IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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マドカが前世での記憶を取り戻し、その中で互いの思いを確認した大樹とマドカ。その翌日、夜に愛を交わして、眠気に襲われる大樹に一組に転入してきた男性操縦者、桐ケ谷陸が話しかける。その場で陸は大樹に放課後に話したいという。大樹と陸は放課後に第3アリーナで顔を合わせる。陸は大樹に勝った方が負けた方の情報を全て手に入れることが出来るというゲームを持ち掛けてきた。大樹は仮面ライダー炎竜、陸は仮面ライダーエグゼリオンに変身して、激突した。


仮面ライダー炎竜 第23話

side 大樹

 桐ケ谷陸、仮面ライダーエグゼリオンと戦った翌日。俺たちは1週間後のタッグトーナメントの説明を受けてい、、、、、、、、、、、、、、、、(=_=)。

 

 「柏葉君?起きてください!柏葉君!」(真耶)

 「はっ、はい!」(大樹)

 

 すごく心配したから安心させてよとマドカが言ってきて、昨日の夜もたっぷりとしていました。その所為で今日も眠い(=_=)。

 

 「もう、夜更かしはしても良いですけど授業に支障をきたさないレベルでしてくださいね。」(真耶)

 「はい、、、。」(大樹)

 

 山田先生の言うとおりだ。そのあたりもしっかりとマドカと話さないと、、、。俺の体がもたないよ、、、。

 今回のタッグトーナメントは前回のクラス代表トーナメントがインベスの襲撃で続行不能となったことから企画された大会だ。タッグということはより実践的な部分が求められる。ちなみに前世では誰とも組めず、不参加になった。今年は声を掛けられるメンツには声を掛けておかないと、、、。

 

 「あの、山田先生。」(マドカ)

 

 マドカが手を挙げる。

 

 「どうしましたか?万夏さん。」(真耶)

 「タッグのパートナーって自由ですか?」(マドカ)

 「はい。パートナーに関しましては自由になっています。他に質問はありますか?」(真耶)

 「男女混合ペアでもよろしいのでしょうか?」(マドカ)

 「はい、男女混合ペアでも可能です。」(真耶)

 

 山田先生の話ならそうなるな。そうとなれば、一夏をめぐっての争奪戦が始まるな。俺に関しては組めそうな人に声を掛けて、

 

 「私、柏葉君と組みます。」(マドカ)

 

 え、嘘?教室の空気が止まった。だよね、マドカ、専用機ないから、、、、、、、あ!あった!でも、それは、、、、、、、、、。やばい、考えなきゃならんことがいっぱいある。コンビネーション以前に誤魔化さないといけないことがああああああああああああああ!皆はきょとんとしつつも俺とマドカが組むならいいじゃないのかって空気になっていた。皆、もうちょっとは気にしてよ、、、。

 その次の休み時間、

 

 「マドカ、ちょっと来て。」(大樹)

 「うん?良いよ。」(マドカ)

 

 俺はマドカを連れて、クラスの皆から話を聞かれない場所へと移動する。

 

 「どうすんの?タッグを組むのは良いけどISは!?」(大樹)

 「決まっているでしょ?」(マドカ)

 

 そう言って、手にある黒いイヤリング、黒騎士を俺に見せるマドカ。そりゃそうだ。あるんだもの、組めるわ。でもな、、、。

 

 「出所とかどう誤魔化す?」(大樹)

 「この際だから全部話すのは?」(マドカ)

 「納得できるのかね、皆が。」(大樹)

 

 このISを得た経緯を話すということは少なくとも俺達に関することも多少なりとも話さなくちゃいけなくなる。その場合、学園で孤立する危険性が高い。俺一人ならまだしも、マドカまで関わるとなると、、、。

 

 「二人とも、タッグを組むの?」(颯斗)

 「ああああああああ!」(大樹)

 「おはよう、颯斗。」(マドカ)

 

 びっくりした( ゚Д゚)後ろの颯斗に気付けなかった!あ、簪もいる!

 

 「で、万夏ちゃんの手にあるものって?」(颯斗)

 

 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。俺はマドカの方を見る。

 

 「私の専用機だよ。」(マドカ)

 

 言った、、、。この子、言ったよ、、、。

 

 

 

 

 

 

side 颯斗

 信じられないことに万夏ちゃんに専用機があった。その経緯も信じられないというか、

 

 「つまりはこないだの戦いでもらったものの中にあったということかい?」(颯斗)

 「はい、、、、、、。」(大樹)

 「大樹も万夏も別の世界の自分の記憶を持っていて、大樹はそこでも仮面ライダーだったってことで。」(簪)

 「そう。」(マドカ)

 「そこで暗躍したお兄さんがインベスになって世界を滅亡させようとしていたけど、それを阻止したけどその時に大樹も死んで。」(颯斗)

 「そうです、、、。」(大樹)

 「万夏は亡国機業にいたけど、大樹のおかげで学園に来て、一緒にいて。」(簪)

 「うん。」(マドカ)

 「さらに言うと今の自分たちはその別世界の自分がベースになった人格と言うと。」(颯斗)

 

 なんか、思っていた以上にぶっ飛んでいるというか、、、、、、、、、僕もかんちゃんも理解が追い付いていないというか、初めてハートたちに出会った時の衝撃以上の衝撃で放心状態です。ちなみに二人とも大人の階段を上ったという特別聞いてもああそうとしか言えない情報もあったけど。いや~、転生したなんて聞いてその後にセックスをしたと聞いても、へえそうなんだとしか言えないわけだし。まあ、それを言ったところでね、状況は全く変わらない。二人の言ったことをタダの想像の類と断じてしまうのは簡単だけど、話した二人の様子を見ているとどうも本当らしいのは分かった。だから、

 

 「ロイミュードもインベスもいて、世界の滅亡の危機が何度も来たりするけど、こないだ異世界の人が来たりしたけど、大樹と万夏ちゃんの話が特にそれがすごくぶっ飛んでいるようなことでも二人の様子を見て想像の類とはとは思わないよ。」(颯斗)

 「むしろ、納得できた部分が多いよ。」(簪)

 「まあ、とんでも体験の一つや二つなんて仮面ライダーには付きものじゃないの?」(颯斗)

 

 僕なんかいたって普通のサラリーマンのお父さんと専業主婦のお母さんの間に生まれ、幼稚園からの幼馴染のかんちゃんとのほほん、刀奈姉ちゃん、虚姉ちゃんと仲良く過ごしたり、一度は引っ越しで離れたりという、まあいたって普通だった。ある日、グローバルフリーズを起こした機械生命体、ロイミュードの幹部であるハート、ブレン、メディックと出会うまではね。それを考えれば、大樹と万夏ちゃんが体験したことだっておかしいことだと言えないよ。

 

 「その、何とも思わない?」(大樹)

 

 大樹がそのように言ってくるけど、僕なんか一度は撲滅したはずのロイミュードたちが仲間なんだもの。メダルの怪人、インベスの侵略、ゲーム病なんか今まで考え着かないようなものが出てくるような世界で生きているのにそこに転生したという話が出たところでアニメのネタになることが増えるだけだもの。

 

 「特に無いかな。気持悪いとか怖いとか、僕たちのような経験のない人たちは思うだろうけど。」(颯斗)

 「万夏の話を聞いて、だから万夏は大樹のことを深く思っているんだってすごく分かった。きっとそれは素晴らしいことだって私は思いたい。」(簪)

 

 結論から言えば僕たちはどんなことがあろうとも友達だし仲間なんだからそのことで拒絶することはしない。かんちゃんを傷付けたことがきっかけで戦いから逃げていた僕を立ち上がらせてくれた友達を傷付けることはしたくないしね。

 

 「変わんないよ、友達なんだし。」(颯斗)

 

 僕らの言葉を聞いて、ポカンとした表情を浮かべる大樹。

 

 「ねえ、話して良かったでしょ?」(マドカ)

 

 その隣の万夏ちゃんは大樹の手に触れて、微笑みながら言った。

 二人の様子を見ると自分たちのことについて話すことをすごく話し合っていたんだと思う。きっと、大樹はそのことを他の誰かに話すことに踏ん切りがつかなくて、万夏ちゃんがずっと背中を押してあげていたと思う。大樹の中で段々と僕たちの話した気持ちが伝わっているのか、ポカンとした表情も徐々に変わっていった。どこかほっとしたようなすごく安心した表情になっていく。

 

 「バカみたいだな、一人で抱え続けていたのが。いざ話してみたら思いのほか簡単に受け入れられるなんて。」(大樹)

 

 そう言うと大樹は空を仰ぎ見た。きっと、大樹が体験してきたことの半分すら話していないのだと思う。それでも今の青空を見ているその姿はどこか張りつめていたものが緩んだように見えた。

 

 「あ~、早く戻らないと授業に遅れそうだ。」(大樹)

 

 大樹が時計を見るとそのように言った。確かに早くに教室へ戻らないといけない時間ではある。でも、

 

 「確かにこのままでいたら、遅れるね。」(颯斗)

 「ああ、だから今はこの辺で解散にしよう。次の授業、織斑先生だし。」(大樹)

 「それは面倒だね、でもさ、授業を毎日毎回出席しなければならない決まりはないでしょ?」(颯斗)

 「いや、それはそうだけど。」(大樹)

 

 僕の言いたいことにかんちゃんはとっくに気付いている。大樹と万夏ちゃんはよく分かっていないみたいだけど。

 

 「バックレちゃおうよ、授業。」(颯斗)

 

 僕に一言にかんちゃんは笑い、大樹と万夏ちゃんは驚いた。

 

 

 

 

 

side 簪

 私と颯斗、万夏と大樹は打鉄弐式の整備室にいた。今の時間帯は3時間目が始まったところで学園中は授業の真っ最中のはず。つまり、私達は授業をサボって居ることになる。本来ならここに来れば私と颯斗は打鉄弐式の調整や開発をするのだけれど今はそれぞれの寮の部屋にあったお菓子を持ち込んで話している。

 

 「ああ、千冬姉ちゃんにばれたらヤバい。」むしゃむしゃ(大樹)

 

 大樹は織斑先生にサボったことがばれるのをすごく怖がっている。それなのにここでお菓子を食べているのはかなり肝が据わっているように見える。

 

 「納得できる理由が無いならお姉ちゃんも流石に怒るよね。」(マドカ)

 

 万夏は苦笑いを浮かべて大樹の意見に同調する。

 

 「大丈夫だよ、1か月間サボっても勉強なんてどうにでもなるから。」(颯斗)

 

 それは勉強ができる颯斗だからこそ言えることで他の皆が出来ることではないのだけれど。

 

 「授業は良いとして、颯斗の言っているそれは無理だって。精々1週間までだよ。」(大樹)

 「大丈夫だよ、テスト前に5徹したらそれなりに点数はとれるから。」(颯斗)

 「それって、本当に覚えてんの?」(大樹)

 「テストが終わったら、すぐに忘れるけど。」(颯斗)

 

 皆、颯斗を見たらかなりの真面目な人だと思うけど実際には今日のように授業をサボったりするし、学校祭では一番ノリノリで作業をするし、体育祭では一人ノリノリで踊りだすなどかなりはっちゃけた人でもある。きっと、お父さんの仕事で引っ越すことが多かったからそういう風に振舞うようになったのだと思う。

 

 「ねえ、万夏の専用機ってどんなタイプ?」(簪)

 

 勉強の話は置いておいて、私は万夏が持っている専用機に話を移す。

 

 「近接型だよ。メインの武器は大剣でそれにレーザーを打てるランサービット、補助としてマシンガンがあるけど。」(マドカ)

 「マドカ専用にカスタマイズされた機体で、えげつないレベルの反応速度を持っている機体で簡単に説明すると破壊力に優れる高機動型のISだよ。」(大樹)

 「白式に近いんだ。」(颯斗)

 「細かいタイプにするなら一夏の白式は超高機動型の近接特化タイプ。元々の火力は低いけど零落白夜による一撃必殺が特徴だな。マドカのIS、名前は黒騎士で白式のような一撃必殺の技を持っているわけではないけど装備の一つ一つが高い火力を誇っていて単純な素の攻撃力の高さに特徴がある機体だよ。」(大樹)

 

 こうやって聞いてみると万夏の専用機は私の打鉄弐式に近いタイプだと思う。まだ開発中だけど完成すれば荷電粒子砲にマルチロックオンシステムが組み込まれた大型のミサイルポッド、元の打鉄にはない高機動性を持つ機体なる、予定、、、。

 

 「颯斗、簪。弐式の開発ってどこまで進んでんの?」(大樹)

 「外側の組み立てそのものは何時でも終われるんだ。でも~。」(颯斗)

 「一番の売りのマルチロックオンシステムの方の目途が立たなくて。そこが全く進んでなくて。」(簪)

 

 本当なら動かせないわけではない。それなのに何時までも開発しているのはISに組み込むプログラムの調整が上手くいっていないから。

 

 「何とかならないか色々試しているけどね。」(颯斗)

 

 それでもなかなか進んでいない。正直なところ、私達だけで勧めるのに限界がある。

 

 「もしもし、束姉ちゃん。あのさ、今日の予定は何も入ってないよね。今から学園に来て欲しいんだけど。そう緊急の要件、二つ。今日からやらないと面倒なことになるんだけど。了解、整備室にいるよ。」(大樹)

 

 なにやら大樹が電話していた、あの篠ノ之博士に。話していることからするとどうやらここに来るみたいだけど。

 

 

side 3人称

 あれから昼休みを挟んで、整備室へ。大樹たちは束の到着を待っていた。大樹が束を呼んだのはマドカの黒騎士のこととまだ完成の目途が立っていない簪の打鉄弐式のことであった。前世での出来事を記憶している大樹は本来であれば簪の専用機が完成するのはまだ先であるということを知っている。だが、友人が困っている以上は手助けしたいという思いは強い。実は以前から大樹は束には簪の専用機の一件のことは話していた。ただ、ここまでは大樹や一夏がISを操縦したことに加え、元々の簪のバックについていた倉持技研との面倒なお話等もあってなかなか出来なかったのだ。

 

 「ねえ、大丈夫?」(颯斗)

 「電話口だと大丈夫みたいなことを言っていたからな。今は大丈夫なんだろ?」(大樹)

 

 今日の昼前にも関わらず、電話の向こうの束は

 

 「もすもす、だいくん?うん、大ジョーブ大ジョーブ!ん?今から?何?急ぎの用?二つも?なるほど、じゃあ行くよ~。」(束)

 

 と言っていたのでおそらく大丈夫であろう。

 

 「あっ、来たみたい。」(マドカ)

 

 マドカが前方を指し示す。そこにはいつもと違い白衣ではなくおしゃれな私服に身を包んだ束と落ち着いた服装の正則が居た。普段はよれよれの白衣を羽織り、寝ぐせも付いているようなお世辞にもいい大人とは言えない二人だが今日この時大樹たちの前に現れた姿はまるでセレブのようだった(夫婦二人の年収はそこらのセレブよりも高いのだが)。

 

 「はろはろ~。来たよ~。」(束)

 「久しぶり、ところで要件って?」(正則)

 「ああ、前に話した更識簪さんの専用機の件でアドバイスが欲しくて、もう一つの件が、、、あ~説明しずらくて、、、。まずはマドカの持っているものを見てもらった方が良いのかも、、、。」(大樹)

 

 呼び出した大樹が用向きを説明する。一つ目に簪の打鉄弐式について、二つ目はマドカの専用機、黒騎士のことではあるがそれはやはり簡潔な説明が難しかった。大樹の言いづらい雰囲気を察した束はまずは簪の打鉄弐式について話を聞くことにした。

 

 「ほうほう、すごいね!君たち、まだ学生なのにここまで開発を進めていたなんて!」(束)

 

 束は整備室に鎮座する打鉄弐式の完成度に感嘆の言葉を述べていた。束もまだ学生であった頃にIS第1号である白騎士の開発も行っていた。卓越した身体能力を持つ千冬に自分と同じ天才である正則の協力があったために出来たことだと本人も自負している。なお、それでも1学生である颯斗、簪、本音の技術力には目を見張るものがあった。

 

 「いえ、私だけではなく、颯斗と本音の協力が無かったらここまで来れなかったです。」(簪)

 「実は、中身のOSがまだ完成していなくて、篠ノ之博士にそのOSについてアドバイスをもらいたくて。」(颯斗)

 「ふむ~、じゃあそれを見せてもらえる?」(束)

 

 颯斗と簪は開発中のOSを束に見せる。束はそのプログラムを見ていく。束はどの世界においても他者と明確にかつ圧倒的なまでに一線を画している。束は颯斗と簪が構築したプログラムを見て、それが稚拙でもよくできた代物であることはすぐに分かった。

 

 「う~ん、悪くはないかな。確かに複数の標的を同時にロックオン、装備と同期して複数の敵を撃破できるっていうのは素晴らしいよ。でもね、それで処理速度を上げようとしてこの演算プログラムを選んだのはダメかな?その所為でプログラムの処理速度が向上するどころか余計に負担を掛けさせているね。他の部分で色々と試しているのはよく分かるけど、それもあってかプログラムが上手く動かない状態が続いているみたいだね。」(束)

 

 そして、どの部分で上手くいっていないのかすぐに言い当てた。指摘された箇所を確認する颯斗と簪。この二人もそれを確認して束の言っていることをすぐに理解する。

 

 「でも、この部分を変えるとなるとどんな演算処理が良いですか?」(颯斗)

 「う~ん、それなら別のこういう演算式があるんだけどね。う~ん、ねえ、このプログラムを一度、束さんに渡してくれない?一度、研究所の方で色々見てみたいかな?それにその方が君たちに良いものを渡せそうだし。」(束)

 「え、良いんですか!?」(簪)

 「忙しいけど、こんなに頑張っている子たちが居るのならお姉さんも頑張る気が起きるというものです!。」(`・∀・´)エッヘン!!(束)

 

 そして、束にとっては自分が心血を注いで生み出した我が子同然のISに熱意を注ぐ次世代を担うであろう若者を協力することになんらためらいもない。

 

 「まさか、束がああまでに協力する気になるとはね。」(正則)

 「珍しいの?」(大樹)

 「うん、かなり改善したとは言え、興味のない人間には最低限の協力しかしないから。余程、あの子たちの助けになりたいって思ったんだろう。」(正則)

 

 正則は束の今回の動きには驚いたようでそのように大樹に話した。学生時代の束のことをよく知る人物の一人であるために今回の姿は夫として、古くからの付き合いのある正則にとっては嬉しくもあった。

 

 「いよっし!次はまーちゃんの方だね!私に見せたいっていうものをプリーズ!」(束)

 「はい、これ。」(マドカ)

 

 そして、簪の方が一通りの終わりになったために束はもう一つの要件であるマドカの方へと移る。対するマドカは待機状態の黒騎士をなんのためらいもなくサラッと見せた。

 

 「ん~、ナニコレ?」(束)

 「私の専用機。」(マドカ)

 「え?」(束)

 「私のIS。」(マドカ)

 「いや~、まーちゃんも冗談が上手くなって、え~~~~~~~~~!」(束)

 

 コントのようなやり取りを見せて、絶叫する束であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園第4アリーナ、他の授業とも被らずに使用が可能だったアリーナに大樹たちの姿があった。観客席には颯斗、簪、束、正則が、アリーナの競技場にはISスーツを身にまとった大樹とマドカが居た。大樹のISスーツは通常の水着のようなものではなくボディスーツの上にごてごてしたアーマーを装着しており、素人目からするとパワードスーツの様に見える。一方のマドカは普段の授業でも着ている学園指定のISスーツである。

 二人はお互いのISの待機状態も身に着けており、大樹はサングラス型の零式を掛けており、マドカの耳にはイヤリング型の黒騎士があった。

 

 「こうやって、お互いにISで戦うのは久しぶり、になるのか。」(大樹)

 「そうだね。」(マドカ)

 

 大樹はスーツの各部品の調子を確かめながら言う。対するマドカは言うと準備運動をしながら嬉しさを隠さずにしていた。

 

 「ねえ、これで勝ったら相手に好きなことを一つ命令できるっていうのはどう?」(マドカ)

 「え~。そんなの無くて良いだろう?」(大樹)

 

 競技場においてそんなやり取りをする大樹らに、観客席側は

 

 「勝負には賞品が付きもの、やっちゃえやっちゃえ!」(束)

 「大樹!こういう時の女子は強いぞ!というよりそんなの一つや二つやってあげろ!」(正則)

 「もう、チョメチョメしているんだから、言うことの一つや二つ聞いてあげなよ!」(颯斗)

 「万夏、頑張って。」(簪)

 

 とマドカよりの発言をしていた。それに大樹は

 

 「俺の味方はいないのか(# ゚Д゚)」(大樹)

 

 と怒りを露わにしていた。

 

 「ねえ、大樹。私に勝てば良いんだよ。」(マドカ)

 「それがかなり難しいのはよ~く分かっているのはマドカでしょ!」(大樹)

 

 じゃれ合い、そんな風にとられるやり取りをしていく二人。

 

 「ああ、もう。零式、起動。」(大樹)

 「行くよ、黒騎士」(マドカ)

 

 二人はたがいのISを起動する。紅蓮の竜が描かれた鎧武者のようなIS、零式に駆る大樹と漆黒一色の蝶を思わせるIS、黒騎士を纏うマドカ。二人はお互いのISを見て、前世におけるISでの戦いを図らずも思い起こす。大樹にとっては大きく感情が揺らぐことが無く、強いて言えばカメの歩みともいえる成長を続けた戦いでマドカにとっては罪の意識を改めて強く感じさせる自身の振る舞いであった。

 過去、前世への想起はほんの数瞬で終わり、二人はそれぞれのISに搭載された装備を呼び出す。大樹は名称を3式対弾大型装甲楯「竜甲」と呼ばれる楯を左腕に、1式対甲大型刀「竜牙」と呼ばれる大型の日本刀を右手に持つ。一方のマドカは黒騎士の数少ない装備から大型のバスターソード「フェンリル・ブロウ」を選び、両手で持つ。

 大樹は竜甲で自分の体を隠すようにする。マドカはフェンリル・ブロウを正眼に構える。そして、先に動いたのはマドカの方であった。

 黒騎士の高い機動性を生かして瞬時に距離を詰めていくマドカ。その動きを見た大樹は竜甲の機構を発動、倍の大きさになるだけでなくエネルギーシールドを展開して、マドカの攻撃に備える。マドカはそれを意に介することなく、フェンリル・ブロウを振るう。アリーナに大きく金属同士が衝突する音が響いた。

 大樹は視界の端で零式のシールドエネルギーが大幅に減ったのを確認する。それと同時に竜甲に損傷が生じ、エネルギーシールドを展開できなくなったのを把握した。それと同時に安全装置が働き、竜甲が元の状態に戻った。大樹は目の前の彼女の実力が恐ろしい程に生きているのを確認した。このままでは何もできずに一方的に負ける、大樹は脳裏でそう考えた。大樹は竜牙を振るい、マドカをけん制する。それを見たマドカはすぐさま後方へ跳ぶ。距離が離れた瞬間に大樹は竜甲を収納、代わりに颯斗が開発した装備である5式対甲槌「竜鰐」つまりはメイスをコールする。

 右手に日本刀、左手には両手持ちのメイスという奇妙な二刀流で大樹はマドカに向かって行く。マドカはそれに臆することなく、自身も向かって行く。互いの得物の間合いに入った瞬間に二人は互いの武器を振るった。アリーナに激しくぶつかることで生じる金属音が絶え間なく鳴り響く。

 大樹は日本刀で切り付ける横でメイスでマドカの攻撃をいなしているかと思えば、日本刀でマドカの大剣を弾いて、その隙にメイスで殴りつけると言ったような一つ間違えると崩されて相手を攻撃をまともに受けかねない防御を捨てた攻撃を次々と繰り出していく。

 マドカはフェンリル・ブロウを大振りに振るうだけではなく、時折大樹の攻撃を受けそうになった瞬間にその場で飛び上がる、滑るように移動することで踊るように戦っていた。

 

 (ずいぶんときれいな戦い方だ。前は相手をねじ伏せるような戦い方だったのに。)(大樹)

 (前はすごく泥臭い戦い方だったけど。やっぱり、ずっと戦って来たからすごく格好良くなってる。)(マドカ)

 

 武器を振るたびに二人は頭の中ではそのように考えていた。それほどまでに二人の記憶にある互いの戦い方と今の戦い方は違っていた。

 大樹はまるで竜を思わせるような荒々しい戦い方を、マドカは神話の戦乙女を思わせる華麗な戦い方だった。二人の戦いはまるで神話の1シーンを思わせ、見る者を魅了するものだった。事実、この戦いを見ている颯斗たちは二人の戦いに目を奪われていた。

 

 「なんというか、予想以上。」(颯斗)

 「すごい、、、。」(簪)

 「だいくん、すごいね。一つでも動作を間違えたら一気に崩れかねない戦い方なのにここまでに一つもミスをしていないなんて。」(束)

 「万夏の方もすごいな。バスターソードはその重量からスピードを犠牲になる。ああやって手数で責めるような相手にはどうしても攻撃を食らうけど、それをああやって躱していくとは。初めてと思えない。」(正則)

 

 彼らはそれぞれ二人の戦いを見ての感じたことを口にする。当然だが颯斗と簪は大樹とマドカ、束と正則は大樹が前世の記憶を持っているということを知っている。そのことを差し引いても二人の戦いは1学生のものとは思えないほどである。そもそも、大樹とマドカは前世においては普通の学生ではなく、大樹はインベス退治に加え女性権利団体を相手に戦闘を繰り返し、さらには各地の戦場にも身を投じていた。マドカは亡国機業に身を置き、様々なテロ活動をしており、一夏たちの前にその高い技量でもって圧倒していた。詰まるところは二人とも、そこらの学生など目でもないほどに腕っぷしが強いのだ。

 この戦い、実はかなり音が響いており近くのアリーナだけではなく校舎の方までも音が届いていた。そして、それを聞きつけて今は授業を行っていない教師が確認に来ることにもなる。そして、確認に来る教師が彼らにとってはあまり出会いたくない人物であることもあり得るのだ。

 

 「だああああ、畜生が!」(大樹)

 「ほらほら、このままだと負けちゃうよ。」(マドカ)

 

 大樹が悪態をついている。ここまで善戦してはいるもののやはりというか機体の性能差と言い、操縦者の適性と言い、ことISに関して言えばマドカは大樹よりも強い。大樹が駆る零式のシールドエネルギーは既に半分ほどになっている。対するマドカの黒騎士もシールドエネルギーが減少してはいるがそれは全体の9割程が残っている状態でまだ余裕がある。本来ならここで負けたとしても特に大樹自身に大きく不利になるようなことにはならない。精々がトーナメント前にISに少なからずダメージがあるというくらいである。当然、そのことを考えていない大樹ではない。実際の処は

 

 (いや、冷静に考えたら別に負けても良いけど、、、。)(大樹)

 

 位は考えていた。ただ、手を抜いたというのはマドカにとってはあまり面白くは無いよな~という考えもあるものだから、下手に手を抜くこともできない。そのようなことを考えながら、マドカに攻撃を繰り出している当たり、大樹もかなり常人離れしたところがあると言えるだろう。それも数秒後に終わったのだが。

 

 「授業に顔を出さないとは思っていたがここでこんなことをしていたとはな。」(千冬)

 

 世界最強にばれた瞬間、この場にいた全員が思ったのは

 

 ((((((言い訳、どうしよう。))))))

 

 だった。

 

side 大樹

 とうとう、うちの担任に見つかりました。現在はアリーナの内部にある選手控室に皆でいます。そこには正座をしている俺、マドカ、颯斗、簪にそれを見据える千冬姉ちゃんに山田先生、俺達の後ろには処刑済みの大人二人が屍になっています。

 

 「授業には必ず出席しなければならないという決まりはない。だが、何も言わずに授業を欠席するのは許されるものではない。それは学生である4人には分かっているものだと思うが。」(千冬)

 「「「「はい、、、。」」」」

 「さらに、4人には昨日のことで私に話すことがあるはずだ。それを忘れていたのだとすれば、今回のようなことをしてもまあおかしくないと考えるのが自然だろう。」(千冬)

 

 そうだった、、、。昨日の陸との喧嘩、それを今日千冬姉ちゃんに話すことになっていた。ご立腹ですよねー。

 

 「特に授業をサボることがなさそうなメンツなのに、どうしてか、、、。」(千冬)

 

 話が始まってから怖くて顔を上げられない、、、。だって、ねえ、、、。

 

 「どうした?どうして、ずっとうつむいている?」(千冬)

 「あの~、織斑先生?この子たち、すごく反省しているみたいですから、からかうのももう。」(真耶)

 

 え?恐る恐る顔を上げると般若の顔ではなく、普段の俺をからかっているときに浮かべる、まあ、悪い笑顔だった。それをずっと見ていたらしい隣の山田先生が困ったような顔をしている。、、、、、、、、やられた、畜生(# ゚Д゚)。

 

 「まあ、学生としては褒められたことではないがな、かく言う私もそこで締めた二人と一緒に授業をそっちのけでISの開発をしていたからな。一度や二度程度なら多少はしても良いとは思っているぞ?」(千冬)

 「あの~、千冬先輩?それは教師としてはあまり言うべきことではないと思うのですが?」(真耶)

 「織斑万夏と柏葉大樹の姉としての言葉なら良いだろう?」(千冬)

 「そう言うことではないのですが、、、。」(真耶)

 

 ああ、山田先生がそうじゃないんだけどとすごくおっしゃっている。

 

 「今回はタッグトーナメントに向けてのISの機体調整ということで特別にお咎めなしということにしておくからな。」(千冬)

 「はあ、ということで皆さんもうこういうことはしないでくださいね?」(真耶)

 「「「「はい。」」」」

 「それでは、私的に話をするので先に山田先生は戻っていてくれ。」(千冬)

 「分かりました。今回のことも含めて処理しなければならい書類がありますから、手短にお願いしますね。」(真耶)

 「ああ。」(千冬)

 

 そういうやり取りをして山田先生はこの場から離れた。山田先生が居なくなった後、千冬姉ちゃんは俺とマドカに向かって

 

 「お前たち、私が小さい頃から見てきた二人じゃないんだろ。」(千冬)

 

 と言った。

 

 「千冬姉ちゃん、それは!」(大樹)

 

 俺一人が排除されるようなことになってもそれは特別気にするほどじゃない。だけど、マドカがそんな目に合うのは、それだけは世界が納得しても俺が許さない。そのことについて俺が話そうとするとマドカが俺を制止した。

 

 「確かに、お姉ちゃんの言うとおりだよ。私も大樹もお姉ちゃんが知っている織斑万夏と柏葉大樹じゃないよ。」(マドカ)

 「全くの別人なのか?」(千冬)

 「うんうん。こことは違う世界で生きてきた織斑マドカと柏葉大樹だよ。ここで生きてきた記憶もあるし、違う世界で生きてきた記憶もあるよ。」(マドカ)

 「なら、そのISはそこで使っていたものということか。」(千冬)

 「うん、そこで私は一夏兄さん、箒、鈴、ここに来ている専用機を持っている代表候補生たちと戦っていたよ、敵として。」(マドカ)

 

 できることならマドカの口からは話して欲しくなかった。まして、そんな話を実の家族にして欲しくなかった。マドカの話を聞いて、何を考えているのか千冬姉ちゃんもマドカも口を開くことは無かった。

 

 「俺は、そこでもIS学園に居たし、仮面ライダーとしてインベスと戦っていたよ。インベスが居なくなった後は女性権利団体を相手に戦ったりもした。それに、時期は違ったけど兄貴が父さんと母さんを殺した。その後は兄貴を追って、学園を辞めて、それから、、、兄貴と大勢の人間を巻き込んで殺し合いをしたよ。」(大樹)

 

 それを見て、俺は自分のことを話した。

 

 「正直、最初にこっちで目を覚ましてからはずっとそっちの俺だったよ。でも、この世界を生きてきた僕としての意識もある。俺もマドカもここで生きてきた自分たちでもあるんだ。完全な別人にように見えるけど、ちゃんと千冬姉ちゃんと一緒に過ごしてきた僕たちだよ。けど、俺達の様子を見たら、そうは思えないよね。」(大樹)

 

 俺は前世でもここでも人間の嫌な部分をたくさん見てきた。だかろこそ、マドカにはそういった部分をもう見せたくなかった。頼むから、千冬姉ちゃん。マドカだけは拒絶しないで。

 

side 千冬

 にわかに信じられない、というのは15年前の沢芽市から始まったインベス事変の時から何度思ったことか。その前にも信じられないようなことがたくさん起きてきた。だから、これからの人生でそんなことはもうほとんど起きないだろうとも思った。

 大樹と万夏の変化は当然だがすぐに気づいた。最初はとうとう色でも意識しだしたのかと思ったが、どうやらそうではないというのも分かった。だが、学園にいる間はどうしても私的に話す機会が少ない。今回の授業の無断欠席はちょうどいいと思った、私が感じていることを二人に問いただすのを。まさか、私の感が当たっているとはな。だが、話して分かったのは確かに二人は別人でもあるだろう、だが根本的には私が知っている二人と何ら変わりはしないことも。それを確認出来て安心した。

 万夏は臆することなく、私を信頼して話してくれた。大樹も万夏のことを思っていることもよく分かった。だからこそ、私の知っている二人が居なくなったわけではないことを確認出来て、大人げなく安心した。だから、

 

 「二人とも、良く話してくれたな。」(千冬)

 

 二人を抱きしめる。あんなに小さかった二人がこんなに大きくなったことに今更ながらに実感する。

 

 「万夏、私を信じてありがとう。大樹、そんな不安な顔をするな。私にとって二人はかけがえない家族だ。そんなことでいまさら拒絶するなんて、馬鹿な真似はしないよ。」(千冬)

 

 私の可愛い妹と弟を手放すことなんてありえないからな。さて、この話も終わりにしよう。恐らく、二人は全てを話していない。だが、それを今聞く必要はない。だとするなら今はここまでにしておこう。私は一度二人から離れる。私は改めて二人を見る。

 

 「何があったとしても私は、二人の味方だからな。」(千冬)

 

side 颯斗

 僕たちの隣では織斑家の家族会議で行われていた。まあ、正確には織斑先生が二人に何があったんだ的な問いかけをしてそれに二人が答えていたってだけだけど。何となくだけどね、まあ僕にはお兄ちゃんやお姉ちゃんはいないからよくは分からないけど、織斑先生は二人のことを本当に大切に思っているんだなってことは分かったかな。

 話が終わると織斑先生は僕らの方に向き、

 

 「私の妹と弟の良い友人でいてくれ。特に、大樹は昔に起きたことで原因で他人をあまり信用するやつじゃない。万夏がいるからなんとなく私達にも気を許しているがそれでも心の底から信頼しているわけではない。その大樹が君たちに気を許しているのはおそらくは本当に君たちのことを友人と思っているからこそのことだと思う。」(千冬)

 

 そういうと織斑先生は頭を下げる。僕とかんちゃんはいきなりそうされて慌てて顔を上げて欲しいと言う。とにかく、その場では分かりましたとしか言えなかった。

 それから時間が経って、放課後。篠ノ之博士はあの後ちゃんと復活して、かんちゃんの打鉄弐式のプログラムと万夏ちゃんのISを持って研究所へ帰りました。あの時のお仕置き、相当えぐい音が響いていたから確実に死んでいるだろうなあとは思ったけど、夫婦二人ともケロッと帰っていった。天才ならぬ天災とはうまいことを言った人がいるもんだな。

 

 「あのさ、、、、、。」(颯斗)

 「どうした?」(大樹)

 「いや、、、。」(颯斗)

 

 織斑先生が言っていた大樹に起きた昔のこと、織斑先生に話していたお兄さんがお父さんとお母さんを殺したってこと。いつもはブレンに頼んで調べてもらうことだけど、それは、そのことを聞くことだけは、そうやって知ることだけはなんとなくしてはいけない気がした。

 

 「俺が、マドカに家に住んでいるのは俺の身元を引き取ってくれる親戚筋が居なかったからだよ。」(大樹)

 

 意を決したのか大樹が話し出した。

 

 「俺の父さんと母さん、俺が5歳の時に死んだんだ。病気や事故じゃなくて殺されて。犯人は俺の兄貴、柏葉勇吾。俺の記憶にあるのは人間じゃない何かになって父さんと母さんと殺す兄貴の姿。何かあったことに気付いたマドカの父さんが俺の家に見に来たんだ。その時には兄貴はいなくなっていてな、マドカの父さんは無事で、風呂場に隠れていた俺を見つけたんだ。」(大樹)

 

 大樹の口からはきっと本人は忌まわしく思っているであろう記憶が語られていく。

 

 「別に、前世でも同じことがあった。そのことについてはまあ兄貴に関してはどっかでくたっばちまえ位は思っているよ。その件そのものは、悲しいし、悔しいというか、怒りが抑えられないとか、そういうのは今でもある。」(大樹)

 「お兄さんを恨んでんの?」(颯斗)

 「兄貴は、、、正直に言えば、恨んでいる、と言えるのかね。ただ、あの兄貴だから、っていうのはずっと思っている。あの兄貴だから、必然的にやったんだろうってね。」(大樹)

 

 正直、あまり聞いていていい気分にはならないことばかりだ。実のお兄さんが両親を殺したなんて。

 

 「でもな、何が一番きつかったって、周りの、俺のことをよく知らない奴らの、な。」(大樹)

 

 でも、大樹は家族のことは淡々と辛いのを無視していてなのか、特に語った以上のことは思っていないのかすらすらと話していたけど。それ以外のことには、表情が変わった。周りの、というあたりから明らかに表情が変わった。明らかに万夏ちゃんや織斑先生、一夏の奴、箒さんたちに見せる表情とは全く違った。そう、自分を攻撃する奴らに対する不快感、怒り、そういう嫌な感情全般が混ざりに混ざって、、、一度だけ、ハートたちが僕に見せた人間の嫌な感情のそれと同じだった。きっと、織斑先生の言っていた昔のことは家族が死んだこと以外にも、いやおそらくそれ以外のことが大樹にとって一番の嫌なことなんだろう。

 僕らがそうやって話していた時、どこからか激しい戦闘音が響いた。

 

 「どこ?」(颯斗)

 「方向からすると第3アリーナだ。」(大樹)

 

 僕らは戦闘音が響いた第3アリーナへと走る。僕たちは第3アリーナの観客席入り口から入るとアリーナでは大樹の友人の中国代表候補生の鳳さん、イギリス代表候補生のオルコットさんが別のIS乗りと戦闘をしていた。

 

 「どうして、鈴とセシリアがラウラと?」(大樹)

 「そういえば、この戦いって別の世界でも?」(颯斗)

 「ああ、一夏が原因でな。」(大樹)

 「ガッデム。」(颯斗)

 「とにかく、止めよう。このまま放っておいたら鈴たちが負ける。」(大樹)

 

 僕らがそれぞれドライバーを取り出したその時だった。突然、大樹がラウラと呼んだIS乗りが苦しみだした。それを勝機ととらえたらしい二人は攻撃を仕掛けたけど、その時に何が起きたのか、、、。なんとなく、大樹は分かったみたいだけど、、、。

 

side 大樹

 

 ラウラが苦しみだしたときに鈴とセシリアが攻撃を仕掛けたときに明らかにラウラに異変が起きていた。遠目ではっきりと判別するには心許なかったがラウラの体に一瞬ノイズが走ったように見えた。その後は鈴とセシリアが倒れていた、ラウラの体にノイズが走ったのを確認した次の瞬間には鈴とセシリアはISに大きなダメージを負っていた。その時のラウラはシュヴァルツ・レーゲンに装備されていない武器を持っていた。

 

 「なんで、雪片を持っているんだ。」(大樹)

 

 それは黒一色に染まっているが千冬姉ちゃんが使っている暮桜専用武器の雪片だった。何が起きたのか、少なくとも第二次移行ではないということだけは確かだ。遠距離に特化したシュヴァルツ・レーゲンが近接型の、さらには雪片を持ち得るなど、正直なところはあまり考えにくい。それだけなら、まあそうなることもあるだろうで片づける俺が第二次移行では無いと判断したのはその後に見たラウラの様子も理由にあった。その時に俺達の気配を察したのかラウラは背後にいる俺と颯斗の方へと向いたのだ。その時のラウラの顔は俺の記憶にあるどれとも違っていた。その顔を見て、これまで、前世でもこの世界でも得た経験が警報を鳴らした。

 

 「ヤバい。」(大樹)

 

 その時の俺は無意識にそう口に発していた。はっきりと認識するには遠すぎる距離、それでありながらそう感じた彼女の表情はまるで新たな得物を見つけたとばかりに歪んだ笑みを浮かべたように見えたからだ。

 俺はとっさにロックシードを開錠した。開けられたクラックから俺は竜炎刀を取り出す。これは本来なら緊急用の措置で今のラウラにどこまで通用するか分からない。それでも染みついたその行動を体が起こした。これは明らかに危険だと判断していた。それはは颯斗も同様らしく、ラウラを見て身構えていた。

 

side 3人称

 この時、アリーナには大樹たち以外にもこの場に来ていた人物たちが居た。

 

 「何が起こっているの?」(シャルロット)

 「まさか。」(陸)

 

 陸とシャルロットは大樹たちから見えない選手側の入場口から事の成り行きを見守っていた。シャルロットは目の前で起きたことに理解が追い付いていなかったが陸だけは何が起こったのか、正確にはラウラの身に起きていることをただ一人理解していた。

 

 「シャル。何があっても俺から離れるなよ。」(陸)

 

 陸のその口ぶりからは普段のおちゃらけた雰囲気は鳴りを潜めていた。その様に明らかに危険な状況であるのかを感じながらシャルロットもシャルロットは胸の高鳴りを感じていた。

 陸はゲーマドライバーとカミカゼアクションガシャットを取り出し、変身しようとするが。

 

 「うっ、があああああ!」(ラウラ)

 

 再びラウラが苦しむ。それと同時にラウラの手にあった漆黒の雪片は消滅する。その後は

 

 「はあ、はあ、わ、私は、一体?」(ラウラ)

 

 正気に戻ったらしく、頭を押さえていた。ラウラは少し混乱しており、鈴とセシリアの様子を見てはここで何が起きたのかを理解できていないようだった。

 

 「そんな、まさか、私なのか?」(ラウラ)

 

 そういうとラウラはISを解除、その場を逃げるように立ち去った。その様子を見ていた陸はひとまずガシャットをしまう。この時、ラウラが立ち去ったことでアリーナへと入れるようになった大樹と颯斗が鈴とセシリアの元へと来ていた。

 

 「おし、シャル。俺たちは帰ろうぜ。」(陸)

 

 陸は普段見せているおちゃらけた雰囲気に戻るとシャルロットにそう言った。

 

 「でも、僕たちは手伝わなくて良いのかな?」(シャルロット)

 

 大樹たちの様子を見ていたシャルロットはそう言った。確かに鈴とセシリアの様子を見れば、何かしらの補助をすべきではある。だが、鈴とセシリアには大樹と颯斗が付いており、大樹が颯斗に指示を出しているその様子から少なくとも応急手当くらいはできるようである。

 

 「まあ、あの様子なら大丈夫じゃないか?それに俺の印象もすこぶる良いとは言えないからな。そして、あいつらが貴利矢先生の所に行く前に今回のボーデヴィッヒさんのことを話しておきたいしな。」(陸)

 

 そういうと陸は先に歩き出した。それを追ってシャルロットもその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 時間は大樹たちがアリーナを立ち去ってから数十分後、

 

 「なる程な。一夏をバカにされて、さらには自分達もバカにされて、頭に血が上ったと。」(大樹)

 「ぐっ!大樹に言われるなんて、、、。」(鈴)

 「で、ですが!」(セシリア)

 「相手の挑発に乗ってしまった時点でその場の結果は決まり切ってんの。しかも、相手は軍人だろ?いくら二人が代表候補生とはいえ、冷静さを欠いた時点で詰んでいたとしか言えないだろう?」(大樹)

 

 大樹は保健室で鈴とセシリアに事のあらましを聞き、バッサリと二人の意見を叩ききっていた。普段であれば大樹に強気な姿勢の鈴もこの時ばかりは唇をかみしめながら大樹の話を聞いていた。颯斗は鈴たちを保健室へ連れて行ったあとは寮へと戻っていた。大樹は冷静に二人の行動をバッサリと一刀両断していく。色々と指摘されていくうちに鈴とセシリアは頭も冷えてきたようで落ち着いてきた。

 

 「ねえ、甲龍は?」(鈴)

 「わたくしのブルーティアーズも大丈夫でしょうか?」(セシリア)

 

 それで自分たちの愛機のことを大樹に聞いてきた。大樹は二人のISを学園の整備科に渡しており、そのダメージの具合も聞いていた。

 

 「両方ともダメージレベルはC。今回のトーナメントの出場は見送られるそうだ。」(大樹)

 

 幸い、整備をすれば問題はないがその損傷の度合いは決して軽くはなかった。二人は大樹の言葉を聞いてそれが決して軽くはないことを理解していた。

 

 「まあ、仕方ないけど今回はあきらめるしかないわね。」(鈴)

 

 そうでもないという雰囲気を装う鈴だったが大樹はその様子がカモフラージュであることを見抜いていた。だが、大樹は長い付き合いからその本音を言い当てることは鈴にとっては侮辱でしかないことを知っている。大樹はその場を離れようとするが

 

 「大樹!私達の分までラウラ・ボーデヴィッヒをボコボコにしなさいよ!」(鈴)

 

 鈴が大樹に激励を送った。それに対して、大樹は笑って

 

 「ああ。」(大樹)

 

 と答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は流れ、タッグトーナメント当日。

 

 大樹とマドカは第3アリーナのピットにいた。大樹のISスーツはあの後、束たちの下で開発された新たなスーツになっており、その姿は以前よりもスマートで流線形のフォルムになっていた。それ以外にも変化はあり、以前は黒一色なのに今回は大樹の専用機零式に合わせて、赤と金色にさし色に黒と銀という派手目なカラーリングとなっている。

 マドカは学園指定のISスーツではなく黒をベース色に紫と白のラインが入った専用のISスーツを身にまとっていた。これも大樹のものと同様に束たちが開発したISスーツであり、黒騎士の返却と同時に渡されたものだ。

 二人は互いの専用機の調子をチェックするなどして試合前の時間を過ごしている。

 

 「あのさ、マドカ。」(大樹)

 「なあに?」(マドカ)

 「俺がダメだと言ってもきっと一緒に戦っていくつもりなんだろ?」(大樹)

 「うん。」(マドカ)

 「俺が行くなって言っても無駄なんだろう。」(大樹)

 「言ったでしょ?もう守られるだけじゃ嫌だって。」(マドカ)

 

 二人の間に流れる空気は険悪なものではなく、あくまで普段の軽い会話の中での確認程度の話だった。それでも、そうだからこそ、大樹も覚悟を決めており、マドカの決心も固い。言い争うこともなく、二人は互いの顔を見ている。

 

 「何があっても、君を守る。」(大樹)

 「何があっても、あなたと共にいる。」(マドカ)

 

 そういうと二人の距離は縮まり、口付けを交わす。口付けを終えると二人はアリーナの方へと歩き出す。

 大樹は待機状態の零式を掛け、マドカは耳にある黒騎士を輝かせる。その様はこれからの試合への意気込みを現すようだった。

 




始まったタッグトーナメント。その中で大樹とマドカは並み居る上級生たちや他のライバルを圧倒していく。勝ち進む中でラウラと試合を行う。試合の中でラウラは自分の中にあった秘めた願望を開放する。そして、蒼風の獅子が一人の少女を助ける。

 「こんなバッドエンド、俺が変えてやるよ!」

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