「何すんだよ!」
「どの面下げて来てんだ!」
颯斗が一夏の奴をぶん殴った。まあ、気持ちは分からないわけではない。
「颯斗、落ち着け。コイツをボコボコにしたところで簪の専用機の開発が早まるわけじゃないぞ。」
「作る僕のモチベーションが上がる。」
「OK、やれ。」
「おい、大樹!」
一夏、すまない。これで簪の専用機の開発スピードが上がるなら、必要なことなんだ、たぶん。と言うより、次の試合がある以上はあまり付き合いたくない。なんだか、箒が簪と万夏に話を聞いているみたい。ああ、箒が納得した反応をしているな。
「ちょっと待て!俺は何もした覚えはないぞ!」
「お前が動かしたせいでかんちゃんの専用機の開発が中止になったんだよ!覚えがあろうがなかろうが、関係ないなんて言わせねえよ!」
これぞ世の中にある理不尽である。一夏、少しは学んでくれ。俺は一切助けない。あと、意外なことに颯斗、簪のことをかんちゃんって言ってたな。仲がいいことで。
「大樹からも言ってくれ!」
「俺を巻き込むな。」
俺に助けを求められても困ります。今、助けに行っても颯斗は全く納得しないだろう。それにな、面倒くさいんだ。大切なことだからもう一度言う、面倒くさい。
「一夏、こいつは颯斗。もう一人の日本の国家代表候補生の更識簪さんの友達。簪の専用機だけど、一夏の専用機開発、データ収集をするために人員が割かれたせいで開発が中止。颯斗とのほほんが協力して3人で開発をしているところ。つまるところ、お前は知らないところで恨みを買っているってこと。」
俺の説明を聞いた一夏の顔、嘘だろって顔をしているけど、そうなんだよ。とりあえず、俺は次の試合に向けて、集中力を高めたい。だから、俺はもう関わらない、関わりたくない。一夏が何か言っているけど、無視無視。俺の後ろで言い争いが続いていく。そして、20分間の休憩時間は過ぎていく。
アリーナ内にはセシリアと大樹が自身の専用機に駆り、相手を見据えていた。
大樹は刀剣、セシリアはレーザーライフルを装備しており、試合開始の合図を今か今かと待っている。
「柏葉さん。」
「ん?」
そんな中でセシリアは通信越しに大樹に声を掛けた。
「先日の発言はすみませんでした。あの時のあなたが指摘したように私の品位、ひいては私の母国の名に泥を塗るような行為でした。」
試合前だというのに頭を下げようとするセシリアに対して、
「俺は特に気にしていない。だから、試合前に相手に試合以外のことで頭を下げるべきではないと思う。正直、一夏のことは怒って当然だ。俺もあれにはあきれ果てたし。試合以外のことは試合が終わってからだ。それに頭を下げるの俺ではなく、クラスの皆にするべきだよ。」
大樹はそう言った。
大樹の言葉にセシリアは言葉をつなげようとしたが、
「分かりました。では、これで。」
と言い、通信を切った。
大樹は試合のカウントに合わせ、零式のバーナーの出力を上げていく。しかし、そのエネルギーを放出するのではなく、限界まで抑え込んでいく。
一方、セシリアはレーザーライフルの照準を大樹に合わせる。
「第3試合、開始します。」
真耶のアナウンスと同時に大樹はバーナーを開放、瞬時にセシリアに肉薄する。セシリアはその行動を見て、動揺することなく、ライフルの引き金を引く。
大樹はセシリアが引き金を引く瞬間にバーナーの動力を切り、落下。レーザーを躱してく。
「な!」
大樹の行ったことはセシリアにとっては信じられないことである。大樹が行ったのは空中における挙動の生命線を自ら放棄すること同然だった。
大樹は刀剣からロングボウへ装備を変え、セシリアに対して、幾度も矢を放つ。セシリアはそれを躱して、大樹に照準を合わせようとするが、大樹はバーナーの動力を起動し、セシリアのレーザーを躱していくと同時にロングボウで狙い打っていく。
遠距離による撃ち合い、やはりセシリアに一日の長があるのか大樹の方がシールドエネルギーが減少してきた。
(まあ、これは想定通りだがな。)
大樹はこの状況も想定していた。そもそも、大樹の狙いは遠距離戦で勝つということではない。
零式に装備されているロングボウは複数の矢を有している。箒との試合で使ったのは着弾後に爆発する爆裂矢と言われるもので開発者の束曰く、零落白夜とは違う純粋な爆薬などによる一撃必殺を目指したものである。
ここまで、セシリアは矢をレーザーで撃ち落とさずに避けているのは爆裂矢を警戒しているからである。しかし、大樹が現在使っているのはいたって普通の矢でレーザーで撃ち落としてもなんら問題はない。このことから先程の試合での動きがセシリアに影響を与えている証拠でもある。
大樹はロングボウからショットガンに武装を変更、距離を詰めつつセシリアに向かって打つ。このショットガンも先程の箒との試合では使わなかったがこちらにも束は意表を突くような使い手の技量が試される機能を付けている。
「これは避けることをお勧めするよ。」
そういうと、大樹はショットガンの引き金を引く。セシリアは何のことか分からなかったがそれを見た瞬間に即座に避けるべきと判断した。通常の散弾と違い、これは着弾後に爆発、その衝撃によって連鎖的に弾が爆発していくという代物である。セシリアの視界が爆発によって遮られる。さらにそれまで減少していなかったセシリアのシールドエネルギーが初めて減った。
「これでも食らいなさい!」
セシリアは奥の手ともいえるブルーティアーズのBT兵器を起動。爆発先にいるであろう大樹に攻撃を仕掛けていく。だが、セシリアは背後に衝撃を感じた。そこには爆発に巻き込まれているはずの大樹がメイスを持っていたのだった。先程の衝撃はメイスを使った大樹によるものだとセシリアは瞬時に理解した。
「どうして?」
爆発に巻き込まれたはずの大樹がセシリアの背後を取ったことに疑問を持つ。
「種明かしはしない主義なんだ。」
当の大樹はそれの理由を言わずにメイスで殴り掛かる。セシリアは距離を取ろうとするも大樹は出来る限りの最高速度で常時距離を詰める。メイスが当たるたびにセシリアのシールドエネルギーが減っていく。原作の通り、セシリアは男に対する偏見を改めた。だが、それでもまともな戦いを経験していない彼女にとっては大樹は予想以上の相手だった。実際の処は大樹は前世の記憶からセシリアの戦術を知っており、さらにはこの段階のセシリアを軽くあしらえるほどには経験を積んでいたというだけである。
大樹がセシリアの背後を取ったのは簡単なことで爆発を隠れ蓑に開始早々に見せた自由落下による攻撃の回避を行い、そこから瞬間加速を使って背後を取ったに過ぎない。原理はいたって普通だが大樹の意表を突くような動きと不意の攻撃によって思考が鈍っているセシリアにとっては手品を見せられているに等しい。
大樹の猛攻にセシリアも負けずに攻撃をしていく。シールドエネルギーの削り合いになった試合に終止符を打ったのは大樹だった。メイスによる猛攻をビットによるレーザー攻撃によってしのいだセシリアは自身が得意とする距離になった瞬間にほんの一瞬、気が緩んでしまった。大樹はその瞬間を見逃さず、メイスをセシリアに目掛けて投擲する。セシリアは何とか躱すもその眼にはロングボウを限界まで引き絞り、必殺の一撃の放とうとする大樹だった。
後日、
「なあ、なんで俺が代表なんだ?」
一夏が俺に聞いた。
「俺が代表を辞退したから。正直、クラス委員をやっていくのは面倒くさい。」
「それでも、セシリアや箒がいるだろう。」
「二人とも辞退したからな。」
「嘘だろう、、、、、。」
「まあ、頑張ってよ。」
あの試合はクラスの皆の予想を裏切って、ISに関しては素人同然の俺が勝った。あの後、皆が俺にどうして勝てたのか聞いてきたけどすごい先輩にコーチしてもらっていたからと答えた。楯無先輩のコーチのおかげもあるしセシリアの手の内も知っているということも大きい。今回の試合はセシリアが混乱するようにこちらが戦うことが出来た。
一位になった俺は早々に代表を辞退した。その中で一夏を代表に推薦したのだが。セシリアはあの試合の後、自分の発言をクラスメイトに対して謝罪した。クラスメイトはそれを快く受け入れた。一夏に対しては乙女の視線、俺の方はまるで怪物でも見るような視線だった。仕方ない、仕方ないが、、、、、、、、。あまりにも、傷つくんだけどな(´д`|||)。試合のことに関しては言い訳のしようがないから仕方ないけど、、、、、。
「颯斗の奴、どうして一緒に戦ってくれないんだよ。」
「前にも言ったけど、当人が戦いたくない強い理由があるんだよ。こっちから無理に戦わせる必要は無いし、無理矢理やろうとしても意味は無いよ。」
ちなみに、一夏の奴も颯斗が仮面ライダーだということは知った。その時にかなり不躾に聞いたらしく、また殴られた。めっちゃ、誘ったらしい。俺も戦えない時にそんなことされたら怒るって。それよりも、、、、、、。
「万夏、ここ最近早退がちだからそっちが心配なんだけど。」
あの試合の後、万夏が休みがちになっているということが心配だ。どうも、体調を崩しやすくなっており、ここ最近は学校を早退することも多い。そういう時は寮に戻って来た俺が看病している。今は箒とセシリアと話しており、様子を見る限りは調子は悪くはないみたいだ。
「ああ、一度千冬姉が病院に連れて行ったみたいだ。どうも、心労から来ているんじゃないのかって話だけど。」
一夏の言い分からすれば、その心労の原因は間違いなく俺だろうな。心当たりありありだからな。、、、、、何か万夏に買ってあげた方が良いかな。いや、それでなんとかなるんならとっくに回復しているだろうな。
「はああああ。」
「何、ため息ついてんのよ。こっちまで辛気臭くなるじゃない。」
「いや、万夏の体調が最近、あまり良くないもんだから心配で。」
「あんた、最近あの子に心配かけてんじゃないの?」
「最近はインベス関係は音沙汰無いから、そっちじゃないよ、たぶん、、、。んっ?鈴?」
「やっと、気付いたの?」
なんと、春休みの後、諸事情で中国に行っていた鈴がそこにいた。
「久しぶりだな!」
「大して、久しぶりでもないでしょ。いちいち大げさよ。」
一夏のリアクションにそのように答える。
「鈴!来てたの!?」
「元気にしてた?」
鈴が来たことに気付いた、箒と万夏もこちらに来た。
「久しぶり、親友たち。」
そういうと鈴たちはハグをする。
「今まで、何をしていたの?」
万夏が鈴に聞く。
「中国の代表候補生になる手続きが時間が掛かって、本当なら入学したらすぐに二人に言うつもりだったんだけど。」
鈴が二人に照れ臭そうに言う。
「鈴ちゃん、すごい!」
「私も負けられないな。」
鈴の知らせに二人は反応はそれぞれだが自分のことのように喜んでいる。
「あと、一夏。」
「なんだ?」
「クラス代表になったのよね。」
「おお、そうだぜ。」
「今度のトーナメント、あんたをぶっ潰すから。」
「え?」
鈴は一夏を呼ぶと宣戦布告した。
鈴が一夏に宣戦布告したのと時を同じく、
「へえ、ここがIS学園か。」
一人の青年が来ていた。
「なんだか、ワクワクするな。」
「乗りは良いが調子に乗りすぎるなよ。」
青年をたしなめるように壮年の白衣を肩にかけた男が言う。
「分かっているよ、貴利矢先生。ただ、楽しみだからさ、他の仮面ライダーがさ。」
そういうと青年はポケットに入れていたものを取り出し、ボタンを押した。
「カミカゼアクション!」
来る学内トーナメント戦。大樹と万夏、一夏と鈴、颯斗と簪、それぞれが互いの思いを交わし、ぶつけ合う。そんな中で新たなインベスが出現する。止まっていた時間が動くとき、新たな道を突き進む仮面ライダーが姿を現す。