IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 クリスマス回で誕生日回です。どうぞ。


日常編第9話

side3人称

 街中ではクリスマスソングが流れており、街の明かりの中を恋人たち、家族が楽しそうに話をしながら歩いていく。それは大樹たちが良く行くレゾナンスでも同じであった。

 

 「ええと、クリスマスの飾りはOK。その他、皆が買ったプレゼントもOK。あとは食べ物は、、、弾の家だから良いか。」(大樹)

 

 このレゾナンスで一人クリスマスパーティーの準備の買い出しに来ていた大樹。

 

 「ああ、頼まれていた奴は全部OK。」(大樹)

 

 目的のものを揃えた大樹は大きな袋を持ったままパーティー会場へと向かおうとしたが。

 

 「え~~~~ん(´;ω;`)パパ!ママ!」

 

 大樹が後ろを振り返ると一人の男の子が泣いていた。年は、4,5歳ほどのその子は両親とはぐれたらしく泣いていた。その子を周りは見ているだけであった。そんな中、大樹は袋を抱えたままその子のところへ近づく。

 

 「君、大丈夫かい。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五反田飯店ではマドカ、弾、数馬、蘭、颯斗、簪、本音が何やらクリスマスの飾りの他に別の飾りの準備をしていた。

 

 「それにしても、万夏ちゃん。大樹の奴に言わなくて良かったのか。乗っかった俺が言うのもあれだけどさ。」(弾)

 「普通に誕生日会もやるよ、なんて言ってもしないよ。やるならサプライズパーティーにしておかないと。」(マドカ)

 「それは俺も同感かな。大樹、絶対に断るだろうからな。」(数馬)

 「それにしても一人で買い出しに行かせるのはなあ。」(弾)

 「それだったらお兄も行けば良かったでしょ。」(蘭)

 「いや、それだと下手に時間稼ぎするとばれるでしょ。大樹が一人で適当に時間を潰せるようにしておかないと。」(颯斗)

 「それでもちょっと無理矢理過ぎなかった?」(簪)

 「だいだい、気付いてなかったよ~。」(本音)

 

 そう、彼らにとってクリスマスパーティはあくまで建前。本当の催し物は大樹の誕生日パーティーである。大樹の誕生日は何とクリスマス当日。この日、集まっているメンバーはそのことをよく知っており、当の大樹がそれを断るないしは積極的にやらないのでこういう祝い事はしっかりとしようという純粋な親切心からやっている。この中に加わっていた一夏、箒、鈴はイギリス本国で誕生日兼社交界デビューをするセシリアの招待を受けてイギリスへ行っている。

 

 「まさか、一夏の奴が向こうに行くとはな。」(弾)

 「どうせ、断れなかったんだろ。一応は千冬さんもいるし、箒も鈴もいるなら良いだろ。」(数馬)

 「それに誰かはしっかりと大樹さんの誕生日を祝ってあげないと。ですよね、万夏さん。」(蘭)

 「うん。こういう時はちゃんと祝いたいから。」(マドカ)

 

 ここにいる面々は少しでも大樹が楽しんでくれるように準備している。話をしながら彼らは順調に準備を進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃の大樹はと言うと。

 

 「ありがとうございます。」

 「いえ、僕は特に。お父さんとお母さんとはぐれないようにね。」(大樹)

 「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」

 

 迷子になっていた男の子の親を無事に見つけ、その親子を見送っていた。大樹は彼らがもう自分を見ないことを確認すると時間を確認する。

 

 「流石に戻るか。」(大樹)

 

 荷物を持った大樹はレゾナンスを出て、周りに誰もいないことを確認してハイビスカストライカーを起動させた。ハイビスカストライカーの後部に買ったものを乗せて、ヘルメットをかぶった大樹はハイビスカストライカーで五反田飯店へと向かった。

 今世において大樹はこの時期があまり好きでは無かった。早くに家族を失い、天涯孤独になった大樹には祝ってくれる家族が居ないこの時期はひどく心苦しいものだった。周りにはクリスマスも誕生日も祝ってくれる家族が居る中でひどく孤独であることを意識させられたからである。織斑家の人々はそんな大樹を思って祝ってくれるものの仕事などでなかなか一緒に集まる機会が出来ないこともあった。それらすべてのこともあって大樹自身は自分の誕生日を祝うことはあまり乗り気ではない。だが、友人たちがクリスマスだから集まってパーティーをしようというそういった誘いを無碍にする出来る程人間嫌いではない大樹はそういった誘いをあまり断らずに生きてきた。生来の優しさがそういった歪さもある中で人間として間違った道を進ませなかった。その優しさというのも先程の迷子になった男の子に対しての行動から見えるのだが。

 ハイビスカストライカーに乗った大樹は大きな道を通りながら、この1年に起きたことを考えていた。これまでの戦い、柏葉勇吾=仮面ライダージャーク、ロイミュード109=ネオハートロイミュード、幻魔王信長、ハデスバグスターとの戦いを思い出していた。そのどれもが非常に強力ない敵であり、一歩間違えれば死んでもおかしくない相手であった。だが、大樹にとってそれがただの偶然ではないように感じることであった。何かの前触れ、前世からの因縁だけではない何かを感じざるを得なかった。だが、それらが何なのかを大樹は確信を持つことが出来ないでいた。そうこうしながら大樹は五反田飯店の前に到着した。

 大樹は袋を持ち、ハイビスカストライカーをロックシードに戻して店の中へと入る。

 

 「買って来たよ。」(大樹)

 「「「「「「「誕生日、おめでとう!!」」」」」」」」

 

 パン!パン!パン!

 

 店の中へと入った大樹を出迎えたマドカたちは手に持っていたクラッカーを鳴らした。突然の歓迎に大樹は驚き、扉の前で凍り付いていた。

 

 「うぇ!?うぃ!?へ!?」(大樹)

 「ほら、来いよ。」(弾)

 

 驚きで変な声を出す大樹を弾が肩をつかんで友人たちのいる方へと誘う。壁にはでかでかと大樹、誕生日おめでとう!!と書かれた横断幕が掛けられていた。

 

 「いや、何もここまでしなくても良かったのに。」(大樹)

 

 横断幕を見て苦笑いを浮かべる大樹。それを見た面々は気を悪くしたのではと思い、表情を硬くする。だが、

 

 「あのさ、これを買いに行って使わないのもあれだから着けちゃおうよ。」(大樹)

 

 大樹は頼まれていたものを出し始め、飾りつけを始める。マドカたちはお互いに見合わせながらも大樹がしている飾りつけの手伝いを始めていく。8人でやれば早いもので五反田飯店の内部も完全なクリスマス内装になった。

 

 「で、乾杯の音頭は誰がやるの?」(大樹)

 「大樹?」(颯斗)

 「なら、大樹。」(弾)

 「そうだな、大樹だな。」(数馬)

 「テキトーに言ってね?」(大樹)

 

 特に反対意見もなく、乾杯の音頭は大樹が取ることに。

 

 「それでは、k「何か言ってよ。(颯斗)」、え?」(大樹)

 「何か言ってよ、誕生日の人。」(颯斗)

 「言うの?」(大樹)

 「言うべき。」(颯斗)

 

 颯斗の無茶振りとも取れることに一応話してみることに。

 

 「ええと、、、まあ、クリスマス当日に集まってって言うことで。友達を呼んで、彼女も一緒でただわいわい騒ぐだけだけど、とりあえずメリークリスマス。」(大樹)

 

 大樹の話が終わると周囲に得も言われぬ沈黙が漂う。

 

 「何?もっと、何か話せって?」(大樹)

 「淡泊過ぎない?」(颯斗)

 「いや、颯斗。これが大樹だから。事前に準備していないとこんなもんだから。」(弾)

 「失礼な。色々変なことを言うと妬むだろ。」(大樹)

 「いや、大樹の方は俺達は妬んでいねえぞ。むしろ、こっちは盛大に祝福したいくらいだ。」(弾)

 「嘘おお。」(大樹)

 「いや、俺も弾も本気だぞ。大樹のことを知っている奴らは大体は万夏と付き合うようになったのは喜びはすれど妬みはしないぞ。」(数馬)

 「一夏の方はどうなんだよ。」(大樹)

 「「あいつはなんか腹立つから嫌だ。」」(弾、数馬)

 「この差って何?」(大樹)

 

 基本的には自分の恋愛事情は歓迎されているということにして大樹は言葉を続ける。

 

 「ええと、まあ。」(大樹)

 「同じことを言ってるよ。」(颯斗)

 「うるせ!............。」(大樹)

 「何か言いなよ、誕生日の人。」(颯斗)

 「こういうの、何気に初めてだから何言うか考えてんの。」(大樹)

 

 数分ほどの沈黙の後、大樹が口を開いた。

 

 「正直、この季節はずっと好きじゃなかった。小さい頃に父さんと母さんが死んでからはずっと一人だった。だから、まわりの同い年の子たちがすごく羨ましかった。皆が普通に持っているそれが、俺にはひどく遠いもので何よりも羨ましかった。だけど、それがもう二度と戻ることは無いってことは嫌でも本当の意味を理解できなくても分かってた。」(大樹)

 

 大樹の口から語れるのはここにいる友人たち、そして恋人が否が応でも知っている重い事実であった。大樹は周りのメンバーの表情が重苦しいものになっているのを見るが話を続ける。

 

 「そんなでも、そんなでも俺のことを家族として受け入れてくれた人たちが居る。だから、もう大丈夫だから。」(大樹)

 

 そう話した大樹の視線はマドカへと注がれた。その視線を意味をマドカも理解して、涙を浮かべながら微笑む。

 

 「ありがとう。祝ってくれて。」(大樹)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「かれこれ何年になるんだ、大樹との付き合い。」(弾)

 「中学からだから4年じゃない。」(大樹)

 「そんなになるか。」(弾)

 「そう?」(大樹)

 

 大樹と弾はジュースを片手に話し込んでいていた。場所は弾の部屋へと移り、颯斗と数馬がガ〇ダムブ〇〇カーをやっていた。

 

 「いや、4年って結構だぞ。」(弾)

 「俺、一夏とマドカとは10年になるけど。」(大樹)

 「それを引き合いに出すなよ。まあ、たった4年の間にお前も変わったよな。」(弾)

 「そう?」(大樹)

 「かなり明るくなったぞ。」(弾)

 「変わった気はしないけど。」(大樹)

 「変わってるって。大樹がそうだって思っていないだけで。」(弾)

 「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」(颯斗)

 

 大樹と弾が話す横で颯斗が奇声をあげてゲームのコントローラーを操作している。テレビの画面では巨大なガン〇ムの激しい攻撃によりすぐさまゲームオーバーになっていた。

 

 「ああ、モ〇ハ〇やりてえ。」(大樹)

 「大樹の口からそれ以外のゲームを聞いた覚えがないんだけどさ。」(弾)

 「だって、ISの奴ってようはストリー〇フ〇〇ターでしょ。無理無理。」(大樹)

 「なんでハンティングアクションは良いんだよ。」(弾)

 「競う必要がない、相手はモンスターのみ、コンボとかの高度な戦術は必要なし。あとはモンスターがめちゃカッコイイ。」(大樹)

 「ああ、聞いた俺が阿保だった。」(弾)

 

 ゲームの話題もそう長くは続かず、話が途切れる。

 

 「それで、万夏ちゃんとはどうなんだよ。」(弾)

 「どうって、順調だよ。」(大樹)

 「順調なのは分かるから、他にだよ。」(弾)

 「夜、眠らせてくれない。」(大樹)

 「元々寝不足気味だろ。」(弾)

 「それを分かっているはずなのに寝かせてくれない。寝たいのに。」(大樹)

 「幸せ過ぎる悩みだな。」(弾)

 

 グダグダと続くこの時間。なぜ、男子だけで集まっているのかというと女性陣は厨房を借りて何かを準備していた。それ故に待ち時間を潰すために弾の部屋でだべっていた。

 

 「~~~~~~~~~~~!!!」(颯斗)

 「人ん家でそうやって悶絶するのはどうなの。」(大樹)

 

 クエストを失敗して悶絶する颯斗にそう言う大樹。

 

 「それで、一夏とはどうなんだよ。」(弾)

 「何が?」(大樹)

 「マドカちゃんと付き合っていることに対して。」(弾)

 「実は、ちゃんと話してない。」(大樹)

 「え?じゃあ、一夏の奴は付き合っていることは知らないのか?」(弾)

 「う~ん、どうだろう。実際、千冬姉ちゃんと小父さんと小母さんにはばれてるからそれとなく察しているんじゃないのかな。」(大樹)

 

 弾の問いかけにそう答えた大樹。流石の大樹も一夏がそれとなく気付いているのではと考えており、話してこないのは決定的なものがないためか、ただ単純に気遣っているかのどちらかだろうと考えている。

 

 「まあ、流石に気づかないはずが無いか。」(弾)

 「何も言ってこない当たりは何とも言えないけどさ。」(大樹)

 

 実際のところはどうなのか、本人に聞かねばならないが。

 

 「皆、出来たよ。」(マドカ)

 

 マドカが弾の部屋に居た男連中を呼んだ。彼らは部屋を出て厨房の方へ向かう。そんな彼らに待っていたのは彼女たちが作っていたケーキであり、皆でそれを食べて誕生日会はお開きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side大樹

 降りしきる雪の中、俺とマドカは家路へと着いていた。吐く息は白く、街中の家では暖かな明かりがともっており、俺が居たであろうレジデンスではクリスマスソングが流れている。

 

 「それで、その子は?」(マドカ)

 「無事に家族と会えたよ。嬉しそうだったよ、親もその子も。」(大樹)

 「良かったね。」(マドカ)

 

 ここまでの人生、この時期が嫌いだった。どこもかしも幸せを謡っていて、そのどれもが俺が失ってしまったものだから。でも、俺が失ってしまったものが戻って来ることは無い、二度と戻って来ないれども、今の俺はもう一人じゃない。

 

 「にしても寒い。」(大樹)

 「じゃあ。」(マドカ)

 

 寒さに体を震わせるとマドカが俺の手を取る。

 

 「こうすれば温かいでしょ。」(マドカ)

 

 手のひらから伝わる温もりがじんと滲んでいく。俺達はそのまま手をつないだまま帰っていった。

 家に帰った俺達を出迎えたのは小父さん=秋人さん、小母さん=春奈さん、イギリスに居るはずだった千冬姉ちゃんと一夏。ここに俺の家族が居る。俺はもう一人じゃない。




 日常編もこれで一区切りとします。こちらの、クリスマス性夜バージョンもR18版で投稿します。そして、お待ちかねの新章も近いうちに。それでは~。

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