IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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ある日、束たちの下へやって来た大樹は正則から両親、勇吾に関する情報を手渡された。その直後、街に新たなインベス、ベへモスインベスが現れた。ベへモスインベスに苦戦する炎竜とヴァルキリーだったが、突破口を見つけるものの、ベへモスインベスの正体が炎竜とヴァルキリーが以前に生きていた世界のラウラということが分かり、炎竜は戦意を失う。そこに正則が駆けつけて仮面ライダーオーズNEOに変身して、ベへモスインベスを圧倒する。戦意を取り戻した炎竜はオーズNEO、ヴァルキリーとともにベへモスインベスを苦しみから解放した。


仮面ライダー炎竜 第33話

side 三人称

 人々が平穏な日々を享受していたある日、突如として東京を中心に大きな揺れが観測された。それはイギリスのロンドン周辺、中国の北京、アメリカ東海岸、ブラジルのリオデジャネイロ、オーストラリアのシドニーでも観測された。そして、揺れと同時に歪な漆黒の搭が地中から出現した。その搭は先端に行くほどに尖り、さらにはあらゆる方向に刺を伸ばしていた。その見た目はまるで大樹のようだったがその塔の表面はまるで人間の亡骸で作られたかと思う程に歪で禍々しいものだった。

 塔の出現からほどなく、世界各地の放送がジャックされた。そこにはこの事件の首謀者が映し出されたのだった。

 

 「やあ、この世に存在する有象無象の塵芥ども。俺は新たなる世界の創造主、王だ。今から要求することはただ一つ。今、世界に配備されている全てのISを破棄しろ。この要求が通らなければ、世界の各都市にセットした塔を起動させる。起動したが最後、お前たちの世界は終わる。俺の要求を考え、実行するまでに24時間やろう。くれぐれも変な気を起こさないことだ。」(勇吾)

 

 アメリカを除く、全ての国が塔の破壊を行うためにそれぞれの軍を出動させる。だが、どの国も塔の破壊は出来ず、逆に塔から出現した謎の生物、インベスによって壊滅的な被害が出た。世界各国が大きな被害が出る中でアメリカは即座に要求を飲むことを決めた。

 

 「あれが...。」(大樹)

 

 騒動を起きて、2時間後。大樹は東京湾に出現した塔の下へとやって来た。遠目から見ても作り手の感性が分かるものであり、大樹は憎々しげに塔を睨む。

 

 「へえ、来たのね。」(イリーナ)

 

 大樹の近くにイリーナがやって来た。大樹は既にクラックから出していた竜炎刀を右手に持っており、いつでも攻撃できるようにしていた。

 

 「あそこなんだな、兄貴がいるのは。」(大樹)

 「他に誰も来ていないようね。」(イリーナ)

 「兄貴の奴が指定したからな。それに、俺も一人で決着(けり)をつけるつもりだったからな。」(大樹)

 「その考え、改めた方が良いわよ。」(イリーナ)

 「良いから、連れていけよ。」(大樹)

 「ふん。」(イリーナ)

 

 大樹はイリーナと共に塔へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、マドカたちは姿を消した大樹を探していた。だが、彼女たちにとって心当たりのあるところをしらみつぶしに探すものの見つけられなかった。

 

 「大樹の奴、一体どこに。」(一夏)

 「まさか、あいつ。お兄さんの所に行ったんじゃ...。」(鈴)

 「嘘でしょ。それで東京に?」(箒)

 「きっと、行ってる。」(マドカ)

 「万夏。」(鈴)

 「あんなことになっているなら、たぶん。」(マドカ)

 

 マドカの脳裏にここと別の世界においてあった出来事が浮かぶ。

 

 「皆!」(正則)

 「正則さん。」(マドカ)

 「大樹の居場所が分かった。」(正則)

 「どこなの!?」(マドカ)

 「煌竜の反応を探したら、東京湾に出てきたあの塔から反応が出ていた。」(正則)

 「まさか...。」(マドカ)

 「正則さん!あいつ、俺達に何も言わずに行ったってことかよ!?」(一夏)

 「大樹のことだ。何も言わずに行くだろうな。」(正則)

 「もしかして...。」(マドカ)

 「万夏。心当たりがあるの?」(箒)

 「大樹、あの放送があった時に誰かから電話があったみたいで。」(マドカ)

 「勇吾の奴だろうな。」(正則)

 「私、東京に行く。大樹のこと、一人で放っておけない。」(マドカ)

 

 マドカは強い決意を瞳に宿す。その姿を見た面々も同様の決意を持っていた。彼らはほどなく東京へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識家、日本政府直属の暗部組織でもあるそこでは東京湾に出現した塔の調査を迫られていた。しかし、通常兵器が通用しないインベスが多数出現していることからドローンなどの無人偵察機による偵察も失敗してきた。現当主でISロシア国家代表の更識楯無は事態の収拾を迫られていた。

 

 「全く、こんなことになるならヴァルハラともっと連携を取るべきだったわね。ここまでの情報じゃ下手の突入すらできないじゃない。」(楯無)

 

 彼女を悩ますのはやはりインベスの存在である。ISでも簡単に抵抗することが出来ない未知の生物。個体によっては第3世代機ですらも対抗できないインベスは学園最強を自負する彼女でも情報を含め、念入りに準備したかった。

 

 「仕方ないわね。私が出るしか...。」(楯無)

 「お姉ちゃん。」(簪)

 「どうしたの?簪ちゃん。」(楯無)

 「私、あそこに行く。」(簪)

 「あそこって?」(楯無)

 「あの塔。」(簪)

 「嘘でしょ、簪ちゃん。」(楯無)

 「本気だよ、お姉ちゃん。私、お姉ちゃんの力になりたい。」(簪)

 「それでも、あんな危険な場所に簪を行かせられないわ。」(楯無)

 「危ないことなら、ずっと前からあった。それで困っている人達がいるんだよ。放っておけないよ。」(簪)

 「簪ちゃん。」(楯無)

 「それに、もう颯斗は行ったよ。」(簪)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「颯斗、そこを曲がってください。そこの道ならば早くに行けます。」(ブレン)

 「ありがとう!ブレン!」(颯斗)

 

 颯斗は簪が楯無に話している時、自転車を使って東京へと向かっていた。今回のことが起きた時、即座に準備をして行動に移ったのだ。颯斗は懸命に自転車をこいでいく。颯斗が東京へ向かって行くほどに東京から出ようとする車や人が多くなっていく。颯斗は人通りの少ないルートをブレンに案内してもらい、道を急いでいく。

 

 「颯斗、何か作戦はあるのか?」(ハート)

 「いや。今まで通りの、その場の勢いだよ!!」(颯斗)

 「良いのですか?簪たちと行かなくて。」(メディック)

 「うん。でも、かんちゃんたちならきっと来るよ。」(颯斗)

 「では、なぜ先に?」(メディック)

 「行かないといけないからさ、皆、きっとね。」(颯斗)

 

 

 

 

 

 

 

 

 「颯斗が?」(楯無)

 「自分が頑張れるようになったのは大樹のおかげだって、大樹がきっと行くだろうから自分も行くって。」(簪)

 

 簪の口から語られるのは颯斗の決意だった。

 

 「あの時と同じように、颯斗は行ったよ。だから、私も行く。誰かの助けになるのなら、私もそこに行く。」(簪)

 

 そう語る簪も決意の固いようでそれが表情にも表れていた。それを見た楯無は説得は無用だということを悟る。

 

 「分かったわ。なら、簪ちゃん。しっかりと準備をしないといけないから。今から30分で支度をするわ。良い?」(楯無)

 「うん!」(簪)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖都医大付属病院電脳救命救急センター、通称CR。陸はそこで彼の恩人で小児科医の宝生永夢、外科医の鏡飛彩、貴利矢と共に例の放送を見ていた。

 

 「何が目的なんでしょう?」(永夢)

 「現時点で分かっているのはISの破棄だけだ。だが、それが目的ではないだろう。」(飛彩)

 「大先生の言うとおりだ。こいつ、要求を飲んだところであの塔を起動させない考えはないな。」(貴利矢)

 

 放送を見ていた彼らは一様に勇吾の発言に裏があるということに感ずいていた。

 

 「もう、ピプペポパニックだよ~!!」(ポッピー)

 「これ、どうなるのかな?」(シャル)

 

 共に見ていたドレミファビートのバグスター、ポッピーとシャルも不安そうにする。その中で、

 

 「おし、俺、行ってきます。」(陸)

 

 とまるで散歩にでも行くかのような調子で陸が言った。

 

 「陸君、どこに?」(永夢)

 

 陸の発言が今一つ理解できない永夢が問い掛けた。

 

 「今、映ってるそこに。」(陸)

 

 明らかに近所に散歩に行くような軽い調子で問題の場所へと行くという陸。その発言に永夢とシャルは口を大きく開けて驚き、飛彩も目を見開く。普段から面倒を見ている貴利矢は額を抑える。ポッピーに至っては

 

 「えええええええええええええええええええええええええ!!」Σ(・□・;)(ポッピー)

 

 と大声で叫ぶ始末だった。

 

 「お前なあ、分かっているのか?あそこは自分たちの領分を遥かに超えてやがるんだぞ。」(貴利矢)

 「いや、だって行かなきゃじゃん。」(陸)

 

 その一言に言葉を続けようとしていた貴利矢が口を閉じた。

 

 「俺、先生たちのオペ、すぐそばでずっと見てきた。その中でさ、やっぱり誰かのために戦うってすごく大切なんだなって思ってさ。きっと、あれの所為で苦しむ人たちが大勢出る。だからさ、行くよ。」(陸)

 

 あくまでその口調は軽いものだったが陸の眼差しは強かった。こうなっては決意が固いことを知っている貴利矢は永夢と飛彩に助けを求める視線を投げかけるが、貴利矢と同じくらいに陸との付き合いが長い二人も同様の気持を表すだけで陸を止めることは無かった。

 

 「はあ、分かった。でもな、自分の命がやばいって状況になったらすぐにその場を離れろ、良いな。」(貴利矢)

 「うっす!!」(陸)

 「おい、新人。これを持っていけ。」(飛彩)

 

 飛彩は陸に金色のガシャットを渡す。

 

 「飛彩先生、あざっす。って、これドラゴナイトハンターじゃないっすか!?」(陸)

 「今のお前なら使えるだろう。恐らく、今回のオペにはそれが役立つはずだ。」(飛彩)

 

 飛彩が渡したのはレベル5のガシャット、ドラゴナイトハンターZだった。高い能力と引き換えに複数人での使用が前提となるこのガシャットを渡したということは飛彩の中で陸を認めたということでもあった。

 

 「お前はまだ新人だ。それでも、それだけの決意をもってオペに臨むならドクターを志すものとして俺はお前を扱う。分かったか?」(飛彩)

 「はい!!」(陸)

 「陸君、しっかり頑張って。僕たちも、僕たちのできることをするよ。」(永夢)

 「だああもう、大先生も永夢もそう言うなら俺もしないとな。くれぐれも無茶はすんなよ。」(貴利矢)

 

 貴利矢たちは陸に激励の言葉を掛けていく。

 

 「待って、陸!僕も一緒に!」(シャル)

 「いや、シャルは待っていてくれ。何かあったら、先生たちの手伝いをして欲しいんだ。」(陸)

 「でも...。」(シャル)

 「大丈夫だって。じゃあ、行ってきます!!」(陸)

 

 陸はそう言って、CRから出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京湾、漆黒の搭内部。イリーナに連れられた大樹はその最上階へと来ていた。そこには、ナイトと藤村の姿もあった。そして、その遠く先にある玉座に柏葉勇吾が座っていた。

 

 「ほかの虫けらたちはいないようだな。」(勇吾)

 「あんたが俺一人で来いって言ったからな。皆には黙ってここに来た。」(大樹)

 「全く、つくづく愚かな弟だな。」(勇吾)

 「そもそも、あんたと俺のことで皆を巻き込むつもりはなかったんだ。おかげで手間が省けた。」(大樹)

 「今から、きっかり3時間後に世界中の塔を起動させる。そうすれば、塔の基部にあるウィルスがばらまかれ、世界中へと広がっていく。あの世界で使ったウィルスとは全くの別物だ。感染すれば、全身のいたるところを大幅に変異させ、インベスすらも超えてオーバーロードへと変貌させる。その過程で8割の人間が変異に耐えることが出来ないだろうからな。まあ、生き残った奴らは軒並み俺の支配下に置くがな。」(勇吾)

 「そのためにずっと姿をくらませていたのか。」(大樹)

 「これで、世界は終わる。この俺を頂点とした新たな世界の肥やしになることでな!!」(勇吾)

 「なあ、そんなに憎いのか?」(大樹)

 「ああ?」(勇吾)

 「そんなに自分のことを認めなかった世界が憎いのか?そもそも、ここはあんたが憎んだあの世界とは違うんだ。それを分かっていながら、まだあんたは世界を滅ぼそうとするのか?」(大樹)

 「決まっているだろ!!この俺を、全てにおいて優れている俺を認めなかった世界など、無い方がまし、いや断然正しいに決まっている!!俺の手に掛かれば、人間が新たな進化をすることなど容易かったのに!!世界はあの、篠ノ之束が生み出した玩具の方に興味を示した!!俺の研究なぞ、それと比べれば、大したことは無いと言われた!!大した能もない凡人どもが、この俺を無価値と評したんだ!!それだけじゃない、あのおもちゃを動かせるというだけで、自分たちがさも上位にいると勘違いしている屑どもも俺のことを見下しやがって!!あいつらの下らん仕打ちが無ければ、俺は今頃...。」(勇吾)

 

 勇吾の口から出るのはまるで子供の駄々だった。それを聞き、見ている大樹の中で兄に対する最後の情のひとかけらが消えた。

 

 「兄貴、あんたのこと、血のつながった家族だと思っていた。生物学上は、少ない繋がりだったけどな。でも、あんたは自分以外の全てを認めていなかった。なら、せめての情けとも思っていたけど、あんたにかけてやるほどのものは俺にはもうとっくにない。だから、俺はあんたを倒す。いい加減に終わらせようぜ、こんなクソみたいな戦い。」(大樹)

 

 大樹はそう言うと戦極ドライバーを取り出し、装着する。

 

 「お前には、飛び切りの絶望をやろうと思っていた。そのためにこの世界の終わりを見ることが出来る最前列を用意したんだよ!お前は楽には殺さない。手足をもいで、何もできない屈辱を与えて、お前の大切なものたちが醜く変り果てる姿を見て、無様に殺してやる!!」(勇吾)

 

 勇吾はそう叫ぶとハンドルの付いた黒いドライバーを装着する。

 

 『ビルドドライバー!』

 

 大樹はそれを見て、驚きの表情を一瞬見せるがすぐに表情を戻し、ズボンのポケットから取り出したドラゴンフルーツロックシードを開錠する。

 

 『ドラゴンフルーツ!』

 

 勇吾は懐から漆黒のボトルを取り出し、そのボトルを振る。そして、どこからか出てきた黒と銀の虎型のロボットが勇吾のドライバーと合体する。

 

 『ジャークタイガー!』

 

 「変身。」(大樹)

 ≪ロックオン、ソイヤ!ドラゴンフルーツアームズ!竜王、オン・バトルフィールド!!≫

 

 大樹は仮面ライダー炎竜ドラゴンフルーツアームズに変身した。

 

 「お前にはすべてを超える絶望を見せてやる!!」(勇吾)

 

 勇吾は胸に緑の光が発せられて、そこから植物の蔦に覆われていく。その蔦が勇吾の全身を包み込んだ瞬間に一気に茶色に枯れて吹き飛ぶと虎型のオーバーロードの姿を現した。

 

 「クイーン!ナイト!ビショップ!俺の糧になれ!!」(勇吾)

 ≪Evil up ヘルヘイム!グワングワングワン...≫

 

 勇吾がボトルを装填したビルドドライバーのハンドルを回すとイリーナ、ナイト、藤村へと透明のパイプがベルトから伸びていく。パイプが彼らに触れた瞬間、彼らは植物の蔦に覆われて、緑色の液体となる。パイプから緑色の液体となったイリーナたちを勇吾は吸収していく。

 

 「へえええええんしいいいいいいいん!!」(勇吾)

 

 ≪デストロイタイガー!ジャーク!悪いいいいいい!!≫

 

 勇吾の姿は銀色に黒のラインが入った虎のアーマーを装着した仮面ライダーとなった。

 

 「俺の名は、ジャーク。仮面ライダージャークだ!!」(ジャーク)

 

 ジャークはそう叫ぶと炎竜に飛び掛かる。そして、炎竜も無双セイバーナギナタモードを手にして、迎え撃つ。

 

 「ゆうううううごおおおおおおおお!!」(炎竜)




激突する炎竜とジャーク。東京へ続々と集まる仲間たちの前に無数をインベスが襲い来る。その中で東京に彼らもやって来る。

 「この時を、待っていた!!」
 「私達の目的はあくまで柏葉勇吾よ。」
 「それじゃあ、派手にぶっ飛ばしてやるよ!」

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