IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 迫るタッグトーナメント。そこになんとマドカが大樹とタッグを組むことを宣言。専用機の出所などに頭をなませる大樹だが、颯斗と簪が大樹の秘密を知った。そして、事情を知った千冬が颯斗と簪に二人の良い友人で会って欲しいと頼まれる。夕方、ラウラと戦う鈴とセシリアを見る大樹と颯斗。そこでは急に様子が変貌したラウラが二人を行動不能まで追い詰めた。そして、始まるタッグトーナメント。



仮面ライダー炎竜 第24話

side 3人称

 IS学園全学年合同タッグトーナメント。本来であればクラス別対抗トーナメントを行っており、そこで企業や国からのエージェントが視察に来るほどの行事であった。今年はトーナメントの最中にインベスの襲撃があったために続行することが出来なかった。今回のタッグトーナメントは先のクラス別対抗トーナメントの中止によるいわば補填でもある。だが、タッグという都合上から個人戦よりも戦術性など要求される点が多く、ごく少数居る専用機を有する代表候補生たちからより実戦的な対応力を見るためのものと判断された。

 今回のトーナメントでは本来のISとは違う点が複数存在していた。この時期に専用機がまだ開発中だった簪がエントリーしていること、その相手が箒であるということ、ラウラの組む相手が桐ケ谷陸である点、最後に本来であればここにはいない柏葉大樹と織斑マドカがタッグを組んでいることだった。

 この大会、大樹とマドカのタッグはそこまでの注目度は無かった。二人目の男性操縦者とブリュンヒルデの妹という点では話題には上がった。だが、この世界の二人はISに関してそこまでの経験値を有しているわけではなかったために精々が1回戦敗退だろうという周囲の予想からだった。後に彼らのことを知る学年の卒業生はこう二人のタッグを称していた、化け物カップルもとい双撃のドラグナーと。

 

 「なんなんすか!?ただの素人じゃなかったんすか!?」(フォルテ)

 

 この時、学園では上級生のギリシャ代表候補生フォルテ・サファイアが織斑マドカと相手にしていた。フォルテは氷を使った攻撃が特徴の専用機を有しており、学園でも名うての実力者であった。そのフォルテがマドカの技量にただ驚くことしか出来なかった。

 

 「おいおい、俺達よりもすごいタッグとは聞いていないぜ!」(ダリル)

 

 フォルテの同室のルームメイトでもあるアメリカの代表候補生ダリル・ケイシーも大樹とマドカのタッグが当初の予想を遥かに超える強敵であるということに驚くだけではなく、興奮も禁じえなかった。ダリルとフォルテは学園ではイージスという異名を持つ卓越したコンビである。その異名は二人の防御力の高さから付けられていたのだが、そのイージスの堅牢な防御力を突破するほど大樹とマドカのタッグの攻撃力は凄まじかった。

 

 「それじゃ、ご教授お願いしますよ、先輩方。」(大樹)

 「ああ、出来れば早めに降参してください。」(マドカ)

 

 そう言いながらイージス達に刃を向ける二人。その二人の姿はこの学園でISについて学び始めたとは思えないほどの堂々としたたたずまいだった。そのたたずまいから気圧されるフォルテとダリル。残念ながらこの時点で二人の敗北が決まったようなものである。マドカはフォルテを、大樹はダリルに向かって行く。マドカのフェンリル・ブロウはフォルテの氷の防御を容易く砕き、大樹の竜牙はその特殊な機構を発動、燃え盛る炎の刀となってダリルの放つ火炎をことごとく吸収、より威力を上げてダリルのISに大きなダメージを与えた。この二人の猛攻にダリルとフォルテは

 

 「「IS、壊されては冗談じゃない!」」

 

 と言って即座に降参した。これを見た周囲は度肝を抜かれた。なんせ、大して良い成績を残せないだろうと思われた1年生タッグが上級生を圧倒したのだ。それも大して経験が無いはず(正確には二人とも前世ではIS乗りで大樹はともかく、マドカは洒落抜きで強い。)の1年生タッグが勝ちを納めたのだ。これをまぐれと思った女尊男卑の思考の学園の生徒タッグは話にならないというものではなく、二人の圧倒的攻撃力に瞬殺された(正確にはほぼ数秒で勝負が決まった)。ここまでの試合では二人がただ単に力任せに試合を推し進めているのではなく、まるで互いの次の行動があらかじめ知っているかのように息の合ったコンビネーションも見せていた。ここまでの下馬評を覆す戦いを見せた二人はその戦いぶりからその時に来ていた企業や国のエージェントは二人の確保に動いたそうだが、彼らのバックにはすでにISの生みの親である篠ノ之博士夫妻がいたということもあり、うかつに手を出すことが出来なった。

 この時の大樹とマドカ以外にも1年生タッグがトーナメントで善戦していた。箒と簪はそのバトルスタイルから箒が近距離での乱戦に持ち込み、簪が完成した打鉄弐式の火力をいかんなく発揮することで非常に良い試合を行っていた。

 一夏とシャルロットのコンビはまあ、原作の世界とそう大差はないのでここでは取り上げない。

 ラウラと陸のコンビは元々、ドイツ軍のIS部隊にいるラウラが圧倒的な実力を発揮していた。それを陸が支給された訓練機のラファール・リヴァイブの豊富な装備群でサポートする形を取っていた。

 そして、トーナメント3回戦。最初の試合は大樹とマドカのタッグ、ラウラと陸のタッグの試合になった。

 

 

 

 

side 大樹

 ここまでの試合、やり過ぎ感が否めない程に実力をいかんなく発揮していたな、マドカが。一回戦目のイージス相手には、いや手加減する必要はなかったのは分かる。俺もあの二人の実力は分かっていたからな、多少本気になるくらいは良い。ただ、2回戦目、あれははた目からすればオーバーキルに見えても仕方ない。明らかに俺達よりも弱い相手にマドカさん、本気を出していたんだもの。まあ、俺もそれに合わせて戦っていたもんだから何も言えんが。

 

 「ねえ、前に戦った時に私が言ったこと、覚えている?」(マドカ)

 「ああ、あの勝った方の言うことを負けた方が聞くってやつ?」(大樹)

 「そう。」(マドカ)

 

 そんな中でマドカがこの前に言ったことについて話しかけてきた。

 

 「あれは千冬姉ちゃんにばれたから無効試合じゃないの?」(大樹)

 「でも、シールドエネルギーの残量は大樹の方が少なかったでしょ。」(マドカ)

 「そうだけど、、、。」(大樹)

 「でも、私はまたしても良いよ、大樹が勝つまでやりたいなら。」(マドカ)

 「ISの戦闘で勝てる気がしないから良いよ。」(大樹)

 「良いの?」(マドカ)

 

 本当にこの子、初めて出会った時から変わったよ。あの時はそんな年相応の楽しそうな優しい笑顔なんてしなかったから。いや、こういう顔を見るとさ、やっぱりマドカのことが好きだなと実感できるよ。ああ、そういう俺もちょろい奴だな(遠い目)。そういう笑顔にやられてやる気になる辺りが特に。

 

 「じゃあ、今度の臨海合宿の時に着る水着を買いに行くから、付き合って。」(マドカ)

 「良いの?それで?」(大樹)

 「じゃあ、他に行きたい場所があるんだけど。」(マドカ)

 「マジ。」(大樹)

 「それは、次の相手に勝ってからね。」(マドカ)

 

 ああ、マドカに主導権を握られている~~~~。理想は自分がリードする方だったのに。いや、俺だといざって時にしくじるからリードするよりもされる方が頭に思い浮かぶ。あれ?今、そうなってね?まあ、頭を切り替えて次のラウラ、桐ケ谷陸との試合に集中しよう。

 俺とマドカはそれぞれのISを起動、アリーナへとでるカタパルトへと乗る。

 

 「行こうか。」(大樹)

 「うん。」(マドカ)

 

 カタパルトが俺とマドカを押し出す。その勢いのままに俺達はアリーナの青空の下へと出た。ラウラと桐ケ谷陸のタッグは既にその場にいた。

 

 「随分と遅かったな。」(ラウラ)

 「色々と話していたからね。」(マドカ)

 「あの教官の妹が男にうつつを抜かすのか?」(ラウラ)

 「うつつを抜かすほどに良い人だから。」(マドカ)

 「そう言われているぜ、彼氏?」(陸)

 「それを今の段階で肯定したら面倒だからノーコメントで。」(大樹)

 

 俺たちはお互いの武器をコール、試合開始のカウントを待つ。

 

 「試合開始。」(真耶)

 

 山田先生の掛け声が出された瞬間に動き出した。俺とマドカはそれぞれが手に持った武器を振り下ろした。ラウラは右手をかざしてマドカの動きを封じようとする。俺はそれを見据えて竜牙をラウラ目掛けて投げる。それに反応したのは桐ケ谷陸だった。桐ケ谷は俺の竜牙をリヴァイブの楯で防ぐとアサルトライフルを撃っていく。俺は瞬時に竜甲をコール、弾丸をふさいでいく。マドカはラウラがAICで攻撃を止めることを見据えて、フェンリル・ブロウの攻撃をフェイクにランサービットを展開、俺はマドカの動きを見て竜甲のエネルギーシールドを展開、そのまま桐ケ谷に楯を構えて突っ込む。

 

 「おいおいおいおい!」(陸)

 「何をしている!」(ラウラ)

 

 そうだよな、そのまま接近戦で切り込んでくると思っただろ?ラウラは残念ながらあまりタッグでの戦いを得意としていないからな。そのまま、役割分担を壊してやれば怖くないから、こんな戦法を取れたんだ。

 俺は桐ケ谷を押し込み、ラウラと密着させる。そうなった瞬間にマドカがランサービットからレーザーを放った。俺はエネルギーシールドを展開したためにダメージは最小限にとどめることが出来た。だが、それでも2割程持っていかれたが。一方のラウラと桐ケ谷は流石にかなりのダメージを受けたみたいだ。俺が最小気に留めて2割程なら最低でも3割くらいは削ったはず。マドカの攻撃が止んだ瞬間に俺はコールしていた2式大型銃「竜眼」を零距離で何度も撃ち放つ。ラウラは何とかAICで止めているが桐ケ谷はシールドの隙間から降ってくる散弾に被弾していく。

 

 「私もいるよ!」(マドカ)

 

 ラウラの気が俺に向いた瞬間にマドカがフェンリル・ブロウを振るう。こんな切羽詰まった状況下でマドカまでに注意を向けていることは難しいはず。俺の予想通りにラウラはマドカの攻撃をまともに受けた。マドカの攻撃を受けたラウラはそのまま後方へ激しく飛んで行った。それをマドカは追撃しようと距離を詰める。

 

 「おいおい、良いのか?彼女を俺のタッグと1対1でやらせて?」(陸)

 「まあな。」(大樹)

 

 俺の攻撃を受けながら桐ケ谷が言ってくる。まあ、普通は陸を倒してからラウラを集中して倒すという戦法を取る。それ以外なら高火力に任せて二人まとめて倒す方が無難だったりする。それをラウラが考えないわけではないというのは俺もマドカも分かっている。ならば、どうするか?厄介なAIC、高い戦闘力を考慮すればラウラはかなりの難敵だ。でも、それ以上にマドカは強い。それこそ、前世で一夏や箒、セシリア、鈴、シャル、ラウラを相手取りながら圧倒していたほどに。

 

 「強いからな、マドカは。」(大樹)

 「ラウラ以上か?」(陸)

 「見れば分かる。」(大樹)

 

 俺は竜眼を竜鰐に変える。桐ケ谷のISもダメージがかなり蓄積しており、ガードに使っていた楯が使い物にならなくなっていた。リヴァイブの装備から近接用のナイフと新たなアサルトライフルをコールした。

 

 「いや~、面白くなった。」(陸)

 

 桐ケ谷は笑みを浮かべる。俺はそれを意に介することなく、瞬時加速で竜鰐を振りかぶりつつ桐ケ谷へと飛翔する。

 

side マドカ

 「はああああ!」(マドカ)

 「くっ、調子に、乗るな!」(ラウラ)

 

 私はラウラと1対1で戦っている。確かにこの子は強い。ドイツの遺伝子強化素体、前世の私やお姉ちゃんが生み出されたあの事とつながりがあるから当然だと言える(今はどうかはよくは分からないけど)。軍人でお姉ちゃんのいわば一番弟子と言える彼女は一介の学生なんか全く抵抗できない。でも、

 

 「あなたに、負けていられない!」(ラウラ)

 「くっ!何を!」(ラウラ)

 

 ここで負けていたら、彼を、大樹を、だいちゃんを守れない。だいちゃんが守られるほど弱くないのはよく分かっている。あんな、怪物たちを一人で倒せる人が弱くはない、でも、肉体は耐えれても、心は、、、。

 

 「もう、守られてばかりじゃ、居られないの!だから、私は強くなる!」(マドカ)

 「何が強くなるだ、、、、、、今まで平穏に生きていた奴が、何をほざく!」(ラウラ)

 

 確かに私は平穏な日々を過ごしてきたよ、彼が居ない時間はね。今でも平穏な時間は生きてきたけど、そんなの辛かった。彼の帰りを待たなきゃいけなかったここまでの時間、彼が帰ってくるような気がして二度と帰らないことを痛い程知ら締められたあの時間、、、ねえ、ラウラ、、、。あなたは知っているの?

 

 「大好きな人が自分の手の届かないところで苦しんで死ぬのを見ていなきゃいけない、その辛さを知っているの?その大好きな人がもう二度と自分の元へ帰ってこない、そのことを毎日毎日自覚しなきゃいけない苦しみを知っているの?」(マドカ)

 「何?」(ラウラ)

 「自分の身が引き裂かれるなんて、甘い表現で言い表せないそんな思いをしたことはあるの?」(マドカ)

 「そんなの、何の意味もない!」(ラウラ)

 「そう、、、なら、私はあなたに勝たなきゃいけない。」(マドカ)

 

 こう見ると、ラウラは前世の大樹と出会うまでの私に似ている。きっと、大樹に会っていなかったら、私も今のラウラと同じ言葉を言ったと思う。でも、私は大樹と出会った。あの日、自分でもよく分からない気まぐれから本気で彼に恋をして、愛した。私の世界に光をくれた大樹。大樹のことをどんなことからも守りたい。だから、私は、、、。

  

 「これからも強くならなきゃいけない。今ここであなたに負けている時間はない。」(マドカ)

 

 

 

 

 

 

 

side 貴利矢

 さ~て、陸が言っていたもんが幻夢コーポレーションから来た。ただ、どうしてこんなのを頼んだ?どうも、あいつに考えがあるのは分かるが、、、。

 

 「変なところが自分に似ちまったな。」(貴利矢)

 

 にしても、ドイツの代表候補生がバグスターに感染している疑いがあるとはな。自分が診断できたわけではないし、唯一の根拠は陸の言ったことだけ。だが、あいつは過去にゲーム病を発症してからか、どうもそういうことに関する直感が異常に冴えている。これまでゲーム病かどうかという診断に関してはあいつの直感のおかげで診断がついたものも少なくはない。しかも、あいつの直感が当たった時は大抵大きなオペが必要なことが大半だ。出来ればそうならないように願っていないわけではないが、、、。

 

 「九条先生。」(千冬)

 「ああ、織斑先生。」(貴利矢)

 

 考え事をしていたらブリュンヒルデに声を掛けられた。

 

 「以前にお話しいただいた件ですが。」(千冬)

 「あなたの教え子の一人、ラウラ・ボーデヴィッヒの件ですね。」(貴利矢)

 「今現在は桐ケ谷とタッグを組み、私の妹と義理の弟のタッグと試合をしていますよ。」(千冬)

 「義理の弟って、まだそんな関係ではないでしょう?」(貴利矢)

 「私も父も母も、もうそのつもりですがね。」(千冬)

 

 第1回、第2回モンド・グロッソで2連覇するような女傑と思っていたが話してみるとなかなか茶目っ気のあるの女性だ。こうやって話すと弟たちのことをよく思っているのがよく分かる。

 

 「ラウラがゲーム病というのは本当なのか。」(千冬)

 

 なる程な、途端に空気が変わったよ。世界の頂点に立ったのは冗談じゃないってか。

 

 「確証がない。診断を下したわけじゃないし、唯一の確証が陸が見た彼女の様子だけだ。医者である自分にはまだ正確なことは言えない。」(貴利矢)

 「桐ケ谷の間違いということは無いのか?」(千冬)

 「だといいが、あいつのゲーム病に関する観察眼はバカには出来ない。あいつがゲーム病だと言ったなら十中八九そうだと言える程にな。」(貴利矢)

 「なら、万夏と大樹は大丈夫なのか?」(千冬)

 「おたくの家族に何か起きないように自分がいるんだ。」(貴利矢)

 

 とは言え、試合中に何か起きればことは一刻を争うことになる。オペが出来るのは自分と陸だけ。永夢達の助けは借りられない。状況はあまりよろしくないが乗りに乗っていくしかない。

 

side ラウラ

 なぜだ?なぜ、こいつは強いんだ?教官の妹というだけじゃない。あの男なのか?覇気もないようなあんな男がそんなに大切なのか?ただの他人にどうして?

 シュヴァルツ・レーゲンのシールドエネルギーも気づけば残り3割ほどになってしまっている。素人とは思えない、歴戦のIS乗りような戦いを見せるこいつに私は終始圧倒されていた。私はまた、堕ちてしまうのか?あのみじめな思いをまたするのか?嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 

 (なら、手を貸しましょう。)

 (誰だ!)(ラウラ)

 (あなたの味方よ、あなたはただ私に全てを任せばいいの。)

 (それで良いのか?)(ラウラ)

 (ええ、あの時の様に、あなたが望むとおりに)

 

 私の頭の中に響いた声。私のその声の誘いに抗うことなく、すべてをゆだねた。

 

side 三人称

 マドカが大きくフェンリル・ブロウを振るった。その一撃は容易くラウラのISのシールドエネルギーを消し飛ばすほどの威力があった。だが、それがラウラに届くことは無かった。

 

 「それって。」(マドカ)

 

 マドカのフェンリル・ブロウを防いでいたのは大樹が1週間前に見たあの漆黒の雪片だった。ラウラの体からさらにノイズが走っていく。マドカはそれが何なのかは理解できなかったがそれがあまりにも危険であるということだけは瞬時に理解した。

 

 「あれは。」(大樹)

 「やっと、出てきたな。」(陸)

 

 離れていた大樹と陸も異変には気付いた。そして、二人の中で瞬時に行動に出たのは大樹だった。

 ラウラは雪片を振り上げて、マドカに振り下ろそうとしていた。その姿はまるで千冬がその場にいるかのような錯覚を覚えさせた。さしものマドカもほんの一瞬だが怯んでしまった。それはラウラにとっては絶好の好機にうつったらしく、ラウラは片手で雪片を難無く振り下ろした。

 マドカはラウラの攻撃をフェンリル・ブロウで受け止めるがラウラの一撃は日本刀型の雪片では考えられないほど重く、両腕の感覚が一瞬麻痺するほどだった。最初の数撃は防ぐことが出来たが幾度目かの一撃でマドカの手からフェンリル・ブロウがはじけ飛んだ。マドカを守るものが無くった今、ラウラがまたも雪片を振り上げた。その凶刃はマドカの命を容易く刈り取ろうとした、だが、

 

 「大丈夫か!」(大樹)

 

 寸でのところで竜甲を両手に持った大樹がラウラの攻撃を受け止めていた。だが、竜甲も持ちこたえることが出来ずにそのまま壊れてしまう。

 大樹はマドカを抱え、ラウラから距離を取ろうとする。だが、ラウラが大樹たちに刃が届くうちにまたも振り上げ、勢いよく下ろそうとする。だが、陸がそれを許さず、アサルトライフルでラウラをけん制した。それによって、無事に距離を取ることが出来た大樹。

 大樹とマドカはアリーナの地面へと降り立つ。

 

 「やっと表に出てきたか。」(陸)

 

 陸は普段のおちゃらけた雰囲気ではなく、精悍な表情で言った。

 

 「どういった感染経路なのかは分からねえけど、その体はお前が勝手に使っていいものじゃない。」(陸)

 「あら、ちゃんとこの体の持ち主から許可はもらったわよ?」(ラウラ?)

 「何が許可をもらった、だ。本当のことを何も言わずにだますような手口だろう。」(陸)

 「人聞きが悪いわね。彼女は自分から私にこの体を渡したのよ。」(ラウラ?)

 「切羽詰まった状況下だ。まともに考える時間なんてなかっただろ。それにお前の本当の目的はラウラの肉体を使って自分の肉体を手に入れることだろ。魂胆は目に見えてんだよ、バグスター。」(陸)

 「それではいそうですか、って渡す訳ないじゃない。」(ラウラ?)

 

 シュヴァルツ・レーゲンがまるで粘土の様に形を変えていく。そして、ラウラの体を包み込んでいく。ラウラの体が覆い隠されるとノイズが走り、さらに形を変えていく。その姿は黒く染まっている暮桜のような鎧を身にまとった千冬になっていた。

 

 「さて、まだ完全じゃないけど、この場にいるあなたたちを屠るには十分でしょう?」(偽千冬)

 「そうはさせるかよ。」(陸)

 「何を粋がっているのかは分からないけど、ブリュンヒルデの戦いを学習しているこの私に勝てるとでも?こうなった以上、彼女は私の肉体となって、あなたたちも死ぬ。あなたたちにとってのバッドエンドをかえられるとでも?」(偽千冬)

 

 偽千冬はそうやって歪んだ笑みを浮かべる。だが、それに臆さずに颯斗は言う。

 

 「変えるさ。そのバッドエンド、俺が変えてやるよ。」(陸)

 

 そういうと陸はISの拡張領域に収納していたゲーマドライバーとガシャットを取り出す。

 

 「ゲームスキルレベル1、変身!」

 『カミカゼアクション!』

 ≪ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!What`s a name!I`m a仮面ライダー!≫

 

 陸は4頭身のずんぐり真っ白ボディが特徴の仮面ライダーエグゼリオンアクションゲーマーレベル1に変身した。

 

 「超絶怒涛の達人プレー、見せてやるぜ!」(エグゼリオン)

 

 同じころ、貴利矢と千冬がアリーナへと急いでいた。

 

 「まさか、ここに来て活性化するとは!」(貴利矢)

 「マドカたちは無事なのか!?」(千冬)

 「映像を見ると陸が何とかしてくれているらしい。」(貴利矢)

 (急がねえとヤバい。あのバグスター、新型じゃねえか。しかも、あの言動からするとブリュンヒルデの戦いをコピーしているはず。このガシャットをあいつに渡さねえと。)(貴利矢)

 

 貴利矢と千冬はアリーナの内部へとたどり着く。そこではエグゼリオンと偽千冬がアリーナ内を縦横無尽に戦いを繰り広げていた。しかし、偽千冬はその高い機動性に加え、零落白夜を制限なしで使用できるらしく、バグスター分離のためにレベル1になっているエグゼリオンも厳しい戦いを強いられていた。

 

 「千冬姉ちゃん!」(大樹)

 

 安全なところにいた大樹とマドカが千冬たちの元へと駆け寄る。

 

 「無事か、大樹!万夏!」(千冬)

 「大樹が助けに入ってくれて、そして、今戦っている桐ケ谷君も。」(マドカ)

 

 大樹たちは目の前のエグゼリオンと偽千冬の戦いを見る。懸命に戦っているもののエグゼリオンのライフは既に半分を切っていた。ライフが0になるということは変身者が消滅するということ、この場で唯一その事実を身をもって体験している貴利矢がガシャットを起動させようとする。だが、

 

 「貴利矢先生!見ててくれ!」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンが貴利矢に強く言った。その声に自分が死んでしまうかもしれないことへの恐怖は無かった。そこにあったのは恩人に自分の勇姿を見てもらいたいという思いだけだった。それを察した貴利矢はひとまずガシャットを起動しようとしていた腕を下ろした。

 

 「陸、俺がすべての責任を取る。だから、ノリノリで行け!」(貴利矢)

 

 激励、本来ならば15歳の少年にさせるべきではない。だが、陸にとっての一番の応援は恩人である貴利矢からのこの言葉だった。それを聞いたエグゼリオンはその動きに明らかに鋭さを増した。それによって、明らかに偽千冬へ攻撃がヒットしだした。

 

 「どうして!?明らかに私の方が強いはずなのに!」(偽千冬)

 「おうら!」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンの動きに切れがで始めたことに偽千冬が動揺しだした。確かに、先程まで明らかに劣勢だったエグゼリオンだったがそれが貴利矢の激励で一変したのだ。それほどまでに人間の持つ限界を容易く超えることが出来るのだ。そして、攻撃をしていく中でエグゼリオンが偽千冬の中にいるラウラに呼び掛ける

 

 「おい!ラウラ!聞こえてんだったら聞け!良いか、本当の強さってのは自分の中にある心が大切なんだ!ただの力だけじゃダメなんだ!そいつは君を利用するだけ利用したらゴミの様に捨てるぞ!良いか、織斑先生の様になりたいなら、誰かの手を掴め!他人が怖いなら、俺が君の助けになる!だから、そんな奴に頼るな!俺の手を掴め!」(エグゼリオン)

 

 その呼びかけが届いたのかすぐさま偽千冬に異変が起きた。

 

 「う、嘘でしょ!完全に意識は眠ったはず、なのに、どうして!」(偽千冬)

 

 偽千冬の体が動きが止めて、その体から助けを求めるように手を伸ばすラウラが出てきた。それを見て、エグゼリオンはすかさずラウラの手を掴み、偽千冬に渾身の一撃を与えた。

 とうとう、ダメージが蓄積して、偽千冬からラウラが出てきた。

 

 「わ、わた、し、は、、、。」(ラウラ)

 「今は休んでろ。」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンの声を聴いて、ラウラは気を失った。

 

 「よくも、よくも、よくも!あんたは生きたまま、細切れに切り殺してやる!」(偽千冬)

 「やっと、本気か。それじゃ、行くぜ!ゲームスキルレベル2!」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンはゲーマドライバーのレバーを開ける。

 

 ≪ガッチャーン!レベルアップ!烈風、突風、疾風怒涛!カミカゼアクション!≫

 

 レベル1のボディがはじけ飛び、濃い青色のカラーリングが特徴のレベル2へとエグゼリオンはレベルアップした。だが、

 

 「貴利矢先生!例の奴、パス!」(エグゼリオン)

 「うし!陸!」(貴利矢)

 

 貴利矢は幻夢コーポレーションから送られたガシャットをエグゼリオンへと投げる。投げ渡されたガシャットをエグゼリオンは見事にキャッチする。

 

 「さて、ニコさんに頼んで作さんに作ってもらった新作のお披露目だ!」(エグゼリオン)

 『キルキルサムライ!』

 「おっし!ゲームスキルレベル3、大変身!」(エグゼリオン)

 ≪ガッチャーン!レベルアップ!烈風、突風、疾風怒濤!カミカゼアクション!アガッチャ!KILL!KILL!キルキルサムライ!≫

 

 エグゼリオンは若葉色のガシャット、キルキルサムライを使って、仮面ライダーエグゼリオンサムライアクションゲーマーレベル3に変身した。濃い青色のボディスーツが特徴のエグゼリオンに若葉色のサムライを思わせるアーマーが付加されたその姿はさしずめ剣豪を思わせる。

 

 ≪ガシャコンスピアー≫

 

 エグゼリオンはガシャコンスピアーを召喚、さらにはキメワザホルダーを操作してゲームエリアへと戦いの場所を変える。

 

 「さあ、こうなったら一気にゲームクリアまで行くぜ!」(エグゼリオン)

 「死になさい!人間風情!」(偽千冬)

 

 偽千冬はエグゼリオンへと切りかかる。零落白夜を発動したその刃はエグゼリオンを捉え、そのライフを削るはずだった。

 

 「え?」(偽千冬)

 

 偽千冬が気付いた時には攻撃を受けていないはずなのに幾度も攻撃を受けた自分が地面に膝をついていたという自身が想像しえなかった現実だった。

 

 「どうした?こっちはまだ本気で当てていないぜ。」(エグゼリオン)

 

 ガシャコンスピアーを肩に担ぎ、そういうエグゼリオン。

 

 「何が起きたのよ!あんたは私の攻撃を受けたはずなのに!?」(偽千冬)

 「ああ、知りたいか。俺が使ったキルキルサムライはガード動作一切なし、相手の攻撃は全ていなすか回避して、一撃必殺の剣で相手を倒すっていう超高難易度のアクションゲームだ。つまり、あんたの攻撃をぎりぎりで躱して、その後にあんたを攻撃したんだよ。」(エグゼリオン)

 「でも、それでも私が受けたダメージはそんな一度の攻撃で!」(偽千冬)

 「誰が一回の攻撃でって言ったよ?俺があんたにした攻撃回数は5回だ。それにキルキルサムライはカウンターが決まると攻撃に補正がかかって当てた回数につき倍のダメージがあんたに入るんだ。つまり、本来の俺の攻撃よりも10倍のダメージをあんたは喰らったんだ。」(エグゼリオン)

 

 エグゼリオンの言葉に偽千冬は言葉を失った。自身が想像していたよりも相手が遥かに強い、そのことを実感してしまったのだ。

 

 「さ~て、さっさと終わりにするぜ?」(エグゼリオン)

 

 そういうとエグゼリオンは近くにあった高速化のエナジーアイテムを使用、その速さをより高める。さらにキルキルサムライのガシャットをキメワザホルダーにセットする。

 

 ≪キメワザ!キルキルクリティカルフィニッシュ!≫

 

 エグゼリオンはガシャコンスピアーを構え、極端な前傾姿勢を取る。その姿は相手を一気に刺し貫く一点突破の構え。攻撃を防ぐことも避けることもしない、正しく超攻撃型の構えである。そして、エグゼリオンの全身にゲームエフェクトを模したエネルギーが迸る。

 

 「舐めるなあああああ!」(偽千冬)

 

 偽千冬も零落白夜を発動し、エグゼリオンに切りかかる。だが、それに合わせて動き出したエグゼリオンの方がはるかに早く、その槍の穂先は偽千冬に深々と突き刺さる。それだけでなくその速さからエグゼリオンは偽千冬の遥か後方へと進んでいた。

 

 「そんな、ブリュンヒルデの力を持つ私があああああああ!」(偽千冬)

 

 断末魔の叫びをあげて偽千冬は消滅した。

 

 ≪ゲームクリア!≫

 

 ゲームクリアの音声が鳴り響き、エグゼリオンはガシャコンスピアーを高く掲げた。

 

 

 

 

 

 時間は流れ、トーナメント終了。今回のトーナメントはラウラのゲーム病を除けば大きな事件が無かったために続行、大樹とマドカは順調に勝ち進み、3年生を相手に優勝をもぎ取るという大番狂わせを見事に果たした。そして、保健室では、、、。

 

 「う、う~ん、ここは?」(ラウラ)

 「目が覚めたか。」(千冬)

 「きょ、教官。」(ラウラ)

 「無理に体を起こすな。今は休んでいろ。」(千冬)

 「教官、私は一体?」(ラウラ)

 「バグスターウィルス感染症、ゲーム病にかかっていた。試合中にウィルスが活性化して、桐ケ谷がお前を助けた。」(千冬)

 「どうして、そんな、、、。」(千冬)

 「今、シュヴァルツ・レーゲンを束の研究所で詳しく分析している。現段階ではシュヴァルツ・レーゲンに秘密裏に搭載されていたVTシステム、ヴァルキリー・トレースシステムが原因だと束は言っていた。」(千冬)

 「VTシステム、確か過去のモンド・グロッソの入賞者のデータを再現するという、、、。」(ラウラ)

 「それもあって、束がかんかんでな。今は分析しながら向こうの上層部に怒鳴り散らしているだろう。」(千冬)

 「私はこれから、、、。」(ラウラ)

 「ここで多くのことを学べ。私に言えるのはそれだけだ。それと、ラウラ。」(千冬)

 「は、はい!」(ラウラ)

 「私にはなるな。ラウラはラウラにしかなれないからな。」(千冬)

 

 そう言って、千冬は保健室を去った。ラウラは千冬の言葉を心の中で反芻していた。そこを

 

 「おお、目、覚めたんだな。」(陸)

 「お前、、、。」(ラウラ)

 

 陸が入って来た。

 

 「調子は?」(陸)

 「まずまずだな。トーナメントの結果は?」(ラウラ)

 「柏葉大樹、織斑万夏のタッグの優勝だ。」(陸)

 「そうか。」(ラウラ)

 「悔しいのか?」(陸)

 「いや、そうじゃない、、、。私は勝てなかったのか、、、。」(ラウラ)

 「まあ、次がある。その時にリベンジすればいい。」(陸)

 

 そうやり取りをする二人。

 

 「助けてくれてありがとう。」(ラウラ)

 

 陸に礼を言うラウラ。それに陸は

 

 「大したことはしてない。」(陸)

 

 と言った。

 

 「なあ、私はまた強くなれるのだろうか?」(ラウラ)

 「なれるさ。俺がいるから。」(陸)

 

 その真剣なまなざしをした陸にラウラの胸が高鳴った。それが恋だとラウラが知るのはもう少し先である。

 




 夏の臨海合宿。そこに現れたのは亡国機業のスコール・ミューゼルとオータム、大樹の分離した別人格である黒崎修羅が現れる。その傍らでついに箒の専用機が完成し、日の目を見ることになる。
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