side 颯斗
「キャー!」(簪)
意識を失っていた僕の目覚めさせたのはかんちゃんの悲鳴だった。
(かんちゃん!!)(ロード)
僕は痛む体に鞭を打って、体を起こした。そこにあったのは僕の一生をかけても償うことが出来ない罪だった。
「ハハハハハハハハ!すごい、すごい!こんなデータ、他のと違う!」(109)
僕の目に映ったのはかんちゃんの体から何かを吸収して、まるで人類の敵として動いていた時のハートに似た姿になった109だった。
「やった、やったぞ!僕は、完全な存在になった!こんなデータは他にない!ハハハハハハハハ!」(109)
「かんちゃん?」(ロード)
僕は倒れているかんちゃんに近寄って呼び掛ける。でも、目を閉じたかんちゃんが僕の呼びかけに答えることは無かった。
「無駄さ。もう彼女は目を覚まさない。でも、喜びなよ、彼女は僕の中で生きているからさ。」(109)
その言葉を聞いた僕はその時に感情が振り切れてしまった。
「うううううううううううううううううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!。」(ロード)
≪急に、デッドヒート!ハート!≫
ハートの能力を使って、僕は威力が上昇した拳を何度も何度も109に叩きつけていく。でも、その拳が進化した109の体には大きな効果は無かった。
「辞めなよ。進化した僕にはもう君の攻撃は通用しないよ。逆に...。」(109)
109は発達した剛腕を赤黒く赤熱化させてそれを僕に振るって行く。それは進化前の威力と比べるとはるかに強力で攻撃を受けた場所は大爆発を起こした。その所為で109から遥かに飛んでいき、戦っている場所の近くにあった廃工場まで吹っ飛んだ。
「そんな風に君に僕の攻撃が通用するんだから。」(109)
殴られた箇所は装甲越しでも僕の体を焼いていた。でも、痛みはそんなに感じなかった。だって、かんちゃんが、大切な友達が、大好きな子が襲われたんだ。体の痛みよりも心の痛みが勝っていて、それ以上に109に対する怒りで僕は立ち上がったんだ。
「ふん!ううううううおおおおおおおおおおおお!」(ロード)
僕は怒りのままにマッハドライバーのボタンを何度も何度も連打した。
「颯斗!辞めるんだ!それは、危険だ!!」(ハート)
「うるさい!」(ロード)
そう、ハートの言う通り、僕が使ったのはものすごく危険だった。
マッハドライバーを使った仮面ライダーはシフトアップすることで性能を上げることが出来る。でも、それは変身者の限界に合わせたもの。僕がこの時に使ったのはその性能を遥かに超えた力、デッドゾーンの向こう側へ至る最悪の力だった。
≪急に、デッドヒート!ハート!デッッッッッッッドゾーーーーーーーーーン!超!オーーーーーーーーバーーーーーーヒーーーーーーーーート!!≫
その音声が流れた時、僕の体が燃え爆ぜた。爆炎が僕の体から吹き上がり、戦いの場の廃工場を吹き飛ばしていく。
「何それ?そんなの君の体が...。」(109)
この時の僕の力に驚く109。
109の言葉が言い終える前に僕はそのまま109の顔面に燃え盛り、火花が爆ぜる右腕の拳を叩き込んだ。その拳が109に当たった瞬間、目の前が真っ白になった。
目覚めたのは病院のベッドの上だった。
戦いの後、僕は全身に大やけどを負って救急搬送された。僕を病院へと搬送してくれたのはかんちゃんが居ないことを心配した刀奈姉ちゃんだった。目覚めた後に聞いた話だと意識が無かった最初の3日間ほどは容体も急変することが多く、本当に危なかったらしい。安定した3日後に僕は目覚めた。その間はお母さんが僕の看病をしてくれたらしい。
かんちゃんは、あの後意識を取り戻してくれた。幸いにも後遺症は全くなかった。でも、かんちゃんが僕のお見舞いに来ることは無かった。
目覚めてから1週間後に僕は退院した。その間、かんちゃんものほほんも刀奈姉ちゃんも僕のお見舞いに来ることは無かった。
退院して1週間が経ったある日、僕はかんちゃんと刀奈姉ちゃんの家、更識の屋敷に呼ばれた。そこで僕と話したのは引退した先代楯無、かんちゃんと刀奈姉ちゃんのお父さんだった。話の内容はかんちゃんたちと関係を断つことだった。当然ながら、ロイミュードの事件はかんちゃんたちを巻き込むにはあまりにも危険すぎた。109のこともあって僕はそれを了承した。それからほどなくかんちゃんとのほほんは転校した。そして、僕は109の事件から仮面ライダーの活動の一切を辞めた。
「...と、..やと!颯斗!」(ブレン)
「ん!?何?」(颯斗)
どうやら、僕は109の事件を思い出して、それにかなり没頭していたみたい。
「それはこちらのセリフです。何を考えていたのやら。」(ブレン)
「あ、あはははは。ごめん。ちょっと、考え事をね。」(颯斗)
あれから3年。学園で再び出会ったかんちゃんとのほほんは今まで通りに接してくれている。かんちゃんは109の事件について話すことは無い。正直なところ、今の状態をかんちゃんのお父さんに知られたらなんて言われるやら。
「ブレン、その痕跡を出来る限り調べてくれない?もうちょっとだけ、さ。」(颯斗)
「ええ。でも、なぜ?」(ブレン)
「念のために、かな。」(颯斗)
side 大樹
「...というのが颯斗の話なんだけど出れそう?」(大樹)
「う~ん。ちょっと、クラスの皆が私は絶対に出て欲しいって。」(マドカ)
「だよな。」(大樹)
ついこの間、颯斗から俺、颯斗、マドカ、簪、楯無先輩でバンドをするから学園祭中はそっちに来てくれないかって話をしていた。俺は裏方、会場の準備だけで当日は自由行動が認められたから、颯斗の方へ行くけど、やはりマドカはメイド姿が様になっていることもあってクラスの出し物に必ず出て欲しいという状況になってしまった。
「良いよ。颯斗には俺の方から話すから。最悪はちょっとね。」(大樹)
まあ、準備だけして当日はやる人が居ませんだと話にならないからな。その話をしようと颯斗のいる8組(男子生徒が多く在籍するクラス。整備科志望で特待生のクラス。)へ行ったが、颯斗の姿が無かった。他にも生徒会室、整備室を探すもどこにもいなかった。
「どこにいるんだ?」(大樹)
もしかすると簪ならば何か知っているのではと思い4組にも顔を出したがそこにもいなかった。1組に戻ってのほほんさんに二人がどこにいるか知らないかと聞いては見たが空振りだった。こうなってくると流石の俺でも手詰まりである。
「柏葉君?どうしたの?」(楯無)
「あ、先輩。颯斗に話があったんですけどいなくて。それに簪もいないみたいです。」(大樹)
「二人とも、私が頼んでことがあって学園を出ていたの。ただ、もう帰ってきてもいい頃なんだけど。」(楯無)
「まだ、戻っていないんですか?」(大樹)
「そうなのよ。もし、二人と会ったら私のところへ来て欲しいって伝えて。」(楯無)
「分かりました。」(大樹)
俺はそのまま自分のクラスへと戻った。この時はまだ新たな脅威が近づいていたことも知らず、それが颯斗にとって因縁深いことであることも俺は知らなかった。
side 颯斗
ブレンに調査を任せた僕は刀奈姉ちゃんからかんちゃんと連絡がつかないことを知らされた。僕は急いでかんちゃんが向かったであろう所を探すけど、そこにもかんちゃんの姿は無かった。
「どこに行ったんだ?」(颯斗)
僕の中で過去に起きたことが蘇ってくる。そうなってくると居てもたってもいられず、いろんなところを走り回った。
気付けば日はとっくに沈んでいて、夜のとばりが降りて来ていた。
「かんちゃん!!」(颯斗)
呼びかけるもどこにもかんちゃんの姿は無かった。
「颯斗!メディックの反応が近くにあった。すぐに行くぞ!」(ハート)
僕はハートの指示に従って、近くを見ると、、、
「かんちゃん!!!」(颯斗)
地面に横たわるかんちゃんが居た。僕は急いでかんちゃんに駆け寄ろうとしたけど、突然現れた誰かに突き飛ばされた。
「辞めてよ、彼女は僕が完全に復活するために必要なんだ。」(???)
その声は、僕にとってはひどく聞きなれたもので、僕の前にいたのは、15年間見飽きる程に見た顔だった。
「僕?」(颯斗)
「ああ、彼女の中のデータを基にした姿だからね。まあ、君とそっくりなのは当然じゃないのかな?」(???)
「お前、109か。」(ハート)
「やあ、最初の108体のうちの1体。君たちが居たから、彼女を探すことが出来たんだ。ありがとう。」(109)
僕とハートに話しかけたのは僕の姿をコピーした109だった。その109は右手に握っていたものを僕たちに見せた。
「メディック!!」(ハート)
「いやあ、戦闘向きではないロイミュードなのになかなかしぶとかったよ。でもね、彼女が危ない状態になったらね、まるっきり抵抗しなかったよ。」(109)
109はボロボロになったメディックを投げ捨てた。
「メディック!大丈夫!?」(颯斗)
「も、、申し訳、ございません、、、颯斗。私が、、居ながら。」(メディック)
「メディックは休んでいろ!颯斗!」(ハート)
「かんちゃんとメディックをよくも!!」(颯斗)
≪シグナルバイク、シフトカー!≫
「変身!!」(颯斗)
≪ライダー!デッドヒート!ハート!≫
僕は変身するとそのまま109に向かって右の拳を振る抜いた。
「っ!!」(ロード)
「ひどいなあ、いきなり殴りかかるなんて。」(109)
でも、その拳を109は僕の姿でこともなげに左手で受け止めていた。僕は右手を引こうとするけど全く動かなかった。
「じゃあ、前の続き、しようか?」(109)
109はハートそっくりのロイミュード体に変化する。109は全身から熱気を放射すると開いている右手で僕を殴りつけた。
バゴーン!!
当たった瞬間に大きな音を挙げて僕は大きく吹き飛んだ。
「痛!!」(ロード)
「颯斗!!」(ハート)
「大丈夫!!」(ロード)
僕はハートに大丈夫だって伝えるけど、実際には平気とは言えなかった。ハート、ブレン、メディック、特にハートは肉弾戦なら絶対に押し負けることは無い。そのハートの力を使って変身しているこの形態で大きなダメージがあるなんて。
「う~ん。ここまで戻ったけど、今一だなあ。」(109)
右肩を抑えて、右手をぶんぶん回す109。正直、109の言っていたことは僕の気力をそぐには十分だった。
(今ので本調子じゃないの!?だとしたら、このままじゃあ。)(ロード)
それでも僕は立ち上がる。
「ん?ああ、もう立つんだ。ん~、あ、そうだ!」(109)
僕の姿を見た109は少し考え込むと何かをひらめいたらしく、まるで新しいおもちゃを見つけた子供のような様子で僕に近づく。
「ねえ、ゲームしようよ。」(109)
「ゲーム?」(ロード)
「そう!僕が勝ったら、そのロイミュードのデータをもらうね。それを阻止するには僕を倒す。ねえ、楽しそうでしょ?」(109)
それを聞いた時、僕は意味が全く分からなかった。
「よ~し、それじゃあ、始め!!」(109)
109は硬直している僕に強烈な右ストレートを顔面に打ち込んだ。それを受けた僕は頭が体から離れてしまうのではと思った。
「行っっっくよ~、そうれ!!」(109)
続いては大きく振り上げた右足で僕を踏みつけた。
「ねえねえ、このままだと僕が勝っちゃうよ~。そんなんじゃ、詰まんないよ~。」(109)
「ううう、ぐうう!。」(ロード)
僕は両手で109の右足を持つとそれを渾身の力で退けようとした。
「そうそう!そう来なくちゃ、ね!!」(109)
109はその様子を見て気をよくしたのか思い切り踏んづける。その瞬間に僕の体からボキボキと嫌な音がした。
(このままじゃあ、ヤバい。)(ロード)
「1,2,3,4!1,2,3,4!」(109)
109はリズムを付けて何度も何度も僕を踏みつける。ようやく解放された時には息がまともに出来ないほどボロボロだった。
「さ~て、終わりにしようか!!」(109)
109はそう言うと体を赤熱化させる。
「ハート、これで決めるよ。」(ロード)
「颯斗!!もう、良い!逃げろ!!」(ハート)
≪ヒッサーツ!フルスロットル!デッドヒート、ハート!≫
僕はマッハドライバーを操作して必殺技、デッドゾーンパニッシュを発動した。朦朧として意識の中で僕は痛む体に鞭を打って109に殴り掛かった。
side 3人称
とある路地で倒れている青年。その青年を見下ろすのは彼と瓜二つの青年だった。その青年は倒れている方の腰にあるベルトから赤いミニカーを取り出す。
「じゃあね。もらって行くよ。」(109)
地面に倒れている青年=颯斗を気にすることなく109はその場を後にした。雷が轟き、辺り一帯に大雨が降りだした。その雨は倒れている颯斗の体を容赦なく叩く。
「また、ダメ、だった,,,。」(颯斗)
そう言う颯斗に両眼には涙が浮かんでいた。
「僕は、、、また、守れなかった、、、。あああああああああああああああああああああああああああ!!」(颯斗)
辺りに颯斗の慟哭が響く。
復活した109に敗北した颯斗。その颯斗の前に過去にロイミュードと戦った戦士たちが現れる。一方、調査を続けていたブレンの前にある人物が現れる。