side 颯斗
いや~、すごいものを見れた。最新鋭機、紅椿。学生の度肝を抜かすには十分すぎる代物だった。レーザーの斬撃を放つことが出来る二本の刀に、自動で変化していく装甲、これまでのISとは一線を画すものだった。模擬戦が終わると束博士の元に日が殺到して紅椿について矢継ぎ早に質問をぶつけていく。僕とかんちゃんは箒ちゃんの元へと歩いていく。箒ちゃんの元には大樹に万夏ちゃん、馬鹿(一夏)、凰さんが集まっていた。
「最悪、、、。あれ、体のいいサンドバッグじゃん。」(大樹)
「まさか、私もあんな機体なんて思わなかった。すごいけど、機体に振舞わされそうだった。」(箒)
「これまでの打鉄とは感覚がかなり違うらしいわね。」(鈴)
「何もかも違う。正直、上手く乗りこなせそうにないと思う。」(箒)
「いや、束さんが作った機体なんだろ?箒なら乗りこなせるって。」(一夏)
((そういう問題じゃないんだけど、、、。))(大樹、マドカ)
確かにあの機体はかなり性能は良いのだろう。けれども必ずしも機体性能が良ければいいという話じゃない。当然だけど乗り手の技量によって最適な性能があるし、これまでに慣れてきた機体を遥かに超えるような機体はいきなり乗りこなすことは大抵は不可能だ。今回、箒ちゃんはそれに気づいたらしく、それを開発者である博士に直訴したらしい。
「箒、あれがずっと言っていた箒の専用機なの?」(簪)
「うん、でもあんなにすごいのを作るなんて、、、。」(箒)
「あれって、第3世代機ってなっているけど、確かに博士が第4世代機って言っただけはあったね。」(颯斗)
第4世代機、現行の第3世代機の先にある武装の換装を行うことなく様々な環境に対応できるという宇宙開発の主流として研究されている世代。ただ、今の世界各国の機体は操縦者の特性に合わせて様々な機能を付加させた第3世代機で、まだ第4世代機の開発する余裕なんてない。
「正確には第3.5世代になるよ。第4世代機の実験機、それが紅椿だからね。一夏君の白式は展開装甲が組み込めるかどうかを実験しただけだからね。ゆくゆくは正式な第4世代機を作ることも視野に入れているよ。」(正則)
「世界情勢で考えれば研究所の立場って大丈夫なの?」(大樹)
「そのために表向きは第3世代機ってことにしているんだ。所属に関しては今回のスポンサーが日本政府だから日本になっているけどね。」(正則)
「面倒くせえ、政治絡めばすぐに、、、。」(大樹)
「それに文句を言える立場では無いからな。」(正則)
大樹の発言はおそらくは前世の経験から来ていると思う。岩城さんもそれについてはあまり良い表情では無かった。そんなことを思っていた時だった。
「合宿を一時中止!生徒は割り当てられた部屋で待機!専用機持ちは教員と共に移動するように!」(千冬)
織斑先生が急に大きな声で指示を出した。さらには他に引率で来ている先生方が細かく指示を出していく。ものものしい雰囲気の中で合宿は中止になった。
side 大樹
俺達、専用機組に加え、颯斗を入れた面々は千冬姉ちゃん、山田先生に連れられ、旅館の大広間へと入った。おそらく兄貴が言っていたことが起きたのだろう。やはりというか、騒動には事欠かない学園だよ。
「つい先程、アメリカ軍のハワイ基地が壊滅した。生き残りを数人残して完全に壊滅した。」(千冬)
その言葉に聞いていた俺たちの間に衝撃が走る。世界に名だたる大国の軍基地の一つが壊滅した、どんな理由であれ、それがどれほどのものなのかは理解できた。
「教官、襲撃者は判明しているのですか?」(ラウラ)
「襲撃者については分かっている。」(千冬)
千冬姉ちゃんはUSBメモリを取り出すと、パソコンにセット。中のデータを俺たちに見せる。
「なんですの、これは。」(セシリア)
「ISなの、これ。」(鈴)
「こんなの、誰が作ったの?」(シャル)
そのデータには四足歩行の動物を模した新型軍用ISの詳細なデータが入っていた。
「四足獣型のIS?」(大樹)
「こんなの誰も操縦できないぞ。」(正則)
俺の知る得る限りヒト型から大きく逸脱する形状のISは存在しない。この世界で幼い頃に一度、束姉ちゃんにこう聞いたことがある。
「メカゴ〇ラってISで作れる?」(大樹)
「いや~、出来ないわけではないけど~、人が操縦するのは無理かな~。」(束)
その時の話によると人間の脳がヒト型から大きく逸脱するような形態のISの操縦に耐えられないそうだ。
「良いか、今お前たちに見せているのは極秘データだ。情報を流出した場合は処罰されるからそのつもりで。このISはアメリカが開発した軍用IS、イモータルレイブンだ。スペックは全てここに書いてある。」(千冬)
そのスペックを見ると何から何まで規格外だった。自立行動をすることが出来、殲滅能力は既存の兵器を超えていた。さらに厄介なのは
「なんなのさ、これ。シールドエネルギーが無くなっても行動できるとか、他のISからエネルギーを奪えるって、こんなの束さんとマサ君ぐらいしか実現できないのに、、、。」(束)
既にISなのかどうか、いや、こんなのはISでは無かった。
「先生、こいつ、、、。作った会社はどこ。」(颯斗)
「スカイ・インダストリーという会社だ。」(千冬)
「そんな会社、聞いたことないな。」(陸)
「聞いたことなくて当然。この会社、ダミーだ。会社があるとされる場所もでたらめで提携先の企業もない。」(颯斗)
情報を見れば見る程、規格外であるということが分かる。さらに不穏なのがこれを作った奴の正体が知れないということ。
(兄貴が言っていたことってこれのことなのか?)(大樹)
昨日、現れた兄貴は何かが起こるということだけを俺に言った。一体、これで何をしようと言うんだ。
「アメリカ軍ハワイ基地を壊滅させたのはこいつだ。先程、生き残りの一人であるナターシャ・ファイルスと連絡が取れた。彼女を含めた生き残り全員がこのイモータルレイブンが基地を壊滅させたと言っている。」(千冬)
こいつが基地を壊滅、確認した情報が正しいなら確かにコイツなら基地一つを壊滅させるのはたやすいだろう。
「そして、イモータルレイブンの信号を調査したところ、ハワイからここへまっすぐに飛行してきている。」(千冬)
兄貴の言っていたこれから起きること、こいつがここに来るということだったのか。
「織斑先生、こいつの到着予定時刻は?」(大樹)
「今から2時間後だ。現在、まともに戦闘を行えるのは私と真耶、お前たちだけだ。」(千冬)
「訓練機は使えますか?」(箒)
「ここにある訓練機では戦闘を行うのに十分な装備がありません。現状としては皆さんに協力をお願いする形になります。」(真耶)
「ちょっと、ちーちゃん!この子たちを戦わせるの!?」(束)
「強制じゃない。これは普段の訓練とは違う。当然、命の危険があるのだから無理強いはしない。」(千冬)
命の危険、その言葉には嫌が応にも安全が保障されていないことが分かる。当然だが、ここにいる者の大半はその言葉の重さに参加するかどうか迷っている。
「千冬姉、俺が出る。」(一夏)
「教官、出撃させてください。」(ラウラ)
「千冬さん、真耶さん。私も出ます。」(箒)
「僕は専用機持ちじゃないけど、出来る限り手助けさせてください。」(颯斗)
「私も、やります。」(簪)
一夏、ラウラ、箒、颯斗、簪はすぐに参加の意思を表明した。
「わたくしも出ますわ。」(セシリア)
「皆がそうなら、私も出るわよ。」(鈴)
「まあ、面白いだろ。こんなこと、めったにない。」(陸)
「僕も出ます。」(シャル)
「千冬姉さん、私も皆を守りたい。」(マドカ)
一夏たちの姿を見て、他の皆も参加すると言った。そして、唯一参加するかどうか明らかにしていない俺に皆の視線が集まる。俺の答えはとっくに決まっている、、、。
「先生、出撃までにやるべきことを把握させてください。出来る限り万全な準備をして、この任務に臨みます。」(大樹)
side 三人称
「颯斗!助っ人、呼ぶか!」(大樹)
「のほほん、呼んで!かんちゃん!弐式の調整が終わったら、オルコットさんのパッケージをインストールするから、手伝って!」(颯斗)
「うん!」(簪)
「なあ、柏葉。俺とシャルはどうすればいい?」(陸)
「二人は先生たちと旅館付近で待機。もしも、最前線を突破されたら抵抗する手段を持たない他の生徒が危ない。もしもの時には避難するのも考えなきゃいけないから他の先生方に連絡してその準備をしておいて欲しい。」(大樹)
「了解。」(陸)
「分かったよ。」(シャル)
「箒、紅椿は?」(大樹)
「今、姉さんが調整している。それは後数分で終わる。」(箒)
「そっちが終わったら、一夏とマドカの機体の調整もすぐにしてもらって。颯斗たちの時間も稼がなきゃいけないから、最初のアタックを行う面々の機体の調整は急ピッチで。」(大樹)
「分かった。」(箒)
「鈴、セシリア、ラウラは敵と旅館の中間地点で待機。防波堤としてできる限り向こうの戦力を削って欲しい。」(大樹)
「OK。出撃までは何をすればいい?」(鈴)
「颯斗たちが来るまでできる限り自分の専用機の準備をしてくれ。あまりにも時間が少ないから、出来るなら途中まで自分でやって。」(大樹)
「分かった。」(鈴)
砂浜では各々自分の役割を果たすべく、せわしなく動いていた。その中で指示を飛ばしているのは大樹で、指示を飛ばす一方で作戦の構築も行っていた。その中で痛感するのは圧倒的な時間の無さである。現に作業が始まったのは30分前、現状は3分の1まで進んだところである。出撃予定時刻は30分後である。それ故に焦ってもいた。
(クソ!時間が無さすぎる、、、。俺と箒の専用機は動かせる。一夏とマドカも整備自体はすぐに終わる。ただ、全く万全じゃない。前の世界の福音は一夏と箒だけ最初は動いた。それで考えたら、お粗末な作戦ではあったが現状を考えれば仕方なかったか。どうする、、、チームを再編成するのか、、、。嫌、そんなことをして、何かあればヤバい。だが、ドライバーを使ったところで空を飛べるメンバーが居ない。)
考える限り、現状では限界である。そもそもが学生が対処するという前提が誤っているようなものでどれだけ考え抜いたところで大樹の考える万全にはほど遠いものだった。
「はい。」(マドカ)
悩んでいる大樹の元へスポーツ飲料の入ったペットボトルを持ったマドカがやって来た。マドカは持っていたペットボトルを大樹に渡す。大樹はペットボトルを受け取って中身の半分を一気に飲んだ。
「ありがとう。」(大樹)
「ねえ、すごく焦っているでしょ?」(マドカ)
「、、、、、、なんで分かんの?」(大樹)
「そういう顔してたよ。」(マドカ)
「、、、そんなに分かりやすいかね。」(大樹)
「大樹、考えていることとかすぐに顔に出るから。」(マドカ)
「まじか、、、。」(大樹)
そんなやり取りをしつつ、砂浜に腰を落ち着ける二人。
「焦るさ、、、。いつもと違って箒に鈴、セシリア、シャルル、ラウラたちが居る。それに今回は他の学園の皆が居るんだ。こんな短い時間の中でやることをやるなら、そりゃ焦るよ。」(大樹)
「一人で焦らないで。だから、皆が頑張っているんだよ。お兄さんが関わって、落ち着いてられないのを分かるけど、少しは皆のことを頼って。」(マドカ)
二人だけにしか分からない凄惨な記憶。大樹はその記憶に苦しめられながら現在を見て、マドカはその記憶を抱いて未来を見る、記憶を持ちながらも二人の向いている先は違っていた。そうして、時間は出撃の時間へとなっていた。
「良いか?箒は一夏をイモータルレイブンのところまで高速で連れて行き、一夏はイモータルレイブンに接触したら隙を見て零落白夜で完全にエネルギーを削れ。その後は俺とマドカで直接イモータルレイブンの機体を攻撃していく。向こうの戦力も考えて、作戦は逐一変えていくからそのつもりで。」(大樹)
大樹、マドカ、一夏、箒は洋上のイモータルレイブンへと向かっていた。箒の背に一夏が乗っており、大樹は増設されたブースターで飛行し、その背にはマドカが乗っていた。大樹は通信でこの作戦の概要を今アタックを仕掛けるメンバーに二度目の説明をしていた。
「この最初の防衛ラインで終わればそれだけ被害が少なくて済む。各自、出来うる行動をその場で取って欲しい。それじゃ、作戦会議は終了だ。」(大樹)
大樹はそう言うとイモータルレイブンがいるであろう方向を見る。
「それとな、、、出来れば、、、いや、これだけは絶対に頭に入れて欲しい、各自、自分の安全を最優先に。」(大樹)
「そんなの当り前じゃないのか?」(一夏)
「大丈夫だ、大樹。そのことは私も姉さんにしつこく言われたから。」(箒)
「大樹も自分の安全を最優先にね。」(マドカ)
「ああ。」(大樹)
その言葉を交わして、彼らの眼前に漆黒の凶獣、イモータルレイブンが現れる。イモータルレイブンは彼らの姿を確認すると金属音のような咆哮を上げる。
「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!!」
その巨大な翼を広げ、イモータルレイブンは高速で大樹たちに迫る。
「箒、散開するぞ!」(大樹)
「っ!」(箒)
箒と大樹はそれぞれ背に仲間を乗せたまま高速で回避行動をとる。
「箒、一夏は打ち合わせ通りに!マドカ、あいつの注意を引き付けるからランサービットでビームを打ち込んでくれ!」(大樹)
「分かった!」(箒)
「ああ!」(一夏)
「うん!」(マドカ)
大樹たちはそれぞれが事前の打ち合わせ通りに動いていく。マドカは大樹の背に乗ったままランサービットでレーザーを放っていくが、それを察知したイモータルレイブンはその巨体から想像できない身のこなしで高速で回避していく。
「何あれ。」(マドカ)
「全く、完全に怪獣じゃねえか。」(大樹)
大樹とマドカはそれを見て驚愕の表情を見せた。そして、イモータルレイブンはきりもみ回転をすると金属製のブレードを周囲に高速でばらまいていく。急な攻撃に大樹は竜甲をコール、両手のそれでマドカと自身の身を守る。箒は紅椿の展開装甲を上手く使い、急な旋回、ターン、急ブレーキで躱していく。
「大樹!このままだと近付けない!」(箒)
「注意を引き付けて、足止めも厳しい。箒、何とかして一夏をイモータルレイブンに近づけさせろ。一夏、近づいたらすぐに零落白夜をぶち込め。ちんたらやっていたらこっちがやられる。」(大樹)
イモータルレイブンの性能が予想以上であることから大樹は短期決戦で挑むと伝える。各自が持てる戦力を全て使っていくことを決めた。大樹は竜甲を出したまま5式爆裂強弓「竜翼」をコールする。
「マドカ、ランサービットでめちゃくちゃにレーザーを打ち込んでやれ。隙が出来た瞬間に爆裂矢をぶち込んで足を止める。」(大樹)
「狙いを付けなくて良いの?」(マドカ)
「でたらめで良い。その上でコースを限定するように誘導してくれ。」(大樹)
大樹の背にいるマドカはイモータルレイブンに狙いをつけるのではなくイモータルレイブンの進行方向にレザーを撃っていく。大樹とマドカの思惑通りにイモータルレイブンは動いていく。大樹はイモータルレイブンの次の動きに合わせて竜翼を目一杯引き絞る。そして、貯めた力を開放する。撃ち出された矢はイモータルレイブンに向かって行き、そして大きく爆発した。
「KIIIIIIIIIIIIN!」
痛みを感じたようにイモータルレイブンが咆哮した。イモータルレイブンの動きが止まった瞬間、
「一夏!」(箒)
「いっっっっっっっっっっっけえええええええええええええええ!!!」(一夏)
一夏が零落白夜をイモータルレイブンにぶつけた。だが、
「KIIIIIIIIIIIIN!」
イモータルレイブンは寸でのところで零落白夜の直撃を避けた。
「クソ!」(大樹)
シールドエネルギーを削ることが出来たがそれは十分ではない。さらに、零落白夜の効果時間が終了してしまう。その中で大樹はある決断をして、遠くにいる千冬たちに連絡する。
「作戦失敗、対象をけん制しつつ帰投する。」(大樹)
大樹はこれ以上の続行を危険と判断して戻ることを決意した。
「中々に動いているようですね。」(イリーナ)
「そもそも、競技での運用を前提とした機体があれに敵うわけがないだろう。」(勇吾)
旅館近くの砂浜、勇吾とイリーナがはるか先の戦いを見ていた。
「ええ、キングが作り出したあれは並のISなど敵ではありません。」(イリーナ)
イリーナは勇吾に心酔の眼差しを向ける。
「久しぶりだな、、、勇吾。」(正則)
勇吾とイリーナの背後から正則が声を掛けた。
「10年ぶりだな、正則。いや、こっちの名で呼んだ方が良いか、ヘキサオーズ。」(勇吾)
「俺はもう仮面ライダーじゃない。その名前はもう捨てた。」(正則)
「仮面ライダーじゃないお前がここに来たのはどういった要件だ?」(勇吾)
「なぜ、今更顔を見せた。とっくにお前のことは調べがついた。生まれのことも今やっていることもな。」(正則)
「俺の才能を最大限使って何が悪い?まさか、そのことを咎めに来たのか?くくくくくくくくくくく、お前も随分と愚かになったな。」(勇吾)
「そうだな、、、随分と愚かになったよ。」(正則)
「キング、こんなものの戯言に付き合う必要はありません。キングにはやるべきことがありますから。」(イリーナ)
「そう言うことだ、精々外野は指をくわえてこのショーを見ていろ、屑が。」(勇吾)
「ああ、決心がついたよ、、、。」(正則)
正則はその場を立ち去る。
「よく、見ておくんだな。大樹がお前の前に立った時に、その顔を。」(正則)
その胸に一つの決意を秘めて。
「本気で言っているのか、大樹!」(一夏)
「これ以上は危険だ。一度引いて体勢を立て直さないと。」(大樹)
「まだ、やれるだろ!」(一夏)
「じゃあ、残っているエネルギーでまた零落白夜を使えるのか!使った瞬間にISが待機状態に戻っちまうだろ!そんな状態であの化け物と戦うつもりかよ!さっきの一撃がミスった時点で続行は無理なんだよ!」(大樹)
「それでも!」(一夏)
「根性論でどうにかなっているなら、苦労する相手じゃねえよ!良いか、退くぞ!箒、一夏を乗せて、退け!マドカは箒のサポート!」(大樹)
大樹たちは撤退の是非で大樹と一夏が言い争っていた。作戦が失敗した、それに加えイモータルレイブンの戦力が未知数だということからこれ以上の続行は危険が大きかった。大樹はそれを考慮したのだ。箒は大樹の指示に従って、一夏の背に乗せてイモータルレイブンから離れだした。マドカは箒の後ろについていつでもサポートできるようにする。大樹はそれを見て、竜翼をまた引き絞る。
「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!!」
イモータルレイブンは大樹目掛けて高速で突進してきた。それに合わせて、大樹は矢を放つ。放った矢は途中で無数に分かれ、次々と連鎖的に爆発する。さらに大樹は新たな矢をつがえ、放った。爆炎の中に入っていったそれはさらに大きな爆発を起こした。
「まだ、矢の貯蔵はあるんだ。完全に足が止まるまで喰らわせてやる。」(大樹)
大樹は新たな矢を出した時だった。
「大樹!一夏兄さんが密航船の救助に行った!今、箒と一緒に追いかけている!」(マドカ)
マドカからプライベートチャンネルに通信が入った。密航船、、、前の世界でもあった。
(どうして、悪いところが同じだったりするんだよ!)
「マドカ!俺も行く!」(大樹)
大樹は一夏たちの元へ行くためにイモータルレイブンに背を向けた。大樹はブースターを最大で稼働させて一夏たちの元へ行く。数分もしないうちに大樹は一夏たちと合流した。
「何やってんだよ!」(大樹)
「だって、放っておけないだろ!」(一夏)
一夏の姿を見て、思わず声を荒げる大樹。そして、彼らの元へとイモータルレイブンがその漆黒の翼を広げて姿を見せる。大樹の攻撃を受けたにもかかわらず、その巨体は傷一つついていなかった。
「嘘、、、。」(箒)
箒はその姿に戦意を失ってしまう。マドカはフェンリルブロウを構えてはいるものの動けずにいた。だが、
「どこまでやれるか。」(大樹)
「皆は俺が守る!!」(一夏)
大樹と一夏はイモータルレイブンに刃を向けた。
「うおおおお!!」(一夏)
一夏はイモータルレイブンに飛び掛かり、大樹はまた矢をつがえ、放つ。だが、一夏の刃は弾かれ、大樹の矢は当たるものの効果は薄い。その二人をあざ笑うかのようにイモータルレイブンは全身に赤色の光のラインを走らせる。そして、
「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!!」
辺り一帯を焼き尽くす赤い光がイモータルレイブンの体から四方八方に放たれた。その光は一夏と大樹を襲い、、、、、、
side 一夏
やれると思った。この白式と大樹、マドカ、箒が居るのなら絶対に出来ると思った。ただ、現実はそうでなくて結局は大樹は引くことを選択した。箒に千冬姉たちの所に連れていかれているときに密航船に気付いた。箒とマドカは渋ったが俺は彼らを助けに行った。その後、足止めをしていた大樹が俺達と合流して、、、
「一夏ああああああああ!」(箒)
箒の呼び声が聞こえる。俺は、、、どうなっているんだ?
side 大樹
どうして、悪いことはこう何度も同じ場所で起こるかね、、、。いや、密航船に関しては俺は放っておくから、そこで戦闘に巻き込まれたって言うのはそいつらの責任だから、、、。それでも、俺は彼らに被害が出ないように動くな。、、、。イモータルレイブンは新たな攻撃を見せた。竜甲を出していたけども、最初の攻撃でかなり損傷もしていた。二度目の攻撃は最初の一度を防いだ後に来た光線が次々と襲って来た。零式から知らされたのは損傷度Dという文字、、、。その直後、全身を衝撃が襲い、周りの風景が一変した。光が遠ざかり、俺は闇へと沈んでいく、、、、、、。
side 三人称
傷だらけの一夏を抱え、呼び掛ける箒。そして、
「大樹いいいいいいいいいい!!」(マドカ)
海へと沈みゆく大樹に手を伸ばすマドカ。その手は大樹に届くことは無かった。そんな彼女たちをあざ笑うかのようにイモータルレイブンはその翼を広げ飛翔する。
重傷を負った一夏に消息が分からない大樹。仲間たちは二人の分までイモータルレイブンに立ち向かう。彼らが窮地に陥るその時に純白の王と紅蓮の竜が新たな姿となって復活する。
「皆は俺が守る!」
「この戦、俺達が勝ち取る!」