IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 喧嘩をしながらISの開発を進める束と正則。その裏で束の父、柳韻が正則のことを気に掛け、ある知り合いに連絡した。ある電話番号から電話を受けた正則は風都へ戻る。その時、風都では正則の父である和重がガイアメモリを手にして犯罪に手を染めていた。



仮面ライダーオーズNEObeforeヘキサオーズ第5話

side3人称(過去)

 風都市にあるかもめビリヤードという古びた建物。そこに鳴海探偵事務所があった。この探偵事務所は前所長の娘が現在所長を務めており、彼女の元で働いている探偵が二人いる。当然ながら建物の外観上はあまり人が来る場所ではなく、大抵のやって来る依頼というのが飼い猫の捜索である。まあ、中にはこの探偵事務所の扉を叩くに足る理由がある者が最後の頼るべき場所として訪ねてくる。

 

 「ねえ、こんな場所で待ち合わせをしてんの?」(束)

 「向こうが指定してきたんだ。俺は入っているから、近くを勝手にほっつき歩いてろ。」(正則)

 「はいは~い。」(束)

 

 建物の前に到着した正則と束はそのまま別れた。正則はかもめビリヤードの中へ入っていき、鳴海探偵事務所のドアを開けた。

 

 「いらっしゃい~。」(亜樹子)

 

 正則を出迎えたのはこの探偵事務所の所長である鳴海亜樹子だった。そして、この事務所にはもう一人来客が居た。

 

 「正則、、、。」(???)

 「母さん。」(正則)

 

 事務所のソファーに腰を掛けていたのは正則の母、久田宮早苗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 「う~~ん、どこを見ようかな?」(束)

 

 正則と別れた束は一人で風都の街を歩いていた。風都市の地図を持って、それとにらめっこをしていた。

 

 「ん?」(束)

 

 束は歩く中で街の建物に何かしらの傷が付いているのに気付いた。至る場所でそれが見られていた。そして、ある銀行の入り口には立ち入り禁止のテープが張られていたのだった。

 

 「何があったんだろう?」(束)

 「おっ、そこのお嬢ちゃん。」(???)

 

 銀行の前で立ち止まった束に中から警察官、刃野刑事が声を掛けてきた。

 

 「ん?」(束)

 「お嬢ちゃん、ここいらは危ないから他の場所に行った方が良いよ。」(刃野)

 「何があったの、おじさん。」(束)

 「数日前から続いている銀行強盗がこの銀行を襲撃したんだ。負傷者が多くてね、この辺りは危ないんだ。」(刃野)

 「ただの銀行強盗なの、そいつ?」(束)

 「ここからは警察の仕事でね。行く当てがないなら俺の知り合いの場所を教えようか?」(刃野)

 「いや、良いよ。おじさん、ありがとう。」(束)

 

 束は礼を言うとその場を立ち去る。

 

 「おじさんか~。そんなに老けているのか?」(刃野)

 

 恐らく誰が聞いてもあんたはおっさんだと言われるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「へへへへ、これだけあれば。」(和重)

 

 正則の実家では和重がメモリの力で繰り返した銀行強盗で手にした金を見ていた。少し前の彼なら競馬やパチンコ、酒に使おうとしていただろう。だが、今の彼には集めた金でもっと別の物を買おうとしていた。

 和重は大金をカバンに出来る限り詰込み、家を出た。家を出た和重はとある廃工場へ向かう。

 

 「おい!金を持ってきた!新しいメモリを買わせろ!!」(和重)

 

 和重は廃工場で大声を出す。そして、暗がりから和重にメモリを見せた男が現れた。

 

 「私が言った金額は用意できましたか?」(謎の男)

 「ああ!さあ、メモリを渡してくれ!!」(和重)

 

 和重は札束を男を見せる。男は金を受け取るとスーツケースを出して、そこから複数のメモリを和重に渡す。

 

 

 「最初にお渡ししたメモリとの相性を考えましたのでそちらになります。使う時は以前と同じようにお使いください。」(謎の男)

 「良いから、早く使わせてくれ!」(和重)

 

 男からメモリを買った和重はその体に新たな生体コネクタを打ち込む。和重は最初に持っていたアンモナイトのメモリを持つと起動させた。

 

 ≪アンモナイト≫

 

 和重が変身したアンモナイトドーパントはさらにメモリを起動させて自身の体に挿し込んでいく。メモリがアンモナイトドーパントの体に挿されていく度にその肉体には新たな生物の特徴が付加される。いずれも海洋生物ないしは水生生物であり、男が言ったアンモナイトメモリとの相性の良さを考慮して選ばれたものであり、その効果はすさまじいものだった。

 

 「良いぞ!良いぞ!これなら、この街も壊せる!」(アンモナイトドーパント)

 

 狂喜するアンモナイトドーパントを尻目に男はこの場を立ち去る。

 

 「愚かな奴だ。まあ、これでデータが取れれば儲けもの。メモリのデータがあれば、ボトルにも応用できるからな。」(謎の男)

 

 男に利用されているとも知らずにアンモナイトドーパントはその場で狂った笑いを上げ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こちらにどうぞ。」(亜樹子)

 

 鳴海探偵事務所では正則と母早苗が向かい合っていた。その二人にお茶を出す亜樹子だが二人の間の空気に言い知れぬ圧迫感が漂う。

 正則は終始早苗のことを正面から見つめ、早苗は申し訳なさそうに顔を伏せていた。

 

 (あ~、もう!こういう時に限ってなんでドーパントが出るのよ!翔太郎君、調べものがあるって言ってどっかに行っちゃうし!それに、早苗さんの様子、見てられない。)(亜樹子)

 

 いつもであればこの探偵事務所の探偵である仮面ライダーWこと左翔太郎がいる。だが、翔太郎は調べることがあると言って出ていったきりである。早苗が来たのがそのタイミングであり、ほどなく正則も来てしまったのだ。

 

 「今更、何の用。」(正則)

 

 初めに言葉を発したのは正則だった。その表情に明らかな怒りの色があった。

 

 「あれから何年だと思う。父さんの仕事がなくなって、父さんが酒浸りになって、父さんの暴力がひどくなって、それから母さんが居なくなってからどれくらいたったと思う。」(正則)

 

 近くでそのことを聞く亜樹子はここで初めて正則の状況が分かった。それ故にかなりの驚きの表情を見せた。

 

 「ごめんなさい。」(早苗)

 

 早苗は正則に対して謝罪の言葉を掛ける。だが、それを受けても正則の表情は柔らかくなることは無かった。

 

 「あんたはもういない。これから先の俺の人生に一切かかわることはない。そう思って過ごしてきた。それなのに、今更何の用だよ。」(正則)

 

 平坦な調子でありながらそれ故に激しい怒りを感じる正則。それに対して早苗はごめんなさいと言葉を繰り返すだけだった。

 

 「ただ、あなたに謝りたかった。」(早苗)

 「なら、気が済んだろ。それだけだったら、俺は帰る。」(正則)

 

 正則はそのまま席を立つ。彼にとってはもはやここにいる理由は無かった。

 

 「待って!もう一度、あなたと一緒に居させて!」(早苗)

 

 その言葉に正則の足が止まる。正則でも一緒に居るという言葉に後ろ髪が惹かれる部分があった。だが、こういう時には何かしらの邪魔が入るのがお約束である。

 

 「ええ!?本当!?」(亜樹子)

 

 亜樹子のケータイに連絡が入る。それを見た正則はなぜか脳裏に束の顔を思い浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風都市の中心部、そこでは火災が起きており至る所に煙が上がっていた。そこにはアンモナイトドーパントがおり、街の建物、車などにその触腕を力任せに振るって叩きつけていた。

 

 「フハハハハハ!壊れろ壊れろおおお!!」(アンモナイトドーパント)

 

 暴れまわるアンモナイトドーパントに警察が対応するが警察の装備では全く歯が立たなかった。

 

 「刃野刑事、警官たちを下がらせろ。あいつには拳銃は通用しない。」(照井)

 

 警官たちに指示を出すのは赤いジャケットを着た照井竜。彼は風都署におけるガイアメモリ犯罪を取り締まる部門のトップである。

 

 「分かりました。」(刃野)

 

 刃野は照井の指示を受け、警官たちを下がらせる。

 

 「ああ?逃がすと思うかアアアア!!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは両腕の触腕を伸ばし、警官たちに攻撃をする。そこに割って入る無数の炎の弾丸。炎の弾丸はアンモナイトドーパントの触腕を焼き切った。

 

 ≪ヒート!トリガー!≫

 「言ったろ。俺の庭で暴れまわるのはよしてくれって。」(W)

 

 その場に現れたWは以前と同じくアンモナイトドーパントにトリガーマグナムから放たれる炎の弾丸を浴びせていく。炎の弾丸はアンモナイトドーパントに非常に効果が高く、炎の弾丸を受けた触腕は焼き切れていた。

 

 「きいいいさあああまああああ!!」(アンモナイトドーパント)

 

 Wに対して怒りの感情を露にするアンモナイトドーパント。

 警官たちはWが来たことによりその場を次々と後にする。そして、その中でただ一人その場から離れるそぶりをして、警官たちから見えない場所に移動した照井は懐から赤いメモリ=アクセルメモリを、ハンドルを思わせるアクセルドライバーを取り出す。

 照井はアクセルドライバーを装着、右手に持ったアクセルメモリを起動させる。

 

 ≪アクセル!≫

 「変、、、身!」(照井)

 

 照井はアクセルメモリをアクセルドライバーにセットして、ハンドルをひねる。

 

 ≪アクセル!≫

 

 照井の肉体は赤く輝く機械的な装甲を纏い、青い丸型の複眼とAの意匠が特徴的な銀色の角を持つ仮面を被る。彼こそ風都を守るもう一人の仮面ライダーである仮面ライダーアクセルである。

 アクセルは多機能大型剣であるエンジンブレードを右手に持ち、物陰から跳び出す。アクセルはWへ攻撃をするアンモナイトドーパントにエンジンブレードを叩きつけた。

 

 「さあ、振り切るぜ!」(アクセル)

 「もう一人の、仮面ライダーだと?」(アンモナイトドーパント)

 「おし、行くぜ。」(W翔太郎)

 

 遠距離から炎の弾丸を撃っていくWにエンジンブレードを叩きつけるようにアンモナイトドーパントの体に傷をつけていく。高熱の弾丸と強烈な斬撃はアンモナイトドーパントの肉体を傷付けていく。

 

 「このままメモリブレイクまで持ち込むぞ。」(アクセル)

 「ああ。」(W翔太郎)

 

 Wとアクセルはそれぞれ持っている武器にメモリをセットする。

 

 ≪トリガー!マキシマムドライブ!≫

 ≪エンジン!マキシマムドライブ!≫

 「「トリガーエクスプロージョン!」」(W)

 「たあああああ!!」(アクセル)

 

 トリガーマグナムの銃口からは超高熱の火炎が放たれる。その火炎を浴びた火炎を浴びたアンモナイトドーパントは炎に包まれる。火だるまとなったアンモナイトドーパントをアクセルはエネルギーを帯びたエンジンブレードでA型の斬撃を放った。

 Wとアクセルは一定以上のダメージをドーパントに与えて、体内のメモリを排出させると同時に破壊するメモリブレイクによってドーパントを無力化している。これまでのドーパントと同じくメモリブレイクの手ごたえを感じていた二人はその後の光景に違和感を覚える。

 火だるまになったアンモナイトドーパントからメモリが排出されず、身体がボロボロになって消えてしまったのだ。

 

 「どういうことだ?」(アクセル)

 「確かにメモリブレイクをしたはずだ。」(W翔太郎)

 「ハハハハハハハハ!引っかかったなあ!」(アンモナイトドーパント)

 

 その様子に疑問を抱いたWとアクセルの背後に倒されたはずのアンモナイトドーパントが現れた。

 

 「お前らが倒したのは俺の偽物だよ!」(アンモナイトドーパント)

 「何?」(アクセル)

 「いや、アンモナイトのメモリにそんな能力は無いはずだ。」(Wフィリップ)

 「どういうことだよ。」(W翔太郎)

 「見せてやるよ!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは新たに手にしたガイアメモリを起動させる。

 

 ≪プラナリア≫

 ≪オクトパス≫

 ≪ジェリーフィッシュ≫

 ≪シーキューカンバー≫

 

 新たに起動させた4本のメモリをアンモナイトドーパントはそれらを空中に放り投げる。

 4本のガイアメモリは意思を持っているかのようにアンモナイトドーパントの体に挿された。アンモナイトドーパントの肉体はすぐさまに変化を見せる。腹部にはプラナリアが現れ、肩部にはクラゲの笠と触腕がわき腹からはタコの触腕が生え、背中にはナマコの体表と同じように変化した。見る者に生理的嫌悪感を催すその容姿はある怪奇小説作家の作品に出てくる化け物と酷似していた。

 

 「なんつう姿になりやがるんだ。」(W翔太郎)

 「5本のガイアメモリを一度に。あいつ、身体が保たないぞ。」(アクセル)

 「使っているメモリは全て水棲生物だ。恐らくアンモナイトのメモリとの相性を考えて使っているんだろう。」(Wフィリップ)

 「死ねえええええええ!!」(アンモナイトドーパント)

 

 さらなる異形へと変化したアンモナイトドーパント、当然ながらメモリの過剰使用は使用者にかなりの危険が伴う。以前、この街で猛威を振るったウェザードーパント=井坂深紅郎は自身の体に複数のメモリのコネクタを打ち込み、なおかつウェザーのメモリの他にも複数のメモリを同時に使用することで二人の仮面ライダーを苦しめた。だが、その代償として井坂はその肉体を残すことなくこの世を去った。アンモナイトドーパントの場合は井坂ほどではないがそれでも体にどのような影響が出るのか分からないのだ。それ故にどのような力を持っているのかも判断できないのだ。

 アンモナイトドーパントは元々あった触腕に加え、新たに生えたクラゲとタコの触腕も使い、無数の槍としてWとアクセルに高速で突き出した。触腕は際限なく伸び、その先端は鋼鉄をも穿つほどの固さを誇っていた。

 Wとアクセルはアンモナイトドーパントの攻撃を躱すが、二人の背後にあった路上駐車されていた車が串刺しとなった。

 

 「仕方ねえ。フィリップ。もう一度メモリブレイクだ!」(W翔太郎)

 ≪トリガー!マキシマムドライブ!≫

 

 攻撃を躱したWはもう一度必殺技トリガーエクスプロージョンを放つ。再度放たれた高熱火炎はアンモナイトドーパントを包み込み、燃やしていく。

 炎が消えるとそこには黒く炭化したアンモナイトドーパントが居た。だが、炭化した表皮に亀裂が入り、ボロボロと落ちていくとそこから全く無傷のアンモナイトドーパントがいた。

 

 「あいつ、なんで傷一つついていねえんだよ。」(W翔太郎)

 「奴が使っているプラナリア、シーキューカンバーのメモリの能力だ。どちらも高い再生能力を持っている。そして、オクトパスとジェリーフィッシュのメモリも再生能力を持っている。」(Wフィリップ)

 「実質、不死身なのか?」(アクセル)

 「特にプラナリアの再生能力が大きいだろう。他にもジェリーフィッシュのメモリによって体表の水分量も比べ物にならないだろう。ヒートトリガーの火力でも奴を焼き尽くすことは出来ないだろうね。」(Wフィリップ)

 

 有効であったヒートトリガーの火力も有効打にならなくなってしまった。

 

 「なら、ツインマキシマムだ。」(アクセル)

 ≪アクセル!マキシマムドライブ!≫

 「OK。行くぜ、照井。」(W翔太郎)

 ≪ヒート!メタル!≫

 ≪メタル!マキシマムドライブ!≫

 

 アクセルがマキシマムドライブを発動。全身にエネルギーをチャージ、それによりアクセルの全身から炎が吹き上がる。

 Wはトリガーメモリをヒートメモリと相性が良い剛力戦士のメタルメモリに変える。Wは高熱の剛力戦士のヒートメタルに変身、メタルメモリの専用武器であるメタルシャフトにメタルメモリを装填した。するとメタリシャフトの両端が炎に包まれた。

 Wはメタルシャフトをその場で振り回し、アクセルはその場で全身を炎を右回し蹴りでアンモナイトドーパントに放つ。両者が放った炎は一つとなり巨大な火炎となってアンモナイトドーパントに迫る。

 

 「フン!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは自身の触腕を無理矢理引きちぎり、それをあろうことかWとアクセルのツインマキシマムに飛ばした。そして、自身の使ったジェリーフィッシュメモリの能力である液体化を使って炎から自身を守る。当然ながらアンモナイトドーパントは無傷であり、犠牲とした触腕もすぐに生えそろった。

 

 「何つう厄介な奴だ。」(W翔太郎)

 「メモリ同士の相性が良いせいだ。その所為でこちらの火力を遥かに上回る再生能力を発揮している。」(Wフィリップ)

 「だが、どうにかしないと行かないぞ。」(アクセル)

 

 二人の仮面ライダーが力を合わせても決定打になり得ない。

 

 「仕方ねえ。相棒、切り札を使うぜ。」(W翔太郎)

 「そうだね。あれならきっと突破できる。」(Wフィリップ)

 

 だがWはこのような相手でも、どんな劣勢でもひっくり返すことが出来る力を持ってる。それをひそかに呼んでいた。

 

 「ああ?何だ、あれは?」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは空を見上げるそこには太陽の輝きを得て高速でWの元へ飛来してきた。Wはそれを見るとメモリをサイクロンとジョーカーに変えた。

 ダブルドライバーに装填されているサイクロンメモリとジョーカーメモリが空中へと光の道を作る。そこに飛来してきたものがその光の道に沿ってダブルドライバーと合体した。

 Wは飛来してきたもの=エクストリームメモリを開いた。

 

 ≪エクストリーム!≫

 

 Wの体は変化し、緑と黒に挟まれ光り輝くクリスタルが出現した。これこそ、W究極の姿であるサイクロンジョーカーエクストリームだった。

 

 「敵の全戦力を閲覧した。」(Wフィリップ)

 

 変身後、クリスタルサーバーが輝く。この姿のWはフィリップが接続できる地球の記録=星の本棚と直結しており、戦闘していながら敵の能力の全てを瞬時に調べることが出来る。Wはこの力で並み居る強敵たちを撃破してきたのだった。

 

 「翔太郎。トリガーにヒート、ルナのメモリを使おう。それで奴の体内のメモリを打ち抜くことが出来るはずだ。」(Wフィリップ)

 「OK。」(W翔太郎)

 「なら、俺は時間を稼いでおく。」(アクセル)

 

 アンモナイトドーパントの攻略法を見つけたWとアクセルは瞬時に打ち合わせをする。アクセルはエンジンブレードを再度構え、Wはエクストリーム専用武器のプリズムビッカーにプリズムメモリをセットする。そして、その一部始終を束は物陰から見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side束

 何なの!?何なの!?何なの、あれは!?箒ちゃんが生まれた年にあったインベス事変に出てきたインベスなの!?もしかして、あのタコみたいなのと戦っているのってアーマードライダー!?気付いたら、なんか逃げなきゃいけない雰囲気になっていたし。もしかして、お父さんが風都に行ったら気を付けろって言っていたのはこのことだったの?

 

 「束。向こうに行って、奇妙なことに巻き込まれたら必ず鳴海探偵事務所を頼れ。あそこなら必ず助けてくれる。」(柳韻)

 

 早く、お父さんの言っていた場所に行かないと、、、。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 じりじりとその場から離れようとする束。だが、それを見逃すほどにアンモナイトドーパントは良心の呵責を持ち合わせていなかった。

 

 「おい、待てええええ!!」(アンモナイトドーパント)

 「きゃああああ!!」(束)

 

 アンモナイトドーパントは触手を伸ばして、物陰から移動しようとしていた束を拘束する。

 

 「まだ、人が居たのか!」(アクセル)

 「おおっと、このまま攻撃して良いのか!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは自分に攻撃を使用としていたアクセルの前に束を盾にしたのだ。

 

 「出来ねえよなあ?この街の正義の味方さんは何も関係の無い人間を見捨てることなんて、出来ねえよなあ!!」(アンモナイトドーパント)

 

 一転して、情勢が変わってしまった。この状況にアンモナイトドーパントは調子づく。

 

 「おら、その武器を捨てろ!!そこの奥の奴もだよ!早くしろ!」(アンモナイトドーパント)

 

 人質が居る状況でむやみに攻撃することが出来ないのを警官であるアクセルは勿論、仕事から荒事も珍しくないWもアンモナイトドーパントの指示に従うしかないことは分かっていた。アクセルはエンジンブレードを地面に突き刺し、Wもヒート、ルナのメモリをセットしたプリズムビッカーを地面に置く。

 

 「良いぞ。よし、おい、お前はこのまま俺と来てもらうぞ!」(アンモナイトドーパント)

 「ああああ!!」(束)

 

 アンモナイトドーパントは人質にした束をさらに締め付ける。尋常でない力で締め付けられる束から痛みから来る叫びが上がる。

 

 「んの野郎。」(W翔太郎)

 「だが、この状況で僕たちも不用意に動けない。どうすれば、、、。」(Wフィリップ)

 

 Wとアクセルが手詰まりになっていた時だった。Wとアクセルの背後から誰かが走り、その人物はアンモナイトドーパントにあろうことか殴りつけたのだった。

 

 「ああ!?なんで、お前が居るんだよ!!」(アンモナイトドーパント)

 

 その人物は鳴海探偵事務所からこの場に駆け付けた正則だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side正則

 なんでだ?あいつが危ない目に遭っている、それが分かった瞬間に体を動いていた。あいつのことなんてどうでもいいはず、なのに。なぜだ。でも、この胸のざわめきは、抑えられない。

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 

 「そいつを離せ。」(正則)

 「ああ?」(アンモナイトドーパント)

 「離せ。」(正則)

 「うるせえ!すっこんでろ!!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは正則に空いている触腕で叩きつけを行うとした時だった。

 

 ≪トライアル!≫

 「これ以上お前の好きにはさせない!」(アクセル)

 

 アクセルはアンモナイトドーパントの気がそれた瞬間に最強の姿、アクセルトライアルに変身していた。アクセルトライアルのスピードで人質になっていた束と今まさに攻撃を受ける正則を救出した。その瞬間にWはプリズムビッカーを拾い、トリガーメモリを装填した。

 

 ≪ヒート!マキシマムドライブ!ルナ!マキシマムドライブ!トリガー!マキシマムドライブ!≫

 「「ビッカーファイナリュージョン!」」(W)

 

 プリズムビッカーから赤色と黄色と青色の光弾が放たれた。光弾はそのままアンモナイトドーパントの体内にあったメモリを撃ちぬいた。

 

 「ぬおおおおお!!」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントの体に現れていた他のメモリの特徴は即座に消えてしまった。そして、アンモナイトドーパントの体内にあるアンモナイトメモリにダメージが入った。怯んだその瞬間にWはエクストリームメモリを一度閉じて、再度展開した。

 

 ≪エクストリーム!マキシマムドライブ!≫

 

 Wから強烈な風が巻き上がりそれは竜巻となってWに力を与える。

 

 「「ダブルエクストリーム!」」(W)

 

 Wの必殺キック、ダブルエクストリームがアンモナイトドーパントの腹部に当たり、アンモナイトドーパントをフッ飛ばした。

 

 「ギャアアアアア」(アンモナイトドーパント)

 

 アンモナイトドーパントは爆発を起こし、体内にあったメモリが排出され破壊した。それに伴ってアンモナイトドーパントは元の人間の姿となる。

 

 「く、、そ、、。」(和重)

 

 和重は地面に落ちているメモリの破片に手を伸ばし、気を失った。

 

 「あの、さ。」(束)

 「あ?」(正則)

 

 アクセルに救助された束は隣の正則に声を掛けた。

 

 「ありがとう。」(束)

 

 束は正則に感謝の言葉を述べた。当の掛けられた本人は顔を背け、

 

 「うるせえ。」(正則)

 

 と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が経ち、鳴海探偵事務所。

 

 「今回の事件で確実に岩城和重は罪に問われるだろう。当然ながら、そのことでのしわ寄せが確実にあんたらに来るだろう。」(翔太郎)

 

 翔太郎は今回のガイアメモリ事件における予想されるであろうことを正則と早苗に話していた。

 

 「いえ、私は正則とまた新しい生活が出来ればそれで良いんです。」(早苗)

 

 そう言う早苗の顔に不安の色は無かった。隣にいる正則は翔太郎の話を聞いてこれと言って思うことが無いのか言葉を発さなかった。そして、亜樹子と同じようにその場をやや離れたところから見ている束。その束は実のところ、この場にいるある人物にどこか疑念を抱いていた。

 翔太郎の話が終わると明るい表情で正則に話しかける早苗。はた目から見れば母親が息子に他愛ない話をしているように見える。

 

 (なんでなんだろう?この人、どうして自分の子どもに媚びるようなことをしているんだろう?しかも、母親って言うより、この人。)(束)

 

 人類の最高種ゆえに他人の些細な機微からその人物の思考を全て理解できる束は早苗のある違和感を見逃さなかった。

 

 「ねえ、また一緒に暮らそう。ね?」(早苗)

 

 徐々に言い方が変わっていく早苗。束はその表情から彼女が何を求めているのかを理解してしまった。そして、それは正則も同様だった。

 

 「いい加減にしろよ。都合がよくなった途端に媚びて。あんたに必要なのは俺じゃないだろ。」(正則)

 

 正則はまるで汚らしいものを見るような目つきで早苗を睨みつけていた。

 

 「何を、言っているの?」(早苗)

 「大方、生活に困ってんだろ。しかも、俺が居れば市からの助成金もあるからな。それに俺が働けばさらに金が入ると踏んでいるんだろう。」(正則)

 「それは、そんなことじゃなくて。」(早苗)

 「じゃあ、なんだ。他にまっとうな理由を上げろよ。上げられるものならな。」(正則)

 「私、聞いてない。」(亜樹子)

 

 そう、ここの所長である亜樹子は詳しい話を聞いていないのだ。

 

 「一つ、話をし忘れてた。早苗さん、今のあんたは確か2か月前に愛人と別れたんだよな。これまでは愛人と一緒に居ることで生活してきたあんただったがそれが立ち行かなくなった。急な金が必要になったあなたは昔の夫のところにいる息子に目を付けたんだろ。」(翔太郎)

 

 依頼をする中で実は翔太郎は早苗の行動に疑問を抱いた。だからこそ、早苗の身辺を調査するためにアンモナイトドーパントの襲撃の中で調べまわっていたのだ。

 

 「何よ。その子は私の子よ!今更、どうこう言われる筋合いはないわ!それに、この子、ずっと気味が悪かったのよ!人を見透かすような眼をして。それでもあんなろくでもない男との間に生まれたあんたとまた一緒に暮らしてあげるのよ!何が悪いのよ!」(早苗)

 「あなたね!」(亜樹子)

 

 とうとう本性を出した早苗。それに対して苛立たった時にぶちかますスリッパを準備する亜樹子。だが、この場にいた誰よりもこの件に関係なく、それでも、話題に上がっていた正則のことを知る人物が早苗の頬に平手打ちをした。

 

 「お前。」(正則)

 

 涙を両目にため、早苗を睨む束。

 

 「何よ、あなたは!」(早苗)

 「そいつは、クソスカシは、正則はあんたのものじゃない!どうして、それが分からないの!」(束)

 

 自身も歪であった。だが、そんな自分を受け入れた家族のことを知る束には早苗の言葉を受け入れることが出来なかった。

 

 「早苗さん、あんたからは報酬は受け取らない。これから先の身の振り方を考えた方が良い。」(翔太郎)

 

 帽子の下の眼を険しくしながら翔太郎は言った。

 

 「良いわよ、そいつはどうせ捨てたんだから。好きにしなさいよ!」(早苗)

 

 早苗は荷物を持って事務所から出た。あとに残された彼らに重い空気が流れる。

 

 「そんな、どうして、、、。」(束)

 

 涙を流しながらそう言う束。束の両肩を抱く亜樹子。

 

 「嬢ちゃん、嬢ちゃんの親父さんに連絡するわ。迎えに来てもらった方が良いだろう。」(翔太郎)

 

 翔太郎は懐から出したスタッグフォンで柳韻の電話番号にコールした。

 涙を流す束を見て、正則は小声で言った。

 

 「だから、言ったろ。お前は恵まれているって。」(正則)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねえ、正則。これで、最後。」(束)

 「そうだな。ほら、やれよクソ兎。」(正則)

 

 風都での事件から2年後、高校3年生になった束と正則。二人は篠ノ之家の蔵でついに念願だったIS第1号のプロトタイプを完成させた。

 

 「行くよ。」(束)

 

 パソコンを操作する束。パソコンには順々にシステムが正常かどうかを確認する英文が表示される。そして、

 

 「やっっっっっったあああああああああ!!」(束)

 

 ついに完成したのだった。

 

 「はあ、やっと間に合ったかあ。」(正則)

 「やった!やった!やったああああああああああああああああ!!!!!」(束)

 

 疲れからその場に胡坐をかく正則に喜びを全身で表している束。ついに始まったISの歴史、そして、二人に待ち受ける過酷な運命。




 遂にISの学会発表。そこで出会ったのはかつては別の世界でライダーとして戦っていた氷室幻徳だった。そして、謎の不死身の怪物が猛威を振るう。
 正則にも運命を選ぶ時が来た。

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