IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎竜   作:柏葉大樹

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 学会の発表を行う束たち。時同じくして相川始=仮面ライダーカリスの前に謎の異形が姿を現した。その異形と戦うなかでここまでの事件で暗躍した人物、ダーククロウが姿を見せた。


仮面ライダーオーズNEObeforeヘキサオーズ 第7話

side3人称

 ダーククロウと新たに誕生した人工アンデッド=ヒュドラを相手にワイルドカリスは激しい戦いを繰り広げていた。ワイルドカリスはその特性としてパラドキサカマキリの特性を得ている。元々、カリスの姿はカマキリの性質を持つマンティスアンデッドのものである。マンティスアンデッドの力をより上位のアンデッドであるパラドキサアンデッドの力でより進化させたのがワイルドカリスである。それ故にワイルドカリスの能力は非常に高く、敏捷性、防御力、攻撃性、全てにおいて過去に存在してきた多くのライダーたちの中でも上位に入る。

 ワイルドカリスはダーククロウがネビュラスチームガンから撃ちだす光弾を、ヒュドラの無数の猛毒の牙を軽やかに躱し、両手に持ったワイルドスラッシャーで次々と斬り裂いていく。

 

 「やはり、純正のアンデッド。53番目のアンデッド、ジョーカー相手では分が悪いか。」(ダーククロウ)

 「お前はどこまで知っている。」(カリス)

 「BORD、バトルロイヤル、禁断の力。君たちに関することも、そして、このシステムのことも。」(ダーククロウ)

 

 ダーククロウはネビュラスチームガンを見せびらかせる。

 

 「人工アンデッドを生み出したのは俺の計画を完遂するための手段の一つだ。それにあと少しで計画は最終段階に到達する。」(ダーククロウ)

 「やはり、お前たちはここで倒す。」(カリス)

 

 ワイルドカリスは自身が持つ13枚のカードが融合して生み出される最強のカード、ワイルドを手に取る。ワイルドカリスは二つのワイルドスラッシャーとカリスアローを合体させた。ワイルドスラッシャーの部分にワイルドのカードを読み込ませ、そのエネルギーを光の矢として撃ちだした。 

 ワイルドカリス最強必殺技ワイルドサイクロンがダーククロウとヒュドラに襲い掛かった。

 ワイルドサイクロンが通ったダーククロウとヒュドラが居たところには大爆発が起きた。

 

 「流石はジョーカー。カテゴリーKの力を完全にものにしているな。」(ダーククロウ)

 「やはり、生きていたか。」(カリス)

 

 だが、肝心の相手のダーククロウは距離の離れたビルの屋上にいた。その手には多頭の大蛇が書かれたカード=ヒュドラを封印したラウズカードがあった。だが、その姿は無傷、とはいえず体のアーマーの大半も傷だらけであった。

 

 「オルトロスを回収するためにはここで撤退させてもらおう。」(ダーククロウ)

 「剣崎のところへ送ったのはそいつだな。」(カリス)

 「ああ、お察しの通りだ。それでは、またな。」(ダーククロウ)

 「逃がすか!!」(カリス)

 

 カリスはカリスアローから矢を放つがそれが当たる前にダーククロウはネビュラスチームガンから煙を出して姿を消す。矢が煙を撃ちぬき、風によって煙が晴れていくとそこにダーククロウの姿は無かった。

 

 「剣崎、、、。」(カリス)

 

 カリスはここにはいない戦友の名を呼ぶ。同じ苦しみを味わったかけがえのない友、その友に魔の手が迫っていた。駆け付けるべきかと考えるが、カリスは変身を解きその友がまた無事でいることを信じることにした。その友は簡単にやられはしない、そのことをよく理解している始は同じ空にいる友=剣崎一真の健闘を祈った。

 

 

 

 

 カリス=始がダーククロウとヒュドラと戦っていた時よりも数十分前、ある山中だった。そこにはかつて人類基盤史研究所=BORDが存在した。その施設はイナゴの特質をもつアンデッド、ローカストアンデッドによって壊滅された。今では壊滅した施設がボロボロと時に任せて風化していくのを待つだけだった。

 

 「やっぱり、何もなくなっているんだな。」(剣崎)

 

 そこに青いバイク=ブルースペイダーに乗って訪れたのはかつてはBORDに所属していた仮面ライダーである剣崎一真だった。彼にとっては様々なことが数多くあり、その一つ一つがかけがえのない記憶である。

 

 「でも、ここで正解だな。不用意に戦えば町に被害が出るかもしれなかったからな。」(剣崎)

 

 だが、ただ感慨にふけるためにここに来たのではなかった。彼自身も歴戦の戦士、そしてアンデッド相手の戦いを心得ている、いわばアンデッド退治の専門家である。剣崎はアンデッドが放つ特有の殺気を感じ、ここへ移動したのだ。

 

 「グおおおおお!!」

 

 林から飛び出てきたのは見た目は狼男だが、胸部にも顔を持つ異形である。この異形こそダーククロウが生み出した人工アンデッドの2体目、オルトロスである。

 

 「アンデッド、なのか。」(剣崎)

 

 剣崎はオルトロスの姿を見て、過去に対峙したアンデッドであるウルフアンデッドの姿が脳裏によぎった。その剣崎にオルトロスは全身に生えた刃を使い、剣崎を切り裂こうとする。だが、剣崎はオルトロスの攻撃を躱していく中でジャケットから青色と銀色のライドウォッチを取り出して起動させた。

 

 ≪ブレイド!≫

 

 どこからか銀色のバックル、ブレイバックルが現れ赤いベルトを伸ばして剣崎の腰に止まる。ブレイバックルはその機能を開放するための起動音を響かせる。

 

 「変身!」(剣崎)

 ≪ターンアップ。≫

 

 剣崎はブレイバックルのレバーを引き、ヘラクレスオオカブトが描かれたエネルギースクリーンを前方に展開させた。剣崎はエネルギースクリーンに向かって走り出す。そして、スクリーンを通過した剣崎の姿は蒼き衣をまとい、銀色の鎧を纏った仮面ライダーブレイドに変身した。剣崎が変身したブレイドは醒剣ブレイラウザーを右手に持ち、オルトロスとの戦いを始めた。

 ブレイドとオルトロスの戦いは終始ブレイドのペースだった。オルトロスは持ち前のスピードでブレイドの躍りかかるがブレイドは自身が持つラウズカードを駆使してオルトロスの攻撃を的確に対処していた。そして、速いが攻撃が単調なオルトロスにブレイドはカウンターの攻撃を当てては追撃していく。

 

 ≪beat≫

 

 ブレイドはパンチ力強化のカードであるライオンビートを発動、向かって来たオルトロスの顔面に強烈な右ストレートを放った。自身が飛び掛かった勢いもあってオルトロスは空中を弧を描いて地面へと落ちていく。そこにさらにブレイドは新たなカードを読み込ませる。

 

 ≪tackle≫

 

 突進力を強化させるボアタックルを発動したブレイドは空中で身動きのできないオルトロスに強烈な突進でさらに吹き飛ばした。そして、ブレイドはオルトロスにとどめを刺すべく自身が放つ最強コンボを為す3枚のカードを使った。

 

 ≪kick! thunder! mach!≫

 

 カードに書かれたイナゴは天高く跳び上がり、ヘラジカはその角から雷を迸らせ、ジャガーは高速で疾走する。カードの力がブレイドに宿り、ブレイドの仮面が赤く輝く。

 

 ≪lightning sonic!≫

 

 ブレイド最強の必殺技ライトニングソニックが発動、高速の疾走によってスピードで空中高く跳び上がり、電撃を帯びたライダーキックはオルトロスに炸裂した。

 

 「オオオオオオオオン。」(オルトロス)

 

 オルトロスはか細い遠吠えを上げ、爆発を上げた。地面に倒れたオルトロスにブレイドはラウズカードを投げた。投げられたラウズカードはオルトロスを吸収し、ブレイドの手元に戻った。

 

 「一体、どうしてまたアンデッドが。」(剣崎)

 

 ブレイドは変身を解除し、オルトロスを封印したカードを見る。疑問をそのままに剣崎はブルースペイダーに乗り、この場を後にした。そして、剣崎がこの場を立ち去った後、この場にやって来た人物が居た。

 

 「やはり、オルトロスは封印されたか。」

 

 彼はあの地下室にて何かを生み出した人物、そして和重にガイアメモリを渡した人物であり、彼こそがダーククロウである。

 

 「やはり、人からアンデッドへとなった剣崎一真を相手では人工アンデッドでは歯が立たないか。しかし、これではこちらの計画に支障をきたしてしまうな。」(ダーククロウ)

 

 ダーククロウにとって自身が生み出した人工アンデッド、ヒュドラとオルトロスは計画の中枢をなすある存在をコントロールするための存在である。その成長を促すためにブレイド、カリスという二人のジョーカーと戦わせたのだった。

 

 「仕方ない、計画の順序を変えるとするか。まあ、仮面ライダーと名乗る奴らの行動は読みやすいからな。」(ダーククロウ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学会のシンポジウムでは束と正則の発表は無事に終わった。二人は予定していた内容を全て発表し終えた。あとはこの後の質疑応答である。束は緊張の面持ち、正則は不遜な表情を崩さなかった。一方の学会に出席していた者達は二人の発表を聞いて、ほとんどが夢物語の中にあるもののように受け取っていた。航空宇宙の分野に限らず様々な分野のはるか先を行くもの、それが彼らにとってのISだった。それ故に質疑応答をしたところでそれがどういったものなのか、それを真に理解できるものではないと彼らは考えていた。

 

 「良いかね。」

 

 ここで発言をしたのはこの分野においては著名であり、この分野においては知らぬものはいないという人物である。

 

 「君たちのそれは宇宙を活動場所にしているのだね。」

 「はい。」(正則)

 「それはどれほどの資金や部品、部品に掛かる原料がかかるのかね。」

 「今のままだと1機作るのにスペースシャトルやロケットを作りよりもかかってしまいます。およその予算だとロケット3機分になります。だけど、今後の研究次第では「話しにならん。」、、、え。」(束)

 「現実的に考えたまえ。君たちが話したのは明らかな子どもの夢物語だ。確かに理論に裏打ちされたものだがそれまでだ。そこに何か研究に繋がるようなものは何もない。」

 「待ってください。ここまで記録もデータもあるのに、何もそう言わなくても。」(正則)

 「君たちは私のこれを質疑応答だと思っているみたいだがそうではない。大人として言わせてもらうがここは君たちのお遊戯会ではない。」

 

 彼から放たれた言葉は容赦なく束の心を追い詰めていく。その一方で自身も分からぬままに相手の言動に感情のままに返していく正則。このまま相手を納得させることが出来ずに二人の発表は終わった。

 

 

 

 

 

 

 「ひっ、ひっぐ。」(束)

 

 会場の椅子に座り、嗚咽を漏らす束。その両目から大粒の涙がこぼれ落ちる。束の隣に座る千冬は束の肩を抱いていた。そして、正則は苛立ちをぶつけるように壁に拳を叩きつけていた。彼らはやれることは、やるべきことは全てやった。それでもなお、彼らの熱意にこたえてくれる人物は現れなかった。

 

 (ああ、くそ。むしゃくしゃする。にしてもあのジジイ、こっちの話を聞いていたのか?耳が遠くなってんじゃねえのか。だあ、クソが。)(正則)

 

 正則は先程からイライラを隠そうとせずにせわしなくふらふらとしていた。そして、泣いている束を見ては悔しさに顔を歪ませていた。

 

 (どうして、お前がそんな顔をするんだよ。精一杯やっただろ。それなのに。だあ、なんなんだよ、お前がそんなんじゃ、こっちも調子が狂うだろ。ああ、もう、なんなんだよ。)(正則)

 「少し、良いかね。」(泰山)

 

 正則が自身の胸の内に渦巻く感情に苛まれている中、束たちの前に私服姿の泰山と幻徳が現れたのだった。というか、この状況下における私服のおじさんと老人というなんとなく会場に来ていた多くの有識者たちから浮いた服装の二人を見て、今回の大人たちの対応に憤っていた正則も毒気を抜かれた。

 

 「あの、あなたたちは?」(千冬)

 

 場違いな二人を見た千冬は束の肩を抱きながらそう言った。まあ、こんな結果で終わった後に話しかけてきたどこにでもいるようなおじいさんとレザージャケットを着て決めてるおっさんが居たらそうなるだろう。

 

 「私は氷室泰山。息子の幻徳だ。実は、君たちの発表を見て、ぜひ話をさせてもらいたくてね。」(泰山)

 「氷室泰山って、、、総理大臣、どうして、こんな場所に。」(正則)

 「総理はこういったシンポジウムをはじめとしたあらゆる分野の研究発表を欠かさずに見ています。とはいうものの親父にとっては趣味としてこういった科学分野の発表は総理になる前からよく見ていただけだ。今回もお忍びで来ただけだけどな。」(幻徳)

 「幻徳、そう言うな。」(泰山)

 「それで、何の用なのさ。あなたたちも私達のISをバカにしに来たの!!」(束)

 

 涙を流しながら束が泰山と幻徳に怒りをぶつける束。流石に今回のことは束にとってはかなりのことというのが伺えた。

 

 「いや、違う違う!私はそんなつもりで来たのではなくてだね。君たちの話を聞いて、出来る限りの力を貸したいと思って来たんだ。」(泰山)

 

 泰山の言葉に束も、千冬も、正則も目を丸くする。この3人、泰山が総理大臣であるということは分かっている。その総理大臣が力を貸したいと話したのだった。

 

 「あ、あ~、あの、その言葉って総理としてですか?それとも話を聞きに来た一個人としてですか?」(正則)

 「総理としてでもあるし私個人としての言葉でもある。」(泰山)

 

 ここに来る前、

 

 

 

 

 

 

 「なあ、幻徳。」(泰山)

 「親父、どうした?」(幻徳)

 「何とかならんか。」(泰山)

 

 束たちの発表を見た泰山と幻徳が話していた。

 

 「総理一人の権限で一民間人の研究の援助は出来ない。それをすれば、親父は総理を職を失うことになる。」(幻徳)

 「だろうな。」(泰山)

 「だが、彼らに新しい道を提示することは出来る。」(幻徳)

 

 泰山は総理大臣という立場から公に束たちを援助は出来ない。それはすればただちに国会において野党からそこを責められ、挙句の果てに内閣総辞職になりかねない。だが、幻徳にはそうならない、かつ束たちの助けになる考えをすでに考え出していた。

 

 「なら、すぐにでも話に行くか。」(泰山)

 「そうした方が良い。今の彼らにはなおさら。」(幻徳)

 

 そうして、氷室親子は席を立ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「JAXAに所属しているある人物に君たちのことを伝えようと思う。その上で君たちがどうするかを決めて欲しい。」(幻徳)

 「それって、つまり?」(千冬)

 「君たちさえ良ければだ。私達が出来るのはここまでだが、後は君たちが出来る限り多くの人々に君たちの夢を見せて欲しい。」(泰山)

 

 氷室親子が束たちに提示したのは航空宇宙に関わるある人物との出会いだった。彼らが陰ながらに出来るのはそこまで、その後はまた束たちの努力次第である。だが、束たちにとってはこの誘いは信じられないものだった。

 

 「おじさんたち、どうして。」(束)

 「正直、君たちの研究していたものを理解は出来なかった。だが、君たちが研究していることに対する君たちの熱意は十分過ぎる程に伝わった。」(泰山)

 

 彼らが手を貸すのは束たちの熱意に他ならなかった。それを聞いた時に束は信じられない表情をしていたが。

 

 「篠ノ之、受けろよ。完全に解決、までは行かなくてもたぶん、お前の夢をちゃんと形に出来る切符だから。」(正則)

 

 それを正則が背中を押す言葉を投げかけた。

 

 「あ、ありがとうう、ございます。」(束)

 

 束は涙を流して氷室親子に対して感謝の言葉を口にした。その姿を見ていた正則は今までにない程の穏やかで優しい表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side正則

 あれから、篠ノ之と織斑は先に総理が話してくれたある人物の元へ向かった。なぜだか、分からんがどうも気分が良い。こんな風になったのはどれくらいぶりだろうか。でも、どうして?

 

 「まあ、良いよな。」(正則)

 

 俺はそのまま今の居住地であるぼろいアパートに戻った。ここしばらくは忙しくて帰っていなかったからな。流石に部屋の掃除もしないとな。篠ノ之の所に行くのは明日で良いな。そう思って、ドアのカギを開けようとした時だった。

 

 「え。」(正則)

 

 鍵がかかっていなかった。いや、今朝はちゃんと鍵をかけて出た。どうして。俺はそのまま部屋の中へと入っていく。そこには、本当ならここにはいないはずの奴だった。

 

 「おう、どこほっつき歩いていた。」(和重)

 「どうして、ここに。」(正則)

 

 ガイアメモリを所持していた罪に問われることになっていて、警察に拘束されているはずの親父だった。

 

 「ぼろい場所に住んでやがるなあ。おい、酒買って来い、酒。」(和重)

 「ここに何でいるんだよ!あんた、どうやって、ここに来たんだよ!」(正則)

 「うるせえ!」(和重)

 

 親父から飛んできたのは幼い頃からいつも喰らって来た親父の拳。俺はいきなりのことで躱すことが出来ず、そのまま部屋のドアにぶつかった。

 

 「たく。お前は俺の言うことを聞いていればいいんだよ。」(和重)

 

 そう言って親父は俺の部屋の中を物色していく。

 

 「お?やっぱあるじゃねえか。さっさと出せばよかったのによ。」(和重)

 

 目当ての金を見つけて、上機嫌の親父。どうして、こんな屑が俺の父親なんだよ。帰ってくるまでにあった気分の高揚はとっくに無くなっていた。

 

 「おお、そうだ。お前とつるんでいるこの女。酒を買うついでに呼べ。」(和重)

 

 そう言って、親父は写真を俺に見せた、篠ノ之が写っている写真を。

 

 「どうする気だよ。」(正則)

 

 親父の顔を見た瞬間に吐き気がするほどの嫌悪感が湧いた。言わなくてもすぐに分かった。こいつが篠ノ之をどうするつもりなのか。

 

 「こんな体をしていやがるなんてなあ、お前にはもったいねえ。」(和重)

 

 そう言って写真を見て、下卑た笑みを浮かべる親父。俺は今日までにあった篠ノ之とのことを思い出した。だめだ。せっかく、あいつの夢が叶うかもしれないって時に、そんな時にこんな奴の好きにさせるのはだめだ。気付いた時には俺は親父に殴り掛かっていた。

 

 「やめろおおおおおおお!!!」(正則)

 

 とにかく、俺はがむしゃらに親父を殴った。親父からも殴り返されたが俺はそれに構うことなく殴り続けた。親父からの抵抗がなくなっても俺は殴り続けた。親父の顔の原型が分からなくなるほどに殴った。親父は虫の息だった。そうなって、やっと俺は冷静になった。そう、冷静になってしまった。

 俺の両手は真っ赤に染まっていた。両手だけじゃない。部屋中に親父の血が飛び散っていた。自分のしたことを自覚した。とうとう、俺は卑下していた親父と同じことをしてしまった。

 

 「そ、そんな。」(正則)

 

 この部屋の惨状を見れば、いくら犯罪を犯した親父とはいえ、俺に非があるのは明白だった。俺は心の中で暴力を振りかざす親父を下に見ていた。だが、俺は親父を止めるために親父と同じように暴力で相手をねじ伏せた。

 

 「俺は、もう、一緒に居られない。篠ノ之とは一緒に居られない。」(正則)

 

 こんな俺のことを果たして篠ノ之は受け入れてくるか、今までと同じようにISの開発を出来るのか。だめだ。彼女から拒絶されることしか思い浮かばない。

 

 「やっと会えたな。人類の最高種、そのアダム。」

 

 そんな文字通り絶望の中にあった俺の前に男が現れた。その男に手にあったのは6枚の金色のメダルがはまったバックルだった。

 

 「さあ、手に取れ。これでお前の望み通りのことをしろ。お前の中にある全てを壊したいというその欲望を開放するんだ。」

 

 男の手の中にあったバックルが宙を浮かび、俺の腰に止まった。そして、バックルから伸びたベルトにはまっていた金色の丸いパーツがメダルの前を通りぬけた。

 

 ≪ショッカー!ゲルショッカー!デストロン!ゴッド!ガランダー!デルザー!≫

 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!。」(正則)

 

 その瞬間に俺の体の奥に何かが入り込んだ。それは俺の頭の中で壊せ、壊せ、壊せと強く言って来た。その瞬間から俺はその声に従うように体の奥に入り込んだ何かを受けれいた。

 

 

 

 

 

 

 

side3人称

 ダーククロウの目の前で正則の周囲にショッカー、ゲルショッカー、デストロン、ゴッド、ガランダー、デルザーという悪の秘密結社の紋章が浮かぶ。それは一つとなり、正則の胸部に浮かび上がった。すると正則の肉体は黄金の骸骨のような姿となり、その両目は赤く爛々と光っていた。

 

 「ついに誕生だ。悪の力を持ち、悪を従える破壊神、ヘキサオーズの誕生だ!」(ダーククロウ)

 

 ダーククロウがその様に狂喜した。そして、それにこたえるかのようにヘキサオーズは背中から触手状の翼を伸ばし、屋根を突き破って空へと飛翔した。

 

 「ガアアアアアアアアアア!!!」(ヘキサオーズ)

 

 その咆哮は破壊への欲望に満ちていた。

 




 束の夢が叶う、そんな中で束にある人物の魔の手が。

 「おいおい、人ん家の娘に手を出すとはずいぶんと礼儀がなっていねえな。」

 和重の脱走を聞きつけて風都から仮面ライダーW、左翔太郎と仮面ライダーアクセル、照井竜が駆けつける。それぞれの事件の裏にあるものが明らかになった時、あの男がついに姿を見せる。

 「やあ、俺は火野映司。」

 近づくは運命の日。集まるは歴戦の戦士たち。

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