IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

80 / 109
 風都で起きた強盗事件、それはガイアメモリを手にした正則の父和重が起こしたものだった。正則と束は柳韻から伝え聞いた話と正則からかかった電話から風都へ訪れた。
 ドーパントとなった和重の事件の裏では正則は自身を捨てた母早苗と再会した。その再会もつかの間にWとアクセルがアンモナイトドーパントと戦闘を繰り広げ、その場にいた束が人質となってしまう。そこを正則が介入することでアクセルが束と正則を救助し、Wはエクストリームの力でアンモナイトドーパントを撃破。時は経ち、ついに束と正則はISの試作機を完成させた。


仮面ライダーオーズNEObeforeヘキサオーズ 第6話

side3人称

 日本航空宇宙学会シンポジウム、日本で航空や宇宙に関わる開発を行っている者であれば名前を聞いたことがある学会。古くからある学会であり、そこの発表会において束と正則、千冬はISを発表するのだった。そして、この会場に彼女たちの未来を決定づける人物がいた。

 

 「こういうことは必要ないと思うのですが、総理。」

 「何。国の未来に関わるであろうことはあらゆることを知っておくべきだ。それは総理であろうとなかろうとな。」

 

 この当時、まだ在任中だった氷室泰山内閣総理大臣と氷室幻徳総理大臣秘書の姿が会場にあったのだ。

 

 「今は、お前と私しかいないんだ。仕事を持ち込まなくて良いだろう。」(泰山)

 「お忍びで来るには良い場所じゃないだろ、親父。」(幻徳)

 「元々、私的で行くつもりだったんだぞ?お前が心配する要素などないだろ。」(泰山)

 「そう言うところを野党につつかれる可能性がある、万が一に狙われることも考えられるから控えてくれって話しているだろ。」(幻徳)

 「それよりも、お前のそのジャケットの下はいつもの奴なのか?」(泰山)

 

 この二人、実のところは親子であり、現在の姿は普段のスーツ姿ではなく両者ともに私服姿である。泰山に尋ねられた幻徳はレザージャケットを開けるとそこには「勿論!!」という白色の大きな字がプリントされた紫色のTシャツを泰山に見せる。お世辞にも良いとは全く言えない私服のセンス、そうこの男、仕事は出来るのだが如何せんプライベートがやはり総理大臣の息子ということもあり、天然でダサいのだ。

 

 「もう少し、お前のセンスを分かってくれる者が現れてくれればなあ。」(泰山)

 

 この親にしてこの息子ありである。しかもこの親父、どこかあきらめの声音かと思いきや、本当にどこかにいないかと聞くような感じなのである。久方ぶりに父と息子としての外出、まあ神社の家だろうが政治家の家だろうが親子のそういう時間は大切である。そんな中で発表を行う束たちはと言うと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side束

 よし、遂にこの時が来た!やってやる!この発表で私達が頑張って実現したISを世の中に見せるんだ!!きっと、上手くいく。きっと、、、。

 

 「お前は忌み子だ!祟り神だ!篠ノ之の家から出てはならない存在だ!!」

 

 急に、小さい時にぶつけられた言葉を思い出した。どうしよう、もしも、ダメだったら?私達の頑張りが一切価値のないものって決めつけられたら?今なら、きっと何もなかったように帰れる。でも、でも。

 

 

 

side千冬

 束の奴、どうしたんだ?さっきまではやる気のある表情だったが急に暗くなったな。もしかして、何か不安なことでもあるのか?一体?

 

 

 

side正則

 クソ兎の奴、どうしたんだ?あんなに青い顔して。あとはもう発表するだけだってのに。ここに来て、怖気づいたか。はあ、こんな程度で怖気づくか?俺たち以外の奴の評価なんて大した意味はない。それなのに、こいつはそれを気にするのか?

 

 

 

 

side3人称

 過去のことを思い出して不安に駆られだした束を見た正則は束の方へと近づく。

 

 「どうした?」(千冬)

 「いや、大丈夫。大丈夫だから。」(束)

 

 千冬は束に声を掛けるが束から返って来たのは大丈夫という言葉だけ。二人の様子を見る正則はさも気づいていないように振舞っているが束の肩が微かに震えていることに気付いていた。正則はそれとなく束の様子からその要因にも見当をつけていた。

 

 「おい。」(正則)

 

 正則の言葉に反応を返せないほどに不安に駆られている束。それに対してため息を吐く正則。

 

 「岩城、今は。」(千冬)

 「おい、篠ノ之。よく見ろ。ここはどこだ。」(正則)

 「え?」(束)

 「もう一度言うぞ、篠ノ之。ここはどこだ。」(正則)

 「ここは。」(束)

 「ここはお前のいる場所はお前のいた過去の場所じゃない。それはお前の頭の中の想像、記憶だ。良いか、それに目を取られるな。そして、もう一回だけ聞くぞ、ここはどこだ。」(正則)

 「ここは学会の発表シンポジウム。」(束)

 「ここには何しに来た。」(正則)

 「ISを発表するため。」(束)

 「それなら、お前のその頭の中にいる奴はここにいるのか。」(正則)

 「いない。」

 「なら、後はここに来ている奴らにお前が心血を注いだISを見せてやれ。自信を持って、それを見せるんだ。そうだろ。」(正則)

 「うん。」(束)

 

 正則の問いかけに答えていくうちに落ち着いていく束。最後の問いかけには失っていた力強い輝きを瞳に宿していた。

 

 「なあ、織斑はどうするんだ?」(正則)

 「いや、私はここにいる。正直、二人の作ったものに乗っているだけだからな。実際のものに関する説明はお前たちに任せる。」(千冬)

 「分かった。おし、篠ノ之。準備は良いだろ。」(正則)

 「あ、うん。」(束)

 「おし、そろそろ出番だから行こうか。」(正則)

 

 前を向いて歩きだす正則と束。この時に束は初めて正則がクソ兎ではなく篠ノ之と呼んだことに気付いた。

 

 

 

 

 

 「この、しののの?というのはどんな人物だ?」(泰山)

 「今日の発表には高校生が混じっているらしい。その高校生が篠ノ之束と岩城正則だ。」(幻徳)

 「何!?高校生なのか!?」(泰山)

 

 氷室親子は今日の学会の講義などをまとめた書類に目を通していた。その時に泰山が篠ノ之の名に興味を示した。幻徳は事前に出ていた情報を伝え、高校生が発表するということに泰山は驚いた。

 

 「特に珍しくないぞ、親父。過去に学生ながらに学者に劣らない発見をした者もいる。もしかすると、今日の発表を行う篠ノ之束と岩城正則はそれらと同じかもしれないんだ。」(幻徳)

 「なるほどな。いつの時代も未来を切り開く若者が出るということだな。」(泰山)

 「俺達がやるべきことはその若い奴らのために道を整えること、だろ。」(幻徳)

 「そういうことだ。そのためにもこういったことをよく知っておく必要があるからな。」(泰山)

 

 見据えるは国の未来、そのために必要なことは惜しまない。氷室内閣の支持率は決して大幅に高いわけではないが現行の社会の仕組みの改善などを行って来た。それ故にここまでの日本の政権の中ではまれにみる程の在任期間を有している。

 

 「俺にもっとそう言う分別があれば、違っていたのだろうか。」(幻徳)

 

 小声で幻徳はそう言った。

 

 「ん?何か言ったか。」(泰山)

 「独り言だよ。気にするなよ。」(幻徳)

 「そうか。」(泰山)

 

 幻徳の答えにそう返した泰山。幻徳の顔はまるで、長い間得られなかった時間を手にしたような、安堵や安心のような言葉に簡単には出来ないものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、都内にあるフォトスタジオ。

 

 「それでは、相川さん。今回の展覧会もお願いします。」

 「こちらこそ、よろしくお願いします。」(始)

 

 このフォトスタジオでは写真家相川始の展覧会が始まろうとしていた。フォトスタジオのスタッフは写真家である始と打ち合わせをしていた。それも終わり、始はスタジオを出た。

 

 「もしもし、天音ちゃん。ああ、今終わったよ。」(始)

 

 スマホを出して電話をしているのは親しい仲のある女性である。彼女との付き合いは長く、お互いに欠かせない相手である。

 

 「分かった。このまま帰るから。」(始)

 

 電話の相手に帰ることを伝えた始はそのまま帰路につこうとした。

 

 「っ!!」(始)

 

 始はどこから当てられた殺気を感じ、その場を飛びのく。始が先程まで居た場所には無数の何かが次々と激しい音を響かせて地面を破壊していく。

 

 「お前は何者だ。」(始)

 

 先程まで見せていた柔和な空気は消え、戦士として厳しい表情を見せる始。その始の問いに答えるように破壊された地面から舞う土埃の煙の中から異形の存在が姿を現した。その異形の姿は全体的には蛇がそのままヒト型になったような見た目をしていた。さらに特徴的なのは上半身が無数の蛇が絡み合って構成されたような風貌をしており、頭部は黒色の蛇の仮面らしき顔をしていた。

 

 「アンデッドか。」(始)

 

 始は目の前に現れた異形を見てそう言った。

 アンデッド、かつて遥か古の時代に地球上に生きる52の種の始祖であり、地上の覇権をかけて地上で争った不死身の生物。始の前に現れた異形はそのアンデッドに似通っていた。

 始はコートの内側から何か時計型のアイテムを取り出した。始は時計型のアイテム=ライドウォッチの金色のパーツを回転させ、上部のボタンを押した。

 

 ≪カリス!≫

 

 音声が流れるとライドウォッチは光となり始の方へと流れる。すると始の腰に赤色のハートが特徴的なバックル、カリスラウザーが出現した。始はカリスラウザーの右横に備え付けられたカードデッキからカードを1枚引いた。

 

 「変身。」(始)

 ≪change!≫

 

 始がカリスラウザーにカードを読み込ませると始の体は漆黒の蟷螂=仮面ライダーカリスへと変身した。カリスは自身の専用武器であるカリスアローを手に取り、カリスアローの刃で異形を攻撃していく。異形に刃が振るわれ、その体表から鱗が肉片ごと地面に落ちていく。

 

 「あまり長引かせたくないからな。これで終わらせる。」(カリス)

 

 カリスはある程度相手を攻撃した後、カードデッキからカードを3枚引いた。そして、それをカリスラウザーと合体させたカリスアローに読み込ませた。

 

 ≪drill!tornado!float!≫

 

 読み込ませたカードに書かれた巻貝が触腕をドリルの様に高速回転させ、タカが翼で竜巻を起こし、トンボが高速で飛行する。それぞれのカードを模したエネルギーがカリスの背後に浮かびあ上がる。それらのエネルギーがカリスに集まり、カリスの複眼が赤く輝いた。

 

 ≪spinning dance!≫

 

 カリスラウザーからカリスの最強技が発動したことを示す音声が流れた。

 カリスの体を漆黒の疾風が包み込むとカリスの体は空中へと舞い上がっていく。その動きは不規則でさながら舞い踊っているよう。その不規則な動きから予測が着かない挙動から突然、異形目掛けて高速回転してのドリルキック=スピニングダンスを放った。

 カリスの纏う疾風が高速で回転する刃となりドリルとなったカリスのキックの威力を高める。スピニングダンスは最強技に恥じぬ威力を遺憾なく発揮し、異形を粉々に引き裂いた。

 

 「こいつ、アンデッドでは無かったのか。」(カリス)

 

 地面に横たわる下半身と無数に散らばった破片を見てそう言うカリス。程度に差はあれどアンデッドは不死生物。不死身ゆえにその肉体の強度は尋常ではなく、過去にカリスが戦ったアンデッドたちは体に傷が付くものの、粉々になるということは決してなかった。

 

 「だが、アンデッドに似た気配。それならこいつは一体。」(カリス)

 

 カリスにとってはアンデッドであることを判別するのはそう困難なことではない。この異形からアンデッドたちと同様のものを感じたということはこの異形はアンデッド若しくはアンデッドに類するものであること。それなのに。そう考えているカリスの前で異形の亡骸に異変が起きた。粉々になっている上半身のかけらが集まりだしたのだ。それもゆっくりではなく尋常でない速度で集まっていき、集まった破片は下半身と融合。傷一つない姿で復活を果たしたのだった。

 

 「人工アンデッドなのか。それにしては俺達に近い。」(カリス)

 「君の考えの通りだ、カリス。」(???)

 

 異形の背後より現れたのは風都において暗躍した謎の男だった。

 

 「お前は、人間なのか?」(カリス)

 「流石はカリス、いやジョーカーと呼んだ方が良いか。この姿の時はダーククロウと名乗っていてな。以後、お見知り置きを。」(ダーククロウ)

 

 男=ダーククロウは手に持っていた武器、ネビュラスチームガンを見せて話す。

 

 「こいつの名はヒュドラ。俺が生み出した人工アンデッドの1体で、過去に広瀬氏が産み出したトライアルシリーズより進んだ、君たち純粋なアンデッドに限りなく近い存在だ。」(ダーククロウ)

 「他にもいるのか!」(カリス)

 「ああ、今はそいつはもう一人のところへやった。」(ダーククロウ)

 「まさか、剣崎のところに。」(カリス)

 

 カリスの脳裏に過酷な運命に立ち向かい、苦しんできた仲間の顔が思い浮かんだ。

 

 「お前たちを放っておかない。ここで倒す。」(カリス)

 

 カリスは新たなカードを引き、カリスラウザーに読み込ませた。

 

 ≪evolution!≫

 

 カリスの肉体が紅色に変わり、アーマーにも金色のエッジが付く。カリスの最強形態、ワイルドカリスである。ワイルドカリスは両大腿部のアーマーにセットされた武器ワイルドスラッシャーを持ち、ヒュドラとダーククロウに躍りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学会においては束と正則は懸命にISについて発表をしていた。二人は束が考案し、正則が改良した理論から千冬をテストパイロットにして得た試作機の詳細なデータ、それが宇宙空間においてこれまでの宇宙服とは根本的に違うこと、それゆえの有用性を二人は懸命に述べていった。その中で投げかけられる質問も束と正則は即座に答えを返していった。

 会場に出席している学者たちの大半は全くの未知のものに目を白黒させていた。荒唐無稽にも思えるものをまだ二十歳にも満たない学生二人が徹底的に裏打ちされた理論をもとによどみなく説明をしていた。その姿に目を見張っている人物たちがこの場にいた。

 

 

 

 

 

 「一見すると荒唐無稽だが、その割には揺らぎのない語りだ。」(泰山)

 「この場にいる学者や学会員にどれだけこれを理解できているだろうな。」(幻徳)

 「いや、私ですらどうも絵空事のようなものを聞かされているように感じているんだぞ。この場にいる者たちにどれだけの理解者が居るか、知れたものではないだろう。」(泰山)

 

 お忍び、というか完全なプライベートで来ていた氷室親子だった。この親子、そこまで科学の知識があるわけではない(一般教育レベル)。それ故に束と正則の説明について行けない、というか途中から自分たちには理解できるのは難しいとして気持半分に聞いていた。だが、二人にとって一番注視していたのは壇上で学者たちを、技術者たちを、航空宇宙に関わる有識者たちを相手に堂々とした姿で、学生特有の熱意を持って正則と束が話していることだった。

 

 「なあ、幻徳。もしも、あそこの彼らがここで話していることを、その先の未来を実現するとしたら、それが見たいか?」(泰山)

 「見てみたい気もする。だが、彼らの夢が思わぬ形で歪んでしまうかもしれないと考えると素直には。」(幻徳)

 「だが、私達が尽力すれば、その夢を守りながら実現できるかもしれん。」(泰山)

 「一国の首相が個人のことに援助するのか?前代未聞だぞ、親父。」(幻徳)

 「私一人とは言っていない。彼らの夢を理解してくれる多くの人を探す。私達が力を貸せるのはその後だ。」(泰山)

 

 国の未来を担うであろう二人に泰山は希望を見出していた。それは厳しいことを言いながらも幻徳も同じだった。

 

 「でも、この発表が終わったらすぐに話を市に行くんだろう?親父。」(幻徳)

 「当然だろう。」(泰山)

 

 この時こそが大樹の知る原作と大幅に歴史が変わった時である。そもそもの始まりは正則と束の邂逅であるが二人の努力を、それを理解しようとする人物たちがいて、彼らが束たちに接触する。このことが大幅にこの後の歴史を変え、未来を変えた。そして、それは現代で戦う大樹たち、新たな世代の仮面ライダーたちの誕生にも繋がった。だが、そこに至る道のりはともすれば原作世界よりも過酷かもしれない。

 未来への新たな光が生まれる時、図らずもその光から必ず闇も生まれる。そのことをまだ正則と束は知らなかった。




 発表を終え、現実に打ちのめされる束。それを見る正則の心境にも変化が。
 新たに誕生した人工アンデッド、その魔の手がある人物にも。
 そして、正則の今後を決定づけることが。

 「俺は、もう篠ノ之と一緒に居られない。」
 「やっと、会えたな。究極の人類、そのアダム。」

 手にするは禁断の悪。

 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。