side3人称
「私達がこの世界に来た時、私達が生きていた世界とあまりにも違っていて驚いたわ。」(ジャーザ)
織斑家では来訪したグロンギたち、その一人であるジャーザが自分たちがこの世界に来た時のことを話していた。
「山よりも高い家、動く鉄の箱、リントたちが手に持っている奇妙な箱、この世界にある物は私達が見ていた物と全く違っていたわ。そして、私達が見ていた木々や獣は一切いなかった。何から何までが全く別の世界、こんな世界で今まで通りの生活をするのは難しいのは私達には目に見えていたわ。」(ジャーザ)
「それはこの世界のグロンギたちも同じだった。それでも彼らはゲゲルをやった。その所為で大勢の罪のない人が犠牲になった。」(秋人)
「この世界に来た時に、あなたたちリントが住んでいる大きな村を見たときにはゲゲルをしようなんて考えは浮かばなかったわ。そもそも、ゲゲルを行うために審判を行うラのグロンギたちは皆死んでいるのよ。やるにも審判役がいないならやれないわ。それに私達、ゴのグロンギはゲゲルを積極的に行うつもりはないわ。今の私達はガドルからゲゲルを行うことを強く禁止されているし、ゲゲルをするよりも明日の生活を何とかする方が最優先なのよ。」(ジャーザ)
ジャーザの話を聞いて秋人は目の前の人物たちが自分の知っているグロンギから大きくかけ離れていることにやっと気づいた。
「これまでの生活を捨てるのは容易ではないはずだ。戦闘種族であり、ゲゲルで自分たちの地位を上げる君たちがそれまでの生活を捨てるのは無理だろ。」(秋人)
「私達、ゴにとってゲゲルで地位を上げるのはそれほど優先するべきことではないのよ。それに、ゲゲルを、あんな奴を相手にしてゲゲルを行うならゲゲルの権利を放棄する方を選ぶわ。」(ジャーザ)
「なぜだ?ンの称号、0号に挑戦することが君たちにとって栄誉なことだろう。」(秋人)
「0号って、あいつのことか。」(バベル)
「ダグバ、奴以外に...。」(秋人)
秋人がダグバの名を口にしたとたんザザルとジャラジが震えだす。
「やだ、やだ!あいつの名前を言わないで!!」(ザザル)
「っ!っ!」(ジャラジ)
その様子を見て大樹たちがあまりにも尋常でないことを察した。
「お願いだからあいつの名前だけは言わないで。正直、あいつと戦おうなんて思えない。」(ベミウ)
「ジイノ、ベミウ、二人を連れて外で待ってくれ。」(バベル)
「ああ。」(ジイノ)
ジイノとベミウがザザルとジャラジを連れて席を外した。最年少のグロンギの二人が居なくなったことを確認したバベルは話の続きを始めた。
「あいつは、あんたらリントの言うところの連続殺人犯って奴だ。そういうのの話をできる奴は生憎外に出るタイプじゃなくて今日はいないんだが、あんたらリントの中でもこいつは居ちゃいけないってやつが居るだろ。あいつは俺達グロンギの中でも生まれてきていけなかった。」(バベル)
「社会病質者、ってことか。」(秋人)
「ブウロの奴もそんなことを言っていたよ。奴はゲゲルを行う、殺し自体を楽しんでた。子どもが遊びを楽しむようにな。」(バベル)
「完全な社会不適合者だな。君達でも手を余すほどの存在。そんな奴を野放しにしていたのか。」(秋人)
「処刑できるならとっくにしてるわ。でも、あいつは殺せなかったのよ。どんなに首をはねても心臓をえぐっても次の瞬間には何事もなかったように笑って立っていた。あんなのはグロンギじゃないわ、全く別の者よ。」(ジャーザ)
殺せなかった。そのニュアンスから殺しても蘇る不死身の存在だったと秋人は推察した。かつてのグロンギの知識を照らし合わせてもそんな存在はいなかった。そんな存在を相手に、不死身の怪物で殺しを遊びとして楽しむ相手は流石のグロンギにも手を焼く存在だったと想像に難くなかった。
「俺達がこの世界に来たきっかけは奴がゲゲルに関係なくリントを殺しまわったことだった。リントたちがアギトで対抗したんだが、全てのアギトは例外なく死んだよ。奴は残ったリントを玩具の様に弄んで殺していったんだ。」(バベル)
「どんな風に?」(秋人)
「奴はな、残ったリントたちを生きたまま焼いたり、生焼けにしたリントたちを生きたまま武器に変えていったりしたんだ。それだけに留まらず生きたまま腹を裂いたりな、流石にこれ以上は言えないさ。」(バベル)
「私達もゲゲルでリントを殺したことはあるわ。でも、狩人が狩りをするときに無用に獲物を苦しませないのと同じで私達ゴは出来る限りリントを苦しませずに、それにゲゲルの対象もリントの中でも殺してもそこまで影響のない奴を選んでいたわ。でも、あいつはそうしなかった。相手の表情を見て、苦しむその姿を見て笑っていたのよ。それも子どもの笑い方をしながらね。」(ジャーザ)
バベルとジャーザの話、別世界のダグバは本質的に他者と相容れない存在なのだ。それを聞いて秋人も、春奈も、大樹もマドカも簪もグロンギたちの事情の形、その背景が何となく読めてきた。
「ついに矛先は君達にも向いたんだな。」(秋人)
「最初はベの奴らだった。その次にズ、メと奴は次々と他のグロンギに手をかけていった。そんな時にガミオが奴に古のゲゲルを持ちかけた。」(バベル)
バベルたちのいた世界で、グロンギたちの中でも落ちこぼれとされた青年が居た。ガミオ、オオカミの力を持った彼はゲゲルで地位を上げるよりも野山を駆け、木々や獣たちと戯れるのを愛する青年だった。
異端のグロンギ、そう言われ後ろ指をさされ、他のグロンギから迫害を受けていた彼は同胞を戯れに手を掛けるダグバに古のゲゲル、グロンギ同士で行われる決闘を挑んだのだ。
「ガミオの提案を飲んだ奴はラの連中であるバルバとドルドの元でザギバスゲゲルを行った。後になってあいつは俺達を守ったんだって分かった。俺達を裏切ったクウガがリントを守ったように。俺達、ゴが、グロンギで最強となった俺達が、実際には奴が他の連中を殺しまわるのを見て、奴を相手にするのをビビッていたんだ。それをズの称号しかなかったガミオが残ったメのガリマと父親のガドラ、俺達を守るためにあの怪物とゲゲルを行った。」(バベル)
ダグバと戦いを始めたガミオ。実際の処はすぐに死んでしまうと思われた。だが、この時のゲゲルは三日三晩休みなく続き、最終的にはバルバもドルドも死亡したが生き残ったグロンギたちが逃げるのに十分な時間を稼いだのだ。
「そのゲゲルが終わった後、そのゲゲルの場所を見に行ったんだ。残ってたのは体が半分に裂かれたドルドと黒焦げになったバルバ、そして両腕も両脚も無くなって顔の半分が潰れたガミオだった。俺達は丁重にあいつを扱ったよ。あいつが愛した野山にあいつを埋めた。その直後に俺達はこの世界にやって来たんだ。」(バベル)
その話を聞いていた大樹が何となくその話にとっかかりを感じていた。だが、何がどのような話なのかそれを正確に思い出せなかったのだが。大樹がそう考えているなかでバベルの話を引き継ぐようにジャーザが口を開いた。
「この世界に移ってからは私達は生活のために働き始めたわ。私は物の売買の仕事をして稼いだお金で株って言うのよね。それの売買をしているわ。」(ジャーザ)
「トレーダーよね。うまくいけばすごく稼げるらしいけど。」(春奈)
「仕組みを覚えるのは簡単だったわ。後はそれで安定してお金を稼げるようになったわ。ベミウはあなたたちの言うところのバーって言う場所で覚えたピアノを弾いて稼いでいるし、ジイノは拠点でザザルとジャラジの面倒を見ているし。あとはバダーがバギブソンでバイクレースに参加しているわ。他はガメゴが賭け事に熱中しちゃうのが悩みの種なのよ。勝つときはまだ良いとして大負けして帰ってくるときもあるから。」(ジャーザ)
「俺は俺達のリーダーのガドルが居ない間の代理でな。俺も仕事をするって言ったんだが、ジャーザがしなくていいって譲らなくて。」(バベル)
「ガドルを除けばあなたが最強よ。それにあなたならブウロもガメゴもバダーも言うことを聞くし。ザザルとジャラジもなんだかんだでガドルよりもあなたの方が一緒に居るじゃない。」(ジャーザ)
「ははは、確かにな。特にバダーは一番気が荒いしな。ブウロの奴もあんたらリントの読み物に興味を持って小説とやらを書いているしな。」(バベル)
「それ、大丈夫なの?ブウロはなんだかんだで必要な分しか使わないから良いけど。」(ジャーザ)
「さあな。昔からあいつは読みにくいしな。あと、そろそろバダーの奴、発散させた方が良いだろ。」(バベル)
「まだダメ。そもそも参加にお金がかかる以上は何回も出来ないわ。」(ジャーザ)
ここまでの話で秋人は彼らが自分の知っているグロンギとは違う、むしろ自分たちとそう変わらない感性を持った人物たちであることが理解できた。そして、彼らを守ったというグロンギに興味を持った。
「ガミオ、彼はどんな人物で君たちとどんな関係が?」(秋人)
「友達だよ。俺達グロンギに仲間意識っていうのは薄いが、あいつをどういえば良いのか。たぶん、リントの言う友達って言うのが俺にとってのガミオだ。それにガミオはズの称号だけだったが、あいつは強かった。」(バベル)
「もしかすると私達ゴのリーダーになっていたかも。あいつをズの連中はバカにしていたけど争いを吹っ掛けたザインとゴオマを何もさせずに引き下がらせたのよ。」(ジャーザ)
「俺達ゴはなんだかんだであいつと関係のあった連中なんだ。たぶん、俺達がこうなのはあいつと関わったからかもな。」(バベル)
「はあ、はあ、はあ。」(颯斗)
奥多摩の山奥で地面の上を大の字で荒く息をする颯斗。颯斗の前には一見何も変化のない大木が天に向かってそびえ立っていた。
「5000本、達成...。」(颯斗)
馬鹿正直に言われた回数をこなした颯斗。その颯斗の顔に影が差した。
「はあ、はあ、あ。」(颯斗)
「...。」(ガドラ)
ガドラが颯斗のことを見下ろしていた。
「どすか!!」(颯斗)
「なっていない。」(ガドラ)
自信満々に聞いた颯斗。返って来たのははっきりとしたダメ出しだった。
「まず、拳を当てる場所があまりにもバラバラだ。拳を打ち込むときの体勢も崩れている。そもそもなんだ。最後に至っては大振りで当ててくれと言っているような物だ。」(ガドラ)
口に出てきたのは的確な指摘。
言われてみればそうかもと考える颯斗。そもそもがまともに武術の経験のない素人の颯斗、ここまでの激戦ははっきり言えばケンカ殺法(フロムアニメ)でなんとか切り抜けたので流石に基本から叩きなおされるのは本人も納得している。
「ふん!」(ガドラ)
颯斗をそのままにガドラは打ち込みをするように言った大木に正拳突きを放った。大木の幹にガドラの拳の跡がはっきりと付いた。
「俺が付けたこの跡に向かって拳を打ち込め。」(ガドラ)
そう言ってガドラは小屋へと戻った。それを見送る颯斗。すぐに立ち上がることなく大の字のままで空を見上げる。
「はあ、はあ、道のりは遠いなあ。」(颯斗)
「どうして、こんなところでそんなことをしている。」(ガリマ)
その颯斗に話しかけたのはガリマだった。ガリマを見た颯斗は体を起こした。その颯斗を、正確には颯斗の顔を見たときにガリマは大きく目を見開いた。
「そんな、ガミオ。」(ガリマ)
「ん?僕の名前は留芽颯斗だけど。」(颯斗)
「そんな、まさか。」(ガリマ)
「ほう、あのガドラがリントの小僧を鍛えていると聞いていたがまさかこんなことがあろうとはな。」(ガメゴ)
「ガミオに瓜二つだな。」(バダー)
さらに別の場所からはガメゴとバターが現れた。彼らの反応と出てきた名前に困惑する颯斗。
「あの武人にもそういうものがあるとはな。リントの女と子をなしたというのもあながち嘘ではないな。」(ガメゴ)
「そういうもんかよ。こんなにあの犬野郎にそっくりとはな。俺も驚いたよ。」(バダー)
話が見えない颯斗はただ困惑していた。それもそのはず自分には何も心当たりがないのだから。だが、このことこそが颯斗がグロンギたちと関わるきっかけであった。
「これが。」(陸)
「そう、陸君専用に調整されたレベル50のガシャット。」(永夢)
聖都医大付属病院のERでは陸が新しく作られたガシャット、ガシャットギアデュアルγを見ていた。
「そもそもは今沢芽市に出た怪物に対抗するためのガシャットだったんだが。お前の言った情報を下に調整しなおしたんだがな。」(貴利矢)
「うす!何度も何度も迷惑をかけてすんません!」(陸)
そう言って頭を下げる陸の頭頂部にはきれいなたんこぶが出来ていた。沢芽市へ行ったことへのお叱りはしっかりと受けた模様である。
「それよりも陸。」(貴利矢)
「なんすか!?」(陸)
「あいつはどうすんだ。」(貴利矢)
貴利矢が視線を移したのは悠だった。あの戦いの後、陸はそのまま悠をERに連れてきたのだ。永夢たちは悠の精密検査を行い、その結果が差異はあれど悠も沢芽市に出現したアマゾン達の亜種ということが判明したのだ。幸い、陸の方に何も影響はなかったことや悠の中のアマゾン細胞は沢芽市に出現したアマゾン達と違って大きく環境に影響を及ぼすものではないことが判明したので現状としては保護しているのだ。
「悠の知っていることを全部話してくんない?あいつの、あの青い奴のことを知っているんでしょ。」(陸)
「彼は千翼。僕と違うアマゾン、人でありながらアマゾン細胞を移植してアマゾンになった鷹山仁の息子。彼のアマゾン細胞は人間に感染してアマゾンに変える特性があった。彼が生きてれば数多くの人々がアマゾンになってしまう。千翼の母親も彼の、千翼の影響でアマゾンになってしまった。僕のいる世界では多くの人々がアマゾンになってしまって大切な人を手に掛けてしまった。だから、僕も仁さんも彼を殺そうとした。そして、彼を殺した。」(悠)
悠が語る千翼のこと。その時に話した殺すという言葉に永夢も貴利矢も反応した。
「物騒なことを言うもんだな。そいつ、人間の血が入ってんだろ。」(貴利矢)
「いくら危険性が高いとは言え、彼を殺すなんて。」(永夢)
「千翼を生かしておけば、人間がその犠牲になってしまう。僕には守りたい人達がいた。他に取れる行動が無かった。」(悠)
殺さねばならなかった、確かに人間を怪物に変えてしまう存在を放っておけないだろう。それでも軽々しく殺すことは医師である永夢と貴利矢には到底受け入れがたかった。
「一緒に居たあの黒髪ロングの美少女は?彼の彼女?」(陸)
「彼女はイユ、アマゾンになってしまった父親に殺されたんだ。死んだ彼女はアマゾンを駆除する4Cによってアマゾンとなった。アマゾンを駆除する不死身のアマゾン、それが彼女だ。」(悠)
「死んだ人間を怪物にか。」(貴利矢)
「僕が居た世界ではそう言うことが平然と行われていたんだ。僕もその結果で生まれた。」(悠)
倫理観を捨てたような神をも恐れぬ業。それこそが悠の居た世界であった。
「なら、あいつを止めないと。」(陸)
悠の話を聞いた陸はガシャットギアデュアルγを持った。
「あいつも死にたくないよな。殺されたくないのは誰だって同じだ。でも、俺は医師を目指しているんだ。だから、殺さない。」(陸)
そう言って陸はガシャットの起動ボタンを押した。
≪ビーストコンバット!≫
「悠はどうすんの?また殺すの?」(陸)
「いや、今度は違う。僕も千翼を止める。きっと、変わらないだろうけどアマゾンのことはアマゾンが解決しないと。」(悠)
「なら、やらないと。」(陸)
陸は悠に笑いながらゲーマドライバーにガシャットギアデュアルγをセットした。
≪ガッチャーン!レベルアップ!ファイティングビースト!ハンティングビースト!ビーストコンバアアアアット!!≫
陸は新たな姿である両腕に鋭い爪を持ち、上半身を逆立った毛を模したブレードで武装した仮面ライダーエグゼリオンビーストゲーマーレベル50に変身した。
「おし、これでリベンジだぜ。待ってろよ、千翼!イユ!」(エグゼリオン)
「まさか、お前たちとこんなことになるなんてな。」(オーズNEO)
オーズNEOはオーズ・トゥルースによって肉体を得た6体の悪の組織グリードたちと戦っていた。だが、数の優位を覆すのは難しく、オーズNEOは地面に膝をついていた。
「長い間、俺達を自由にしなかった。その恨みを晴らさせてもらうぞ。」(ショッカーグリード)
「そりゃ、お前たちを好きにさせると思うか?恨まれても仕方ねえけど、そこは理解しろよ。」(オーズNEO)
そうやって立ち上がるオーズNEO。だが、その瞬間を逃さずにゲルショッカーグリードが右腕の大蛇を伸ばしてきた。
「へへへへ!お前を殺してやるよ!」(ゲルショッカーグリード)
「やられるかよ!」(オーズNEO)
≪キン!キン!キン!ハヤブサ!フクロウ!ワシ!ヤーブフーシ!≫
オーズNEOはゲルショッカーグリードの攻撃から逃れるべくヤブフシコンボにコンボチェンジ、空へと逃げた。
「ふん、読んでおったわ。」(ガランダーグリード)
そこをガランダーグリードが無数の虫を操作して空中に居るオーズNEOを攻撃する。
「簡単にやられねえよ!」(オーズNEO)
≪スキャニングチャージ!≫
オーズNEOは疾風を纏い虫を吹き飛ばしながら必殺技トルネードクロウを発動。そのままガランダーグリードに向かって必殺キックを放つ。それをガランダーグリードは自身の体の重量をゼロとすることで空中を浮遊、オーズNEOのキックを退けた。
着地したオーズNEOにデストロングリードが鋼鉄のハサミを振りかざし、デルザーグリードが両腕から放出する雷で攻撃する。オーズNEOは左右から来る攻撃を見て防御する態勢を取った。
≪スキャニングチャージ!≫
≪セルバースト!≫
デストロングリードのハサミを紅蓮のオーラを纏った高速の一撃が弾き、デルザーグリードの雷を赤色の巨大な光弾が真正面からぶつかった。
「まさか、ここに来るとはな。」(ショッカーグリード)
オーズNEOを助けたのは仮面ライダーオーズタジャドルコンボ、仮面ライダーバースだった。
「映司さん、ともしかして。」(オーズNEO)
「戦うドクター伊達明、参上!」(バース)
「ファイナルレスキューを要請します!」(オーズNEO)
「ええと、正則君。何を言っているの?」(オーズ)
「いや、伊達さんに言ってんの。」(オーズNEO)
「いやいや、俺は医者だから。てか、ファイナルレスキューってアウトだろ、イメージ的に。」(バース)
「いや、そこはファイナルレスキュー承認!爆裂的に鎮圧せよ!って。」(オーズNEO)
「は?」(バース)
「話しは終わったか。」(ショッカーグリード)
あほなやり取りをする3人の仮面ライダーにそう言ったショッカーグリード。
ショッカーグリードの横にに並ぶ他のグリードたち。その後ろにはオーズ・トゥルースが控えていた。
「で、あいつらは何なんだ。鴻上コーポレーションが襲撃されたって聞いてすっ飛んできたは良いが。」(バース)
「六連オーズドライバーにはまっていた6枚のコアメダル、そのグリードです。んで後ろの奴はあいつらに肉体を与えた別のオーズ、たぶんIS学園を襲撃した怪人と関係があるでしょう。」(オーズNEO)
「別のオーズ?」(オーズ)
「声はここの爺さんと同じで俺のことをこの世界のオーズって言っていたんでたぶん並行世界のオーズですね。」(オーズNEO)
「よく分からねえがあの後ろの奴をぶっ倒せば良いんだな。」(バース)
オーズもバースもグリードたちの後ろで不遜な態度を崩さないオーズ・トゥルースを見据える。
「手前の6人は俺がやります。あいつの言うことを聞くようになっちまったの俺の責任なんで。」(オーズNEO)
「分かった。正則君も無理をしないで。」(オーズ)
「いざとなれば俺も映司もいるんだ。任せとけ!」(バース)
グリードはオーズNEOに任せ、オーズとバースは跳び上がりグリードたちを飛び越えてオーズ・トゥルースと戦いを始めた。
「さあ、来たまえ。真なる王である私が直々に相手をしよう。」(オーズ・トゥルース)
「あなたの思い通りにはさせない!」(オーズ)
「おっしゃ、お仕事開始だ。」(バース)
戦いを始めたオーズたちを見て、オーズNEOはグリードたちに攻撃を仕掛けるのではなくなんとそのままに話し始めた。
「よく攻撃しなかったな。」(オーズNEO)
「何?」(ショッカーグリード)
「いや、あんなにふざけたやり取りしてたら攻撃するだろ。特にデストロンとデルザー、問答無用で攻撃するタイプだろ、お前ら。」(オーズNEO)
「下らな過ぎて攻撃する気も起きなかった。」(デストロングリード)
「今、そんなことを言って何の意味がある?俺達を倒せると思っているのか!?」(デルザーグリード)
「ゲルショッカーもガランダーも、特にゴッドに至っては何もしない。ショッカーもな。」(オーズNEO)
このやり取りに意味を見いだせないグリードたち。いや、オーズNEOの言わんとしようとしていることは何となくだが分かるのだ。だが、それが目の前の男が自分たちを押さえつけていた男がそんなことを言うのかと。
「人間を理解してんなら、肉体を得たのに自分たちの欲望を満たすための行動をなぜしない。お前たちならすぐに俺を殺せただろ。」(オーズNEO)
「それは、。お前を少しでも苦しませようと。」(ショッカーグリード)
「なら、どうして束を狙わなかった。」(オーズNEO)
オーズNEOの言った言葉に体を震わせるショッカーグリード。オーズNEOを、正則を苦しませる方法はいくらでもある中で彼らが選んだ手段はあまりにも効果的とは言えなかった。さらにその手段に対して実際に取った行動もあまり積極的と言えるものでは無かった。
「俺を苦しませるなら肉体を得た瞬間に束たちを狙えばよかった。さらに俺を攻撃するならお前たち6人で一斉に狙えばいい。」(オーズNEO)
オーズNEOの言葉にこの場に居たすべてのグリードが体を震わせた。その中でゲルショッカーグリードが右腕の大蛇をオーズNEOに向かって伸ばした。ゲルショッカーグリードの右腕がオーズNEOに向かった次の瞬間にはオーズNEOが居た場所には大量の土煙が上がった。
「結局、何が言いたいんだよ!!」(ゲルショッカーグリード)
「だから、俺を殺す気なんて無いんだろ。」(オーズNEO)
土煙が晴れるとそこには無傷のオーズNEOが居た。オーズNEOはそこを一歩も動かずにおり、ゲルショッカーグリードの攻撃は外れていたのだった。
「殺せるならとっくに殺してるわ。でも、私達はあなたを殺せない。自分たちで殺そうなんて出来ないほどにね。」(ゴッドグリード)
「お前は図らずもわしらを自分の一部として受け入れていたのだ。そんなお前をいざ殺そうとしたらその腕が鈍るとは思わなんだ。」(ガランダー
ここまでのグリードたちの行動、それは彼らですら予想していなかった感情の変化だった。それはオーズNEO=正則も同様であった。
「お前も俺達を最初のころと比べれば俺達にそこまでの悪感情は無いだろ。その証拠に今の我々の名前の他にも、いや真名を知らずうちに与えていただろう。」(ショッカーグリード)
「真名?ああ、あだ名な。」(オーズNEO)
「お前はなぜ俺達にそうした。お前は俺達のことを嫌っていただろ。」(デストロングリード)
「あのな、嫌っているっていうことはお前たちを意識していることだ。まあ、お前たちとは出会い方は最悪だったし、今に至るまでの関係も良くはないな。でも、歩み寄らないとって束が言ってたからな。」(オーズNEO)
束が言っていたこと、夫婦として生活する中でお互いの思っていることを話し合いお互いの人格を尊重するようになっている二人。束の働きかけもあり正則もグリードたちへの意識を変えていった。
「済まなかった、お前たちを邪険に扱って。」(オーズNEO)
「それで終わるのか。」(ショッカーグリード)
「悪の組織とは言え、お前たち6体は以前に現れたグリードたちと同じ王だ。その王を邪険に扱い、遠ざけようとした責任は果たす。」(オーズNEO)
そう言ってグリードたちをまっすぐに見つめるオーズNEO。
「ならば。」(ショッカーグリード)
それに対してグリードたちは膝をついて頭を垂れた。
「その言葉、反故にするなよ。」(ショッカーグリード)
「しねえよ。なら、これから俺達の関係はお互いに平等だ。俺はお前たちを下には見ないし、お前たちも俺のことを上とするなよ。」(オーズNEO)
「ならば、俺達の力を使え!」(ショッカーグリード)
グリードたちはコアメダルだけとなり、オーズNEOの元へ戻る。さらにショッカーメダルとゲルショッカーメダル、デストロンメダルとデルザーメダル、ゴッドメダルとガランダーメダルがそれぞれ1枚のコアメダルへと融合した。
「行くぜ。」(オーズNEO)
オーズNEOは新たなコアメダルをドライバーにセットし、メダルの力を読み込んだ。
≪キン!キン!キン!ショッカー!ゲルショッカー!デストロン!デルザー!ゴッド!ガランダー!≫
「変身!!」(オーズNEO)
≪カ!ル!デ!ル!ド!ー!カルデルドー!カールーデルドー!≫
次元を超えた最悪の力、過去に存在した6つの悪の組織の力が一つとなり誕生した新たなオーズ。
その頭部は右半分がワシ、左半分が蛇という異形でありながら黄金色の複眼が輝いており、発達した右腕には角や爪などが目立ち、左腕は機械の鎧を纏ったハサミを有していた。下半身は赤いローブがオーズドライバーから伸びており、両脚は獅子を思わせながら蛇とヤギの衣装のアーマーで覆われていた。
仮面ライダーオーズNEOカルデルドーコンボ、悪の力は一つとなり正しき義を持って歪んだ世界より来た王と対峙する。
オーズNEOカルデルドーコンボは戦いを繰り広げるオーズたちの元へ向かう。
オーズ・トゥルースと戦うオーズタジャドルコンボとバース。オーズ・トゥルースの力は強力でその強大な欲望を文字通り力に変えていた。
≪ドリルアーム≫
「どうりゃあああ!!」(バース)
「はあ!」(オーズ)
ドリルアームを装備してオーズ・トゥルースを攻撃するバース。オーズは光の翼を広げ、その羽を撃ちだしていく。
「その程度か?もっとお前たちの欲望を開放しろ!」(オーズ・トゥルース)
トラクローを展開したオーズ・トゥルースはそのすべての攻撃を真正面から打ち消していく。
「何つう奴だ。真正面から力づくでやりやがる。」(バース)
「伊達さん、未来のコアメダルならもしかして。」(オーズ)
強大な相手であるオーズ・トゥルースにオーズはかつて未来からやって来た青年湊ミハルからもたらされたコアメダルで変身するコンボなら打開できると考えた。そうやり取りをしている中で二人の間を通ってオーズNEOカルデルドーコンボがオーズ・トゥルースの前に立った。
「ほう、また素晴らしい形の欲望だな。」(オーズ・トゥルース)
そう言ったオーズ・トゥルースに一瞬のうちに距離を詰めたオーズNEO。
「何!?」(オーズ・トゥルース)
「はあ!!」(オーズNEO)
オーズNEOはさらに目にも止まらぬ高速の連続攻撃でオーズ・トゥルースを攻撃する。初めの時と比べ明らかにオーズ・トゥルースを押しているオーズNEO。
「おいおい、短い間にとんでもねえコンボを使ってきているじゃねえか。」(バース)
「あの時と全く違う。コアメダルのグリードたちと一体となっている。」(オーズ)
その姿を見ているオーズとバース。オーズNEOの姿を見てオーズはタジャスピナーを、バースはバースバスターを取り出した。
「随分と頼もしくなったじゃねえか。行くぜ、映司。」(バース)
「はい!伊達さん!」(オーズ)
オーズNEOを援護すべく遠距離攻撃を始めるオーズとバース。先程と違って一気に不利な状況になったオーズ・トゥルース。
雷を帯びた火炎を、鋼鉄のハサミを、高速で伸びて攻撃をする蛇を次々と攻撃を繰り出していくオーズNEO。そこから一気に形成を決めるためにメダバキボロスを取り出した。怪力で振り回されるメダバキボロスはオーズ・トゥルースの肉体を構成するセルメダルを剥がし、その刀身の内部へと送り込まれる。その状態でオーズNEOはオーズ・トゥルースの肉体にメダバキボロスの刃を突き立てた。
「ふっ!ぐううう!」(オーズ・トゥルース)
「喰らえ!!」(オーズNEO)
≪ヘキサ!オーバーフィニッシュ!≫
刀身の内部に吸収されたセルメダルが砕かれ大きな衝撃波となってオーズ・トゥルースの肉体を吹き飛ばした。
普通であれば死んでもおかしくない一撃。だが、煙が晴れるとまだまだ気力十分なオーズ・トゥルースが居た。
「フハハハハハ!素晴らしい!その欲望、類を見ない!ならば、私も真なる王の力を見せよう!」(オーズ・トゥルース)
そう言うとオーズ・トゥルースのオースキャナーが浮遊し、さらにはドライバーにはまっていたメダルが漆黒に染まった。
「変神!」(オーズ・トゥルース)
≪キン!キン!キン!トゥルースタカ!トゥルーストラ!トゥルースバッタ!タ・ト・バ!タトバ!タ・ト・バ!トゥルース!≫
オーズ・トゥルースの肉体はセルメダルへと戻り、その肉体を新しく再構成した。漆黒に染まり鋭角的な姿となったオーズ・トゥルース。その姿は悪魔であり神でもあった。
変身を終えたオーズ・トゥルースは漆黒に染まり巨大化したトラクローを振るった。
漆黒の斬撃がオーズNEOたちを襲い、鴻上コーポレーションの社屋に大きなダメージを与えていく。
「さあ、これでも喰らい給え!!」(オーズ・トゥルース)
≪スキャニングチャージ!≫
オーズ・トゥルースは翼を広げ、強力なジャンプキックを放った。その一撃は鴻上コーポレーションの一階部分を骨組みだけにした。そこにはオーズNEOたちの姿も無くなっていた。
「やはり、私のこの力では跡形もなく消し飛んでしまうか。」(オーズ・トゥルース)
王であるからこその不遜な態度。その力こそがその証明でもあった。だが、それが命取りだった。
不意にオーズ・トゥルースを襲う衝撃。気が付いた時にはオーズ・トゥルースの顔は地べたについていた。
「何が、起きたんだ。」(オーズ・トゥルース)
「映司さんの力だ。」(オーズNEO)
そこには無傷の姿のオーズNEO。さらには究極の姿であるスーパータトバコンボになっていたオーズとバース・デイ。寸でのところでオーズが最強の力であるスーパータトバコンボに変身、時間を超越する力でオーズNEOとバースを救出したのだった。
「見せてやるよ俺達の力を!」(オーズNEO)
≪スキャニングチャージ!≫
≪スキャニングチャージ!≫
≪セルバースト!≫
オーズNEOの後ろに6体のグリードの幻影が現れ、オーズNEOと一つとなった。
オーズNEOの背中に先端に刃の付いた3対の翼が広がった。天高く飛翔したオーズNEO。そこに続くオーズとバース・デイ。太陽を背に悪の組織のコアメダル、未来のコアメダル、セルメダルの力が一つとなった。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
天空から放たれたトリプルライダーキックはオーズ・トゥルースの胸部に深々と刺さった。
「素晴らしい!君たちの欲望、それを解放したその力!素晴らしい!!」(オーズ・トゥルース)
そう叫んで爆発四散したオーズ・トゥルース。全てのセルメダルと体内にあったコアメダルは粉々に砕け散った。
「はあ、はあ。とんだ用事だったぜ。」(オーズNEO)
「お疲れ、正則君。」(オーズ)
「よくやったじゃねえか。」(バース)
「映司さんと伊達さんのおかげですよ。まあ、大樹たちに良い知らせ持っていけそうですよ。」(オーズNEO)
変身を解除した3人は疲れの色を浮かべながらも笑顔を見せあう。そんな正則のズボンの中のスマホは愛する妻から電話がかかっていた。
沢芽市でついにアマゾン達との決戦が始まる。決して相容れぬ人間とアマゾン。戦いの中で自分の目指すものを掲げ戦いという対話を行うエグゼリオン。
大樹の前に再びファブニールが現れ、激闘を繰り広げることに。
ガメゴとバター、ガリマと出会った颯斗は修行も半ばにガドルと再戦を行うことに。