side 三人称
炎竜は無双セイバーナギナタモードを使って、黒龍の二刀流の剣技を防ぎながら返す刃で反撃していた。
黒龍は龍黒刀、無双セイバーの荒々しい二刀流で防御することなく、必要最小限の動きだけで炎竜の反撃をかわし、激しい剣戟で炎竜を追い詰めていく。
激しい刃と刃がぶつかる音が響いていく。双方は一歩も引くことなく、戦い続けている。刃と刃がぶつかる際に出る火花によって周囲に煙が漂っている。
「こうまで、拮抗するとはな。このアームズ、お前の使っているものと性能は変わらないようだな。」(黒龍)
「昔の自分の手癖なんてすぐに見抜ける。その二刀流の戦い方、、、。」(炎竜)
「まあ、学園から離れた時の戦い方だからな。相手を殺すのに自分の身を守る必要がどこにあるんだ?」(黒龍)
「殺されないようにするのも重要だろ。」(炎竜)
「フッ、殺す前に殺せばいい。」(黒龍)
もとは同一人物、だが考え方がこうまで違うとまるで別人である。炎竜は言葉を交わす中でこうまで意見が交わらないことに驚くことは無かった。事実、一昔前の自分がそう考えていただけにそこまで驚くこともなかった。逆に決定的にそうであるのかと納得もしていた。その時、
「派手に戦闘音を響かせているな。少しは兄ちゃんも混ぜろよ。」
炎竜と黒龍の前に行方不明だった兄、勇吾が現れ、その両隣にはイリーナ、ナイトが控えていた。
「兄貴、、、。」(炎竜)
「てめえ、、、。」(黒龍)
炎竜と黒龍は勇吾の方へ向き、武器を構える。
「おいおい、久しぶりに会ったのにそれは無いだろう?」(勇吾)
炎竜たちの様子にさも傷ついたという表情をする勇吾。それに対して
「演技しなくていい、少なくともあんたに対する情は無いからな。ここはお互いに本音で話し合おう、なあ兄貴。」(炎竜)
「今すぐにでもぶっ殺したいが、、、聞きたいことがあるからな。今は我慢してやる。」(黒龍)
炎竜と黒龍は勇吾の振る舞いにほだされることなく、片方は冷静に、片方は殺意を漲らせて対峙する。それを見た勇吾は張り付けていた笑みを取り払い、まるで害虫を見るような汚らわしいものを見る眼付きで炎竜と黒龍を見る。
「この天才の俺がわざわざ歩み寄ってやっているのになんだその態度は。」(勇吾)
「実の親を殺すようなクソ兄貴を寛大な態度で受け入れるはずが無いだろ。」(炎竜)
「はっ!言えているな。」(黒龍)
「あいつらは天才の俺を受け入れなかった。あろうことか、俺のやろうとしていることに口出しまでしやがった、それを前の世界でもこの世界でも!殺して、当然だ、あんなゴミ屑どもは。」(勇吾)
「やっぱり、あんたは俺の知っている柏葉勇吾だったんだな。」(炎竜)
「その見覚えのある姿は忘れたくても忘れらない。お前も前の記憶があったのか、、、。特別な存在は俺一人にしか許されないのに。」(勇吾)
言葉の節々に現れる自身への絶対的な自負と他者を見下すその性根。おおよそ、同じ親から生まれたとは思えない言動から炎竜は胸の中に強い不快感が現れていることに気付いた。
「キング、もうよろしいでしょう。この不届き者はこの場で殺します。」(イリーナ)
そう言ったイリーナはISを展開して炎竜たちに銃口を向ける。
「その前にそこの黒い奴と戦わせろ。そいつなら満足できそうだ。」(ナイト)
ナイトはそう言うとオーバーロードの姿に変貌する。炎竜も黒龍も臨戦態勢を整える。そこを林の奥から勇吾たち目掛けて赤い光が走った。光は勇吾たちの前の地面に触れると爆炎を上げた。そして、
「私の彼に何喧嘩を吹っ掛けてんのよ!」(マドカ)
林の奥から黒騎士を部分展開し、ランサービットを勇吾たちに向けているマドカが現れた。
「マドカ!」(炎竜)
突然現れたマドカに驚く炎竜。その炎竜の隣に何も言わず、というよりもそれが当然かと言うようにマドカが並び立った。
「あなたは、、、ブリュンヒルデの、、、。」(イリーナ)
「妹で、この人の恋人!」(マドカ)
イリーナの言葉に若干食い気味に言い放つマドカ。そのマドカは炎竜と黒龍の前に立つ勇吾たちに対して明らかな敵意を現していた。
「今更、何!ずっとどこかでほっつき歩いていたのに、今更帰って来たってこの人はあんたの家族じゃない!」(マドカ)
(へ~、そっちの俺は随分と思われているんだな。そんな女一人出来たってことは兄貴に関してはそうでもないのか。)(黒龍)
(そのセリフ、マドカが言うべきセリフじゃないだろ、、、。しかも、小父さんと小母さんにまだ言っていない恋人発言を目の前のこいつらにする必要なんかないし、、、。)(炎竜)
「そんな奴を家族だなんて思ったことは無い。そもそも、俺が殺したあいつらだって家族じゃないからな。」(勇吾)
「、、、、、、、あんたみたいなサイテー男、ぶっ殺す!」(# ゚Д゚)(マドカ)
「マドカ、もう良い。」(炎竜)
徐々にヒートアップしていくマドカを制する炎竜。勇吾の振る舞い、言動それらすべてに反応しているマドカのその姿は自分を思ってのことであることを理解している炎竜はそれ自体に気恥しくなりながらも喜びを感じていた。
「随分とキングのことを侮辱したな。」(イリーナ)
なお、マドカの言動に怒りの感情を漲らせるイリーナ。
「何?私は「もう、十分だろ。何が目的なんだ?わざわざ俺たちの様子を見に来たなんて柄じゃないだろ。」(大樹)、、、もう。」(マドカ)
マドカの言葉を遮って勇吾を問い質す炎竜。さりげなくだが勇吾たちの攻撃がマドカに来ないよう、マドカの前に出る。
「お前のような奴にキングが話すとでも。」(イリーナ)
炎竜の言葉にイリーナが返す。
「そっちに聞いていない。俺は兄貴に聞いているんだ。」(炎竜)
「貴様!」(イリーナ)
「いい、クイーン。そいつに構うな。どうせ、この後に起こることは止めることは出来ないからな。」(勇吾)
「この後に起こることってなんだ。」(炎竜)
「それは自分の目で見て、確かめろ。」(勇吾)
勇吾はそう言って、右手をかざす。その途端に暴風が吹き荒れ、砂埃を舞い上げる。
「逃がすか!」(黒龍)
勇吾たちの姿が砂埃で遮られる寸前に黒龍が飛び掛かるが砂埃が勇吾たちの姿をかき消してしまう。それにとどまることなく黒龍は両手に握られた武器を振るう。しかし、その刃はただむなしく巻き上げられた砂埃をかき乱すだけだった。黒龍はその場で何度も何度も武器を振るうがその刃が勇吾たちに当たることは無かった。砂埃が落ち着くとそこに勇吾たちの姿は無かった。
「クソ!クソ!クソおおお!」(黒龍)
一太刀も浴びせることが出来なかった黒龍はそのいら立ちを周囲にぶつけていく。刃が振るわれるたびに木が倒れ、粉々になっていく。その姿に炎竜は少し前、鎧武によって分けられる前の自分の姿を重ねていた。
(ああやって、俺は自分のことを責めていたんだな。)(炎竜)
とにかく、黒龍は周りのものを手あたり次第に攻撃していた。だが、それも急に辞めた。
「あいつが逃げたんならここにいる必要はない。じゃあな。」(黒龍)
そう言い残して黒龍はその場を立ち去った。黒龍が姿を消して、炎竜も変身を解除する。それを見たマドカもISを待機状態に戻す。
「ねえ、この後に起きることって?」(マドカ)
「前の世界は明日、軍用IS、銀の福音が暴走したんだ。」(大樹)
「まさか、ここでも?」(マドカ)
「いや、兄貴が福音に何かすることは無いはず。する必要が無いからな。」(大樹)
「ほかに何があるの?それ以外で何を起こすつもりなの、あの人たちは?」(マドカ)
「やっていることはインベスに関すること。そのことできっと、、、。」(大樹)
「ねえ、モンド・グロッソでやったことを、大樹が止めたことをここでするつもりなんじゃ。」(マドカ)
「ここでやるよりももっと人の多いところでやるはずだ。何をするつもりなのか、予想がつかない。」(大樹)
「ねえ、それじゃ全く分からないってことでしょ?」(マドカ)
「、、、、、、、、、、、。そうです。」(大樹)
話したところで出たのは予測がつないということだけが浮き彫りになっただけ。大樹自身は勇吾が同じことをやるにしても全く同じことはしないということを確信している。だが、そのやろうとしていることの予想が着かず、マドカに話した以上のことは分からなかった。
「なら、もう出たとこ勝負に出るってことでしょ?分からない以上は一発勝負で。」(マドカ)
「結局はそうだな。ん?前の世界と変わんないな。」(大樹)
「そんな戦いしていたら、あんなに傷だらけで薬が無いと生活できない体になって当然。」(マドカ)
「、、、おっしゃる通りです。」(大樹)
「そしたら、気を付けてね。」(マドカ)
そう言うとマドカは大樹の正面に立ちキスをする。唇に触れるだけの軽いものだったが自身の思いを大樹に伝えるには十分である。
「それに、水着デートをほっぽった理由を聞かないとね。」(マドカ)
「それは、、、追々、、、。」(大樹)
「今、話すか、、、それとも、、、。」(マドカ)
この後、二人がクラスメイト達の元へ戻ったのは夕方近くになってからであった。その時に二人の様子を見た相部屋の友人は
「なんだか、ちょっと疲れていたような、、、。」(颯斗)
「なんだか、妙に肌艶が良かったような、、、。」(簪)
と心の中で思ったそうな。
side 大樹
昨日のもう一人の俺、そして兄貴との再会、そして起こるかもしれない最悪の事態。臨海合宿は平穏に終わってくれない雰囲気を醸し出しながら2日目になった。
「今年から日本先端宇宙開発技術研究所の篠ノ之束所長、岩城正則副所長が本合宿に特別講師として参加してくださることになりました。二人ともお忙しい中で本合宿最終日まで参加してくださります。これを機に皆さん、しっかりと勉強してください。それでは、篠ノ之博士、お願いします。」(真耶)
山田先生の紹介で束姉ちゃん、正則兄ちゃんが今日からこの合宿に参加するようだ。
「は?こんな、うざったいの相手に何を言うのさ。」(束)
束姉ちゃんの発言に全員の空気が凍り付いた。もう、絶対零度の笑みで山田先生を見ている。山田先生、泣きそう。
「悪ふざけをするな。」(千冬)
なんと、千冬姉ちゃんの鉄拳が束姉ちゃんのこめかみ辺りに炸裂した。2,3メートルは跳んだな。
「ひっどいなあ、ちーちゃん。堅苦しい挨拶は他に人にしてよ。束さん、堅苦しい話したら頭が働かなくなるのに。」(束)
「束、あれはちょっと。」(正則)
「え~、マサ君まで。」(束)
こめかみを抑えて話をする束姉ちゃん。
「いや~、ごめんね、まやまや。だって、私が堅い話したらこの子たちつまらないでしょ?」(束)
「そういう問題ではなく~。」(真耶)
もう、先生方が砕けたやり取りをして皆( ゚д゚)ポカーンってなっているし。
「ハロハロ~、束さんだよ~。今回の合宿でISに関する講義を行います~。みんな、気軽に束さんて呼んでね~。」(束)
「副所長、岩城正則です。先程のやり取り通り、所長はこんな感じですが君たち若い世代との交流が出来るという機会ですごく楽しみにしていました。私は主に整備関係を担当します。短い間ですがよろしくお願いします。」(正則)
それらにやり取りの落ちを付けることなく今回の主役大人二人は挨拶を終える。
「それでは、講義!っていうのはみんな詰まんないでしょ?」(束)
「「「「「「「「「「「?」」」」」」」」」」」」」(学園生徒達)
「もう、反応が悪いな~。いつもの学校の授業や訓練通りにやるなんて面白くないでしょ?今回、束さんたちは皆に一つ重大発表をします!各国では第3世代の開発が進められている中、私達日本先端宇宙開発技術研究所は宇宙開発を前提に開発中の技術を、、、、、もう、堅苦しいのは終わり!最新鋭機、紅椿お披露目!」(束)
束姉ちゃんの言葉で後ろのコンテナが開かれ、鮮やかな赤色のIS、紅椿がその姿を現した。
「この、紅椿はうちの研究所で開発中の展開装甲を武装、アーマーに取り入れた最新鋭機だ。展開装甲というのは早い話が可変機構のことだ。この展開装甲は倉持技研で開発された白式の武装に搭載されている。」(正則)
「ちなみにこの紅椿は第4世代機です!」(束)
「理論上の万能機ってなるが実際の処はどこまでの利便性があるのかが分からなくてね。うちの所長は第4世代機って言うが実際には第3世代機の最新鋭機になる。今回は先生方から許可をもらい、講義や実習に入る前にこの紅椿の披露、そして今年入学した代表候補生の中から我こそはという人物とのエキシビジョンマッチをさせていただくことになった。」(正則)
つまるところはデモンストレーションだ。小さい頃からこの人たちを知っている俺、マドカ、一夏、箒、鈴はなんとなく「ああ、良い恰好したいんだなあ。」と考えた。
「誰も立候補しないなら束さんが指名しちゃうよ~、というわけで大くん、カモ~ん。」(束)
とか考えていたら地雷を投げ込まれた!なんで、、、、専用機持ちの中で一番のロートル機なのに、、、。もう、どうしようもねえ。俺は呼ばれた以上はきびきびと動く。、、、、、どうせなら一夏の奴にやらせろよ。こういう時くらいは本家主人公に火の粉が降りかかればいいのに。
「それではそれでは!こちら、紅椿のパイロットは、わが企業の専属パイロットにして、日本国家代表候補生の篠ノ之箒です!」(箒)
呼ばれて、箒が前に出る。その時、零式のプライベートチャンネルから通信が入った。
「箒の専用機って、この時に束さんから与えれたものだったよね?」(マドカ)
「ああ。」(大樹)
「、、、本当に前の世界と同じことが起きないの?」(マドカ)
「束姉ちゃんがまともだし、そんなことをするのかなって遠回しに聞いたことはあるけど、めちゃくちゃ怒られたよ。そもそも、どのコアも束姉ちゃんが正則さんと一緒に開発したもの、それに細工するようなことをやる人じゃないよ。」(大樹)
「だから、銀の福音の暴走は無いって言ったんだ。」(マドカ)
と通信越しで話す俺とマドカ。
「でも、みんな。この専用機に関してはずるいとか、ひどいことばかり言っているけど。」(マドカ)
前に出た俺は聞こえなかったがどうやら箒の専用機に関しては文句を言っている面々が多いらしい。よく見ると一夏、マドカが一言言おうとしていた。すると、
「これに文句の多い生徒さんがどうやら多いみたいだ。現状、ISのコアは524機、その内の一つが与えられるのは確かに大きな意味を持つ。所長が妹の専用機を開発することに文句があるようだが、現状、コアの数が限られている以上は君たち全員にISが与えられることはあり得ない。
良いかい?この世界は平等ではない。それは紛れもない事実だ。だが、人のつながりというのは面白いものでそんな不公平な世界で大きな力にもなる。この学園での教師や先輩、同期、後輩、そしてこれから関わるであろう多くのIS関係者、多くの人とつながりを持つことは君たちにとって必ず力になる。
早い話を言おう、今文句を言った生徒たち、君たちはもっと高い意識を持つべきだ。そんな子供じみた感性でいるならば今回の合宿で得られるものなんて精々が針一本分の重さしかない。それ以外の君たちもISに関わるということがどういうことか、今一度この合宿で考えてもらいたい。」(正則)
正則さんが前に出て話した。これに文句を言っていた面々は流石に口をつぐんだ。開発者がこうも断言したのだ。
「グローバルフリーズ、インベス事変、ゼロデイ、君たちがまだ生まれていない、または幼い頃に起きた数々の大きな怪事件。ISは今や宇宙開発を担う翼だけではない。これらの怪事件に対する武力として世界各国が開発を進めている面が少なからずある。そのことを頭の片隅に置いて、私達の講義を受けてもらいたい。」(正則)
正則兄ちゃんの言葉は確実に重さのあるものだった。
「いよっっっっっっっし!箒ちゃん、良いかい!」(束)
「ええ、大丈夫です。」(箒)
正則兄ちゃんの話が終わると同時に束姉ちゃんの作業も終わった。俺は待機状態の零式を掛け、これから行うであろう模擬戦の準備をする。
(装備、確認良し。機体、確認良し。模擬戦を行うには十分だ。)(大樹)
試合、ISで出撃する前に行うルーティンを終え、箒を見る。その様子を見ると浮ついた様子はなく、入念にISを動かす感覚を確かめていた。
俺は零式を待機状態から展開する。箒の方はと言うと紅椿の兵装である空裂、雨月をすでに両手に持っており、俺の見据えている。俺は装備の中から4式突撃槍「竜角」をコールした。そもそも、俺のISって現行の第2世代の試作機で、正確な世代は第1.5世代になる。早い話が千冬姉ちゃんの暮桜と同じ時期に開発されたISである。こういう機体で最新鋭機に勝つには操縦者が余程の実力者でないと厳しい。、、、、、、、、なんで適正Sで最新鋭機というもはや最強という文字しか浮かばない幼馴染とやりあわなきゃいけないんだよ。勝てるわけないだろ、、、、、、、。そんな思考とは裏腹に模擬戦が始まる。
箒は俺に接近して空裂、雨月を振るう。そして、日本の刀からビームの斬撃が飛んでくる、、、って至近距離で切りかかられてそんなのを躱せるわけがないだろ(# ゚Д゚)。回避を行うことも防御も出来ずにもろに食らってしまった。うわあああ、一気にシールドエネルギーが半分まで減ったよ。流石にこのままやるとヤバい。俺は竜甲をコールして、それで身を守りつつ距離を取ろうとする。だが、追撃と言わんばかりに箒は距離を詰めて、、、ってまた振るう!!ビーム斬撃がまた出てきて、シールドをがりがり削っていくうううううううう!!
結果は惨敗。シールド以外は被害はなかったものの明らかに俺の負けだ。よくよく考えたら斬撃を飛ばせるってかなり反則だな。いくら、装甲が回復するからと言ってあんなに攻撃されて、削られていったらその装甲が回復する前に負けるわ。ただ、この模擬戦で箒はある程度自分の機体の特性を把握したみたいだ。そして、
「なんで!?なんで!?」(束)
「はっきり言って、振るたびにビームが出ては戦いにくいです。オミットするか、自分の意思で出せるようにしてください。それに、よく見るとエネルギーの消費が激しいです。自動サポートは良いですけど、正直手に余ります。」(箒)
滅茶苦茶、注文を付けていた。よくよく考えればあの機体、かなりのじゃじゃ馬だからこれまで打鉄で慣れていた箒には扱いにくいだろうな。一部機能を制限するのはまあよくある話だし、今回は性能を扱いやすくするためにリミッターを掛けるだろうな。箒と束の様子を見ると恐らくは能力に一部制限を掛けることで落ち着くだろう。ちなみに今の箒は前の世界の箒と似たような話し方をしているが元々俺が初めてであった時はこっちの話し方だった。話し方を変えていたのは一夏に意識にしてもらう為だろうけど。
side 三人称
アメリカ合衆国ハワイ州、そこにはイスラエルとの共同開発中の軍用IS、銀の福音が配備されている。大樹のいた前の世界では束のハッキングによって銀の福音は暴走し、合宿中だった一夏たちに襲い掛かった。この世界では束自身がそのようなことをすることなどありえないほどISに愛着を持っている。そのために銀の福音は前の世界の様に悲惨な運命をたどることは無いだろうと考えられた。だが、この世界ではアメリカにあるとある企業が開発していた別の軍用ISも配備されていた。そのISは従来のISとは違って四足歩行型の動物を模しており、その攻撃性能、高い防御能力からイモータルレイブン=不死のオオガラスと名付けられた。
大樹と箒が模擬戦を終えた直後、ハワイ本島のアメリカ軍基地では
「急げ、急げ!本土に連絡しろ!」
「基地の機能が30%にまでに低下!IS部隊も全滅です!」
「近隣住民の避難は!?」
「消防と警察で対応していますが、まだ完了していません!」
「残っている戦力は?」
「残っている戦力では開発中の銀の福音しか対抗できません!」
「ファイルスに連絡しろ!残っている戦力で彼女を、、、。」
怒号が飛び交う中で衝撃が襲った。
ちょうど、自宅へと戻る最中だったナターシャ・ファイルスは基地の襲撃を聞いて、来た道を戻っていた。
(お願い、みんな無事でいて。)(ナターシャ)
彼女が急ぐ中で基地のある方面では夜なのにまるで昼間のように明るかった。ナターシャが基地についた時にはそこには彼女がそれまでに働いていた職場はその面影を一変させていた。軍用機は軒並み鉄くずと化し、基地の施設は瓦礫となっていた。そこに至る所でこうこうと燃える炎が照らしていた。基地の周囲の住宅も被害を受けていて、この一帯だけが20年近く前に放映された怪獣映画で描かれた風景そのものになっていた。そして、
「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!」
金属音のような、それでいて動物の鳴き声を思わせる音が辺りに響く。ナターシャが空を見上げるとそこには炎の明かりに照らされて、黒光りする鋼の体を持つグリフォン=イモータルレイブンが咆哮を上げていた。
ハワイからイモータルレイブンが襲来。一夏、箒、大樹、マドカがチームを組み、挑む。そして、
「久しぶりだな、勇吾。」
「元気にしていたか、正則。いや、ヘキサオーズ。」
邂逅する正則と勇吾。
その中で
「一夏ああああああああ!」
「大樹いいいいいいいい!」
辿るは漆黒の絶望。