IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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再び変身した大樹はクモインベスに戦いを挑む。そして、それを見つめる新たな人物たちが。


仮面ライダー炎竜 第2話

side 炎竜

 俺は前のIS世界と同じように仮面ライダーに変身した。

 

 「大ちゃん?」(万夏)

 

 マドカが震える声で俺を呼びかける。

 仮面で俺の表情が見えないが

 

 「大丈夫。すぐに終わらせるから。」(炎竜)

 

 マドカを安心させるために優しく言った。

 

 「皆、ここで待ってて。」(炎竜)

 

 俺はそういうと研究所の外にいるであろう、クモインベスの下へ歩みだした。

 

 「GI、GIIIII!」

 

 クモインベスは手傷を与えた俺を警戒しているのか、声を挙げて、鋭く巨大な爪を有する両腕を広げている。

 俺はドラゴンフルーツアームズのアームズウェポン、竜炎刀と無双セイバーを構える。

 クモインベスは俺に飛び掛かるが俺は無双セイバーをガンモードに切り替えて、クモインベスを打ち抜く。装填された弾丸は全てクモインベスに命中する。

 攻撃を受けて、地面に落ちたクモインベスはすぐさま立ち上がり、両腕の爪を振るう。俺は2本の刀を使い、攻撃を防ぎつつ、着実に斬撃を当てていく。刃が当たるたびにクモインベスの体表から火花が跳ぶ。俺は距離を取るためにクモインベスを蹴る。

 クモインベスは俺に蹴られた反動で後方へ跳び、口から糸を吐き出す。この糸は非常に強靭で粘着力も強く、仮面ライダーといえどこれで拘束されると体の自由が利かなくなる。俺は前の世界ではこれを予期することが出来ず、身動きを封じられ、痛い目に遭った。そんなクモインベスの糸だが熱に弱い。俺は焦ることなくカッティングブレードを一回下ろした。

 

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 

 竜炎刀、無双セイバーの刃にエネルギーが充填される。俺はクモインベスに向かって、飛び上がり、無双セイバーで糸を切断、竜炎刀をクモインベスの脳天からまっすぐに振り下ろした。

 クモインベスは切り口から紅蓮の炎を上げて、爆発四散した。

 俺は周囲にインベスが居ないことを確認して、ロックシードを閉じて、変身を解除し、研究所にいる皆の下へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 大樹の戦いの様子を観察していた人物が居た。

 

 「ミッチー、あいつ。」

 「手慣れていた。まるで、あのインベスと一度戦っているみたいだ。」

 「戦い方も貴虎さんみたいだったな。」

 

 二人は遠くから変身を解いてログハウスへと走っていく大樹を見ている。

 

 「あいつが死んだ柏葉夫妻の息子か。」

 「ああ。ただ、現時点だとまだわからないことの方が多い。」

 「様子を見て、話を聞くか。」

 「今はタイミングとして良くないと思う。後日彼の下に訪ねてみよう。」

 

 二人の男は大樹が気づいていないことを確認するとその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 俺は研究所の中で待っていた皆の下に戻った。

 

 「皆、おわ、「大ちゃん!」うお!マドカ!」(大樹)

 

 俺の姿を見たマドカが抱き着いてきた。俺はともかく、今のマドカにとっては先程のインベスは恐怖の対象以外のなんでもないはずだ。俺はマドカの肩を抱いて、

 

 「もう、終わったよ。あいつが襲ってくることはもう無いよ。」(大樹)

 

 と言った。

 マドカもかなり恐怖を感じていたらしく泣いていた。俺はマドカが落ち着くまで抱きしめていた。

 

 「ねえ、大くん。あれって、インベスだよね。」(束)

 

 束姉ちゃんがマドカが落ち着いたところで俺に聞いた。

 

 「うん。クモの特質を備えているタイプ。」(大樹)

 「なんで、インベスが居るんだ?沢芽市であったインベス事変を最後に確認されていないはずなのに。」(正則)

 

 正則さんが言った。

 

 「一番の疑問は大くん、どうしてあれがインベスだって知っているの?それに戦極ドライバーとロックシードの使い方を知ってたみたい。明らかにこれが初めてじゃないよね。」(束)

 「それは、、、、、、。」(大樹)

 

 束姉ちゃんの疑問は最もだった。インベスが現れた時点で最も冷静に対処していたのは俺だ。さらに、話の限りではあまり詳しいことを知らないはずの俺が迷うことなくドライバーとロックシードを使っていただけでなく、それを使いこなしていたのだ。ただ、その理由を話したところで信じてもらえるだろうか。インベスよりも遥かに荒唐無稽な俺の話を皆が信じることが出来るだろうか。それを考えると束姉ちゃんの疑問に答えることが出来なかった。嫌な沈黙がその場の雰囲気を支配しようとしたとき、

 

 「束さん、どんな理由であれ、大樹のおかげで皆助かったんだ。大樹を問い詰めるよりも大樹に感謝するべきだろ。」(一夏)

 

 一夏が俺のことを庇ってくれた。正直、一番てんぱっていたと思っていたのだがそうではなかったらしい。

 

 「いっくんの言うとおりだね。大くん、束さんとマサくん、いっくんにマーちゃんを護ってくれてありがとう。」(束)

 

 束姉ちゃんが言った。正直、前世ではインベスを倒して感謝されることは一度もなかった。誰にも知られずに戦っていた俺にとってはありがとうの言葉は最も遠い言葉だった。そのため、なんだか照れ臭かった。それと同時に皆を護れてよかった、そう思った。

 俺たちはあの後、車に乗り町へと戻った。マドカは終始俺のそばを離れなかった。

 

 「大ちゃん。」(万夏)

 「どうした。」(大樹)

 「手、握って。」(万夏)

 

 俺はマドカが差し出した手を握った。

 その日は束姉ちゃんと正則さんは俺たちを織斑家まで送ってくれた。

 俺が車を降りたとき、

 

 「大くん、明日、研究所に来てね。さっきの話、特にマーちゃんの前だと話しにくいでしょ。」(束)

 

 束姉ちゃんが言った。

 

 「うん、分かった。」(大樹)

 

 俺はそういった後に

 

 「送ってくれてありがとう。俺の我が儘にも付き合ってくれてありがとう。」(大樹)

 

 束姉ちゃんと正則さんに言った。二人は笑ってまた明日と言ってくれた。

 俺は今の住居である織斑邸を見る。今の俺にとってはやはり親友の家という自覚が強い。

 この世界の俺はどのように過ごしてきたのだろう。この世界は色々と分からないことが多すぎる。特に俺自身のことがよくわかっていないのだ。あの俺の両親が研究を行っていた研究所で見たイメージ、俺の両親の殺害、兄貴の行方、分からないことだらけのこの世界で俺はまた変身した。

 

 「一夏、万夏!お帰り。」(春奈)

 

 家で一夏たちの母さん、春奈さんが出迎えてくれた。マドカはすぐに抱き着く。一夏はただいまと言った。

 

 「大樹、お帰りなさい。」(春奈)

 

 俺はその言葉で今の俺の居場所がここなのだと感じた。

 

 「た、ただいま。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は一人で束姉ちゃんの研究所に来ていた。研究所では狭いスペースの中で、束姉ちゃんと正則さんがとにかく、尋常でないスピードでキーボードを叩いていた。さらに研究所にはISの建造を行うスペースがあり、そこには製作途中と思われる赤いISが鎮座していた。

 

 「束姉ちゃん、正則さん!お邪魔します!」(大樹)

 「大樹、今俺も束も手が離せないから、篠ノ之神社か道場で待ってて!」(正則)

 「分かりました!」(大樹)

 

 明らかに二人が忙しいので俺は篠ノ之神社の方へ歩いていく。背後から束姉ちゃんのものすごい声が聞こえるが俺は知らないし、聞いていないし、あんな声を出すほどの仕事をやらなきゃいけない本人に責任がある。

 俺は二人が仕事を終えるまで神社で待つことに。篠ノ之神社で奉っている神様がどんな神様かは知らないし、そもそも神様に良いイメージを持っていない。だが、少なくともここの神社の神様は違うのを祈りつつ、俺は皆の幸せをせめて壊さないでほしいという願いを祈る。

 

 「神様に手を合わせるとは感心するな。」(柳韻)

 

 俺の姿を見た箒の父さんで神主で剣術指南役の篠ノ之柳韻さんが俺に声を掛けた。

 

 「お邪魔しています。」(大樹)

 

 俺は前世では一夏らとともにこの人の道場に通っていた。証人保護プログラムの件でいなくなってからはやり取りは無くなったのだが俺にとっては尊敬すべき先生の一人である。

 

 「束に用があってきたのだろう。」(柳韻)

 「今、忙しいみたいで正則さんが待っててくれって。」(大樹)

 「そうか。立ち話もあれだ、家に上がりなさい。」(柳韻)

 

 俺は柳韻先生に言われ、篠ノ之家に上がらせてもらった。

 居間に通されて、お茶を頂いた。

 

 「足を崩していなさい。流石にずっと正座をしているのは辛いだろう。」(柳韻)

 

 柳韻先生が崩してもいいと言ったので胡坐をかいた。調子はどうだ、箒とも仲良くしているかなど当たり障りのないやり取りをしていた。

 

 「君が体調を崩して、道場に通わなくなってから長いが、元気そうで良かった。」(柳韻)

 「はい。」(大樹)

 

 先生の話からこの世界でも俺は道場に通っていたらしい。けれども体調不良で長らく道場に顔を出さなくなっていたみたいだ。

 

 「昨日、言っていた探し物は見つかったのかい。」(柳韻)

 「はい。無事に見つかりました。」(大樹)

 

 前の世界では一夏たちの後見人として面倒を見ていたのですごくいい人ということは俺も知っている。ここまでのやり取りでこの世界でもそうだということが分かった。

 

 「大樹、やっと終わったよ。待たせてごめん。」(正則)

 

 正則さんが俺を呼びに来た。

 

 「お義父さん、お手数おかけしてすみません。」(正則)

 「いや、大した事は無いよ。それよりも君も束に付き合っていたのだろう?私たちにできることがあれば言ってくれ。」(柳韻)

 「いや、むしろここで生活させてもらっているだけでなく、仕事場を提供してくださっただけでもありがたいです。」(正則)

 

 ここまでのやり取りで束姉ちゃんはこの世界でも家族に迷惑をかけているらしい。前の世界と比べるとまだかわいいものだが。

 

 「大樹、もしよかったらまた道場にも顔を出してくれ。」(柳韻)

 「はい、先生。」(大樹)

 

 俺は先生にあいさつをして、正則さんと共に研究所へ向かう。

 

 「待たせてごめん。束の奴、今日締め切りの仕事を忘れていて、昨日の夜からずっと作業をしていたんだ。」(正則)

 「いや、俺は大丈夫です。先生とも久しぶりに話せたので。」(大樹)

 「本当、お義父さんには頭が上がらないよ。結婚の時も逆にうちの娘をよろしくお願いしますって言われて。」(正則)

 「すごく人としても目標になる人ですから。」(大樹)

 

 俺と正則さんは他愛ないことは話していた。

 

 「昨日、束が聞いたのは大樹を責めるんじゃなくて心配していたからなんだ。あまり、気を悪くしないで。」(正則)

 

 俺は正則さんと共に研究所に入る。そこには明らかに魂が抜けて、死に体になっているISの生みの親がいた。

 

 「正則さん、あれ大丈夫じゃないでしょ。」(大樹)

 「ああもう、束、大樹を呼んできたよ。起きなよ。」(正則)

 「ね、寝かせ、、、て。」(束)

 「そんなことを言ってないで、ほら体を起こす。」(正則)

 

 正則さんに言われ、束姉ちゃんがやっと体を起こした。

 目の下にはクマがあり、髪はぼさぼさと明らかに徹夜明けの束姉ちゃんが口を開いた。

 

 「う~んとね、大くん。昨日も聞いた通りだけど、ドライバーとロックシードのことは前から詳しく知んているんでしょ。」(束)

 

 ここまで来たら下手にはぐらかすのは意味をなさないから俺は正直に話すことにした。

 

 「うん。一夏たちにはかなりあやふやなことしか言わなかったけどこれらのことはよく知っているよ。」(大樹)

 

 そういって俺はドライバーとロックシードを出した。

 

 「インベスのことも?」(束)

 「知っているよ。あれが何なのかも。」(大樹)

 「いっくんたちに話さなかったのは?」(束)

 「不用意に心配をかけさせたくなかった。あんなことが無かったらそのまま、持って帰るつもりだった。」(大樹)

 「大樹、大樹のお父さんとお母さんの研究の詳しい内容は分かるかい?」(正則)

 「それは分からない。研究所があるのは知っていたけどどんなことをしていたかは知らない。」(大樹)

 「どうして、ドライバーとロックシードのことを知っていたの?」(束)

 「それは、、、、、、。」(大樹)

 「僕たちもそれを知りたいね。君がなぜ戦極ドライバーとロックシードを知っていて、使い方を熟知しているのか。」(???)

 

 研究所の入り口に二人組の男性が立っていた。

 

 「あんたたちは?」(正則)

 

 正則さんが問い掛ける。だけど、俺はこの二人の男を知っている。俺がただの大学生だった世界で画面越しで彼らの活躍を見ていたからだ。

 

 「僕は呉島光実、彼は同僚のザック。僕たちは沢芽市から来ました。彼と同じアーマードライダーです。」(光実)




大樹の前に現れたのはかつて沢芽市で激闘を潜り抜けた戦士、アーマードライダー龍玄=呉島光実、アーマードライダーナックル=ザックだった。二人の戦士と邂逅した大樹はここがどのような世界かを理解する。そして、大樹の前に現れる新たなインベス。炎を纏いし竜王がその名を再び名乗る。

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