IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 ある日、正則と束は大樹、颯斗、マドカ、簪から二人のなれそめを聞きたいと言われる。二人は快く自分たちの出会いを話し出した。それは今の二人からは想像もできないほどに最悪のものだった。


仮面ライダーオーズNEObeforeヘキサオーズ 第2話

side 3人称

 篠ノ之神社、一夏たちが住む町にある神社で大正のころよりあると言われており、珍しい女性の神主がいる。夏の祭りでは巫女役に選ばれた少女による美麗な剣舞が夏の目玉でもある。また、この神社は古流武術の一派である篠ノ之流剣術を教えている武道場でもあった。この篠ノ之流剣術は他の古武術では見られない女性が扱うことを主としたものである。その篠ノ之流剣術を教えているのは神主の役職を妹に渡した(当人曰く押し付けられた)篠ノ之柳韻、束と箒の父である。この当時はまだ30代後半で衰えることなく刀を振るう武人でもあった、、、

 

 「は~、金づるどもが来ねえのは暇だ。」(柳韻)

 

 神社の境内でほうきにもたれかかって、鼻の穴をほじながら武人にあるまじき姿を見せていた。この日、道場は休みで剣道を習いに(ここでは普通の剣道も教えている)来ている子供たちは来ないのだ(たまに自分で稽古をするという子どもも来るが)。まあ、その子供たちを金づると言うあたり、この世界における篠ノ之束の父親ということはある。

 

 「箒は一夏君のところだからなあ。大樹の方も来ないのは無理もないか。あ~、にしても金づるたちが来ねえと俺の仕事は無いのによ~。」(柳韻)

 

 これが子どもたちの前でしっかりと武道に厳しい武人となるのだからかなりの役者である。

 

 「兄さ~ん!!さっきから全部聞こえているわよ!!」(雪子)

 

 神社の事務所からは妹雪子からのお叱りが飛ぶ。それを聞いても阿保面で鼻の穴をほじり続ける柳韻。もはや、そこには原作世界で箒が尊敬する武人としての厳しいと言われる厳格な父親はいなかった。

 

 「は~、飲みに行きてえ。あ、雪子!例の神酒、どうなった?」(柳韻)

 「どうなったって、兄さんが話を進めていたでしょ!!自分でノリノリでやっていて、一切こっちには話が来てないのよ!!」(雪子)

 「それが、酒の席での話になって、てんで覚えてねえ。」(柳韻)

 「はあ!?ふざけてんじゃないわよ!!」(雪子)

 

 そうして、事務所から柳韻に向かって飛んできたのは素振り用の重量のある木刀である。それはそのまま柳韻の背中に綺麗にクリーンヒットした。

 

 「ゴホッゴホッ!おい、雪子おおおお!!死ぬだろおおお!!」(柳韻)

 「黙ってろ、兄貴!いちいち、好き勝手にやって!うちの家計は赤字だって言っているじゃない!!そもそも神社庁に入っていないときついって何度も言ってるでしょ!!」(雪子)

 

 親しい人達であれば見られたとしても気にしないほどにこれがいつものやり取りである。

 

 「あのなあ、先に就職して、それで俺がどれだけ肩身が狭い思いをしたと思っているんだよ!!」(柳韻) 

 「知らないわよ!!全国ほっつき歩いて、彼女さんを連れてきたと思ったら子どもが出来たとか、その彼女さんと結婚するとか、その流れで神社においてくれって、どこが肩身の狭い思いよ!」(雪子)

 

 ここでさらに爆弾発言、そりゃこんな奴なら束の父親だ。

 

 「雪子ちゃん、そこらへんにしてあげて。」(楓)

 「義姉さん、兄さんに甘すぎよ。もっと厳しく言わないと。」(雪子)

 「あれがあの人のリラックス法なの。大目に見て、ね?」(楓)

 「は~、義姉さんがそう言うならそうするけど、もう少しどうにかならない?」(雪子)

 

 なおも勢いが止まらない雪子を柳韻の妻楓がなだめる。それでもなお雪子の不満はあるようだったが。

 

 「ああ、今は大丈夫ですか?」(秋人)

 

 当時20代後半、もうすぐで30になる一夏、千冬、マドカの父である織斑秋人が神社にやって来た。

 

 「ん?秋人、どうした?」(柳韻)

 「ああ、万夏の退院の報告に。」(秋人)

 「お、万夏ちゃん、調子が良くなったのか?」(柳韻)

 「秋人く~ん!その話を詳しく!」(雪子)

 

 万夏の退院と聞いて篠ノ之家の大人グループが集まりだす。

 

 「じゃあ、家族で一緒に住めるのね。」(楓)

 「ええ、愛理じゃなかった春奈もすごく喜んでいて。実は大樹と一緒に万夏を迎えに行っているんです。」(秋人)

 「家には一夏君と箒ちゃんだけ?」(雪子)

 「もうすぐで千冬が帰ってくるんで、それで千冬が帰って来た時に家を出たんです。そう言えば、束ちゃんは?」(秋人)

 「千冬ちゃんが帰ってきているならもう帰るころだけど。」(雪子)

 「まあ、帰ってきても離れの蔵にすぐに行くからな。帰ってきても気づかなくて。」(柳韻)

 「あの子ね、あまり心を開いてくれなくて。」(楓)

 「まあ、仕方ないだろ。年頃ってだけじゃない。特に束はそうだからな。」(柳韻)

 「死んだおじいさんが言っていた忌み子、それが束ちゃんだけど。」(雪子)

 「忌み子?」(秋人)

 「こっちの話だよ。昔のことを死ぬその時まで変えることが出来なかったジジイの世迷言だ。」(柳韻)

 「気にしないでね秋人君。兄さん、お爺さんのことはものすごく毛嫌いしているから。」(雪子)

 「あら、束?」(楓)

 

 話し込んでいた大人たちは帰って来た束に気付く。当の束は挨拶もせずに俯きながら境内の古い蔵の中へと入っていった。

 

 「どうしたのかしら?」(楓)

 「明らかに普段よりも元気がないわね。」(雪子)

 「ああ、少し聞いてみるか。」(柳韻)

 

 束の様子を見て柳韻が束の後を追う。

 

 「秋人君、ごめんね。私達も一応束ちゃんのこと見るから。」(雪子)

 「春奈ちゃんに万夏ちゃんの退院おめでとうって伝えて。それと箒には夕方には帰ってくるようにって。」(楓)

 「分かりました。それでは。」(秋人)

 

 秋人はそのまま神社を後にする。

 

 「義姉さん、束ちゃんどうしたのかしら?」(雪子)

 「あの子、学校から帰って来た時にあんな風に落ち込んでいるのを始めてだから。」(楓)

 

 楓と雪子も一度は神社の方へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 束

 何なの、何なの、何なの、何なの!!私がこれに、ISに、この地球()の外の、この空の向こう側へ行くための翼に、それに私が持っている全てを賭けて目指しているのに!!あいつは、あいつは!!

 

 (分かるさ。)(正則)

 

 むかつくのに、むかつくのに!!あいつの言葉を否定できなかった!!全部が全部当たっていた。寸分も違わずに当たっていた。それが、それが!!

 

 

 「~~~~~~~~~~~~~!!!」(束)

 

 言い返せなかった。何一つ言い返すことが出来なかった。そして、一番悔しいのはISを私の夢を否定されたことだ。

 

 「何が分かるんだよ、、、あんたに、、。」(束)

 

 ここにはいないあいつに届かないことは分かっている。それでも口に出さずにいられなかった。

 

 「何があった?」(柳韻)

 

 蔵の入り口にお父さんが立っていた。普段は、うんうん、今までは血のつながりがあるというだけの存在にしか見ていなかった。でも、本当は心の底では私を受け入れてくれた、最初の人だってずっと分かっていた。でも、あいつに言われたことから私はずっと周りから、私のことをまるで化け物のように観る奴らから、私のことを純粋にお姉ちゃんとして見てくれる箒ちゃんと対等に接してくれるちーちゃんに逃げていただけだった。それがあいつに指摘されて初めてはっきりと理解した。そして、

 

 「う、うえ、おとうさああああああああん(´;ω;`)」(束)

 

 私はじじいに拒絶されて以来久しぶりに泣いた。

 

 

 

 

 

 

side柳韻

 「なるほどな。」(柳韻)

 

 束があんなに怒っていた理由はなんとISを、束が目指しているものを否定されたからだった。普段だったら、他の奴が言っても、

 

 「ねえ、モブがそう言ってくるのやめてくれない。はっきり言って理解も出来ないのにそんなことを言うような奴らに付き合うほど暇じゃないから。」(束)

 

 と言ってあしらうからな。束が泣いたのはまあ初めて1から何も話さずにそれを一目見ただけで理解してくれた相手からの言葉だったのが一番のショックだったんだな。いや~、束を泣かせた奴には一発殴らきゃ、気が済まないが逆になんか安心したな。なんだかんだ言って俺達の子なんだな。

 

 「それにしてもそのイワシロマサノリって子、束ちゃんと同じってどういうこと?」(雪子)

 「束と同じ神様が授からせてくれた子ってことじゃないの?」(楓)

 「(´;ω;`)」(束)

 「まあ、どうあれそいつに言われたことって何か的外れだったか?」(柳韻)

 「的外れだったらこんなに悔しくない!!」(´;ω;`)(束)

 「まあ、だよな。」(柳韻)

 

 確かに悔しかったろうな。でもな、それって束がさんざん言っていた凡人のモブの考え方なんだよ。それって心は俺達は何ら変わりはなしない家族なんだよ。

 

 「ねえ、束。それってね、束以外も、私も、雪子小母さんも、お父さんも感じてきたことよ。それはね、束にとって大切なことよ。私達はね、人間は一人では生きていけないから。」(楓)

 「ねえ、束ちゃん。おばちゃんはね、束がやっていることや分かっていることを1から10までしっかりと覚えて理解するのは無理!何一つ分からない!でも、お母さんもお父さんもおばちゃんも箒ちゃんも束ちゃんのことは大!大!大!大好きだよ!そんな、おばちゃんが全く分からないことが分かる束ちゃんのこと、皆、篠ノ之の皆は自慢だし、愛しているからね!!」(雪子)

 

 楓と雪子の言葉、なあ、束。分かるだろ、二人がどれだけお前を愛しているか。相手の考えを一発で読める束ならそれが純粋に自分のことを愛してくれていることだって分かるだろ。

 

 「だって、そんな、そんな愛しているなんて、、、。」(束)

 「愛しているよ、束のこと、世界で一番愛しているから。」(楓)

 「おばちゃんの愛だって負けていないわよ!」(雪子)

 

 楓と雪子の言葉にまた瞳に涙をためる束。はあ、知らぬ間に俺達は束のことを放っておいていたんだな。人よりも多くのことを理解して、人のことを即座に理解して大人の様に振舞う束を大人扱いしてその心の内を理解しようとしなかった、、、父親失格だな。

 

 「お母さん、雪子おばちゃん、、、。」(束)

 「大丈夫!大丈夫!女の子はね、イケメンで高収入で気立ても良くて、自分のことを受け入れてくれて理解してくれる男と結婚すれば人生勝ち組よ!!」(雪子)

 

 雪子、それはお前の願望だよ。そんな条件のいい男なんて早々いないからな。

 

 「雪子の言っていることはまあ置いておいてだな。」(柳韻)

 「何よ兄貴!大切でしょ!!」(雪子)

 「今回のことでな、どうする?」(柳韻)

 「スルー!!」(雪子)

 「どうするって?」(束)

 「そいつに言い負かされたままで良いのか?」(柳韻)

 「良くない!!」(# ゚Д゚)(束)

 「なら、今まで通りに目指すんだろ?父さんたちに束の夢が叶う瞬間を見させてくれ。」(柳韻)

 

 俺の願い、楓と雪子の願い。ずっと昔にクソジジイが束のことを忌み子と言って叱責し、挙句のあてに手を挙げたあの日に言った言葉、それを俺は束にもう一度言った。束の瞳にまた力が戻って来る。

 

 「あんのいけ好かないスカシ野郎、目に物を言わせてやる!!」(束)

 

 まあ、とりあえずは良しとするか。今日は祝い酒だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 風都市、正則は自分の家へと戻っていた。正則は下宿先の民宿に無理を言ってもらい、そこから通学することにしていた。今は自分の家にある荷物を取りに家に戻ったのだ。正則は一言も言わずに家の中に入り、自分の部屋へと入る。

 

 「おい。」

 

 その時に正則の背後から声を掛けた人物が居た。その人物は無精ひげが目立ち、なおかつ明らかに多量の酒を飲んでいることが分かった。

 

 「どこに行っていた。」

 

 その人物は岩城和重、正則の父である。父和重の問いに正則は何も言わずに部屋へと入ろうとする。

 

 「聞いているだろ!!」(和重)

 

 和重はそう言うと正則の後頭部を思い切り殴りだした。

 

 「おい!ええ!何様だ、お前!誰の!おかげで!飯が食えていると思うんだ!」(和重)

 

 酒に酔っていることを差し引いても明らかに行き過ぎている風景。和重の行動を止める者はおらず、ただ殴打する音が響くだけである。殴られる中でついには鮮血も飛び散る。

 

 「はあ、はあ、思い知ったか。俺の言うとおりにすれば良いんだ。」(和重)

 

 そう言うと和重はそばにあった酒瓶を取るが空であった。

 

 「なんでねえんだよ!!」(和重)

 

 そう言うとあろうことかその酒瓶を正則にぶつけた。鈍い音が響き、和重は家から出る。横たわっていた正則はむくりと起き上がると自分の部屋へと入って荷物をまとめる。額からも口の端から流れる血にも気に留めずに口を動かした。

 

 「こんな世界、、、壊れちまえばいい。」(正則)

 

 怨嗟に満ちたその言葉は正則の心の内を現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「夜にごめんな、秋人。」(柳韻)

 

 月明りが照らす中で篠ノ之家の縁側で柳韻がケータイで秋人に電話をしていた。

 

 「ああ、今子供たちも眠ったところだ。万夏が大樹と一緒に寝たいって言うから今日は布団を並べてね。」(秋人)

 「いや、良かった良かった。いやあ、奇跡って起きるんだな。」(柳韻)

 「まあ、な。」(秋人)

 「まあ、良いだろ。詳しくは聞かないからな。実は頼みがあるんだ。」(柳韻)

 

 柳韻は明かりの付いた蔵、束がISを実現するための場所を横目に本題に入る。

 

 「頼みって?」(秋人)

 「秋人の知り合いに警察のお偉方がいるだろ。」(柳韻)

 「柳韻さんのところに世話になった時に話した通り、そう易々とは連絡は出来ないんだ。」(秋人)

 「分かっている。それを承知で頼む。」(柳韻)

 「その頼み事って?」(秋人)

 「風都市に住んでいた、若しくはまだ住んでいるかもしれんが岩城正則って中学生のことを知りたいんだ。」(柳韻)

 「分かった。一応、話してみる。」(秋人)

 「頼む。もしかすると放っておいて良いことじゃないだろうからな。」(柳韻)

 

 そう言う柳韻の表情は昼間の阿保面ではなく、真剣な顔つきだった。

 

 

 

 

 

 

 「だああああああもう!!これも!これも!足りない!!」(束)

 

 蔵の中では束が紙の束をぶん投げて髪をかき乱す。この当時の束は何をどうすればISが出来るのか、そのことは分かっていたが必要なものの調達に頭を悩ませた。

 

 「いや、あいつに一泡吹かせてやるんだから、これでめげてられない!」(束)

 

 そう言うと束はばらばらになった紙を拾い集める。その表情は年頃の、何かに熱中して、それに全身全霊を注いでいる少女のものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「壊れちまえばいい壊れちまえばいい壊れちまえばいい壊れちまえばいい壊れちまえばいい」(正則)

 

 最低限の荷物を持ってバスに乗っている正則はブツブツと怨嗟の言葉を紡いでいた。

 




 親からの愛情を改めて認識した束はIS実現のために意欲を見せて、これまで以上の情熱で取り組む。その中で正則とは衝突を繰り返す。そして、ついに

 「はあ?」
 「あんたも付き合え!」

 ISが実現へと近づく中で迫りくる闇の者たち、そこで正則の前に現れたのは、、、。

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