IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 イモータルレイブンによって重傷を負った一夏と海中へと消えた大樹はそれぞれの精神世界で零式をはじめとした者たちと対話する。
 マドカたちは大樹と一夏が居ない中でイモータルレイブンと戦うもその猛攻に戦意がぐらつく。そこを復活した一夏、大樹が合流して、形成は変わり、さらにマドカのサイレントゼフォルスの覚醒、箒の紅椿の力でイモータルレイブンを撃破する。
 だが、撃破したイモータルレイブンから現れたのは巨大インベス、グリフォンインベス。そして、仮面ライダーたちが変身する。


仮面ライダー炎竜 第29話

side 三人称

 夕日が沈みゆく中、漆黒の巨獣グリフォンインベスと仮面ライダーたちが対峙する。ISに乗っている彼女たちも安全なところに降り立ち、戦いの行方を見守る。

 

 「これ、モンハンだ。」(エグゼリオン)

 「誰がどんな役割?」(ロード)

 「全員、近接戦闘に特化した剣士パーティだよ。」(炎竜)

 「俺は太刀使いか?」(白銀)

 

 当のライダーたちはグリフォンインベスと対峙しながら緊張感のないやり取りをしていた。ただ、手に持っている武器は下ろさず、グリフォンインベスから注意をそらさずにいる。

 グリフォンインベスはその巨大な翼を広げ、硬質化した羽をライダーたち目掛けて撃ち出す。ライダーたちはそれぞれの武器を使って、次々と襲い来る羽を防御していく。グリフォンインベスは発達した四肢を使い、ライダーたちに突進していく。

 

 「ふん!」(ロード)

 

 ロードは持ち前のパワーで真正面からグリフォンインベスを押しとどめる。

 

 「行くぜ!」(エグゼリオン)

 

 グリフォンインベスがロードによって止められるとエグゼリオンは高いジャンプ力でグリフォンインベスの背中を次々と攻撃していく。そして、炎竜と白銀は左右に分かれて、グリフォンインベスの両足を次々と切り付けていく。

 大きな巨体は強力な武器になるが小回りの利くライダーたちにとっては付け入る隙が多い。グリフォンインベスは身をよじったりして、抵抗するがそのたびに無防備なところをライダーたちは攻撃していく。

 

 「こいつ、攻撃が効いているのかよ!?」(エグゼリオン)

 「体がでかすぎ!ちまちま、やっていたらジリ貧だ!」(ロード)

 「焦るな!焦ってでかい攻撃を出しても、飛ばれて躱されるぞ!」(炎竜)

 「このままでもダメだろ!」(白銀)

 

 だが、グリフォンインベスの巨体はライダーたちの攻撃は蚊に刺された程度ぐらいにしか感じていないだろう。現に、グリフォンインベスもそこまで消耗が激しい訳ではない。だが、ここにはこのグリフォンインベスのことをよく知っている人物が居る。

 

 「良いか、颯斗と一夏はグリフォンインベスのの足を攻撃し続けろ。あの巨体なら足の一本がやられればそれだけで機動力が下がる。陸は翼をやれ。切り落とさなくても羽を落としていけばそれだけで空中での飛行能力が下がる。」(炎竜)

 

 炎竜は他のライダーに指示を飛ばしていく。それを聞いた白銀、ロード、エグゼリオンは行動に移していく。

 ロードの剛腕がグリフォンインベスの足を幾度も殴りつけていく。別の足を白銀がバニシングブレードで切り付けていく。エグゼリオンはグリフォンインベスの翼をガシャコンスピアーで次々と羽を散らしていく。

 炎竜はドラゴンフルーツアームズからシークァーサーアームズにアームズチェンジし、蒼雷杖を使ってグリフォンインベスの背中へと昇る。さらに炎竜はシークァーサーアームズからパッションフルーツアームズにアームズチェンジするとグリフォンインベス目掛けてパッションフレアカノンの引き金を引く。グレネード弾はグリフォンインベスの体に着弾すると次々とその体を焼いていく。

 

 「このまま、風穴開けてやるぜ!」(エグゼリオン)

 ≪キメワザ!カミカゼクリティカルストライク!≫

 

 エグゼリオンはガシャコンスピアーにガシャットをセット、ゲームエフェクト状のエネルギーがガシャコンスピアーの穂先に集中していく。エグゼリオンはそのままきりもみ回転をしつつ、グリフォンインベスの二つの翼に大きな風穴を空けた。

 

 「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!!」

 

 翼を穿たれた痛みからかグリフォンインベスが咆哮を上げた。

 

 「焼き鳥にしてやる!」(ロード)

 ≪急にデッドヒート!デッッッッッッッッドゾーーーーーーーーーン!≫

 

 ロードはシフトアップして全身が赤熱化。その状態で何度も何度も拳を叩きつけていく。拳が叩きつけられた個所は黒く焼け焦げていた。

 

 「新しく手にしたこの力で!」(白銀)

 『シャイニングエナジー!』

 ≪ロックオン、シャイニングエナジーアームズ!Light Wing!Light Wing!LalalalalalaLight!≫

 

 白銀は新たに手にしたシャイニングエナジーロックシードを使い、まるで神の使いである天使を思わせるシャイニングエナジーアームズにアームズチェンジした。白銀SEA(シャイニングエナジーアームズ)は全身を光で包み、グリフォンインベスの全ての足を同時に切り裂いた。

 

 「KIIIIIIIIIIIIIIIIN!!」

 

 グリフォンインベスは全ての足を破壊されたことによって地面に倒れ伏す。対抗するすべを失ったかのように見えるがグリフォンインベスは全身を赤く輝かせ、辺り一帯を焼き払う無数の光線を全身から放つ。見ているマドカたちは炎竜たちが焼き払われたと思った。だが、

 

 ≪キメワザ!爆走クリティカルフィニッシュ!≫

 

 レーザーのボディを呼び出し乗りこなすエグゼリオン。サクラハリケーンに乗り、赤い閃光を次々とかわす白銀。そして、

 

 「ふん!ふん!ふん!」(ロード)

 「だああああ、忘れてた!そもそも、あの攻撃出来るんだった!」(炎竜)

 

 ハイビスカストライカーに乗り、デッドゾーン状態でレーザーを弾き飛ばしていくロードと必死にハイビスカストライカーを操る炎竜ドラゴンフルーツアームズだった。その様子はどこか抜けているというか、だがそこに焦りはない。

 炎竜たちはグリフォンインベスの攻撃から無事に抜け出す。炎竜たちはグリフォンインベスの攻撃が止まった瞬間にそれぞれのバイクのエンジンを唸らせてグリフォンインベスに向かって行く。そして、彼らはバイクを操りながらドライバーを操作する。

 

 ≪ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 ≪シャイニングエナジースカッシュ!≫

 ≪ヒッサーツ!デッドヒート!≫

 ≪キメワザ!カミカゼクリティカルフィニッシュ!≫

 

 バイクから飛び上がる彼らは4人同時のライダーキックを放つ。グリフォンインベスはボロボロの翼を広げ、硬質化した羽を撃ち出すが次々と弾かれていく。

 

 「デッドゾーンの向こう側まで付き合ええええええ!」(ロード)

 「これでゲームクリアだ!」(エグゼリオン)

 「うおおおおおお!!」(白銀)

 「これで終いだ!」(炎竜)

 

 その勢いでライダーたちはグリフォンインベスに突撃していく。そして、彼らの一撃はグリフォンインベスの頭部を破壊し、体の中を突き抜けていく。彼らはその勢いのままグリフォンインベスの後ろに着地、その勢いのままに砂浜に4本の線を残していく。彼らの背後にいるグリフォンインベスは全身をエネルギーが走っていき、爆炎を上げて消滅した。爆炎に向かって振り返る4人の仮面ライダーたち。これで臨海合宿における大事件は終結した。

 

 

 

 

 

 某国某所。そこにはイリーナ、ナイト、藤村が居た。

 

 「それで?例のインベスはどうなったんだ?」(藤村)

 「結局は倒されたわ。まさか、あそこまで対処されるなんて。」(イリーナ)

 「まあ、そうなって当然じゃないのか?あっちにしてみれば手の内なんてわかり切っている相手だっただろう。」(藤村)

 

 彼ら、三人はどこかのバーのような場所におり、臨海合宿で暴れたグリフォンインベスについて話していた。ただ、口を開くのはイリーナと藤村だけでナイトは口を開くことは無かった。

 

 「それで、ビショップ。例のインベスはどうなのかしら?」(イリーナ)

 「最終調整を行うだけだ。あいつらのデータは今回ので十分に手に入った。それを入力すれば最強のインベスが誕生する。」(藤村)

 「そう、、、。これでキングの計画の邪魔となるあいつらを完全に、、、。」(イリーナ)

 

 イリーナの瞳には嗜虐的な輝きが宿る。これまでのやり取りに入らなかったナイトは席を立つ。

 

 「どこへ行くんだ?」(藤村)

 「俺は俺の好きにさせてもらう。そもそも、俺はあいつと契約したのは俺の満たす相手と出会わせることが出来るというからだ。」(ナイト)

 「勝手に行動するのは困るわ。それがキングの邪魔になるのなら、、、。」(イリーナ)

 

 イリーナはISを部分展開してライフルの銃口をナイトに向ける。

 

 「あいつに心酔するのは俺は別に構わない。だが、俺の邪魔をするのならば容赦はしないぞ。」(ナイト)

 

 ナイトはオーバーロードに変貌、自身の体から精製した剣をイリーナに向ける。

 

 「なあ、ここは俺から提案なんだがナイトには沢芽市に行ってもらうのはどうだ?それならば、ナイトの欲求も満たせて、キングの計画の邪魔にはならないだろう?それに不安ならば、クイーンがナイトを監視すればいい。」(藤村)

 

 藤村の提案に少し考え込むイリーナ。

 

 「分かったわ。でも、キングに申し出てからよ。」(イリーナ)

 「俺はそれでもかまわん。」(ナイト)

 「それじゃ、それで。」(藤村)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 大樹

 グリフォンインベスの討伐に成功した後、俺達に待っていたのはこの戦闘で完全に後方に置いていった千冬姉ちゃんと山田先生のお叱りだった。それはそれは長い時間が掛かって、それが終わった時の俺たちは精神的に非常に疲れた。

 

 「俺がいない間にそんなことをしていたとはな、、、。」(大樹)

 

 俺は一人旅館の中を歩いていた。時間は既に日が暮れて、夕食も食べ終わった。他のメンバーはと言うと、

 

 「僕はISの後片付けをしておくから、先に部屋に戻って良いよ。」(颯斗)

 「俺はシャルとラウラに花火を見せようと思ってさ。砂浜にいるから、良かったら来いよ。」(陸)

 「なんか、箒に呼ばれてな。大樹も来るか?」(一夏)

 

 てなことで一人ぶらぶらしていた。

 

 「長い一日だったな。」(大樹)

 

 俺は自分の手の中にある赤い竜のモチーフの指輪を見る。そう、第二次移行を果たした零式だ。新たな名前として煌竜と呼ぶようにした。

 今日の始まりは箒の専用機のお披露目でそこからハワイのアメリカ軍基地の壊滅、そこからは早かったが、、、。急にスマホが鳴り出した。俺はそのスマホを取り出して電話の相手を確認して出る。

 

 「どうした?」(大樹)

 「ねえ、今夜そっちの部屋に行って良い?」(マドカ)

 「今、颯斗が部屋にいないから来ても大丈夫。」(大樹)

 「今、部屋にいるの?」(マドカ)

 「いや、旅館のロビーから外を見ていた。」(大樹)

 「じゃあ、そっちに行くよ。待ってて。」(マドカ)

 

 俺は外の風景を見ながらマドカが来るのを待った。

 

 

 

 

side 颯斗

 皆のISの整備に使っていたものを片づけていく。まだ、3分の1ぐらいしか進んでいない。その中で僕は今日を振り返る。今日は、、、正直なことを言えばだれが死んだとしてもおかしくない戦いだった。皆が無事に生き残れたのは幸運だったのかもしれない。でも、あの場にいた全員が自分たちの持つ力を全て発揮して戦った。だからこそ、皆が生き残れたのかもしれない。

 

 「よし!」(颯斗)

 

 僕は額に汗をぬぐう。そして、旅館の方角を見て、ひとりに友人のことを思う。彼のことは、、、どういえばいいのだろう?大人びていて、戦いではほかの仲間を率いて、それでも僕と同じ同年代の高校生なんだと思う部分もあって、一言で言い表せる言葉があるようでない、そんな感じの人物だ。僕は考えることを一時中断してまた後片付けを再開する。流石にこのまま作業するには調子が上がらないな。僕はスマホの音楽アプリを起動、お気にのアニソンのプレイリストを流して作業をしていく。

 

 

 

side 陸

 「ねえ、それって、どこから?」(シャルロット)

 「ああ、旅館の女将さんに頼んだらくれたんだ。」(陸)

 「それが花火なのか?」(ラウラ)

 「そう。これは手持ち花火つって、市販されている花火だ。けっこう、きれいだし楽しめるぜ。」(陸)

 

 俺はシャルとラウラと一緒に砂浜に来ていた。全員、浴衣でこうして日本の夏の風物詩を楽しむということだ。まあ、それだけじゃなくて花火は俺のこれまでの生活の中で切っても切り離せないものになっている。良ければ、二人には楽しんでもらいたいかな。

 

 「おおし、けっこうあるから、楽しめるぞ。」(陸)

 「ねえ、陸。これってどうやるの?」(シャルロット)

 「ああ、女将さんが貸してくれたこれを使うんだ。」(陸)

 

 俺は地面において使うことが出来るろうそくを取り出して火をつける。そして、袋の中から適当なものを手に取って、火薬が入っているところに火をつける。すると、燃えだして色とりどりの火花が噴き出していく。

 

 「こうやって、花火は楽しむんだ。」(陸)

 「わ~、きれい。」(シャルロット)

 「まさか、こんなにも鮮やかな色の火が出るとは。」(ラウラ)

 

 花火を見て、二人の表情がきらきらしだした。流石に女の子には花火はきれいに見えるみたいだ。

 

 「女将さん、いっぱいくれたからどんどんやろうぜ。」(陸)

 

 俺がそう言うと二人も俺のやり方をまねて、花火を楽しみだした。

 

side シャルロット

 僕は今初めて花火をしている。話には聞いていたけどこんなにきれいなものだなんて。これを僕に教えてくれた彼は火が消えてしまった花火を水の張ったバケツにどんどん入れては新しい花火に火をつけていく。僕の前で見せた格好いい表情とは違ってすごく子供らしい楽しそうな表情をしている。あの夜、僕の前で見せたあの顔に胸が高鳴った。

 お母さんが死んでから、僕の生活は一変した。今まで出会ったことのない実の父に窮屈なあの場所、僕の心は死んでしまっていた。その中で言われたのがフランスの代表候補生としてIS学園へ入学したことだった。言われるがままに僕は男性操縦者として入学、、、それから、、、。

 

 「な、何をする!」(ラウラ)

 「秘技、花火噴水!あちちちちち!」(陸)

 

 陸と出会った。それから、陸と過ごすようになってから感じる胸の高鳴り。もしかして、僕、、、、、、、。

 

 「君のことが好きなのかな。」(シャルロット)

side ラウラ

 最初、陸からの誘いを受けた時、それの何が面白いのだろうと思った。だが、いざやってみるとなかなかに良いものだ。以前、教官がまだドイツにいた時に

 

 「何を見ているのですか?」(ラウラ)

 「ああ、家族の写真をな。」(千冬)

 

 そう言って教官が見せてきたのは家族で花火をしているときの写真だった。

 

 「ラウラ、もしも日本に来ることがあれば私に所に訪ねてきて良い。その時には私の家族も歓迎すると思う。」(千冬)

 

 その後の訓練で忘れていたが、教官は訓練以外では私に家族のことをよく話していた。その時に花火もしようと言われた。

 

 (なんで、忘れていたのだろうな。)(ラウラ)

 

 私が教官から教わったのは戦場での生き方以外にもたくさんあった。そのことを忘れていたなんて。いや、それを思い出せるようになったのは、、、。

 

 「ほらほら、どんどんやろうぜ。」(陸)

 

 きっと、こいつのおかげだ。私を病から救った桐ケ谷陸のおかげだ。こいつは次々と花火に火をつけてはまるで子供のようにはしゃいでいる。時折見せる兵士のような表情ではなく、年相応と言うのだろうか、屈託のない様子で楽しんでいる。

 桐ケ谷陸の様子を見ていると何か胸が浮つくような、そんな感覚を覚える。それだけではない。時折見せるたくましい表情を見ると、まっすぐなまなざしを見つめるとどうしようもなく胸が熱くなるのだ。

 

 「まさか、これが、恋なのか?」(ラウラ)

 

side 三人称

 旅館の大樹と颯斗が宿泊している部屋。今は、、、

 

 「痛てててててててててててててて!」(大樹)

 「ねえ、千冬姉さんに言って病院とかに見てもらおう。これ、応急手当で済ましていいケガじゃないよ。」(マドカ)

 

 大樹が半裸になってマドカに手当をしてもらっていた。手当をしてもらっている大樹はとにかく痛がっているが。

 

 「すみません、鎮痛剤をおおおおおお。」:;(∩´﹏`∩);:(大樹)

 「はいはい、今日は寝てしっかり休もうね。お薬ばかりに頼っていたら、別の病院に行かないといけないからね。」(マドカ)

 

 痛み止めを欲しがる大樹にマドカは寝る支度まで整える。このやり取りをする20分ほど前、、、。

 

 「チュッ、大樹、、、。」(マドカ)

 

 部屋に入るなり口付けを交わしていく二人。そのキスも触れ合うだけのものが徐々に激しくなっていく。マドカは気持ちの高ぶりのままに大樹を強く抱きしめたのだが、

 

 「あああああああああああ!」(>_<)(大樹)

 「え!?」(マドカ)

 

 そもそも、大樹の方はISが第二次移行をしたとは言え、当人は傷だらけでその傷も何一つ手当てをしていない状態だった。戦闘経験や前世の経験から多少は痛みを無視できる大樹だが、この時は戦闘時ではなく完全なプライベート、恋人と熱い夜を過ごそうという状態では流石の大樹も痛みは無視できなかった。

 

 

 

 

 「いやだ、まだ9時前、、、。」(大樹)

 「そんなにボロボロなのに休まないと、大樹は体は超人じゃないんだから無理はしないよ。」(マドカ)

 

 手当てを終えるとマドカは大樹を布団の方へと移動させる。そう、いくら前世の記憶を有している、ヘルヘイムの因子を持つとはいえ大樹の体は常人とそう変わらないものである。その状態で無理をすれば、戦いどころか日常生活にまで影響が出る。マドカは大樹がとにかく無理をする性格の人物であることを理解しているために、こうして世話を焼いているのだ。

 

 「大丈夫、気合で、、、。」(大樹)

 「もう寝る。」(マドカ)

 

 往生際の悪い大樹にマドカは頭の上に疑問符を浮かべる。別にセックス自体は一日やらなくても平気なのだが、大怪我をしているにもかかわらず、休むことを拒否する大樹にマドカもなぜなのかと思うようになる。

 

 「ねえ、どうして休まないの?」(マドカ)

 「心配させたから。」(大樹)

 「確かに心配したけど、それで無理はしないで。」(マドカ)

 「だから、、、。」(大樹)

 

 大樹は正面からマドカを見つめる。

 

 「今日、グリフォンと戦って、前の世界でのことを思い出してた。12月に入ってすぐ、最後のインベスを倒しに行って、、、それがグリフォンだったんだけど。本当は、、、あの日、一緒に俺に家に行かないかって言おうと思ったんだ。結局は言えなかったけど。その後に、兄貴を探しに学園を辞めて、、、帰ったら言おうとずっと心に決めていた言葉があるんだ。」(大樹)

 

 大樹の言葉を静かに聞くマドカ。

 大樹は痛みが走る体を起こしてマドカを抱きしめる。

 

 「俺とこれから一緒に生きて欲しい、俺のそばでずっと。」(大樹)

 「大樹、、、それって、、、。」(マドカ)

 「織斑マドカさん、俺と結婚してくれますか。」(大樹)

 

 ずっと、心残りだったことがあった。大樹にとってはその一言が言えずじまいだったのは大きな後悔でもあった。

 

 「ここはあの世界と違ってマドカにはちゃんと家族がいる。前は俺がマドカの家族になって支えるって思って、、、だから。」(大樹)

 

 心から愛する女性に言う最大級の言葉だろう。大樹はそれをずっと言おうと心に決めていた。

 

 「俺、かなり心配かけて、これからもかけるだろうし、それでも、マドカには幸せでいて欲しくて、ただ、これ以外に良い方法が思いつかなくて、だから、、、。」(大樹)

 

 口にした途端に大樹の口から次々と言葉が出る。それはあくまで自分の中の結論を何とか形にしようとしてるに過ぎない。その大樹の様子を見て、マドカはと言うと、

 

 「プっ、アハハ!」(マドカ)

 

 笑い出した。大樹のことをバカにするのではなく、必死に言葉を紡いでいく姿が愛おしくて、なんだか可笑しくて、、、彼のことが愛おしいからこそ出た笑いだった。

 

 「アハハ!あああ、もう、そんなに言わなくて大丈夫だよ。」(マドカ)

 

 マドカはそう言って大樹にキスをする。唇が軽く触れあうものだが、マドカの思いを現すには十分だ。

 

 「改めて、言います。私、織斑マドカは柏葉大樹を愛しています。だから、柏葉大樹さん、私の一生涯の最愛の人として、私の夫になってください。」(マドカ)

 

 そして、マドカの答えも決まっていた。そうでなければ体を許すことなどありえない、そして、死んでもなお、世界を超えてまで共にはいないのだ。ここに至るまでの前の世界の10年近くの時間とこの世界の16年という歳月、周りから見ても、かなり長かった時間だ。その時間を感じた大樹にとってもマドカの答えに対する返答も決まっていた。

 

 「こんな俺ですが、あなたのことを恋人として、妻として精一杯幸せにします。」(大樹)

 「不束者ですが、これからもよろしくお願いします。」(マドカ)

 

 二人の胸中は全く同じだった。とうとう、最愛の人と結ばれたと、そして、これはゴールなのではなく、二人にとって新たなスタートとなるのだと。この後はマドカは大樹を大人しく寝かせて、初夜はそのまま何もなく過ぎていった。

 

side 簪

 私は作業しているという颯斗のところへ来た。皆のISの整備もして、途中から合流して大樹たちと戦っていた。普段とは比べ物にならないほどの重労働だったのに、その後片付けもすると言って3時間ほどたった。流石に私はなんの連絡もしない颯斗がどうしているのか気になってやって来た。

 

 「颯斗、いるの?」(簪)

 

 私は声を掛けるけど返事が返ってこなかった。いつもならすぐに返事を返すのにどうしたのだろう?私はそう思って作業をしていた場所へと入っていく。すると、

 

 「あっ。」(簪)

 

 私の視線の先には作業している最中だろうに床の上で寝そべっている颯斗が居た。

 

 「風邪、ひいちゃうよ。」(簪)

 

 寝ていてそんなことは聞いていないのは分かっているけど、つい口に出てしまった。私は近くにあった毛布を颯斗にかぶせて、近くに座る。

 よく考えれば颯斗とはそれなりに付き合いが長く、それこそお互いのことはなんとなく分かるようになってきた。だからこそ、戦えなくなった理由もよく分かるし、そのことの原因となった私自身は颯斗に申し訳なく思っていることも多い。

 

 「こちらにおりましたの。」(メディック)

 

 私達の近くに白いシフトカー、メディックがやって来た。

 

 「どうしたの?」(簪)

 「少し、作業をしているには長いと思いまして。」(メディック)

 「寝ちゃったみたい。」(簪)

 「アニメを見る時もそのようになっていることが多いので少々心配で。」(メディック)

 「それはきっと大丈夫かな?」(簪)

 

 ハート、ブレン、メディック、初めて会った時はあのグローバルフリーズを引き起こしたロイミュードのリーダーたちということで最初は全く信用できなかった。それが今ではメディックは何でも相談できるお姉さんで、ハートは頼りがいのあるお兄さん、ブレンは、、、、、、、、、、、、便利になっている。

 

 「くれぐれも夜風の当たり過ぎに注意してください。」(メディック)

 「うん。お休み、メディック。」(簪)

 「おやすみなさい、簪。」(メディック)

 

  メディックはそう言うとどこかへ行ってしまった。私は颯斗の方へ視線を移す。そのあどけない寝顔を見て、、、、、、。

 

 チュッ。

 

 私は颯斗の頬にキスをした。颯斗は私の大切な友達だけど、ヒーローだけど、私の、、、、、好きな人。

 

 「正直に話すのは恥ずかしいけど。私ね、颯斗のことが好きだよ。」(簪)

 

 

 

side 箒

 夜の砂浜、私は一夏を呼んで二人で歩いている。こうしているとさっきまでものすごい戦いがあったなんて信じられなかった。

 

 「なあ、話ってなんだ。」(一夏)

 

 前を歩いている一夏が声を掛けてきた。そう、今日は、、、私の思いを一夏にはっきりと伝えるのだ。

 

 「私はずっと一夏のことが好き。」(箒)

 「ああ、俺もだ。」(一夏)

 

 えっ!今、俺もって!

 

 「本当なの?」(箒)

 「当然だろ?」(一夏)

 

 嘘、一夏、、、私のこと、、、。

 

 「嘘じゃない?」(箒)

 「嘘をつくわけないだろ、友達なんだから。」(一夏)

 

 え?と、も、だ、ち、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「一夏のバカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」(箒)

 

 私はそのまま夜の砂浜を走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 大樹

 「痛ててててて。」(大樹)

 「ほら、もう帰るから。」(マドカ)

 

 俺たちはバスに乗ってこれから学園へと戻ろうとしていた。とにかく、体の痛みがきつい。まあ、これもおかしいことじゃないし、これからはもう少し何とかなると思う。

 隣の彼女を見て、改めてもう彼女はただの幼馴染みじゃないのだなと思う。当然、それを示すものは何一つないけど心の持ちようとしては全く違う。

 

 「なあ、家に帰ったら、なんていうの?」(大樹)

 「今は急いで言わなくていいじゃない?もうちょっと、恋人同士の付き合いをしたいな。」(マドカ

 

 そう言ってくるマドカは俺の腕に自分の腕を絡ませる。俺はマドカの顔を上げさせるとそのままキスをする。皆が見ている状況でするのは、、、見せつけている感があって、まあ好みではないけど。マドカも腕を俺の首の後ろに回して、深くキスをしていく。周りがキャーキャーうるさいけど、そんなのどうでもいい。

 

 「私への当てつけか!!」(# ゚Д゚)(千冬)

 

 違うよ。彼氏いないのは千冬姉ちゃんの経歴が原因だと思います。そんなこんなで臨海合宿は終わりを迎えた。

 




 夏休みへと入り、大樹とマドカは沢芽市へと向かう。そして、現れたナイトとイリーナ。そして、マドカも新たな力を手にする。

 「もう、後ろで待ってなんかいられないの!!変身!!」

 ≪ブルーベリーアームズ!≫

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