IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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沢芽市にて戦極ドライバーを手にしたマドカ。大樹と共にナイト、イリーナと戦う。激闘の中でイリーナのISを破壊、ナイトを撤退まで追い込んだ。


仮面ライダー炎竜 第32話

side 一夏

 夏休みに入り、俺達はそれぞれ実家に戻っていた。セシリアは流石にイギリスに戻らざるを得なかったらしく、かなり悲しそうだった。今は家には俺と千冬姉、父さんと母さんが居るが大樹と万夏は束さんから呼ばれており、ここにはいない。

 

 「一夏、お父さんと鳳さんの所に行っているから頼むわね。」(春奈)

 「分かった。」(一夏)

 「千冬、たまにしか戻って来ないから部屋の整理を今のうちにしておけよ。」(秋人)

 「父さん、言われなくても大丈夫だ。」(千冬)

 「あなたの大丈夫は信用無いのよね。一夏、お姉ちゃんの面倒もお願いね。」(春奈)

 「おう、分かった。」(一夏)

 

 父さんと母さんはそのまま鈴の家へと行った。

 

 「そんなに信用無いか?」(千冬)

 「千冬姉、自分で片付けた試しがないだろ?」(一夏)

 「むう。」(千冬)

 

 確かに千冬姉の部屋は家族ぐらいしか知らないがとにかくヤバい。一度、箒と鈴が中を見たが、千冬姉に「このことは誰にも言うな。分かったな。」と言われて、口にしていないし、中を覗きに来ない。

 

 「ああ、一夏。後で頼むぞ。」(千冬)

 「その前に自分の部屋を何とかしてくれよ。俺も手伝うし。」(一夏)

 「いや、私一人で十分だ。」(千冬)

 「そう言って、部屋が全く変わらないだろ。」(一夏)

 「むう、信用できんのか?」(千冬)

 「良いから、さっさとやろうぜ。」(一夏)

 

 そう言って俺たちはもはや我が家では魔窟とされる千冬姉の部屋に入る。

 

 

 

 

 

side 大樹

 「、、、というと、これは、、、。」(大樹)

 

 俺は正則さんから渡されたとある資料を見る。

 

 「勇吾、大樹の両親に関する調査の結果だ。」(正則)

 

 先日、クロエと出会うという騒動があったのに俺が研究所に来るように言われていたのはこれのことだったらしい。

 

 「知り合いの探偵に大樹の親戚筋を調べてもらっていてな、その中で勇吾に関する詳しいことを調べてもらっていたんだ。当然だけど、大樹の両親、柏葉玲人、柏葉優菜、旧姓は晴野優菜についても調べてもらった。」(正則)

 

 俺に手渡された大きい茶封筒は中に入ってある調査結果の資料でパンパンだった。俺はその中身を見ようと資料の束に手を掛けた。それを正則さんは止めた。

 

 「最初に言っておくが、その中身は大樹にとってあまり喜ばしくないことも書かれてある。それでも、見るか?」(正則)

 「見るよ。この10年、俺が自分の家族について知っていることは両親が俺を、兄貴を愛していてくれたこととその兄貴が父さんと母さんを殺したこと。自分の血筋とか、そう言ったものを全く知らないんだ。少しでも父さんと母さん、兄貴について知れるなら、辛いことでもちゃんと知っておきたい。」(大樹)

 

 俺の言葉に正則さんは手をのける。俺は正則さんに礼を言って調査結果の紙の束に目を通し始める。

 俺の父、柏葉玲人は関東にあるとある地域で力を持っていた豪族の直系に当たる柏葉家の、分家の次男だった。柏葉家はご先祖を導いたとされる特定の動物を氏神として崇めており、その地域ではその動物を神聖なものとして信仰していたらしい。

 父さんは、あまり自分の家については良い思いを抱いていなかったらしい。高校に入学すると同時に家を出て、その後は考古学の博士号、生物学の学士を得たのちは世界中にある遺跡、神話や伝承を研究していたらしい。その中で研究先の地域でクラック(この時は父さんはそれが何なのかはわからなかったそうだ)を見つけるとクラックやヘルヘイムの研究をしていたユグドラシルに入った。

 母さんは医師の家系に生まれたが早くに両親が他界、それからは祖父母の下で生活していたらしい。医学の道を志して、努力の末に病理学者になった。その知識を買って、ユグドラシルは母さんを引き入れたらしい。

 父さんの実家、柏葉の本家はある日、突然老若男女を問わずに全員が死亡。原因は不明、そのためかその地域ではその死を呪いとして口に出すことは禁じられたらしい。ただ、その事件に生存者が一人いた。その人は、本家の出でその地域では神童としてもてはやされただけではなく、神の化身として信仰されてもいた。ただ、その事件がきっかけで引き取る人間は誰もいなかった。この時、ユグドラシルでヘルヘイムに関する研究をしていた父さんが一族で唯一残っている人物としてその生き残りを引き取った。その生き残りの神童こそ、俺の兄として共に生きてきた勇吾だった。兄貴を引き取った父さんはその5年後、母さんと結婚する。その1年後に俺が生まれた。

 

 「柏葉の本家に起きたことって?ここには書いていないけど。」(大樹)

 「残念ながらな、一族全員が死んだということ以外は分からないんだ。警察もろくな調査はしていなかったみたいで。分かっているのは原因不明で同じ時間に全員が急に死んだ、それだけなんだ。」(正則)

 「兄貴が、関係している?」(大樹)

 「あいつが何かをした、っていうのは考えられらないな。その時の勇吾はまだ小学生だからな、その時にはまだその片鱗さえなかっただろう?まあ、その10年間で大樹の知っているもう一人の、いや、俺達と知り合ったころにはもう、、、。」(正則)

 

 結果から分かったのは、それだけだった。

 

 「お父さんたちに関してはヴァルハラの貴虎さんに色々聞いた見たらどうだ?ここで分かったことの他にも教えてくれるはずだ。」(正則)

 「なかなか、機会が無くて、、、。でも、何時かは聞きたいな。」(大樹)

 

 俺は手にある紙の束を見て、そう言った。

 

 

 

side マドカ

 「めーん!!」(マドカ)

 「いやー!!」(箒)

 

 私は道場で箒を相手に試合稽古をしていた。こうやっていると、剣道では、きっと箒がダントツで強いと思う。箒といい勝負ができる一夏兄さんもかなり強い。私は剣道、というよりは剣術の方に興味を持っているから、そちらなら二人に勝てるかもしれない程度。大樹はと言うと、、、剣道で限定すると悪くはないけど、すこぶる強い訳ではないと思う。でも、それは一つの限定した時の話でこの道場にある槍や木刀、弓、体術、全てを使っても良いという条件でなら、千冬姉さんとも渡り合えるくらいの実力はある。私の記憶にある大樹は刀、錫杖、銃を代る代る使い、相手が防御を崩した上から強烈な攻撃を浴びせ続けていった姿が印象的だった。

 私と箒はその後も打ち合って、タイマーが5分の経過を知らせるまで打ち合っていた。

 

 「「ありがとうございました。」」(マドカ、箒)

 

 私と箒は面と小手を外して、礼をする。

 

 「万夏、強くなったね。」(箒)

 「うんうん、まだ箒の方が強いよ。」(マドカ)

 

 防具を外して、まとめていく中で箒がそのように言ってくる。私自身は強くなった実感はないけれど。私も防具をまとめて、道場から女子更衣室へと箒と一緒に行く。

 

 「ねえ、強くなったって思ったのはどうして?」(マドカ)

 「万夏の剣がね、すごく迷いのないまっすぐな剣だったの。だからかな。」(箒)

 

 そう話しながら、道着を脱ぐ箒。そこには私にはない、女性らしさを象徴する豊かなものが、、、。羨ましくなんかない、うらやま、、、、、、、しい!!(# ゚Д゚)どうして、こう私にはそういったものが無いの(´;ω;`)。

 

 「ん?万夏、どうしたの?」(箒)

 「何でもないよ、、、うん、ナンデモないよ。」(マドカ)

 

 私だって、何時かは、、、千冬姉さんのようなナイスバディに!!そう思いながら、道着を脱いだら見えた私自身の体、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。現実って、本当に無常。

 

 ♪~♪~(宇多田ヒカルの光)

 

 ん?私のケータイが鳴ってる。私は下着姿でそれを取った。

 

 「はい?」(マドカ)

 「万夏ちゃんか!?」(城之内)

 

 電話の相手は眼鏡、もとい、沢芽市にいるパティシエの城之内さんだった。

 

 「どうしたんですか?」(マドカ)

 「今、そっちの近くにとんでもないインベスが出た!?」(城之内)

 

 城之内さんの連絡を聞いて、私は急いで服を着て、道場を飛び出した。

 

 

 

 

side 三人称

 大樹とマドカは篠ノ之神社からハイビスカストライカーを起動、城之内らから聞いた場所へと急行していた。現場に近くなったところで大勢の人々がある方向から逃げてくるのを見た。そこでは何かが車を次々と撥ね飛ばしていた。

 

 「何が居るの?」(マドカ)

 「とにかく、向こうへ向かうぞ。」(大樹)

 

 大樹は人ごみを縫うようにハイビスカストライカーを操り、そこへ向かう。大樹とマドカがこの騒ぎを起こした元凶の元へとたどり着いた時、

 

 「あれが連絡のあったインベス、、、。」(大樹)

 「あれって、何。」(マドカ)

 

 二人の目の前に現れたインベスは大きさはアーマードライダーを超す3メートルほどでその見た目からサイの様に見えるが爬虫類のような体表、発達した四肢からどのような動物がベースになったのかが知れなかった。

 

 「そいつはベへモスインベス。お前たち、仮面ライダーのデータをもとに作り出した最強のインベスだ。」(藤村)

 

 二人の前にスーツを着た中年の男性、藤村正東が現れた。

 

 「あなたは何者?」(マドカ)

 「俺は藤村正東。そこの坊主の兄貴たちからはビショップ、と呼ばれているがな。」(藤村)

 

 勇吾の仲間、大樹とマドカはそれをすぐに理解して、警戒の色の露わにする。

 

 「いやいや、やる気満々のところ悪いが、今日のお前たちの相手は俺じゃなくてね。そこのベへモスがお前たちの相手だ。」(藤村)

 「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

 藤村の言葉に呼応するようにベへモスインベスが咆哮を上げる。

 

 「さあて、俺はここで退かせてもらおうか。それじゃ、生きていれば、またな。」(藤村)

 

 藤村はそのように言うと姿を消した。それと同時にベへモスインベスが二人に襲い掛かる。その攻撃を躱していく大樹とマドカ。

 

 「マドカ!今はこいつを。」(大樹)

 「うん!行くよ、大樹!!」(マドカ)

 『ブルーベリー!!』

 「ああ!!」(大樹)

 『ドラゴンフルーツ!!』

 「「変身!!」」(大樹、マドカ)

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オン・バトルフィールド!≫

 ≪カモン!ブルーベリーアームズ!マスケティアーオブサファイア!≫

 

 大樹は仮面ライダー炎竜に、マドカは仮面ライダーヴァルキリーへと変身する。

 炎竜はベへモスインベスに向かって飛び上がり、無双セイバーナギナタモードを上段に振りかぶり、勢いよく振り下ろす。

 ヴァルキリーはブルーライフルの穂先をベへモスインベスに向けて、突進突きをベへモスインベスの脚部へと放つ。

 本来であれば、両者が放った一撃は並のインベスの体を容易く傷つけることが出来、炎竜に至っては初球インベスであれば一撃で倒すことが出来る程である。しかし、

 

 ガキイイイイイイイイイイン

 

 甲高い金属音と共に炎竜とヴァルキリーの攻撃が弾かれた。炎竜もヴァルキリーも仮面の下で驚愕の表情を浮かべていた。

 

 「コイツ、予想以上に堅い。」(炎竜)

 「それなら、これで。」(ヴァルキリー)

 『ブラックベリー!』

 『パッションフルーツ!』

 

 炎竜はパッションフルーツロックシードを、ヴァルキリーはブラックベリーロックシードを開錠し、アームズチェンジを行う。

 

 ≪ソイヤ!パッションフルーツアームズ!情熱、メガフレア!≫

 ≪カモン!ブラックベリーアームズ!バスターオブクレイモア!≫

 

 炎竜は高い火力を誇るパッションフルーツアームズに、ヴァルキリーは重武装型のブラックベリーアームズにアームズチェンジした。

 炎竜はパッションフレアカノンのグレネード弾をベへモスインベスに幾度となく浴びせていく。ヴァルキリーはオニキスクレイモアの重量を生かして、ベへモスインベスの体へと勢いよく叩きつける。だが、それらの攻撃も大した効果はなくベへモスインベスの体にかすり傷すら付けられなかった。

 

 「嘘、、、。」(ヴァルキリー)

 「マドカ!一か八か、大技で!」(炎竜)

 ≪パッションフルーツスパーキング!!≫

 「うん。」(ヴァルキリー)

 ≪ブラックベリースパーキング!!≫

 

 炎竜とヴァルキリーは最大出力の必殺技、フレアエクスプロージョンとブラックエンドをベへモスインベスへと放つ。紅色の無数の弾丸と漆黒の波動がベへモスインベスに直撃、大爆発を起こした。本来であれば、必要のない程の高い威力の必殺技、それが二つ同時に放たれたということからベへモスインベスに対する炎竜の警戒度の高さがうかがえる。

 

 「こういう時ほど悪い方の直感が当たるもんだな。」(炎竜)

 

 炎竜のその言葉の意味はすぐに明らかになった。大爆発によって生じた煙が晴れるとベへモスインベスの姿が見えた。その姿は最大出力の一撃を受けたとは思えないほどだった。

 

 「なんで、こんなに硬いの!?」(ヴァルキリー)

 (本当に硬いだけなのか?硬いだけならスパーキングの出力ならかすり傷ほどは付くはず。何か特殊な能力でもあるのか?)(炎竜)

 「もしかして...。」(炎竜)

 ≪パッションフルーツオーレ!≫

 

 炎竜は出力を抑えた状態で再度フレアエクスプロージョンを放つ。それを見たヴァルキリーはなぜ同じことを、それも威力を下げてと思って見た。だが、その攻撃を様子を、一連の流れから見てヴァルキリーは炎竜の狙いを理解した。

 パッションフレアカノンから放たれたグレネード弾はベへモスインベスに直撃して爆発したように見えたが、その実、ベへモスインベスの体から数センチほどのところで止まり、爆発した。

 

 「からくりは分からないけど、無傷なのはそう言うことか。」(炎竜)

 『ドラゴンフルーツ!』

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!≫

 

 炎竜はドラゴンフルーツアームズに戻り、次は無双セイバーと竜炎刀の二刀流でベへモスインベスに向かって行く。

 

 ≪ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 

 炎竜は竜炎刀と無双セイバーにエネルギーを集中していき、ベへモスインベスに切り付けていく。竜炎刀を振った場所に無双セイバーも振るう。炎竜は幾度も同じ場所を寸分の狂いもなく何度も切り付けていく。

 

 「あんなの、出来るから。私だって、何もしないわけじゃないよ。」(ヴァルキリー)

 『ブルーベリー!』

 ≪カモン!ブルーベリーアームズ!≫

 

 炎竜のやっていることを理解したヴァルキリーはブルーベリーアームズへとアームズチェンジを行い、ベへモスインベスを遠距離から狙撃していく。それをただ闇雲に撃つのではなく、一つ目の弾の軌道と二つ目の弾の軌道が同一直線状になるように狙撃を繰り返す。

 一見して、やけくそになったかのような二人の攻撃。しかし、明確に目的を持った炎竜とヴァルキリーの攻撃はその目的を達成する。

 

 バキイイイイイイイン。

 

 何かが割れたような音が辺りに響く。炎竜が攻撃していた部分に大きな亀裂が走り、中にある内部組織が露出していた。そして、ヴァルキリーが狙撃して部分もその強固な甲殻に数発の弾丸がごく小さな範囲に深くまで撃ち込まれていた。

 

 「GIIIIIIIIIIIIIIYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 「この調子で押し切る!!」(炎竜)

 

 苦痛の叫びをあげるベへモスインベス。炎竜は露出している最も柔らかいところに竜炎刀と無双セイバーの刃を突き立てる。そして、再度ドライバーを操作しようとしたその時だった。

 

 「GAA、GA,KA,....。」

 

 ベへモスインベスは何かを発しようとしていた。

 

 「大樹!何か言おうとしている!!」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーはベへモスインベスの様子に警戒の色を現す。ヴァルキリーの言葉に炎竜は何かのヒントになるのではと刀を持つ手を緩めずにいつでもとどめを刺せるようにした。だが、それがいけなかった。

 

 「GA,,,ka...か、、、シ...カシ、、、ワバ、、、。タ...ス...ケ...。」

 

 ベへモスインベスから放たれたのは大樹の苗字と明らかな助けを求める声だった。そして、しわがれながらもその声は炎竜にとって記憶にある声の一つだった。驚きからベへモスインベスの顔を見る炎竜。

 炎竜を見つめる二つの瞳は右目が赤、左目が金色だった。

 

 「どうして...。」(炎竜)

 

 それらの全てが意味することを瞬時に理解する炎竜。あり得ないが、そうだとしか言えない真実。

 

 「なんで...そんな姿になってんだよ...。」(炎竜)

 「タ...ノ...ム...。モウ...ラクニ...シテクレ....。ワタシガ...ワタシデアルウチニ...。」

 

 前世において、大樹は鈴、セシリア、シャル、ラウラを殺している。何が起きたにせよ、大樹にとって最も忌まわしい記憶であり、現在でも大樹を苦しめている記憶である。その記憶が正しければ...。

 

 「だって、あの時...俺が殺したはず、なのに。」(炎竜)

 

 こんなことはあり得ない、そのように言いたいのか、頭からこの事実を拒否しようにもそうだとしか受け入れるしかない。

 

 「どうして、この世界にいるんだよ...ラウラ。」(炎竜)

 

 目の前のいるベへモスインベスは前の世界で死んだはずのラウラであった。炎竜は傷に突き立てていた竜炎刀と無双セイバーを抜いてしまう。

 遠くに居ても炎竜の言葉を聞いていたヴァルキリーはその言葉の意味を瞬時に理解する。

 

 「ソコニイルノハ、オリムラマドカ、ダロウ。」(ベへモスインベス)

 「まさか、あの世界のラウラ・ボーデヴィッヒなの?」(ヴァルキリー)

 「ソノ、ハツゲンハ...。オマエモソウミタイダナ。」(ベへモスインベス)

 

 ベへモスインベス、大樹とマドカのいた世界のラウラ(Aラウラ)は炎竜とヴァルキリーに語りだす。

 

 「ワタシハタシカニアソコデ、ダイゴカイモンド・グロッソデシンダハズ、イヤ、タシカニシンデイタ。」(Aラウラ)

 Aラウラは確かにあの世界で死んでいたと言うが炎竜もヴァルキリーもその言葉を信じられない。

 

 「カシワバ、オリムラマドカ。ホントウナラ、モット...ハナスベキ、ダガ...モウ...ジカン、ガ...。」(Aラウラ)

 

 Aラウラは頭を抱えており、意識が朦朧としていた。それは彼女が既に人としていられる時間が尽きていたことを示していた。

 

 「大樹。もう、楽にしてあげよう。」(ヴァルキリー)

 「...........。」(炎竜)

 「大樹?」(ヴァルキリー)

 

 ヴァルキリーは返事のない炎竜の様子を見る。その炎竜は右手がかすかに震えだしており、その手にあった武器を落としてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 「やはり、あいつの心を折るにはこれが一番有効か。」(藤村)

 

 この様子を近くのビルで見ていた藤村。彼は計画において最も大きな障害になるであろう炎竜=大樹を無効化するための方策を考えていたのだ。それがAラウラを改造し、ベへモスインベスを誕生させて、炎竜と戦わせることだった。

 

 「まあ、これでもう一度柏葉大樹が壊れてくれるなら、こちらとしては願ったりかなったりなんだがな。」(藤村)

 

 その顔はまるで何かを期待しているようでもあった。

 

 

 

 

 

side 大樹

 どうして、こう、俺の前には辛いことが起きるんだ。最初は前の世界での父さんと母さんの死、その後にあった束姉ちゃん、鈴、セシリア、シャル、ラウラ、数え切れない大勢の人々を殺した。ああ、目の前でまた同じことが起きようとしている。いや、とっくにそれよりも悪いことが、あの時に予想していた最悪の事態が起きている。こういう時に大半の人間は神はいないのだと言うが、俺から言わせれば、こんなことは底意地の悪い神様による最低最悪の仕打ち以外にない。これを目の前にして戦えだって?自分を殺してくれって?そんなことをまたしろって言うのかよ...。今までは頭ではそうすることがインベスになってしまった人間への、せめてもの、人間としての最後にやってられる慈悲だと思ってやって来た。それを、大切な人達にした、あの瞬間は俺にとっては最悪の、それまでの人生の中で最も封印したい記憶だ。

 

 「なんでなんだよ...。」(炎竜)

 「大樹!ラウラが来るよ!!ちゃんとして!!」(ヴァルキリー)

 

 こんなことを何度繰り返せばいい。何度繰り返せば終わるんだよ。

 

 「おいおい、何があったかは知らないけど。意気消沈している暇はないぞ?」(正則)

 

 

 俺を思考の底から引き戻したのはここにはいないはずの人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

side 三人称

 「間一髪だったな。」(正則)

 

 普段の白衣姿ではなく、まるで戦闘を想定していたかのような服装に身を包んだ正則がライドベンダー、鴻上コーポ―レーションが開発した多機能型バイクから降りた。炎竜たちに襲い掛かろうとしていたベへモスインベスは自身に群がる多数の小さな機械の動物、カンドロイドを煩わしいようで、その剛腕を振るっていた。

 

 「万夏ちゃん。状況を教えてくれないか?」(正則)

 「私と大樹はヴァルハラの人たちの連絡を受けて、それで...。」(ヴァルキリー)

 「で、あいつは?」(正則)

 「ラウラ・ボーデヴィッヒ。そのインベス。」(ヴァルキリー)

 「待て、今彼女はドイツにいるはずじゃ。」(正則)

 「私と大樹のいた、あの世界のラウラだよ。」(ヴァルキリー)

 「まあ、詳しいことは後で聞くよ。今は...。」(正則)

 

 「GGGGGGGGGGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

 「彼女を何とかしよう。」(正則)

 「でも、正則さんを巻き込むなんて。」(ヴァルキリー)

 「それは気にするな。それに、こういうことには慣れている。」(正則)

 

 正則は懐に入れていたものを取り出し、腰へと当てる。それから、銀色の帯が瞬時に伸びてベルトとなった。そして、正則はうなだれている炎竜に顔を向ける。

 

 「なあ、大樹。世の中、自分にとってとんでもなく良いことが起きる。そして、とんでもなく悪いことも。どっちかしかっていうのは絶対にありえない。でもな、そうやって清濁併せ吞む、そう言ったことを経験して成長していくもんさ。」(正則)

 

 その眼差しは優しく、その言葉は厳しくも炎竜を励ましていた。正則はベへモスインベスに向き直ると、ポケットから黄緑色と水色、茶色のメダルを取り出す。それらをベルトのくぼみにはめていく。

 

 「俺も、そうだった。そうやって、ちっふー、かがりん、お義父さん、お義母さん、箒ちゃん、黒江、そして、たばちゃんと出会って変われた。魔王になるかもしれなかった俺が、正義のヒーローをやるようになったのはその人たちがいたからだ。自分の罪を数え、それでも自分の手を精一杯伸ばして、友と共に戦う。それが仮面ライダーだ。見てろよ、後輩ども。」(正則)

 

 正則はベルトの右側にセットされていた物、NEOオースキャナーを取る、NEOオースキャナーの起動スイッチを押し、ベルトを右に傾ける。そして、

 

 ≪キン!キン!キン!ハヤブサ!ヤドカリ!カンガルー!≫

 

 ベルトにはめ込まれたメダルを読み込む。

 

 「変身!」(正則)

 ≪ハ・ヤ・ガ!ハヤガ、ハ・ヤ・ガ!≫

 

 メダルが読み込まれると空中にハヤブサ、ヤドカリ、カンガルーの絵が浮かび上がり、それらは正則の体へと向かって行く。正則の体は頭が黄緑色のハヤブサ、腕が水色のヤドカリ、脚が茶色のカンガルーへと変貌した。

 

 「仮面ライダーオーズNEO。これが俺の新しい力だ。」(オーズNEO)

 

 オーズNEOハヤガコンボは深く屈伸をすると、

 

 「そうら!!」(オーズNEO)

 

 十数メートル先にいたベへモスインベスに一瞬で近づき、ヤドカリの甲羅のようなアーマーが付いている右手で思い切り殴りつける。その威力はすさまじく、3メートルの巨体を持ち、固い甲殻に覆われていたベへモスインベスを後ろに数歩よろめかせた。さらに、オーズNEOはより高く飛び上がり、今度は空中から回転を付けた踵落としをベへモスインベスの頭部に炸裂させる。周囲に鈍い音が響き渡る。そして、オーズNEOはそこから畳みかけるようにラッシュを続ける。その度に辺りに鈍い音が響き渡り、同時にベへモスインベスの固い体表が剥がれ落ちていく。だが、ベへモスインベスもやられっぱなしではいられなかったようで、オーズNEOを睨みつける。すると、オーズNEOの動きが止まる。

 

 「これはAICか。」(オーズNEO)

 

 動けないオーズNEOにベへモスインベスはその剛腕を振り下ろす。良いようにやられていた恨みを晴らすように何度も何度も振り下ろしていく。並の相手であればもはや原形をとどめていたいないだろう。だが、相手は欲望の力を身に纏い戦う仮面ライダーである。その各形態は他のライダーとは一線を画すほどの力を持つ。その系譜を受け継ぐオーズNEOも例外ではない。

 

 「ずっと、AICを掛けていれば勝てたろうに。当てた瞬間に解いたからガードが間に合ったよ。」(オーズNEO)

 

 オーズNEOは仰向けになりながらも両手のヤドカリの殻を模したアーマーを合わせて巨大なシールドを作り、身を守っていた。そのシールドは先程の攻撃などまるでなかったように無傷だった。

 

 「そら、これでも食らえ!」(オーズNEO)

 

 オーズNEOはベへモスインベスの攻撃に合わせて両足をまげて、強烈な蹴りを放った。ベへモスインベスは大きく腕を弾かれた拍子に倒れる。

 

 「さて、これで最後にしようか。」(オーズNEO)

 

 そう言って、オーズNEOはNEOオースキャナーを取り出す。だが、炎竜がその腕を止めていた。

 

 「正則さん、それは俺の役目だ。」(炎竜)

 

 その隣にはヴァルキリーもいる。

 

 「分かった。でも、俺もやる。文句は受け付けないからな。」(オーズNEO)

 「はい。」(炎竜)

 ≪スキャニングチャージ!≫

 ≪ソイヤ!ドラゴンフルーツスカッシュ!≫

 ≪カモン!ブルーベリースカッシュ!≫

 

 三人はそれぞれ必殺技を発動、ハヤガキック、竜炎蹴、サファイアレッグによるトリプルライダーキックが倒れているベへモスインベスに決まった。ベへモスインベスは全身にエネルギーが走るとその姿を本来のラウラ・ボーデヴィッヒへと変えた。

 三人は変身を解き、大樹は倒れるラウラを抱きかかえる。

 

 「ラウラ、ごめんな。長く苦しませて。」(大樹) 

 「お前が謝ることなどない。」(Aラウラ)

 「それでも、こんな...。」(大樹)

 「なあ、柏葉。一つ聞かせてくれ。」(Aラウラ)

 「何。」(大樹)

 「もしも、私が一夏ではなく、お前のことを惚れていたら、違っていたか?」(Aラウラ)

 「いや。きっと、俺はそれを知りながら、付き合うことはしなかったよ。」(大樹)

 「全く、お前は嫁以上に女泣かせだな。嘘でも付き合っていたと言え。」(Aラウラ)

 

 その様子は命の灯が消えるとは思えないほど穏やかだった。

 

 「織斑マドカ。こいつのこと、ちゃんと見ておけ。一人でほっといたら何をするかわからん。」(Aラウラ)

 「うん。」(マドカ)

 「さよならだ、柏葉。くれぐれもすぐに私達のところへなんて来るな。それだけは約束しろ。」(Aラウラ)

 「ああ。約束だ。」(大樹)

 

 大樹はそう言うと指切りをしようと右手の小指を出す。Aラウラもそれに倣うが、その体が指切りをする前に金色の粒子となって消滅した。

 

 「肝心なところで、いつもこうだ。」(大樹)

 

 大樹のその言葉は重苦しいもので満ちていた。それを見て肩を抱きしめるマドカ。

 

 「うんうん。大樹はちゃんと、ラウラを救ったよ。」(マドカ)

 「ああ。約束は間に合わなかったけど、それでも、彼女を救った。」(正則)

 「それでも、、、。」(大樹)

 

 まるで、大樹の心模様を現すように空に雲がかかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ついにできた。これで、世界は終わる。」(勇吾)

 

 勇吾の目の前には漆黒の鋼鉄で作られた異形の搭があった。それはまるで、人々の亡骸で作られたように歪で禍々しいものだった。

 

 「キング、準備が出来ました。」(イリーナ)

 「そうか、なら始めようか。世界を終わりを、新たな世界の創造を!!」(勇吾)

 




遂に始まった勇吾の計画。二つの世界までに続く因縁は終わりを迎えるのか。危険を承知で戦いに挑む大樹たち。
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