side大樹
109の事件が解決、学園祭も終えて、簪と颯斗も付き合うようになってから数日が経った。その間に一夏に思いを寄せている面々がやきもきしたり、颯斗と簪がデートをしたり、俺とマドカはデートをしたり、エッチをしたり、一緒に映画とかを見たり、エッチをしたり、、、まあ、いつも通りだった。そんなこんな秋が近づくある日だった。
「これって、前にもあったよな?」(大樹)
「あったね。」(マドカ)
今、俺とマドカの目の前にはこれ見よがしに開いているクラックがあった。そう、いつぞやも似たようなことがあったのだ。あれはタッグトーナメントが終わったあとで、突然寮の部屋にクラックが開いて、そこから別の世界へと行ったのだ。何やら、モンハンのモンスターたちに似た怪人と戦い、仮面ライダー電王・ブレイズをはじめとした異世界の仮面ライダーたちと戦った。その戦いが終わって無事に戻れたが(ちなみに戻って来た時の時間経過はなし、居なくなった時間ジャストに送って貰った。)。そんな、まあ、入ったら面倒ごとがあるようなクラックが学園の校舎近くの広場に開いていた。
「なんか、ロックシードがおかしいと思ったらこれか。」(大樹)
「ねえ、これって入った方が良いの?」(マドカ)
「いや、入ったら絶対に面倒なことになるって。」(大樹)
「見なかったことにして、今日はこの後の授業に出ない。そして、部屋に戻る。どう?」(マドカ)
「すこぶる賛成。」(大樹)
「いや、その選択って良いの?」(颯斗)
いつの間にか後ろにいたのは友人カップル。いや、だって面倒じゃん。
「流石にトラブルに巻き込まれるのはなあ。」(大樹)
「まあ、ねえ。」(颯斗)
「ねえ、これっていつ閉じるの?」(簪)
「私にはちょっとわからなくて。」(マドカ)
「貴虎さんの話だと最短で十数分、長くて半日以上。破壊は出来ないし、ここらを封鎖する以外に方法は無し。」(大樹)
「じゃあ、先生たちに言った方が良いね。」(颯斗)
そう言ってその場を離れようとした俺達。俺達が移動しようとした視線の先に新たなクラックが出現した。
「いや、ダメだろ、それ。」(大樹)
俺の言葉を否定するようにクラックから漆黒のぼろ布を纏い、くすんだ青色のライドウェア、毒々しい赤色の鎧を纏った鎧武者が現れた。その鎧武者は大樹たちを見るとオレンジロックシードの専用アームズウェポン、大橙丸に似た赤黒い刀と無双セイバーを抜いた。
「ねえ、なんかやる気だよ。」(颯斗)
「なんでかね。」(大樹)
鎧武者はそのまま両手の武器を構えると俺たちに武器を振るってきた。それをどこからかやって来たバイクのミニカー、ハートとメディックが攻撃することで防ぎ、
≪ゴールドドラゴンフルーツ!≫
俺はロックシードを開錠して、武器を召喚。居合抜きの要領で相手を切り付ける。鎧武者は俺の攻撃を受けて、俺達から距離を取る。
「何が目的かは知らないが、やって来るなら容赦はしないぞ。」(大樹)
俺たちはそれぞれ目の前の相手に対して戦闘の意思があることを表明する。目の前の鎧武者はそれを見て手元の武器を高く掲げる。
「やるんならやってやる。」(大樹)
「ハート、行くよ。」(颯斗)
「ああ。」(ハート)
≪ロックオン!ソイヤ!ゴールドドラゴンアームズ!黄龍、アップライジング!≫
≪シグナルバイク、シフトカー!ライダー、ロード!デッドヒートハート!≫
俺は仮面ライダー炎竜ゴールドドラゴンアームズに、颯斗は仮面ライダーロードデッドヒートに変身した。俺は光龍剣を振るい、颯斗はその剛腕で相手をぶん殴っていく。だが、その攻撃にどことなく違和感を感じる。
(なんだこの感覚?手ごたえ自体はあるのに、いくらやっても怯むそぶりを見せない。それに、手ごたえはあるけど、こいつの芯を捉えられない。)
いつもであれば相手に攻撃が通った瞬間に感じる手ごたえの他に相手の体にある芯を捉えた感覚も覚える。それが今回の相手には無かった。正直、こんな相手は初めてだった。
side 3人称
戦いが始まっても輝龍とロードは決定打を見いだせずにいた。彼が対峙する鎧武者は攻撃自体は通用しているのだが、それが鎧武者に対して致命的なものにはなっていない。切り付けても、殴りつけても、それは攻撃が当たったという手ごたえが返ってくるだけでそれ以上に確実に手傷を与えているという手ごたえが返ってこないのだ。
「なんか、おかしくない?」(ロード)
「颯斗もか?」(輝龍)
戦いの中でそれを確認し合う輝龍とロード。
「当ててるだけ。それだけしか感じない。」(ロード)
「どういうわけかな。しかも、効いているそぶりが無いと来てる。」(輝龍)
手立てを考える両者だが現状ではどのような手を打っても大した結果は得られないことが容易く予想できた。
≪ブルーベリーオーレ≫
「お願い、打鉄弐式!!」(簪)
その中で彼らの後方から鎧武者に向かって青色のレーザーと無数のミサイルが飛んでいく。それらは鎧武者に当たって、大爆発を起こした。
「大丈夫、大樹!」(ヴァルキリー)
「ああ、一息付けた。ありがと。」(輝龍)
「これでやった?」(簪)
「それならいいけど。」(ロード)
輝龍とロードが苦戦している様子から後方から援護したヴァルキリーと簪。だが、
ブオオオオオオオオン!!
鎧武者は燃え盛る炎を刀で振り払い、傷一つついていないその姿を見せた。
≪ブラッドオレンジスパーキング!!≫
鎧武者は戦極ドライバーを操作して、刀にエネルギーをためて輝龍たちに斬撃を放った。その斬撃は彼ら全員に同時に当たった。
「があああ!!」(輝龍)
「ああああ!!」(ヴァルキリー)
「うああああ!!」(ロード)
「きゃあああ!!」(簪)
彼らは爆発に吹っ飛ばされてクラックの中へと飛ばされてしまった。彼らの姿はクラックの中へと消え、クラックは閉じてしまった。
「ほうほう、その体の調子はどうだ?」(???)
鎧武者の背後に新たなクラックが開く。そこから、漆黒の体に赤銅色の仮面を持つ仮面ライダーが現れた。
「この肉体、以前の私の物と変わらないようだ。」(鎧武者)
「流石は幻魔王、依り代となった体を完全にものとしたようだな。」(???)
「それで、準備はどうだ?」(鎧武者)
「順調だよ。私の息子たちもすでにな。あとは拾ったサルどもだが、そちらはまあ私の好きなようにするよ。」(???)
「この新たな力と幻魔の力で私は今度こそ天下をこの手に。」(鎧武者)
鎧武者はそう言うと右手を掲げる。その拍子に纏っていた布が地面に落ちた。鎧武者の姿は以前この世界で人々を守るために戦っていた仮面ライダー鎧武に酷似していた。
大樹たちが居たIS世界とは違う並行世界。一見、大樹たちのいる世界となんら変わりは無いように見える。だが、
「行きます、裕人先輩!」(???)
「うん、行こう!!」(???)
「キシャアアアア!!」
虎の体にカマキリの鎌、虎の頭があるはずの場所には人間の上半身がある化け物に果敢に立ち向かう少年と少女が居た。少年の手には一本の剣が握られており、少女の方は全身を赤い鎧で身を守っていた。
少年の方は目にも止まらぬ速さで化け物を切り裂いていく。一方の少女は鎧から莫大な何かを噴出しながら化け物の頭部に重い一撃を放っていく。彼らの攻撃を受けた化け物はその肉体を消滅させた。
「お疲れ、小猫ちゃん。」(裕人)
「裕人先輩もお疲れ様です。」(小猫)
少年、裕人は少女、小猫にねぎらいの言葉を掛けた。子猫は先程までの赤い鎧姿ではなく学生服姿になっていた。
「木場君、塔城さん。よろしいでしょうか?」(???)
どこからか裕人と小猫を呼ぶ声がした。だが、声の主の姿はその場にはない。
「どうしましたか、会長?」(裕人)
「先程、アザゼルさんから連絡がありまして、駒王町に何者かが出現したそうです。反応を見るとはぐれ悪魔ではないそうですが、、、。」(???)
「会長、反応はどこからあったんですか?」(小猫)
「アザゼルさんの話だと3か所です。一つは朱乃が使っていた神社、もう一つは学園裏の森、最後は以前に堕天使が潜伏していた廃教会です。今、教会の方にクリスが向かったそうです。二人にはそれぞれの場所へ向かってもらいたいのですが。」(???)
「分かりました。僕は神社の方へ行きます。」(裕人)
「私は森の方へ行ってみます。」(小猫)
「すみません、私達もはぐれ悪魔の案件が終わり次第に向かいます。」(???)
「それでは裕人先輩、お気を付けて。」(小猫)
「小猫ちゃんも気を付けてね。」(裕人)
裕人と小猫はそれぞれ神社、森へと向かった。
教会、以前ここには悪しき企みを企てていた堕天使が仲間と共に潜伏しており、その企みを堕天使の長に保護された神器使いの少年とその仲間たちによって阻止された。
「どいつが入って来たんだよ、たく。」(クリス)
その教会では雪音クリスが来ていた。彼女はアザゼルという人物の指示でこの場所へ来ていたのだ。
「にしても、レイナーレの一件と言い、この教会、呪われているんじゃねえのか?」(クリス)
そう言いながら彼女は教会の中を調べていく。
「何だよ、どこにもいねえじゃねえか。アザゼルのおっさん、装置がおかしいじゃねえのか。」(クリス)
彼女が調べたところ、何もおかしいところは無かった。そう、教会の中は。
ドゴオオオオオオオオオン!!
教会の屋根を突き破り何かが落ちてきた。
「おいおい、何が来たんだよ!!」(クリス)
クリスは制服の中にしまってあった赤い結晶の付いたネックレスを取り出す。彼女は
「Killiter ichaival tron.」(クリス)
何かしらの歌らしきをものを唱えた。すると彼女は光に包まれ、その姿を赤と白のボディスーツに変えていた。彼女はどこからか召喚したボウガンを両手に持ち、天井が崩落した方へ向ける。
「ううう、、。」(???)
「大丈夫、万夏?」(???)
「うん、変身は解けちゃったけど、ぎりぎりでサイレント・ゼフォルスを展開できたから。簪は?」(マドカ)
「うん、弐式も何とか大丈夫。」(簪)
舞い上がっていたほこりなどが落ち着くとそこにはサイレントゼフォルスを展開していたマドカとところどころにダメージが見られる打鉄弐式を駆る簪が居た。
「お前ら何者だ?」(クリス)
そう言ってマドカたちに近づくクリス。そのクリスに初めて気づいたマドカと簪。そして、別の場所では、、、
学園裏の森では小猫が後から合流した匙元士郎、ゼノヴィア・クァルタと共に森の中を調べていた。
「匙先輩、何かありましたか?」(小猫)
「いや、見つからねえぜ。つうか、アザゼルさんの話、本当なのか?」(匙)
「間違いは無いと思います。現にドライグさんも何かがいるのは感じてます。」(小猫)
「そうなのか、ドライグ。」(ゼノヴィア)
「ああ、とは言ってもそれが何かまでは分からんが。」(ドライグ)
話の中で小猫の左腕が赤い籠手に覆われた。その籠手の手の甲に当たる部分にはめ込まれている緑色の宝玉から男の声がしてくる。
「全く、こうしらみつぶしでは埒が明かないな。いっそ、デュランダルで、、、」(ゼノヴィア)
「スト―ップ!そんなことをしたら、吹き飛ぶって!!」(匙)
「むう。」(ゼノヴィア)
何やら話の様子からは物騒なことをしようとしていたらしい。
「ここどこーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」(???)
そんな中で森の奥から誰かの叫び声が聞こえた。
「誰かいます!」(小猫)
「こっちだ!!」(ゼノヴィア)
「お、おい!待ってくれ!」(匙)
彼らはそのまま森の奥へと入っていく。そこには、
「人がいたあああ!!」(*´Д`*)(颯斗)
枝や葉っぱにまみれた颯斗が居た。
「変な気配はないけどね。」(裕人)
裕人はかつての自分の仲間(と言って良いかどうか、少なくともこの場所に関係ある人物は今の裕人の仲間にとっては仲間ではない)が使っていた神社を調べていた。彼でも奇妙な気配を感じることは出来ず、神社自体も特に可笑しな点は無かった。
「だとしたら、アザゼルさんの方は何を察知したのだろう?はぐれ悪魔でもないし、エクソシストと言った教会勢力でもないし。」(裕人)
裕人はそのまま神社の境内で考え込む。一見すればかなりの隙をさらしている。この時に神社に潜んでいた何かはその隙を突いて背後から襲い掛かった。だが、突如として地面から無数の剣が出現してその何かを切り裂いていく。
「でも、君のように殺気を放っている相手の対処は簡単だよ。」(裕人)
裕人はこの世界における異能力者でその能力は様々な特性を有する剣を生み出すこと。それは同時に無数の剣を生み出すことが出来ることである。裕人は自身を襲って来た相手へのカウンターとして地面から無数の剣を生み出して、相手が剣の山に突っ込む形で攻撃をしたのだ。
無数の剣が刺さっている何かを確認する裕人。その何かは風貌自体は安土桃山時代、戦国時代の足軽のようなものだった。だが、その肉体は筋組織がむき出しとなっている人間のようだった。
「これは、、、。」(裕人)
その姿に裕人はある種の不気味さを感じていた。その所為で近くから現れた新たな敵に気付かなかった。神社の茂みから複数の不気味な足軽たちが裕人に襲い掛かる。裕人は対応に遅れてしまい、他の剣を瞬時に出そうとするが足軽たちの刃や矢の方が早かった。だが、
ガキン!ザン!ガン!ダン!
裕人と足軽たちの間に何者かが割って入って来た。瞬時に何者かは手に持っていた黄金の剣を振るい、足軽たちを薙ぎ払った。
「大丈夫か?」(大樹)
光龍剣を持ち、裕人に手を差し伸べたのは大樹だった。
異世界へとやって来た大樹たち。そこで現れた謎の敵。その敵には大樹たちの力が通用しない。そして、現れるのはこの世界の仮面ライダー。
疾風の警備員さんの「最弱の一誠と歌姫達」本編もよろしくお願いします。