しい中で俺の専用機の調整もしてくれるなんて、感謝してもしきれないです。だから、俺は仮面ライダーとしてではなく、柏葉大樹として同じ学年の颯斗の友達として、出来る限り颯斗の力になりたいです。」

 

 仮面ライダーとして、なんて、一夏辺りが言うべきセリフだ。俺自身はそれこそ、自分を正義の味方なんて思ったことはない。だからこそ、

 

 「俺からも、颯斗にこれからは友人としてよろしく頼むということを伝えてください。」

 

 一人の人間として、同じ高校生(俺は精神年齢はとっくに40オーバーだが)の友人として助力できることはしたいと思った。

 

 「お願いします!颯斗を私の、ヒーローを御願いします!」

 「私の大切な弟分の立ち直れる力になって、大樹君。」

 

 二人は頭を下げて、俺に感謝の意を示した。その後、二人は部屋を出た。その後、

 

 「大ちゃんがそう言うなんて。」

 

 万夏が不思議そうに言った。

 

 「そう?」

 「私はてっきり、放っておいた方が良いっていうと思っていたから。」

 「基本は仮面ライダーの件はそうするよ。けれど、今日、颯斗と話してさ、個人的にだけどすごく悩んでいるって感じてさ。それなのに簪の専用機の件もあるのに俺の専用機の調整もしてくれるって言ってくれたんだ。出来る限り、力になりたいよ。」

 「やっぱり、大ちゃんって、優しいよね。」

 

 俺の発言に万夏がそう言う。

 

 「優しいって、一夏とかはどうなの?」

 「一夏兄さんのはただのお節介、優しさって言えるかもしれないけど、一夏兄さんの場合は相手の思っていることを無視して勢いで行くでしょ。」

 「まあ、箒や鈴の件もそうだったな。」

 「大ちゃんの方は箒や鈴ちゃん、弾や蘭ちゃん、皆それぞれ距離感が違うでしょ。大ちゃんは皆がそれぞれ必要な時に手助けする、皆が気付かないところで気配りをする。一夏兄さんは触れる程近づいて、また次の人って感じなのに対して、大ちゃんは近くで見守っていて、必要な時に自分からどうしたのって聞く感じ。」

 「なんとなく、分かる。」

 

 俺が見る限り、一夏は自分の中の強い思いに突き動かされて動くタイプだ。万夏もそれはよくわかっている。俺自身はそう考えたわけではないのでよく分からないが、一夏のフォローに入る都合上、周りをよく見るようになった。実際、俺はそうやって相手のことを考慮して動くことが多い。結局、前世では皆のことを考えるあまりに一人で行動することが多かった。

 

 「一夏兄さんは団体で動くことが好きなのに、大ちゃんは一人でいるのが好きだったり、一夏兄さんは皆がよく見るから上達がすぐに分かるけど、大ちゃんは皆が気付くまで黙々と努力していたり、あと、一夏兄さんのダジャレはつまらないし、大ちゃんは自虐ネタが多いし、一夏兄さんは鈍感で、大ちゃんは一夏兄さんのフォローで友達としての印象が強かったり、それと一夏兄さんは皆が見ている前でトラブルに巻き込まれに行くし、大ちゃんはそんなことないよって言ってるのに、トラブルに巻き込まれていたり、それから。」

 「途中から関係していないことが出てるよ。」

 「つまり、私は一夏兄さんより大ちゃんの方が人として好きだよ。そして、大ちゃん、やっぱり正義の味方だよ。」

 

 正義の味方、俺から最も遠い言葉だと思っていた。ただ、俺のそばにいる幼馴染(最愛の人)は俺のことをそう思っていたらしい。

 

 「ありがとう、万夏。」

 

 ここで感謝の言葉と共に告白でもすればラブストーリーが始まるんだろう、分かっている。

 

 「あああ、飯行こう。」

 

 こんな言葉で誤魔化す俺のチキン振り、かっこわりい。そんなこんなで楯無先輩をコーチに特訓、専用機開発の傍らで俺の専用機の調整をしてくれる颯斗たち、そして、俺の応援をしてくれる万夏。あっという間に1週間は終わり

 

 「さて、行ってくるわ。」

 

 クラス代表決定戦当日、俺の初のIS戦だ。




 次回、代表決定戦に出場する大樹。初戦はなんと箒だった。そして、颯斗は簪の専用機の開発が中止するきっかけになった一夏と出会ってしまう。

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