IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 紅椿の披露が終わり、学園にアメリカ軍ハワイ基地を破壊したISイモータルレイブンの襲来が伝えられた。そして、短い時間の中でその襲来に備える大樹たち。
 出撃した大樹らはイモータルレイブンの規格外の性能に圧倒され、撤退する。撤退する時に一夏が密航船の保護を行い、集まった大樹たちにイモータルレイブンの攻撃が襲う。その際に一夏は重傷を負い、大樹は海中へと沈んでいった。


仮面ライダー炎竜 第28話

side 大樹

 俺って、死んだのか、、、、。確か、イモータルレイブンの攻撃を受けて、、、。

 

 「ここって、、、。」(大樹)

 

 臨海合宿に来ているはずの俺はなぜかIS学園のとある部屋、、、前の世界でマドカと共に過ごしていた部屋にいた。

 

 「まさか、天国ってことは無いか。」(大樹)

 「ああ、まだマスターは死んではいないわよ。それにここはマスターの一番幸せだったって思っている場所の再現をしただけよ。」(???)

 

 俺の背後、部屋の扉から赤い戦装束を身に着けた長身の女性が入って来た。

 

 「まさか、零式なのか?」(大樹)

 「正確にはそのコア、だけどね。初めまして、マスター。」(零式)

 

 

 

side 三人称

 旅館の一室、そこには戦闘で重傷を負った一夏が運ばれていた。その傍らでは箒が座っていてうつむいていた。一夏はあれから一度も目を覚ましていない。この部屋の空気は重く暗いものだった。

 

 「なに、辛気臭い顔をしてんのよ。」(鈴)

 

 部屋に入っていた鈴が箒に声を掛ける。それに箒は反応しない。鈴はそのまま箒の隣に座る。

 

 「聞いたわよ、何が起きたのか。」(鈴)

 

 鈴は一夏の顔を見ながら、箒に語り掛ける。

 

 「ねえ、こんなこと、今までもあったじゃない。そんな辛気臭い顔、寝ている一夏にも悪いわよ。」(鈴)

 

 鈴は普段と変わりない様子で箒に話しかけていく。

 

 「私は、、、もう、、、ISに、、、乗らない、、、。」(箒)

 

 その中でやっと放った言葉はそれだった。

 

 「箒、ちょっと一緒に来て。」(鈴)

 

 鈴は箒の言葉に反応を返さず、ただそう言った。

 箒は鈴について行くと旅館の大広間にいた。そこには

 

 「待ってよ、、、そんな金属ブレードを何度もばらまくことは難しいじゃないの?」(颯斗)

 「私も一度だけしか見ていないから、さっき言ったことまでしか伝えられなくて。」(マドカ)

 「厄介なのは攻撃性能では無いな。あの巨体で見せた高い飛行性能だ。スピードを落とさずに複雑な回避行動をとれるとは。私のAICでも動きを止められるかどうか、、、。」(ラウラ)

 「シールドエネルギーの総量も関係があるんでしょ?ねえ、万夏。どこまで削れた?」(シャル)

 「半分も行っていないと思う。一夏兄さんの零落白夜が直前で躱されちゃったから。」(マドカ)

 「想定よりも厳しいですわね。」(セシリア)

 

 マドカが先程の戦闘で得た情報を他のメンバーに伝達していた。

 

 「私も出るよ。今度は私も力になる。」(簪)

 「よし、俺は後ろで情報のやり取りとかをしているぜ。そうすれば戦っている最中でも情報の共有がスムーズにできるだろ?」(陸)

 「うん、じゃあラウラ、戦闘の時の指示を御願いして良い?」(マドカ)

 「当然だ。」(ラウラ)

 

 マドカから伝えられた情報をもとにそれぞれが取るべき行動を決定していく。

 

 「私も次の戦闘には出る。一夏の看病をしたいなら、箒は残ってもいい。でもね、、、。」(鈴)

 

 その時に鈴は箒に怒りの表情を見せて次の言葉を言った。

 

 「大樹がこの場にいないのに、それがすごく不安で仕方ないはずなのに、私達に力を貸してって言った万夏にだけはその言葉を言わないで!別にやめることに関しては私は文句は言わないわ。でも、あんたと同じ場所に行って大樹が帰ってこなかった万夏は弱音の一つも吐かないで頑張っているのよ!」(鈴)

 

 先程の言葉に鈴は怒りを覚えていた。確かに二人とも辛い場面に会った、だが、箒の方は思い人は重傷だが帰ってくることが出来た。一方のマドカはあの場に引き返して大樹を探すことすら叶わなかった。それでもマドカは自分のできることをやっているのだ。

 

 「もしも、マドカの前でさっきのようなことを言ってみなさい、その時は絶交よ。」(鈴)

 

 鈴も思い人の一夏が傷ついた姿を見て動揺した。だが、その中で共に出てきたはずの大樹の姿が無いことに気付いた。そのことに最も心を揺さぶられていたマドカのことを一番に気に掛けたのだ。

 

 「箒、大丈夫?」(マドカ)

 

 他のメンバーに情報を伝えていたマドカが箒の姿に気付き、話しかけてきた。

 

 「うん、私は、大丈夫。」(箒)

 

 マドカの問いにそう答える箒。

 

 「ねえ、箒。次の戦闘も手伝って欲しい。」(マドカ)

 

 箒にマドカはそう頼んだ。

 

 「一夏兄さんのことが心配なのは分かる。でも、ここにいる皆で戦わないとあれには勝てないから。力を貸して。」(マドカ)

 

 強い眼差しでそう言葉を告げるマドカ。その姿に箒は

 

 「なんで、マドカはそう強くいられるの?」(箒)

 

 と言った。その言葉にマドカは

 

 「大樹はきっと戻る。大樹ね、私とした約束は守ってくれるから。大樹が安心して帰って来られるように頑張らないと。」(マドカ)

 

 と箒に言った。

 

 

side 一夏

 ザザーン、ザザーン。

 俺は目を開けるとどこかの青空の下にいた。辺りを見回すと白い砂浜にいた。

 

 「あなたはなぜ戦うの?」(???)

 

 そして、遠くから俺にそう問いかける声が聞こえた。声のした方角を見ると白いワンピースを着た少女が居た。

 

 「お前はなぜ力を欲する?」(???)

 

 別の方角からは純白の騎士が俺に問い掛ける。

 

 「俺は、、、。」(一夏)

 

 

 

 

 

 

side 大樹

 「ずっと、俺と一緒に戦ってくれた零式、なんだな。」(大樹)

 「ええ。ここ以外でも一緒にね。」(零式)

 

 あの部屋で俺と零式は言葉を交わす。

 

 「ねえ、マスターはなんでそんなに一人きりで傷だらけになって戦うの?」(零式)

 

 零式の問いはマドカからも投げかけられた問いと全く同じだ。

 

 「皆の傷つく姿を見たくないから。」(大樹)

 「それでマスターが無理をするほどなのかな?マスター、言って悪いけど一人でやって大きな失敗をしたじゃない?」(零式)

 「それは、、、。」(大樹)

 「そんなマスターが仮面ライダー、正義のヒーローを名乗るのって無理が無い?」(零式)

 

 零式の口から出るのは厳しい言葉ばかりだった。その言葉一つ一つに心当たりのある大樹は反論できなかった。

 

 「さっきも言ったけど今のマスターは死んではいないよ。正確にはこのまま何もしなければ死ぬけどね。今は私が最後に残ったエネルギーでマスターの生命維持をしているけどそれも限界があるし。だからさ、選んでよ、このまま死ぬか、最後まで戦い続けるか。」(零式)

 

 零式の問いに大樹は驚くわけでは無かった。目の前の彼女ならば、自身が知るISがこの世界でも同様ならばそのような問いを投げかけることも予想していた。

 

 「もうさ、マスターは戦わなくて良いんじゃないの?だって、自分のことを放っておいて戦うのなんてマスターには似合わないよ。ここで楽になっちゃいなって。」(零式)

 

 彼女の表情はどこか優しいものだった。彼女の言っていることは端的に言えば死ねということであるが俺がどのような道を歩んできたのかを知っている彼女にとってはやはり慈悲なんだろうな。

 

 「楽になる、、、、、、、、、、ね。」(大樹)

 

 

 

 

 

side 一夏

 俺に語り掛ける彼女たちの問いに俺は口を開く。

 

 「俺って、ずっと守られてばかりだったから。父さんに母さん、千冬姉、その人たちに俺は守られてきた。それに大樹と万夏、せめて二人は絶対に守るんだって思って。それからは箒の道場で剣道を学んで、守るための力を付けたかった。」

 

 俺は自分の中にあったこれまでの思いを口にする。自分でも驚くほど口に出来た。

 

 「それから、箒、束さん、正則さん、先生、鈴、弾、数馬、蘭、学園に来てからも守りたい人達が増えていったんだ。だから、俺はその人たちを守りたい、そのために力を付けたいんだ。」(一夏)

 

 そう、俺は守られる側だった。俺が戦うのはその人たちに助けてもらったから、だから、、、

 

 「今度は俺が皆を守るんだ。」(一夏)

 

 俺の問いに二人は答えることは無かった。

 

 「なるほど、それがお前の戦う理由なのか。」(???)

 

 不意に俺の背後から男の声がした。振り向くとどこかの民族衣装に身を纏った男が居た。

 

 「お前は誰なんだ!」(一夏)

 「お前たちの神話で言うところの蛇、と言えばいいか。サガラ、と俺のことは呼んでくれ。」(サガラ)

 

 サガラ、、、こいつは俺に手を差し出した。

 

 「友好の証だ。目が覚めれば分かるはずだ。」(サガラ)

 

 サガラの差し出した手を握る。そこには眩い純白の光があった。

 

 「じゃあ、俺はこれでな。また、会う時が来たらな。」(サガラ)

 

 サガラは俺に手渡すと姿を消した仕舞った。

 

 「あなたは選んでしまった。もう、後戻りはできない。」(???)

 「だから、私達はお前に力を、お前の望みをかなえよう。」(???)

 

 彼女たちの声が聞こえた後、周りが、世界が光に包まれた。

 

 

 

side 大樹

 「楽になるか、、、。」(大樹)

 

 確かに何のしがらみも無くなって、苦しむこともないってことは楽だろう。でも、、、

 

 「ごめん、零式。それでも俺は戦うよ。それが苦しくて辛くて、投げ出したいほど重たいものでも俺は戦うさ。」(大樹)

 

 俺は決まり切っていた答えを零式に言う。

 

 「それは自分の身を削ってでも、自分が死んでも皆を守りたいから?」(零式)

 「前までは。」(大樹)

 

 俺の答えに疑問の表情を見せる零式。

 

 「今はさ、違うよ。マドカがいる。もう、置いていけないさ。」(大樹)

 「彼女を愛しているから?」(零式)

 「そう。でも、それだけが理由じゃない。俺はきっと、傷つく誰かを放っておけない。悲しむ誰かがいるなら俺はその誰かを守るために戦う。」(大樹)

 「マスター、自分の周りだけ守るんじゃないの?」(零式)

 「ああ、そうだよ。俺とマドカ、一夏、颯斗、、、皆が関わる全てが俺の周りだよ。」(大樹)

 「それを一人で守るつもり?」(零式)

 「まさか、俺一人でできるわけない。だから、、、。」(大樹)

 (大樹、、、、、、、、、。)(マドカ)

 

 どこからかマドカの声がした。

 

 「もう、俺は一人では戦わない。いや、一人でできることなんてたかが知れてる。だから、俺は仲間たちと戦う。共に生きる愛する人と戦う。」(大樹)

 

 答えなんかもう分かっていた。ここまでよく分かった、俺は一人ですべてをやることなんざ出来ない。この世界で俺はやっと自分から頼れる仲間を、心の底から力を貸してほしいと思える仲間に出会えた。そして、俺もやっと変われた。

 

 「俺は仲間たちと共に戦うよ。邪悪で強大な力を持つ奴らから守るための力を持たない人たちを守るために。」(大樹)

 

 俺の言葉に拍子抜けした表情を見せる零式。だが、

 

 「まあ、そうまで言うなら、私が止める理由は無いわ。」(零式)

 

 苦笑しながら言った。

 

 「零式、限界なのは分かる。あの怪物を止めるために力を貸してほしい。」(大樹)

 「良いよ。もう、マスターに力を貸すなんて、、、私はいつだってあなたの力になるわ。」(零式)

 

 零式の言葉を受けて、俺は部屋の扉の前に立つ。扉を開ける前に俺は今一度部屋を見る。この部屋で過ごした時間は確かに幸せだった。でも、これからはここが一番幸せだったってままじゃいけない。これからの時間を皆と、マドカと一緒に幸せだと思える時間を作っていかなきゃいけない。

 

 「さよなら。」(大樹)

 

 俺は扉を開ける。こんなに色々抱えているけど、そのどれもが捨てることが出来ない俺の一部だ。でも、それに俺が押しつぶされることは無い。今、ここから俺は仮面ライダーとして、本当の意味で戦う。

 扉の先は学園の風景だった。俺はそのまま走り出す。走っていくと風景がどんどん変わっていく。俺が初めて変身した場所、俺が初めて零式と出会った場所、一夏たちと共に過ごした場所、マドカと初めて出会った場所、そして、兄貴と本気の殺し合いをした場所。全部抱えよう、でも今までとは違って俺には仲間がいる。そのことを意識するとこの重荷がほんの少し軽くなる。そして、俺の走る先が光に包まれる。

 

 「ここからは、俺のステージだ!」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称

 場所は昼間と同じ海域。そこにはマドカをはじめとした専用機持ち達がイモータルレイブンと戦っていた。だが、その様子は有利とは言い難く、全員が満身創痍だった。それでも、マドカと箒は手に持っている武器を下ろしていなかった。だが、無情にもイモータルレイブンは大樹と一夏を屠った攻撃を放とうとしていた。

 

 「もう、ダメ、、、。」(箒)

 

 遂に箒も戦意を失ってしまう。マドカは、、、。

 

 「ごめんね、大樹、、、。今、そっちに逝くね。」(マドカ)

 

 と言った。それと同時にイモータルレイブンの体から赤いレーザーが無数にはなたれ一帯を焼き払う。

 どこからともなく現れた純白の彗星が、海を沸騰させ吹きあがる紅蓮の炎がその攻撃をかき消す。

 

 「勝手に死なさないでよ。」(??)

 「俺が皆を守る!」(??)

 

 彼女たちの前にいたのはすっかり様変わりしたISを纏っていた思い人だった。

 

 「ああ、ああああ!。」(箒)

 「だ、、だい、き、、。」(マドカ)

 「待たせたな、箒。」(一夏)

 「ごめんな、マドカ。一人で頑張らせて。」(大樹)

 

 一夏は重傷だったとは思えないほど健在な姿を見せ、大樹は傷が目立つものの命に別状はない姿を見せた。

 

 「一夏!」(箒)

 「大樹!」(マドカ)

 

 マドカと箒はそれぞれ思い人の胸に飛び込む。

 

 「一夏、良かった、良かった!」(箒)

 「大樹、大樹!うううううう。」(マドカ)

 

 二人とも、目から涙を流して喜ぶ。大樹も一夏も自分たちの胸の中の彼女たちを抱きしめる。喜びもつかの間、イモータルレイブンは新たな乱入者を敵と認識して、戦闘態勢に入る。

 大樹と一夏はそれを見て、彼女たちを放す。

 

 「行くぞ!」(一夏)

 

 一夏は先にイモータルレイブンに向かって行く。大樹はと言うと

 

 「行ってくる。」(大樹)

 

 とマドカに言う。その姿にマドカは言いようのない安心感を抱く。

 

 「行ってらっしゃい。」(マドカ)

 

 マドカの言葉を受けて、大樹はイモータルレイブンへと向かう。

 すでに一夏が新たな装備を使い、イモータルレイブンに攻撃をしていた。大樹は変化した武器から1式対甲斬刀「紅龍牙」を選択、コールするとイモータルレイブンに攻撃をしていく。前回の攻撃と違って明らかな手ごたえが返ってくる。

 イモータルレイブンは一夏と大樹の攻撃に翼から無数の金属ブレードを撃ち出して対抗する。一夏は瞬時加速で猛スピードで躱していく。大樹は3式対弾甲楯「紅龍甲」をコール、通常状態で自身の倍近くある大型の楯で身を守る。

 

 「前よりも頑丈だな。武器の基本威力も上がっている。」(大樹)

 「当然でしょ、マスター?今の私はマスターにこれまでの戦闘経験をもとに第二次移行をしたんだから、前までとは比べ物にならないでしょ?」(零式)

 

 大樹の言葉に反応を返す零式。今、零式は第二次移行を果たし、全身を覆う鋭角的な鮮やかな赤色のアーマーにところどころに竜の爪や翼を思わせるパーツが付いており、さらには顔を隠すバイザー、マスクも追加されて、その姿は正しく竜人である。一方の一夏は大樹と比べると大きく変化している部分は少ないが以前の白式と比べ、鋭角的なフォルムになっており、左腕のパーツはよりメカニカルなものになっている。新たな力で二人はイモータルレイブンと互角に戦う。だが、、、

 

 「エネルギーが!」(一夏)

 「あと、もう一押しが足りない。」(大樹)

 

 一夏は新たな機体のエネルギーの消耗から、大樹は元々の決定力が欠けていることからイモータルレイブンを止める決定打を与えることが出来ないでいた。そこに、

 

 「いい加減にしなさいよ!」(鈴)

 「わたくしたちも忘れないで下さい!」(セシリア)

 

 力を振り絞って、イモータルレイブンに攻撃する鈴とセシリア。さらに、

 

 「私を忘れるな!」(ラウラ)

 「行くよ!」(シャル)

 「おっしゃ!俺もだ!」(陸)

 

 ラウラ、シャル、陸も加わる。

 

 「みんな、退けて!」(簪)

 

 簪が弐式の山嵐を稼働、仲間たちに回避するように言って複数のミサイルをイモータルレイブンに次々と浴びせていく。イモータルレイブンの動きが止まる。

 

 「零式、何かないのか。一夏の零落白夜だけじゃ足りない。」(大樹)

 「マスター、それって一撃必殺の必殺技ってこと?」(零式)

 「ああ。このまま押し切れそうにない。」(大樹)

 「そんなマスターにはこれね。」(零式)

 

 零式は大樹のスクリーンにあるものを写す。

 

 「そうだ、こういうのが必要だった。でも、それを出すのに。」(大樹)

 「そう、今の私のエネルギーだと使えない。」(零式)

 

 現状、打つべき手が無い。だが、

 

 「でも、箒の紅椿ならこの状況を打破できる。零式、紅椿に呼び掛けてくれ。」(大樹)

 「やってみるけどあの子、かなりの頑固者よ。マスターからあの子のマスターに話しかけて、その方が良いと思う。それと私はもう一人、話す子がいるからお願いね。」(零式)

 「分かった。」

 

 

 

side マドカ

 大樹が戻って来た。そして、大樹の零式が第二次移行をして戦っている。その姿はこれまでのような血だらけになっているような痛々しいものじゃなかった。そして、それを見ている私、、、。

 

 (こんなままで良いの?これじゃ前と変わらない。)(マドカ)

 

 これじゃ変わらないじゃない。このまま見ているだけなんて。

 

 「ああ、今良いかしら?マスターの恋人さん。」(??)

 

 突然、誰かが黒騎士の通信に入り込んだ。

 

 「あなたは誰?」(マドカ)

 「零式のコア、始めましてね。」(零式

 

 大樹から一度聞いたことがある、、、ISのコアには人格があるということを。まさか、今通信をしてきているのは大樹の零式!?

 

 「どうして?なぜ、通信してきたの?」(マドカ)

 「簡単よ、あなたはマスターと一緒に戦いたい、それならマスターの力になってあげて。」(零式)

 「でも、もう、、、。」(マドカ)

 

 黒騎士の消耗も激しい。このまま戦うことは、、、。

 

 「その子、サイレントゼフォルスにとってはあなたは最善のマスターでは無かったわ。でも、彼女はあなたの言葉を待っているわ。今のあなたの力になりたいって思っている。そうじゃないなら、別の世界まであなたと共にいないわ。」(零式)

 

 彼女の言葉を聞いて、信じられなかった。私は、黒騎士、サイレント・ゼフォルスにとって良い操縦者では無かった。それなのに、私の力になりたいって、、、。

 

 「ねえ、そうなの?あんなにひどいことをずっとあなたにさせてきた私に力を貸してくれるの?」(マドカ)

 

 反応が返ってくることは無い。でも、

 

 「私、大樹と一緒に生きたい。これから二人でいろんなことをして、家族になって、、、お願い。私に大樹と一緒に戦う力を貸して!」(マドカ)

 

 私の思いを言葉にしていく。すると、

 

 「え?」(マドカ)

 

 黒騎士が光り輝いて形が変化していく。その姿は、、、

 

 「彼女はまだあなたと話すことは出来ないわ。でも、それで彼女の思いは分かるでしょ?じゃあ、頑張ってね。」(零式)

 

 私が初めて使っていた時の青い姿、本来の姿であるサイレントゼフォルスになっていた。そして、スクリーンには

 

 「今度は私を正しいことに使って。」

 

 という文字があった。

 

 「織斑マドカ、サイレントゼフォルス、出ます!」(マドカ)

 

 私は本来の姿に戻ったサイレントゼフォルスの翼を広げて、大樹たちの近くへと飛んでいく。

 

 

side 大樹

 零式との会話の後、俺は箒のプライベートチャンネルに通信を入れる。

 

 「箒!今、話すぞ!」(大樹)

 「どうしたの、大樹?」(箒)

 「箒の力が必要だ。」(大樹)

 「え?」(箒)

 「正直なことを言う。このままだと負ける。俺も一夏もイモータルレイブンを止めるだけの一撃を放つ余裕がない。」(大樹)

 「でも、、、。」(箒)

 

 本当はこの世界の俺が知っているはずはない。だが、この現状を突破するには箒の力が無ければいけない。この際だ、完全にばれるのを覚悟でやるしかない。

 

 「箒、箒はどうしたい?」(大樹)

 「どうしたい?」(箒)

 「このまま、一夏が戦うのを見ているか、それとも一緒に戦うか?」(大樹)

 「私は、、、。」(箒)

 「ある剣道少女がいてな、彼女には思い人が居た。彼女はそいつの力になりたいと姉を頼った。そして手に入れた力で彼女はそいつの力になれると思った。だが、初陣はひどいもんだった。その思い人が重傷を負ってからな。」(大樹)

 

 箒、分からないと思うが、俺の知っているもう一人の箒はそうだったよ。でも、

 

 「彼女はまた立ち上がったよ。それだけ強かった。そして、そいつの力になりたいって心の底から強く思った時に、彼女のその力でその思い人を助けたんだ。きっと、箒も彼女の様にできるはずさ。」(大樹)

 

 だからこそ、俺は信じているよ。

 

 「私、出来るかな?」(箒)

 「できるさ。束姉ちゃんが作ってくれた紅椿が力になるはずさ。」(大樹)

 「自信ないよ。」(箒)

 「皆がいるさ。」(大樹)

 

 俺の言葉に少しずつ瞳に力が宿る箒。ここまでくればもう俺が言うことは無い。

 

 「じゃあ、切るな。」(大樹)

 

 俺は視線をイモータルレイブンに移す。今は皆が必死で抑えている。でも、それも長くは続かない。さあ、ここから正念場だ。

 

 

 

 

side 三人称

 鈴たちの攻撃を受けて、それが煩わしくなったのかイモータルレイブンは体を身じろぎする。そして、イモータルレイブンの体に赤いラインが走り出す。

 

 「おいおい、それを食らったらゲームオーバーだろ!」(陸)

 「AICで動きを鈍くする!」(ラウラ)

 「せめて、少しでも遅らせれば!」(シャル)

 「こうなったら、殴って殴りまくる!」(鈴)

 「すべてのエネルギーを使って!」(セシリア)

 

 この場にいる者はだれ一人として諦めなかった。抵抗の意思を見せて強大な敵に立ち向かう。それをあざ笑うかのようにイモータルレイブンから赤いレーザーが無数に放たれた。だが、

 

 「同じ手を何度もさせるわけないでしょ!」(マドカ)

 

 マドカがサイレントゼフォルスのシールドビットを展開、仲間たちを守った。そして、高所から何度も何度もレーザーを打ち込んでいく。レーザーはシールドを通り抜けてイモータルレイブンの体に直接傷を与えていく。

 

 「お願い、紅椿。私に一夏を助ける力を貸して!」(箒)

 

 箒の思いに答え、紅椿から金色の光の粒子をあふれ出る。その光を受けた仲間たちのISはシールドエネルギーが全快した。

 

 「よし、一夏!」(大樹)

 「おう!」(一夏)

 

 大樹と一夏はそれぞれのISが持つ最強の一撃を発動する。

 

 「零落白夜!」(一夏)

 「爆竜轟咆!」(大樹)

 

 一夏が持つ雪片弐型は刀身が割れて、光の刃が出る。大樹は武器を紅龍牙から2式爆裂絶弓「紅龍翼」に持ち変える。待ち変えた紅龍翼はその形状を大幅に変え、竜の頭に翼を模したパーツが付いたものに変貌し、その咆口から紅蓮の炎を迸らせる。

 

 「うおおおおおお!!」(一夏)

 

 一夏は瞬時加速を使い、イモータルレイブンとの距離を一気に詰めて、シールドエネルギーを全て削る。シールドエネルギーがなくなったところを大樹から爆炎の矢を放たれた。その矢がイモータルレイブンの体に深々と刺さりイモータルレイブンの体を爆炎に包み込む。

 

 「「「「「「「よおおおおし!」」」」」」

 

 その場にいたほとんどメンバーが勝利を確信しただろう。だが、大樹だけは油断せずに炎に包まれるイモータルレイブンを見ていた。

 

 「気を緩めるな。たぶん、ここからが本番だ。」(大樹)

 

 大樹の言葉に全員が疑問を浮かべた。だが、この場で大樹のことを最も理解しているマドカはイモータルレイブンを見て、武器を向ける。全員がイモータルレイブンを見る。燃え盛る炎の中で炎がはじける音の他に何かがきしんで裂ける音がする。

 

 「KIIIIIIIIIIIIIIIIISYAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 炎の中から何かが叫び声を上げて砂浜に降り立つ。それは大きな翼を広げて羽ばたかせて炎を振り払った。その姿は漆黒の羽毛に覆われ、体はライオンのそれだった。その姿は現生の動物ではありえない異形だった。

 大樹はある程度、イモータルレイブンの正体について検討を付けていた。大樹が前世で戦った唯一の幻獣型のインベスがいた。そして、それが目の前でまた姿を現したのだ。

 イモータルレイブン改めグリフォンインベスは大樹たちを見て怒りの咆哮を上げる。

 大樹は砂浜に降り立ち、ISの装備を解除した。その体は先程までの戦いの傷が目立ち、満身創痍である。だが、それでもなお大樹の表情から弱弱しさは見えなかった。

 

 「ここからは仮面ライダーの出番だ。」(大樹)

 

 大樹の言葉に合わせるように一夏と陸も砂浜に降り立つ。そして、彼らから遅れて作業着に身を包んでいる颯斗も合流する。彼らはドライバーを取り出し、腰に巻く。

 

 『ドラゴンフルーツ!』

 『シルバーエナジー!』

 『カミカゼアクション!』

 「「「「変身!」」」」(大樹、一夏、颯斗、陸)

 

 彼らはそれぞれのドライバーにコアアイテムをセット、変身する。

 

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オン・バトルフィールド!≫

 ≪ソーダ!シルバーエナジーアームズ!≫

 ≪シグナルバイク、シフトカー!ライダー!デッドヒート、ハート!≫

 ≪ガッシャーン!レベルアップ!烈風!突風!疾風、怒涛!カミカゼアクション!≫

 

 仮面ライダー炎竜、仮面ライダー白銀、仮面ライダーロード、仮面ライダーエグゼリオン、4人の仮面ライダーが並び立つ。

 

 「行くぜ!」(白銀)

 「デッドゾーンの向こう側まで、付き合えよ!」(ロード)

 「超絶怒涛の達人プレー、見せてやるぜ!」(エグゼリオン)

 「この戦、俺が、俺達が、仮面ライダーが勝ち取る!」(炎竜)

 

 臨海合宿最大の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 




 グリフォンインベス対4人の仮面ライダーの戦いは激しさを増していく。そして、白銀は新たに手にした力を発揮。

「シャイニングエナジー!」

 そして、それぞれの関係が変わっていく臨海合宿。

 「私はずっと一夏ののことが、、、。」
 「私ね、颯斗のこと、、、、。」
 「もしかして、、、僕、、、。」
 「まさか、これが、、、。」

 加速していく前世からの因縁。物語は加速して終局へと向かって行く。

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