IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 気を失った大樹の前に現れたのはこの世界を生きてきたもう一人の大樹だった。そして、ヴァルハラを急襲したサメインベスを斬月・真、暮桜を纏った千冬と共に撃破した。


仮面ライダー炎竜 第6話

 「では、君の聞きたいことを言ってくれ。こちらも出来る限り答えるつもりだ。」

 

 貴虎さんが俺に言った。

 

 「あ、あの。」

 

 マドカが手を挙げた。

 

 「どうした?」

 

 貴虎さんがマドカに問う。

 

 「なんで、ケーキ屋さんなんですか?」

 

 マドカの問いの前に俺たちはヴァルハラから場所を移して、シャルモン1号店で話を再開することになった。

 

 「場所を移したのはヴァルハラのダメージを調べ、安全な場所で話すことと。」

 「わたくし達、シャルモンのパティシエもヴァルハラのアーマードライダーだからよ。」

 

 貴虎さんの説明を引き継いで、厨房から二人の男が出てきた。

 貴虎さんと同等の実力を持つ仮面ライダーブラーボ、凰蓮・ピエール・アルフォンゾさん、凰蓮さんの直弟子で仮面ライダーグリドン、城之内秀保さんである。

 

 「こちら当店選りすぐりのスイーツです。お話の前に少しは楽しんで下さい。」  

 

 城之内さんが俺たちの前にケーキなどのスイーツを並べていく。俺は仮面ライダー鎧武を前前世で見ていたから分かるがとんでもないほどの値段になるくらいの品数だ。

 数々のスイーツにマドカが目を輝かせる。千冬姉ちゃんもやはり女性だから目を見張っている。何気に一夏は「じゃあ、いただきます。」と手を伸ばす。

 

 「待て、お前何普通に手を伸ばしてんの?」

 

 その様子を見た俺は一夏の手を止める。

 

 「いや、だって食っていいって。」

 「ここ、高級店。中学生の俺らの小遣いなんか塵一つ残らず吹っ飛ぶレベルの。」

 

 そう、そんなレベルのものがいきなり現れて、俺は困惑していた。

 

 「坊や、別に気しなくていいわ。本日はサービスで無償で楽しんでいきなさい。そもそも、メロンの君のお客様で新しいアーマードライダーのお仲間にいきなりお金を要求する無粋なことはしないわ。」

 

 なんと凰蓮さん、俺らに無償で提供してくれるという太っ腹なご厚意を。

 

 「いや、師匠。これらすべてタダって店の売り上げに影響が。」

 

 城之内さんの言う通りだ。今、シャルモン1号店には俺たちしかいないが目の前のスイーツの数を考えると店の経営に関わる。

 

 「バカモン、恥を知りなさーい!!」

 

 凰蓮さん、あの有名なセリフを言って、城之内さんを張っ倒した。

 

 「あなたねえ、確かにお金は大事よ。けれどね、こういった無償の行為も時に必要よ。」

 「普通に来てたら、金取ってますよね!」

 

 城之内さんがそう言った瞬間に凰蓮さんは何かのスイッチを押した。

 ゴーン!

 哀れ、城之内さん。頭にたらいが落下して悶絶する。先輩の様子を見て、TPOを見極めるのは大事だということを学びました。

 

 「さあ、遠慮せずに頂いて。」

 

 凰蓮さんがマドカに言った。

 マドカはブルベリータルトを選んで、フォークを持つ。一口分をフォークで切り取り、口に運ぶ。その途端に幸せそうな表情を見せる。

 

 「さあ、坊やも食べなさい。中学生が大人の顔色を窺って食べないなんて早いわよ。」

 

 と凰蓮さんが俺に言う。見れば、千冬姉ちゃんも既に食べ始めており、一夏はうめえうめえって言いながら食っている。

 

 「いや、あとで。」

 「あまり、ビジネスを優先するようなことも中学生には早いわよ。」

 

 この人にとっては俺はまだまだ青臭い中学生らしい。

 

 「大樹君、遠慮せずに食べたまえ。彼の作ったものは市外の人々にとってはなかなか口に出来ない逸品だ。」

 

 貴虎さんが言う。

 

 「ねえ、大ちゃん。」

 

 マドカが俺を呼んで、フォークに突き刺したタルトを差し出してた。

 

 「あ、えと、ありがと。」

 

 俺はそのフォークを受け取り、口に運んだ。画面越しでは想像することしか出来なかったが現物は記憶ある他のスイーツが霞むほどのおいしさだった。

 

 「俺は、この年になっても彼女が居ないのに!」

 

 城之内さんがすごい形相で俺を睨んでくる。その感情を俺にぶつけられても困るのですが。あなたが考えているような関係じゃないですからね。彼女と俺は幼馴染同士ってだけですから。

 

 「あなたの御両親もわたくしの店に来たことがあったのよ。これはその時に必ずと言って良いほど購入していたものよ。」

 

 凰蓮さんは俺にショートケーキを差し出した。

 俺はそれを受け取り、口にした。

 (大樹、ケーキ買って来たぞ。)(大樹、おいしい?)(うん!)(勇吾の分もあるぞ。)(ありがとう。)

 またも、俺の脳裏にイメージが走った。だが、今回は目眩だけだった。

 俺は少し、額を抑える。

 

 「大ちゃん?」

 

 マドカが俺の顔を見る。

 

 「いや、大丈夫。昔、食べたのを思い出しただけだから。」

 

 この世界の俺は確かにこの街にいたようだ。その証拠にこのケーキに関する記憶があった。

 俺たちは凰蓮さんのスイーツを一つ残らず食べ切った。

 

 「それでは、本題に入ろうか。」

 

 貴虎さんが口を開いた。

 

 「我々、ヴァルハラは世界各地に潜んでいる人類への脅威に対処している。

 我々が大樹君に接触したのは10年前に起きた元ユグドラシル職員の柏葉玲人、柏葉優菜夫妻殺人事件が過去に沢芽市で脅威を振るったインベスもしくはそれを利用しようとする者の関与が疑われたからだ。

 本日は別の任務で外していたがアーマードライダー龍玄、私の弟の呉島光実から説明した思うが柏葉夫妻はヘルヘイム、15年前のインベス事変の原因となった別世界に由来する物質の安全な利用を研究していた。

 夫妻はおそらくその研究を無事に成功させたのだろう。我々は当初、他のユグドラシルの残党が夫妻の研究結果を狙い、夫妻を殺害したと考えていた。

 だが、我々の調査で夫妻の研究結果だと思われるものは何一つ闇マーケットに出ていなかったことが判明した。そこから、ほどなく、ヘルヘイム由来の物質を利用して作られたと思われる薬品が裏の世界で出回るようになった。この薬品は人体に投与すると細胞をより強靭なものへと変え、使用者をインベスへと変える。そして、近年新たに確認されたインベスは全てこの薬品によってインベス化した人間、動物だと考えられる。

 この薬品を流している人物を我々は調査している。その結果、10年前の夫妻の殺害から行方不明になっている長男の柏葉勇吾の名前が出てきた。他の調査機関も柏葉勇吾の調査をしており、アジトを突き止め、確保に動いたそうだ。」

 「この時、わたくしは傭兵時代の仲間たち共に当時の一部始終を見ていたわ。その結果は表には出ていないけれど悲惨の一言しか言えなかったわ。わたくしたちはアジトから出てくる柏葉勇吾を確認しようとアジトに強襲したものの、調査機関の人間の遺体だけで当の柏葉勇吾は消えていたわ。」

 「現在、我々は柏葉勇吾を追っている。当時、唯一の生存者であった君に柏葉勇吾が接触する可能性を考え、君の身辺調査も行っていた。そこで、君が根治不能の病に侵されていたにも関わらず奇跡的な回復を遂げたことを知った。そして、夫妻の主な研究であったヘルヘイム由来の物質の安全な活用法が確定し、それを君に行ったと推測している。

 夫妻は沢芽市を離れる際にどこからか戦極ドライバーを入手し、推定ランクAオーバーの3種類のロックシードも同時に入手していたことが判明した。

 光実とザックが夫妻の個人研究所へ向かったのは夫妻の研究の詳細とドライバーとロックシードの回収が目的だったからだ。また、君の下へ来たのはヘルヘイム由来の物質を投与された君にインベス化の兆候が見られるかの確認、夫妻に関する詳しい情報の収集を行う為だった。

 結果は我々がドライバーとロックシードの回収を行う前に大樹君が使い、インベスの撃破に成功。あとは君たちもご存知の通り、会談の場を設けさせてもらった。」

 

 貴虎さんの話は俺が考えていたよりもはるかに超えた現状だった。人がインベスに変貌する薬、兄貴はあの世界で作り出したインベスの生成方法を遥かに進化させたのだろう。そして、俺たちの前に現れたインベスはその薬によってインベスとなった人々だろう。

 

 「インベスから人に戻す方法はあるんだよな?」

 

 一夏が当然のように言った。だが、俺の知る限り、インベスに変貌した人間は元には戻らない。

 

 「いや、インベスとなった人々を元に戻すすべはない。インベスになった時点ですでに人ではないのだ。私たちに出来ることは精々が早期にその命を終わらせてやることだけだ。」

 「そもそも、勇吾はなぜこんなことに関係している?」

 

 兄貴の同級生である千冬姉ちゃんが言った。

 

 「それは我々にもわからない。我々の調査では柏葉勇吾がそのような行為を進んで行う人物ではなかったことは確かだ。だが、「俺の父さんと母さんが死んだ、それを境に行動を一変させたって貴虎さんたちは考えているんでしょ。」、大樹君の言うとおりだ。」

 

 おそらく、兄貴は俺よりも早くにこの世界に転生していた。その時期は今は推測するしかないが父さんと母さんが死んだ時点ですでに俺が殺したあの世界の兄貴になっていたのだろう。あの世界の兄貴がこのようなことをする動機はただ一つ

 

 「まだ、ISが生まれた世界を憎んでいるのか。」

 「大ちゃん、何か言ったの?」

 

 マドカが俺の独り言に気付いた。

 

 「いや、考え事をしていただけ。」

 

 兄貴が俺を殺さなかったのは単純に俺への恨みなのか?そうだとするなら10年も大きな動きを見せないでいるのはなぜか?何か大きなことを考えているんラ、イッコクモ早くミツケ出してコロサナイト。

 

 「大樹君、何か聞きたいことは?」

 

 貴虎さんの声を聴いた俺は貴虎さんの方へ向いた。

 

 「俺の体って、大丈夫なんですか?」

 

 貴虎さんの話やこれまでのことから俺の体の治療にヘルヘイムの物質が使われたのは考えられる。

 

 「今後、定期的な検診を受けてもらうが今の所は全くと言って良いほど問題は無い。ロックシードを使った影響も見られない、さらにインベス化の兆候が見られていないことから君の体の変化は病気の根治に留まっているのだろう。」

 

 今の所は俺自身がインベスになる危険性はごくわずかなものらしい。この言葉にマドカ、一夏、千冬姉ちゃんが安心しているようだった。

 

 「これらの話を聞いたうえで君たちに頼みたい。正直、今の我々では現状の対処が間に合わない。単純に事態に直接対処できるアーマードライダーが少ないのだ。大樹君、一夏君、酷なことだが若い君たちの力を貸してほしい。」  

 

 と言って、貴虎さんが頭を下げる。

 

 「おう!任せろ!」

 「兄貴が関係している、、、ん?貴虎さん、俺だけに頼んでましたか?聞き間違いでなければ一夏も呼んでいましたけど、、、、。」

 「ああ。一夏君もアーマードライダーとして協力してくれることになった。」

 「、、、、、、、、。え?」

 「大樹、よろしくな!」

 

 一夏の奴があの爽やかスマイルを見せる。

 

 「いやいや、待てよ。聞いてねえよ、俺。よろしくなって、本気か、お前?」

 「ああ。」

 

 さも当然と言わんばかりに一夏が言った。俺の隣のマドカが目を見開いている。そりゃ、驚くわ。

 

 「千冬姉ちゃん、俺が寝てた間に何があったの?急すぎて話についていけてない。」

 「実は、、、、、、。」

 

 千冬姉ちゃんの話を簡潔に言うと、俺が寝ていた間、貴虎さん、あの戦いのことを話していたらしい。その話を、仮面ライダー鎧武、葛葉紘汰がしてきたことを聞いた一夏が同じ男の俺だってと言わんばかりにドライバーとロックシードを渡してほしいと言ったそうだ。理由は俺の助けになりたいと、、、。貴虎さん曰く、ドライバーとロックシードはすぐに用意できないがよろしく頼むと言ったそうだ。

 

 「千冬姉ちゃん、止めなかったの?」

 

 俺は動揺しまくりで千冬姉ちゃんに聞いた。

 

 「止めたさ。だが、それを聞く一夏ではないのも大樹も知っているはずだ。」

 

 ああ、一夏が本当にヒーローみたいなやつなのは分かってた。だが、これは流石に予想してなかった。というより、

 

 「一夏、本当に分かってんの?貴虎さんが言ってたこと。やばいんだぜ。命の危険があるだけでなくて自分も怪物になる危険性があるんだぞ。それなのに、俺の助けになりたいからって、そんな軽く言っていいもんじゃないだろ。」

 

 心なしか、途中から口調がきつくなっていた。それもそうだ。俺は前の世界での経験上、危険性を熟知している。これは普通の学生が首を突っ込んでいいことではない。まして、俺の友人なだけの一夏が関わる必要はない。

 

 「おい、落ち着けよ。流石に俺だって危ないのは分かっているって。それでも。」

 「それでもじゃねえだろ。俺の助けになりたいって理由だけで、関わっていいことじゃねえのは分かってんだろ。」

 「俺が関わるかどうかは俺が決めることだろ。」

 

 俺の物言いに流石の一夏も憤慨してきた。

 

 「それでも止めない理由ならねえよ。」

 「なんで、お前が止めるんだよ!」

 「俺だけなら分かる。でも、お前まで首を突っ込む必要は全くないだろ!」

 「俺はお前の助けになりたいだけだぞ!」

 「俺が何時、助けが必要だって言った!」

 「言ってないからって助けない理由にならないだろ!」

 「部外者のお前まで危険な目に合うことは無いんだよ!」

 

 俺と一夏の口論がヒートアップしていく。

 

 「いい加減にしろ!」の言葉と共に俺の頭上から強烈な衝撃が来た。

 俺も一夏も頭を押さえてうずくまる。

 

 「一夏も大樹も熱くなるな!話の途中だろ!いったん落ち着け!」

 

 千冬姉ちゃんが俺たちに拳骨を落とした。

 

 「一夏も協力する、それは一夏自身の意思だ。大樹だって戦うのは大切な誰かを護るためだろう。なぜ、一人でやろうとする。」

 「俺は、一人でやろうとはしてないだろ。」

 「それでも、周りに頼るくらいはしろ。」

 

 ここではこれでお開きになった。結局のところは一夏も戦うことが決まった。俺たちは今日はホテルに泊まることになっており、ホテルへ向かった。道中、到着後、俺と一夏の間に言葉は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まさか、あのようなことになるとは。」

 

 私は大樹君たちが出た後も凰蓮の店にいた。

 

 「ああいうぶつかり合いは珍しくはないわ。メロンの君が気に病むことは無いわ。」

 

 私の様子を見た凰蓮が言った。

 

 「それもそうだが、、、。」

 「貴虎さん、あまり気にしすぎることは無いですよ。今回はそうなっただけですから。それに中学生同士、男子同士ならその内何事もなかったようになりますから。」

 

 城之内君が言った。その彼もどこか浮かない顔をしていたが。

 

 「あんたが辛気臭くなってどうすんのよ。曲がりなりにもあの子たちの先輩になるのよ。」

 「そ、そんなの分かってますよ!こうビシバシと俺だって!」

 「あんたがビシバシしごくなんて10年早いわよ。」

 

 二人のやり取りを見て私も笑ってしまったが。

 

 「ところで、凰蓮、城之内君。君たちから見て、大樹君はどうだった?」

 

 私がここを会談の場にしたのは傭兵の経験があり、人を見抜く目を持つ凰蓮に、曲がりなりにも自身を策士を称する城之内君に大樹君を見抜いてもらう為だった。

 

 「そうね。年相応な部分もあったけど、どこか年不相応な、いえ、異質な雰囲気を持っていたわね。まるで長い間戦い続けた結果に精神が壊れてしまった兵士のような。」

 

 凰蓮の言葉から、私は自身の中にある疑いが形になりつつあった。

 

 「師匠ほどじゃないですけど、俺もコイツ、中学生にしては何か不釣り合いな感じがするなって思いました。」

 

 城之内君も凰蓮と同様の思いを抱いていた。

 

 「メロンの君、確かあの子、ほんの1週間前にアーマードライダーになったのよね?」

 「ああ、本人もそう言っていた。」

 「あの子の戦いを見たけどね、つい1週間にアーマードライダーになったにしては戦いなれているわよ、あの子。すくなくとも、メロンの君の弟君にクルミの坊や並みに場数を踏んでいるように感じたわよ。」

 

 私たちは大樹君のことを調べたときに彼が近所の道場で剣道を学んでいることを除けば、戦いに縁のある人物ではないのを知った。それなのに、彼はドライバーとロックシードを使い、アーマードライダーに変身した。それだけでなく、インベスを圧倒していた。

 

 「それとあの子、何か隠しているわね。ご両親の死と関係しているかはわからないけど、私達に話していないことがあるわね。」

 

 そう、彼は我々に数々の疑問を残していたのだ。その疑問は彼が彼の知り得るすべてを話していないことに答えがある、そのような気がしてならないのだ。

 

 「師匠、貴虎さん、あいつが言ってた言葉、聞きましたか?」

 「どんな言葉だ?」

 「ブリュンヒルデが柏葉勇吾の動機について聞いた時なんすけど、まだ、ISの生まれた世界を憎んでいるのかって。」

 「ISの生まれた世界を憎んでいるのかと。」

 「俺もボソッと言ったのに気づいただけでそんな風に聞こえたってだけですけど、それとそのあと、あいつ、貴虎さんに呼び掛けられる前の表情、額の上、前髪の生え際を掻いていて見えづらかったけどまるで、その、、、、、、、。」

 

 城之内君が言い淀む。

 

 「何よ、はっきり言いなさいな。」

 

 凰蓮が言う。

 

 「ああ、まるで、その、昔の日本画とかにある修羅?のようなすげえ顔をしていたんですよ。」

 

 城之内君の言った、修羅、それを聞いた時、私は不意にも大樹君の戦いを思い出した。彼の太刀筋には修羅が宿っている、始めて見た彼の剣は私にそう思わせるだけのものがあった。

 

 

 

 

 翌日、ホテルを出た後、俺たちは少し観光した。俺は本当に沢芽市に来ているんだなと改めて思った。昨日のあのやり取りから俺と一夏の間には気まずい空気が漂っている。最初のきっかけから考えれば、おれが悪いのは分かっているのだが、なかなか、きっかけが掴めずにいる。

 

 「大ちゃん、アイス。」

 

 そんな、俺にマドカがアイスを指す出した。

 

 「ありがとう。」 

 

 俺はマドカからアイスを受け取る。

 今、俺たちは二手に分かれて観光を楽しんでいた。 

 

 「ねえ、大ちゃん。」

 

 マドカが口を開いた。

 

 「どうした?」

 

 マドカが俺を見つめる。

 

 「大ちゃん、どうして戦うの?」

 「それは、、、。」

 

 マドカの問いに俺はこれ以上の言葉を紡げなかった。不意に口にしようとした理由が兄貴を殺さなきゃならないだったからだ。

 

 「家族が関わっていたから。」

 

 俺はそれとなく思いついた理由を挙げた。

 それにマドカは

 

 「私達も家族でしょ?」 

 

 と言った。

 俺たちは観光を終えたのち、貴虎さんたちに挨拶をして、沢芽市を出た。

 俺は帰りの道中、マドカの私達も家族でしょという言葉を思い返していた。そして、

 (俺の戦う理由って、、、、、、。)

 兄貴を殺す、その前に戦おうとした理由を思い出せないことに今更ながらに気付いた。

 沢芽市から俺たちの帰りを待っていた人物が居た。

 

 「遅いわよ!」

 

 俺たちの友人の鈴、それと

 

 「久しぶりね。」

 

 なんだか、雰囲気が柔らかな箒だった。

 

 「ねえ、お土産は?」

 

 鈴が土産物の催促をする。

 俺たちは鈴と箒に土産物を渡した。俺はマドカと共に選んだブレスレットを、千冬姉ちゃんは髪飾りを、一夏はよくわからない置物を渡していた。

 鈴が一夏にセンスが無いと突っ込みを入れる。

 

 「大樹、調子は?ずっと体調を崩していたらしいから。」

 

 箒が、俺に気にかけた。あの、一夏一番の箒が。当たり障りのない返答をしたが。そのあとはマドカと話していた。ああ、こういうこともあり得るのか。うん、うん、あのモッピーが大和撫子になっておるうううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!。

 




次回、大樹たちと再会した箒。一夏をデートに誘おうとするが当の一夏はそんことにも気付かず、アーマードライダーになるための鍛錬をする。一方、大樹は己の戦う理由を考えていた。そんな大樹の前に謎の男が現れ、襲い掛かる。

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