IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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日常編第7話、今回は別サイドです。それでは、どうぞ。


日常編第7話side弾&鈴

side弾

 「ここが2組だから。今なら鈴もいるだろうし。」(大樹)

 「おう、サンキュー。」(弾)

 

 大樹の案内で俺は鈴がいる2組へとやって来た。まあ、正確な場所は前の世界とは変わらなかったから案内は特に必要なかったんだけどな。大樹はやることの準備をするつって俺と別れた。はあ、鈴の奴、必要なものは自分の親に頼めよ。どうして、俺なんだが。とは思いながらもなんだか前の世界の記憶があるってことで俺自身は鈴の奴と話す機会があるのは安心だ。こう、自分一人だけじゃないってのは精神的に落ち着くんだよな。まあ、こう考えたところで何も変わるわけでなし、さっさと鈴に頼まれていたものを渡して蘭の所に行くか。

 

 「あれ、君は?」

 

 教室の入って来た俺の前に現れたのは金髪の白人美少女。前の世界で同じように会えばたぶん俺も鼻の下を伸ばしていただろうけど、生憎そんな表情を見せればこの女の園で変態扱いは避けられない。

 

 「ああ、鳳鈴音の知り合いであいつに頼まれていたものを渡しに来たんだ。」(弾)

 「そうなの!?鈴!彼氏さんが来たよ!!」

 

 いや、何一つ彼氏なんて言ってないんだけどな。

 

 「ティナ、彼氏じゃないわよ。てか、私が彼氏なんて柄じゃないわよ。」(鈴)

 

 そう言いながら奥から出てきた鈴はまさかのチャイナドレス。こうして見ると何だか感慨深いものがあるな。

 

 「ほら、頼んでいたもん。俺じゃなくて親父さんたちに頼めよ。」(弾)

 「頼めるわけがないじゃない。今、大事な時なのに。」(鈴)

 

 そう、前の世界と同じように鈴の親父さんにがんが見つかった。幸いかなり初期だったらしく手術ですぐに回復するとのこと。それでも、前の世界の記憶のある鈴は不安に思っているようだが。

 

 「だからこそじゃねえの。ああ、他に用がないなら俺は別の場所へ行くぜ。」(弾)

 「良いわよ。ああ、昼休憩の時にちょっと面を貸しなさい。」(鈴)

 「いや、何でだよ。」(弾)

 「良いから貸しなさい。」(鈴)

 

 鈴の表情を見て、どうも俺をいじるとかってわけではないらしい。そうなれば俺も断る理由はないけどな。

 

 「分かったよ。大樹の方のバンドにも顔を出すから昼にな。」(弾)

 「ええ。」(鈴)

 

 さて、蘭の方と合流するか。俺はそのまま鈴のいる教室を出る。

 

 

 

 

 

side鈴

 弾に頼んだものもそろったし、これで本格開店と行けるわね。

 

 「ねえねえ、鈴。あの人、誰?本当に彼氏じゃないの?」(ティナ)

 

 あたしのルームメイトで同じラクロス部のティナが聞いてくる。なんというか前の世界と違って皆の悩みとかを聞いたり、助けてあげたりしてなんだか前の世界とは違う方向にあたしが行っちゃっているのよね。なんだか、皆ほっとけないのよね。

 

 「違うわよ。私の中学の友達。」(鈴)

 「本当に友達なの?」(ティナ)

 

 この子、まだ疑ってんの?って思っていたらクラス中が同じ疑いの眼差しを向けていた。本当に弾とは何もないんだけど。

 

 (一夏とくっつきたいんならもっと積極的かつ直接的にアプローチしたら?)(大樹)

 

 といけないいけない。こんなタイミングで大樹の言葉を思い出すなんて。いやあ、あの時の大樹のアドバイスを聞き入れていたらどうなっていたのかしら。たぶん、こうなっていないわね。いや、もしも一夏と恋人同士になってもこんな感じで生きていたかしら。ってそんなこと、微塵もないわよ。本当に大樹が読んでいた異世界転生みたいなことになるなんて。深くは考えなかったけど私と弾が前の世界の記憶を持っているのに何か原因があるのかしら。私と弾の共通点なんて一夏と知り合いで大樹と知り合いくらいなものなのよね。というか、なんでこのタイミングでその言葉を思い出すのよ。はあ、私の未練がましい女ってことかしらね。こっちの気も知らないで、そうやって言うのは傷つくのよ。

 

 「ほら、もう始まるからおしまい、おしまい!さあ、やるわよ!」(鈴)

 

 気を取り直して、鳳楽飯店IS学園出張店営業開始よ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side弾

 だあ、完全にはぐれたっつうか1組の行列がえげつねえ。これも見るのは2度目だがそれでもこれは慣れねえな。蘭も列のどこにるのか全く分かんねえ。仕方ねえ、他の場所を見ていくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、こうやって見ると前の世界で見ていた時はまあ恥ずかしい程に女子ばかりに目が行っていたんだな。見る場所見る場所が全くもって新しい。つか、さっきから随分とひそひそ声が聞こえるんだよな。人を見て、何がそんなに気になるんだよ。こっちだって話している内容が気になるわ。

 

 (お兄は顔は良いんだから。)(蘭)

 

 そうかね、蘭。前の世界でもこっちでも同じことを言ってくれるのは兄ちゃんは嬉しいけど。ただまあな、なんというか、一夏と比べれば俺なんて普通だろ。ああ、これは俺と大樹は同意見だ。まあ、あいつの方は何となくだけど顔は本当に普通で中身も普通に良い奴だったせいで周りの女子は異性として見てくれる奴が少なかったからな。いや、あいつも一夏と同じで身近な好意になぜ気付かない。いや、大樹の奴は端からそう見ていないつうか、なんつうか、なあ。

 

 「いや、万夏ちゃんがいるならそりゃ他には目を向かないか。でもなあ、いや、前の世界の大樹が気付かなかった、じゃなくてあいつが気付かせなかっただけか。それでも大樹の奴なら気付きそうだけどな。」(弾)

 

 ドン!

 

 「おわ!」(弾)

 「きゃあ!」

 

 と、考え事をしていたら誰かに当たっちまった。って、

 

 「虚さん。」(弾)

 「え?」(虚)

 

 虚さんとここで会うなんて。いや、ここはIS学園だから遭う可能性は普通にあったな。

 

 「あの、どこかでお会いしましたか?」(虚)

 「ああ、いや。初対面です。その、ここに通っている織斑一夏と柏葉大樹の友人です。」(弾)

 「ああ、柏葉君が話していたお友達ですか?」(虚)

 「ええ。自己紹介がまだでしたよね。俺は五反田弾って言います。」(弾)

 「私は布仏虚です。IS学園整備科3年です。」(虚)

 

 やっぱり、虚さん。美人だよな。本当に俺にはもったいなかったよな。前の世界じゃあ幸せに出来なかったしな。ここじゃあ、、、。

 

 「あの、本当にお会いしていませんか?」(虚)

 「いや、初対面ですよ。」(弾)

 「おかしいですね。一度でもお会いしていれば私も忘れるなんてことは無いのですが。」(虚)

 

 まさか、虚さんにも前の世界の記憶が。いや、あり得ないか。

 

 「あの、よろしければご案内しますよ。」(虚)

 「いや、悪いですよ。」(弾)

 「これも何かの縁です。それとも、嫌ですか?」(虚)

 「いや、そう言うわけじゃあ。なら、お願いしても良いですか?」(弾)

 「ぜひ。」(虚)

 

 まあ、良いか。少しだけこうやって関わっても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side鈴

 前の世界の小学校の時、あたしがお父さんとお母さんの仕事の関係で住み慣れた中国から日本へ来た時。日本の小学校に入学した私は当然だけど日本語が全く話せなかった。中国と日本の関係はなんというかあの当時のあたしには難しくて分からなかったけど、すこぶる良好って訳でもなかったし。当然、新しい小学校で会った奴の大半はイジメてくる奴ばっかり。それをケンカとして買ったこともあるし、それに一夏が加わって止めようとして、いつの間にか一夏とケンカしてて。でも、一人だけまわりがしないことをしたやつが居た。

 

 「ニイハオ。うぉ、じ、あ~、柏葉大樹。え~。」(大樹)

 

 ノートを読みながら、中国出身のあたしからしたらお粗末すぎて何を言っているのか分からない中国語もどきを話して、あたしに話しかけたのは大樹だった。いや、今思い出しても本当にひどかったなあ。あれでよく通じると思ったわよね。でも、それに助けられたのよね。大樹が話しかけてきて、あたしから中国語を習うと同時に大樹はあたしに日本語を教えてくれた。気付けばあたしに話しかけてくれるクラスメイトも増えていった。そうなると大樹はまるでそこには居なかったかのように影が薄くなった。でも、

 

 「ねえ、大樹。ちょっと付き合ってよ。」(鈴)

 「何?」(大樹)

 「良いから、良いから!」(鈴)

 

 自然とあたしは大樹のことを視線で追っていた。案外、すぐに分かるのよ、大樹の動き。皆から一定の距離を取って静かな場所に居るように見えて、意外に騒がしいところにもちょこちょこ加わってるから。そんな大樹をあたしは連れ回した。たぶん、大樹はあたしが大樹のことをちょうどいい子分程度に思っているって考えているだろうけど。大樹は常々「俺と一緒に居るの詰まんないんじゃないんの?ほら、俺の取柄って大して無いし。」って言っていたけど、そうじゃないのよ。あんたは一緒に居るだけでまわりを楽しませようといつもしていたじゃない。それだけであたしも弾も数馬も良かったのよ。あんたと一夏、一見したら合わないように見えて良いコンビだったし。何も取り得が無いなんてあんたはいつも言っていたけど、そうやってまわりの仲立ちをずっとしていたじゃない。あんたの取柄はそういう優しさ、それをあたしたちは分かったけどね。

 あんたはいつも自分のことを何もない男なんて言っていたけど、あたしにとってあんたはいつも優しかった。その優しさがあたしを助けてくれた。あんたの欠点は優しすぎることだけど。迷惑をかけるからって言って自分のことは全部自分で解決していたじゃない。全部隠していたつもりだろうけど、バレバレだったわよ。まあ、一夏の方は箒たちに追いかけられてそれどころじゃなかったから気付かなったみたいだけど。あんたはが本当は傷だらけで痛みに耐えて耐えて陰で頑張っていたのあたしはずっと知っていたのよ。でも、あたしはいつかあんたが話してくれるって高を括っていた。だから、気付かないふりをしていた。あたしの失敗はそれ、あんたの幼馴染っていうポジションに甘えて、大樹がいつまでもあたしのそばにいるって高を括っていたことだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side弾

 「ご実家はお料理屋さんなんですね。」(虚)

 「いや、町の定食屋ですよ。そんな大それた店じゃないですよ。」(弾)

 「そんなご謙遜しなくても。」(虚)

 

 さっきから虚さんのほうから話題を振るから話が途切れねえな。前の世界じゃあ学園祭で接点なんて皆無だったんだけどな。

 

 「では、将来はご実家を継ぐのですか?」(虚)

 「いや、俺の祖父は厳しいけど仕事として継がせる気は無いですね。前に話してみたらお前の人生だからお前の好きなように生きて見ろって言われて。」(弾)

 「おじいさまは五反田さんのことをよく思っているという証拠ではないですか。私の方は家柄上なかなか自分の人生を生きるというのは難しいので。」(虚)

 

 確かに虚さんの家は俺とは違う。良いとこのお嬢様だけではない、そういう俺には簡単に測れない場所の人間だ。それを分かったつもりでいたけど、、、。たぶん、俺も大樹の奴に頼り過ぎていたんだよな。あいつがなんだかんだまわりの仲立ちをしていたもんだから、うまくいっていたことが多かったんだよな。

 前の世界で大樹が俺達の前から姿を消した後、俺達はあいつのことを必死で探した。だけど、大樹の家は火事になって、手掛かりが何一つないことで大樹が死んだって俺達は思った。

 大樹は、俺からすれば良い友達だ。これはただの良い友達じゃなくて、周りから本当に良い奴で付き合うこっちからすれば嫌みのないというか無害な感じで、そんな雰囲気のあいつは本当に付き合いやすかった。でも、あいつは自分から友達を作るタイプじゃなかった。なんか教室の隅で何かしているなあって感じで正直なところは暗い奴に見えた。俺が大樹と関わるようになったのは一夏と知り合ってからだ。実際に話すと妖怪と神様とかの話や恐竜とかの動物とか好きで、話すと面白い話を知ってんだよな。それを自慢するんじゃなくて本当に楽しそうに話をするからよ。

 

 「あの、良ければ最後までご一緒しませんか?他にもこの学校のことを知って欲しいことがあるので。」(虚)

 

 虚さんが話題を暗いものから変えた。案内してもらいながら回るのはありか。

 

 「じゃあ、お願いしても良いですか?もしかすると妹がここを志望先にするかもしれないので。」(弾)

 「はい!」(虚)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 昼、校舎の近くで鈴と弾が一緒に居た。

 

 「で、模擬店はどうだったんだ。」(弾)

 「大繁盛!って言いたいところだけど1組にかなり持っていかれたわね。やっぱ、一夏が向こうに居るのは手強いわ。」(鈴)

 「ああ、やっぱ皆そっちに行くか。ん、大樹は?」(弾)

 「ああ、それならここに来て仲良くなった友達とバンドを組んだらしいわよ。ドラムとギターだけで。」(鈴)

 「それって2人だけじゃねえか。」(弾)

 

 そうやって話す二人は学園祭中は一般人も利用できる学食で買った軽食を食べながら話していた。

 

 「なんだよ、言えば手伝うのによ。」(弾)

 「良いじゃないの。今回は大樹の好きにさせたら?」(鈴)

 

 そう言う二人は歩きゆく人々を見てはどこか達観したような表情となる。

 

 「大樹はさ、こういうのを人知れずに守っていたんだな。」(弾)

 「そうね。誰にも知られないように、自分がボロボロなのも隠してね。」(鈴)

 

 二人の脳裏には前の世界での大樹が写っていた。その姿はあまりにも悲痛な姿で、彼の人となりを知っている二人からするとあまりにも痛ましいものだった。

 

 「どこまで、俺達は力になれるんだろうな。」(弾)

 「さあ。でも、ほんの少しでも大樹の助けにならないと。」(鈴)

 

 二人の表情は決意の固いものであった。その二人の視線の先には太陽の光を受けてギターを弾く大樹の姿があった。




 読んでいただきありがとうございます。第2部までは日常編を。次回の日常編は冬のある日の織斑家、その次は誕生日回を予定しています。それでは、また次回。

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