side3人称
東京都内某所、そこでは仮面ライダーブレイド=剣崎一真と仮面ライダーカリス=相川始が顔を会わせていた。
「始の方にもアンデッドが!?」(剣崎)
「ああ。そのアンデッドを生み出したやつも一緒だった。」(始)
二人は周囲から自分たちの姿を簡単には確認されないよう森の中で話していた。ここはかつて、彼らの仲間が一時囚われていたある研究施設の近くであり、所在を知る者は多くはない。
「まさか、この封印したアンデッドも。」(剣崎)
「奴はオルトロスと言っていた。そいつを剣崎の所へ送ったのも言っていた。」(始)
彼らは今自分たちを襲撃した新たなアンデッドについて情報を共有していた。
「何のために人工アンデッドを。」(剣崎)
「奴は2体のアンデッドを使って何かを企んでいた。だが、奴は手段の一つだと言っていた。恐らくだが、何かもっと別なことを考えているかもしれない。」(始)
彼らがそう話していた時だった。
「ああ、だから剣崎一真。君が持っているオルトロスのカードを返してもらおう。」(ダーククロウ)
ダーククロウが姿を現した。その手にはネビュラスチームガンがあり、その銃口を剣崎と始に向けていた。
「お前はあの時のやつだな。」(始)
「流石は相川始。よく覚えているようだな。ここで自己紹介しよう。俺の本当の名は皇将星。前は財団に所属していて、今はフリーだ。」(ダーククロウ=皇)
「お前の目的は何なんだ!」(剣崎)
「俺の目的はこの不完全な世界を破壊し、俺の理想とする新世界を生み出すこと。そのためには剣崎一真、君が封印したオルトロスが必要だ。」(皇)
「それならこれは渡せない。」(剣崎)
剣崎はオルトロスのカードをジャケットの懐へと仕舞う。
「仕方ない。なら、力づくでだな。」(皇)
「そうはさせるか!」(剣崎)
剣崎と始はライドウォッチを起動、仮面ライダーブレイドと仮面ライダーカリスに変身した。それを見た皇はネビュラスチームガンの銃口を向けたままだった。
「なら、君たちの相手はこいつだ。」(皇)
皇がそう言うとブレイドとカリスの背後にあった施設が空から落ちてきた何かによって粉砕、その余波でブレイドとカリスは吹き飛ばされてしまった。
「さあ、思う存分にその力を振りかざし全てを破壊しろ!ヘキサオーズ!!」(皇)
崩壊した施設からは黄金の骸骨=ヘキサオーズが現れた。ヘキサオーズは背中の翼の収納、獣のような前傾姿勢から天を見上げるように仰ぎ、牙を大きく開いた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」(ヘキサオーズ)
ヘキサオーズは咆哮を上げるとそのままブレイドとカリスに飛びかかる。右腕の鋭く長い3本爪、左腕の巨大なカッターを振るい、ブレイドとカリスに攻撃をしていく。その攻撃の一撃一撃はすさまじく、腕を振るった余波で周りの木々はなぎ倒れ、地面は割れた。さらには攻撃を防ぎ、躱しているブレイドとカリスがダメージを負う程だった。
「始、こいつには手加減は出来ないぞ!」(ブレイド)
「カテゴリーKならば。」(カリス)
ヘキサオーズの力に危機感を覚えたブレイドとカリスは最強の力であるエボリューションのカードをそれぞれ手にしようとするが、
「確かに強いだろう。だが、ヘキサオーズはお前たちが考えているようなアンデッドではない。過去に暗躍した6つの悪の組織の力を振るうただの人間だ。」(皇)
ヘキサオーズが人間であることを口にした皇。その言葉にブレイドとカリスはカードを引く手を止めてしまった。
「何?」(カリス)
「どういうことだ!!」(ブレイド)
「言葉通りだ。君たちがカテゴリーKの力を使えば確かにヘキサオーズは倒せるかもしれない。だが、その所為で彼が死んでしまうかもしれない、と言えば。」(皇)
皇の言ったことは事実である。それを確かめようのないブレイドとカリスはヘキサオーズの猛攻をなんとかしのぐしか手が無かった。それと引き換えにヘキサオーズは自身の内にある破壊衝動のままに暴れまわる。なんとか状況を変えようと策を考えるブレイドとカリスだが、ヘキサオーズを無傷で止めるには彼らの持つ手札ではそう簡単に行くことでは無かった。
ヘキサオーズは全身の骨を飛ばし、それを一か所に集めてそれを手にした。すると骨が集まったものは背骨のようなものから巨大で鋭い刃が現れ、全体としてまるで無限を示す龍=ウロボロスの体から剣の刃が飛び出ているような剣となった。そして、その姿を現した剣はヘキサオーズが握ったことでウロボロスの瞳が輝く。
≪メダバキボロス!!≫
剣=メダバキボロスが起動したことをはっきり告げていた。身の丈ほどの刃を有するメダバキボロスを右腕で軽々と持ち上げ、大きく振るうヘキサオーズ。巨大なメダバキボロスを軽々と振るい巨大な斬撃を飛ばした。
≪metal≫
≪float≫
ブレイドは自身の肉体を硬化させ、カリスは空中へと飛行することでヘキサオーズの攻撃をなんとかしのいだ。だが、鋼と化したブレイドの鎧は身に見える程の大きなダメージを負い、カリスも空中へと逃げたとはいえ攻撃の余波をまともに受けてしまっている。それを見たヘキサオーズは目の前の二人が弱っていることに即座に気付き、本能のままに相手の息の根を確実に止める最適解を行動に移していた。
≪スキャニングチャージ!≫
ヘキサオーズの胸の紋章=オーラングサークルからショッカー、ゲルショッカー、デストロン、ゴッド、ガランダー、デルザーの各組織の紋章が出現し、それぞれがヘキサオーズの両腕に集中、黄金に輝く両腕を勢いよくブレイドとカリスに突き出した。その瞬間にヘキサのオーズから各組織の紋章を模したエネルギーが巨大な炎となりブレイドとカリスに襲い掛かる。
「うわあああああ!!」(ブレイド)
「がああああああ!!」(カリス)
二人はそのまま防御することが出来ず、変身が解除されるまでに大きな傷を負ってしまう。剣崎が倒れたその拍子にオルトロスのカードが皇の元へ落ちた来た。
「これは返してもらおう。それに、これはこうするんだ。」(皇)
皇はそう言うと空のボトルを取り出し、オルトロスのカードに向ける。すると何かの粒子がオルトロスのカードからボトルへと入っていく。粒子が入っていく中でオルトロスのカードの絵柄が少しずつ薄くなっていき、最終的には消えてしまった。それに引き換えボトルはオルトロスの意匠が刻まれた紺色のボトルとなった。
皇はポケットから明緑色のボトルを取り出し、ネビュラスチームガンにセットした。
≪ヒュドラ。ファンキー!≫
ネビュラスチームガンがボトルを認識したのを確認した皇はヒュドラフルボトルを抜いた。そして、新たに精製したボトルであるオルトロスフルボトルをセットする。
≪オルトロス。ファンキーマッチ!≫
「変獣。」(皇)
≪フィーバー!グランドモンスター!パーフェクト!≫
皇がネビュラスチームガンの引き金を引くと機械のヒュドラとオルトロスが銃口から出現、2体がアーマーとなり皇の肉体を覆う。上半身をヒュドラ、下半身をオルトロスのアーマーで構成され、その頭部はまるでドラゴンのようであった。
「オメガテュポーン、完成。」(オメガテュポーン)
皇=オメガテュポーンは体の具合を確かめるように動かす。
「成功だ。俺に合わせて調整したから当然だが、こうまで馴染むとは。」(オメガテュポーン)
自身の生み出した力の出来栄えに関心するオメガテュポーン。ブレイドとカリスを倒したヘキサオーズは次の標的をオメガテュポーンへと決め、襲い掛かった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」(ヘキサオーズ)
「全く、お前の相手は俺ではない。」(オメガテュポーン)
オメガテュポーンは左手をかざすと上半身の無数の蛇を伸ばし、ヘキサオーズへと噛みつかせた。蛇から毒を流し込み、ヘキサオーズの動きを止める。
「お前は俺の操り人形としてこの世界を破壊してもらう。だから、お前は俺の言うことを聞いてもらうぞ。」(オメガテュポーン)
オメガテュポーンがヘキサオーズを開放するとヘキサオーズは先程までのような荒々しさはなくその様子にはまったく意思が見られなかった。
「では、戻って計画を進めるとしよう。さあ、俺の連れていけ。」(オメガテュポーン)
オメガテュポーンの指示を受けてヘキサオーズは翼を広げ、テュポーンを連れてどこかへ飛び去った。
「剣崎、奴を追うんだ。」(始)
変身が解除された始は傷を負いながらも剣崎にそう言った。
「始、だがお前の傷が。」(剣崎)
「良いから、行け。俺のことを気にするな。それに戦って分かっただろう。あの怪物、いやヘキサオーズは助けを必要としている。」(始)
始の傷を見て彼を介抱しようとする剣崎だが始はそれよりもテュポーンを追うこと、ヘキサオーズを救うことを優先させた。彼らは戦いの中でヘキサオーズが苦しんでいることを感じ取っていた。そのことを分かっていた剣崎は始の表情を見て、決心した。
「分かった。なら、俺は行く。」(剣崎)
剣崎はその場を離れ、ブルースペイダーでヘキサオーズを追う。
「人間になって良かったとは思うが、こうなるとアンデッドの時よりも不便だな。」(始)
始は木にもたれかかりながらそう言う。
「頼むぞ、剣崎。」(始)
同じ頃、束はことを知った千冬と共に仮面ライダーW=左翔太郎、仮面ライダーオーズ=火野映司と正則の行方を追っていた。
「どうして、あんたが今回の事件に?」(翔太郎」
「実は5年前にある人物を追って日本に戻っていたんだ。そして、その人物の目的にある少年が狙われていることを調べていく中で知ったんだ。その少年が束ちゃんたちの友達の岩城正則君なんだ。」(映司)
「どうして、岩城が狙われたんですか?」(千冬)
「岩城君が世界に数人しかいない超天才、いや俺達よりも進化したとされる人間の一人で誰よりも強い欲望を持っていたからなんだ。」(映司)
「束さんや正則のような人が他にもいるの!?」(束)
「そう、束ちゃんのことは柳韻さんから話を聞いていて、それを俺の知り合いの人に頼んだらそれだけの数の人が見つかったんだ。皆、今は色々な場所で他の人の助けをしているんだ。そうだ、話を戻すけど正則君を狙っていた人物はある組織、俺達が財団と呼んでいる組織に居た人物なんだ。」(映司)
映司は鴻上コーポレーションの研究員として各地を渡り歩く中である一人の人物の動向を調査していた。元々は翔太郎とも因縁の深い闇の組織である財団Xに起因していた。財団Xにいた科学者最上魁星はある時パラレルワールドの自分とつながった事件があった。その事件自体はオーズ、ゴースト、フォーゼ、鎧武、エグゼイド、ビルドの5人の仮面ライダーたちの尽力で解決した。だが、問題はその後だったのだ。それからほどなくして戦場で最上魁星が使っていたある兵器=ネビュラスチームガンを用いた謎の男が各地で違法な人体実験を行うようになっていたのだという。最上魁星の事件に関わっていた映司はそれが何らかの形で財団Xに関わっていることを推測、それから映司は鴻上コーポレーションの調査をする中で男を追っていた。
「男の名は皇将星。元々は日本でナノテクノロジーを研究していた人だった。でも、その研究を財団Xに眼を付けられてからは財団Xのもとで研究を進めていた。でも、彼は2,3年前に突然財団Xから離れたんだ。その理由は分からなかったけど、その後の彼は何かを生み出そうとしていた。それが俺の持っているコアメダルだと分かったんだ。その時には皇将星は日本へ戻っていて俺も日本に戻ったんだけど、それからは全く足取りが分からなくて。その時に束たちゃんのお父さん、柳韻さんから連絡をもらったんだ。」(映司)
今、彼らはある廃棄された浄水場へと到着した。
「そして、ここに財団Xの廃棄された研究所があるんだ。」(映司)
そこには昼間だというのにどこか重苦しい空気があった。それでも彼らはそこに足を踏み入れた。その時だった。敷地内のいたるところから機械仕掛けの人形が出現、彼らを取り囲む。
「奴さん、ここにいるみたいだな。」(翔太郎)
「束ちゃんと千冬ちゃんは俺達の後ろに居て。」(映司)
映司と翔太郎がそれぞれのベルトを取り出した時だった。どこから紫の光弾が飛び、ロボットたちを破壊した。
「あなたは?」(翔太郎)
「話はあとだ。」(幻徳)
ネビュラスチームガンを持ち、ロボットを破壊したのは幻徳だった。
「ここは一気に片付けるぞ。」(幻徳)
≪デンジャー!≫
「言われなくても!」(翔太郎)
≪ジョーカー!≫
「はい!!」(映司)
幻徳はスクラッシュドライバーに、クロコダイルクラックボトルをセットする。翔太郎はジョーカーメモリを起動し、ロストドライバーにセット。映司は赤、黄、緑の3色のメダルをオーズドライバーにセットした。
「「「変身。」」」
≪割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!≫
≪ジョーカー!≫
≪タカ!トラ!バッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!≫
仮面ライダーローグ、仮面ライダージョーカー、仮面ライダーオーズはそれぞれのファイティングポーズを決める。
「未来を紡ぐ国民を守る、その大義の犠牲となれ。」(ローグ)
施設へと入った束たち。そこで幻徳=仮面ライダーローグが駆けつけた理由を聞く。
「ここは絶対にあってはならない。ここは俺の過ちだ。」
それはここにはない異世界での話。そして、皇将星の目的とその動機にも関係していた。そして、束は変り果てた正則と再会した。