皇の本拠地へと足を踏み入れた束たちの前に現れたのは氷室幻徳=仮面ライダーローグだった。
side3人称
廃棄された浄水場では無数のロボット=ガーディアンを相手に仮面ライダージョーカー、オーズ、ローグが戦っていた。
低いスペックでありながら卓越した徒手空拳で次々とガーディアンたちを破壊していくジョーカー。
「たく、こいつらどんどん湧いてくるな。一体、ここに何があるんだよ!!」(ジョーカー)
トラアームの爪を展開し、向かってくるガーディアンを切り裂いていくオーズ。
「それでも、こいつらを何とかしないと!」(オーズ)
3人の中で最も洗練された戦いを見せるローグは一撃でガーディアンの中枢コアを破壊していく。その様はまるでガーディアンのことをよく知っている、否彼は今戦っている無数のガーディアンについてこの3人の中でもっともよく知っている。それ故に効率的に破壊する術を迷いなく行使していく。
「良いか。こいつらの中枢コアは胸にある。それを一撃で破壊すればこいつらの機能は停止する。」(ローグ)
ジョーカー、オーズにガーディアンを破壊する方法を教えるローグ。それを聞いたジョーカーとオーズもそれに習い次々とガーディアンを破壊していく。幸いにもこのガーディアンたちの性能は高くはなく彼ら3人の手に掛かればほどなくすべてが機能を停止したスクラップとなった。
「たく、財団Xはこんなもんをいつのまに。」(ジョーカー)
「前に俺が戦ったロボットと同じだった。こいつらは一体。」(オーズ)
「こいつらはガーディアン。ファウストが作った戦闘兵器だ。」(ローグ)
ローグの言葉にローグを見回す束たち。
「俺に関わることは道すがら話そう。それにここはファウストの研究所でもあったからな。」(ローグ)
ジョーカーらは警戒を解かずに変身したまま施設の中へと入っていった。束と千冬もその後を追って行く。幸いにも彼らが施設の奥へと向かって行く中でローグが口を開き始めた。
「ファウストとはこことは違う異世界、火星で発見されたパンドラボックスによって日本が東都、北都、西都の3国に分断された世界で東都の政府に居た俺が科学者葛城巧と共に創設した組織だ。」(ローグ)
「なんで異世界のことをあんたが知っているんだ?」(ジョーカー)
「キルバス、パンドラボックスを地球にもたらした異星人エボルトの兄がこの世界に来た時に俺はその世界の記憶を取りもどした。」(ローグ)
「もしかして、皇将星もそのファウストに居たんですか。」(オーズ)
「ああ、奴も俺の部下としてファウストの所属していた。そして、奴も記憶を取り戻した。」(ローグ)
「ねえ、その皇って人は何が目的なのげんげんのおじさん。」(束)
「その呼び方はともかく皇の目的はこの世界の破壊だ。それは前の世界でも同じだ。」(ローグ)
「氷室さん、この施設はファウストは何に使っていたんだ?」(千冬)
「ここは東都のファウストの研究施設だった。ここで行われていたのはパンドラボックスによってもたらされたネビュラガスを使った人体実験を行っていた。皇はここの研究主任だった。」(ローグ)
ローグがそう言ったところでがらんとした大きな部屋に着いた一同。そこにはローグが話していたことを示すような証拠は何もなかった。
「何もないですけど。」(オーズ)
「それもそうだ。元は前の世界にあるものだ。ほとんどのこってはいないだろう。それにここは本来ならあってはならない場所だ。」(ローグ)
部屋はさらに奥へと続く通路があり、ローグを先頭に束、千冬、オーズ、ジョーカーが並んで進んでいく。
「俺はパンドラボックスの影響で自分の中にあった野心に取りつかれた。その過ちの一つがファウストだった。俺は自分の主導の元で犯罪所として刑務所に送った人々を道具にように扱った。その過ちの所為で俺はその世界ですべてを失った。」(ローグ)
ローグの口からは後悔の念がありありと感じられた。それゆえに彼は贖罪のためにその力を振るって来た。
「君たち二人は、俺のような間違いを犯すな。さもないと俺のように失ってしまう。」(ローグ)
仮面の下にあるその顔を思って束と千冬は真剣な面持ちとなる。
「話を戻すが皇は研究をしていく中ですべてを超えた超生命体の創造に取り憑かれていった。その中で奴は自身の体を次々と改造していった。挙句の果てに大量のネビュラガスを液状化させてそれを自分の肉体に直接注入したんだ。」(ローグ)
そう語るローグの話はある一人の男の狂気であった。
「だが、奴は超生命体を生み出す前、そのネビュラガスの注入実験で死亡した。念願だった趙生命体を生み出すことは無かった。これが前の世界、パンドラボックスが存在した世界における皇の俺が知り得る限りのことだ。」(ローグ)
彼らが歩いてからかなりの時間が経った。そして、様々な研究器具や機械が所狭しと置かれている研究室へとたどり着いた。
「皇はここで。」(ローグ)
「いろいろと調べていたみてえだな。」(ジョーカー)
彼らはそれぞれに研究室にあるものを見ていく。その時に彼らの頭上から声が響いてきた。
「ようこそ、仮面ライダーの諸君。俺の研究所へようこそ。」(皇)
研究室へと続いていた階段から束たちを見下ろしていたのは皇だった。
「皇。」(ローグ)
「その声は、氷室さんじゃないですか。」(皇)
「ここで何をしているんだ。」(ローグ)
「あの時の続きですよ。」(皇)
「続きだと。」(ローグ)
「ええ。そして、俺はかつてこの星でバトルファイトを行ったアンデッド、そこの火野映司が持つグリードのコアメダルの情報を下に新たなアンデッドとコアメダルを生み出しました。俺は今度こそすべてを超越する究極の生命体を生み出す!」(皇)
皇の表情は狂気に染まっており、ここにいる面々は既に皇と対話による解決を試みても無駄だということを理解した。
「正則は、正則はどこなの!!」(束)
「ああ、初めましてだな篠ノ之束。君のお相手である岩城正則は丁重に扱わせてもらっている。心配しなくてもまだ生きているさ。なにせ、やってもらうことがまだあるからな。」(皇)
「皇!早く岩城君を解放しろ!」(ローグ)
「何を言っているんですか、氷室さん。俺がやっていることはなファウストのためなんですよ!この計画が完遂すればファウストは何者にも止められない最強の力を手にするんですよ!」(皇)
「ファウストは無い!ここはスカイウォールの惨劇が無かった、火星にパンドラボックスが無かった世界だ!ここでそんなことをすれば大勢の人間が巻き込まれるんだぞ!!」(ローグ)
「大儀の前の小事じゃないですか。何人かは死ぬでしょうが、それは些細なことだ。なぜ、気にするんですか?」(皇)
ここでローグは皇があの世界で死んだ皇将星であることにやっと気が付いた。そして、その皇を生み出したのは間違いなく、パンドラボックスの影響により野心に取り憑かれた自分自身であることを突きつけられた。
「まあ、良い。あなたもこれを見れば考えが変わるでしょう。」(皇)
皇はそう言うと階段を降り、すぐ近くの壁に手を置いた。そこはどうやら何かのスイッチらしく、そこに皇が手を置いたことでその隣の壁が動き出した。そこには水槽の中に液体の中に沈んでいたヘキサオーズだった。
「これは。」(ローグ)
「ヘキサオーズ。俺が生み出した破壊神です。そして、俺はこいつを使ってこの世界の全てを破壊する。」(皇)
皇はそう言って、水槽横の機器を操作してヘキサオーズを出した。
「ヘキサオーズ、やれ。」(皇)
皇の言葉を受けて、ヘキサオーズが束に襲い掛かる。そこを間一髪でオーズとジョーカーが食い止める。攻撃が止まった瞬間にローグが追撃の攻撃をする。
「それでは、俺も行かせてもらいますね。」(皇)
≪ヒュドラ!オルトロス!ファンキーマッチ!≫
「変、、、獣。」(皇)
≪フィーバー!グランドモンスター!パーフェクト!≫
皇はそのままオメガテュポーンへと変身する。そして、上半身の蛇を動かし、束の方へと高速で放った。
「束ちゃん!」(オーズ)
オーズが急いで間に割って入り束を守る。オメガテュポーンの蛇はそのままオーズの背中に次々と激突していく。
「グアアア!!」(オーズ)
「えいえい!」(束)
「貴様!!」(千冬)
横で見ていた千冬も持っていた白いペンダントを握りオメガテュポーンに飛び掛かる。その合間に千冬はIS第1号機白騎士を纏い、宇宙空間の障害物を破壊する目的で作られた多機能型大剣を振るう。オメガテュポーンは大剣を躱し、距離を取る。その間にオーズに攻撃していた蛇はオメガテュポーンのアーマーへと戻った。
「ほう、やはり君もいたか。君がどういう風の吹き回しでいるのか。まあ、ここで死ぬのだから関係ないか。」(オメガテュポーン)
「どういう意味だ!」(千冬)
「文字通りさ。」(オメガテュポーン)
千冬は再度斬りかかるオメガテュポーンはネビュラスチームガンの引き金を引き、千冬を狙い撃つ。狭い室内であるため、千冬は大剣を盾代わりにしのぐ。そして、ヘキサオーズを相手に戦うジョーカーとローグだがヘキサオーズの圧倒的な力により徐々に押され始めていた。
「こりゃ、このままじゃあ分が悪いぜ。」(ジョーカー)
「ここまでの相手とは。皇の奴、とんでもないものを生み出しやがって。」(ローグ)
一度距離を取るがヘキサオーズはジョーカーとローグの動きが止まった瞬間にまた動き出した。静かにまるで機械のような動きだが、振るわれるその力は全て強力でそのスペックの低さ故にまともにダメージを受けてしまうジョーカーに、かなりの防御力を誇るローグですらヘキサオーズの攻撃を受けてただでは済まなかった。
「はあ、はあ。大丈夫、束ちゃん。」(オーズ)
「えいえい、どうして。」(束)
「だって、助けるのは当たり前でしょ。」(オーズ)
傷を受けながらもオーズは立ち上がる。
「きっと、正則君も待っているよ。束ちゃんとまた会えるようにしないと。」(オーズ)
その言葉は非常に力強かった。
「一か八か、やってやるか。」(ジョーカー)
≪ジョーカー!マキシマムドライブ!≫
「これで終わりだ!」(ローグ)
≪クラックアップフィニッシュ!≫
ジョーカーはライダーキックを、ローグはクラックアップフィニッシュを発動。ジョーカーの紫色の炎に包まれた右足が、ローグのワニのオーラを纏ったバイトキックがヘキサオーズに直撃する。ヘキサオーズが爆炎に巻き込まれるが爆炎が晴れるとそこには無傷のヘキサオーズがいた。
「何つう奴だよ。」(ジョーカー)
「ここまでとは。」(ローグ)
自分達の最強技を出してもなお無傷、その事にジョーカーとローグはヘキサオーズの底知れなさを理解してしまった。
「ああ、言い忘れていたが君たちが探している岩城正則だが。そこにいるヘキサオーズこそ、岩城正則だぞ。」(オメガテュポーン)
そこで、戦士たちにとってなすすべがないという状況に陥ったところでオメガテュポーンが彼らにとって衝撃的な事実を明かした。
「な!?」(ジョーカー)
「そんな、まさか!」(千冬)
「皇!貴様!」(ローグ)
「許せない!!」(オーズ)
驚愕と怒り、彼らが抱いたのはそれらの感情だった。そして、束には絶望の底へ誘うに足る言葉だった。
「さあ、ヘキサオーズ。計画の最終段階だ。やれ。」(オメガテュポーン)
オメガテュポーンの言葉を受けたヘキサオーズの両目が赤く輝きだした。
「さて、氷室さん。俺の計画の最終段階、その第1弾目として全世界にある核兵器を含む大量の殺戮兵器をここ日本に向けて発射しました。」(オメガテュポーン)
「何。」(ローグ)
「ヘキサオーズの使っている6枚の悪の組織の力を有するコアメダル、さしずめ悪の組織コンボの固有能力は電子機器をはじめとしたありとあらゆる機械を自身の制御下に置くことが出来ます。」(オメガテュポーン)
オメガテュポーンがローグに対して話していく横ではジョーカーのスタッグフォンに着信があった。そして、
アメリカ合衆国、ロシア連邦、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イラン、北朝鮮にある全ての核ミサイルが発射された。それだけではなく世界各国にある全てのミサイル兵器が日本に照準に向けて発射されてしまった。数々のIS世界において切っても切り離せない事件である白騎士事件、その始まりでもあった。
「皇!そんなことをすれば日本はおろか他の全ての国々も無事では済まされないぞ!地球が核の炎で焼かれる、過去に日本が受けたことを繰り返して、さらには世界も滅ぼそうというのか!!」(ローグ)
「ええ。そうですよ。その後は更地となった地球で新たな生命を創造する。今度こそ、俺が目指す究極の生命体を生み出す!そのためにはこの星にある全ての命を焼き払うんですよ!!」(オメガテュポーン)
「皇!!!」(ローグ)
≪クラックアップフィニッシュ!≫
ローグはオメガテュポーンにクラックアップフィニッシュを発動した。それに対してオメガテュポーンは上半身の無数の蛇を高速で伸ばし、さらには両膝のアーマーとなっているオルトロスの頭から衝撃波を放った。それらを受けてもローグが止まることはなく、オメガテュポーンの攻撃をワニのオーラで噛み砕きながらオメガテュポーンに迫る。ローグのクラックアップフィニッシュがオメガテュポーンの体に何度も何度も咬み跡を付けていく。数度目の攻撃でオメガテュポーンを弾き飛ばした。
「随分と腑抜けましたね。あの頃のあなたは誰よりも野心にあふれていた!その程度の一撃でこの俺を倒せると思うな!!」(オメガテュポーン)
「皇!!」(ローグ)
ローグとオメガテュポーンは激しい戦闘を繰り広げだした。その一方ではジョーカーはヘキサオーズに攻撃することでなんとか正気に戻し、日本へと飛来している無数のミサイルを止めようとする。
「おい、坊主!目え覚ましやがれ!!」(ジョーカー)
ジョーカーは感情を込めたパンチをヘキサオーズに撃ち込むが一向に正気に戻る兆しが見えなかった。戦況は時間が差し迫っていることによる緊迫感と様々な感情が交差していく混沌としたものになりだした。
激化する戦闘。迫る時間。ジョーカー、オーズ、ローグ、ブレイドらはあきらめずに奮闘する。そして、
「お願い!目を覚まして!正則!」
束の声が闇深く落ちていたヘキサオーズに、正則に届く。
「やらせない。束の夢を汚してたまるか!」
悪は転じて正義を為すためにその力を振るう。