「では、改めましてよろしくお願いします。お2人がお聞きになった通り更木出身で、斬魄刀と霊力があれば死神になれるという程度の知識しか持ち合わせておりません。浅薄な身ではありますが諸々教授していただきたいと思っております。」
頭を下げつつお願いする。本当に知識は足りていないので、懇切丁寧な説明が欲しい、まずこちらが誠意を見せるところである。
「お堅いやつじゃのう、もう少し気楽にせんか」
「教えを請う立場なので、一応ですね。客観的に戦う様子を見て如何でしたか?自分では何も分からないもので困り果てていたんですよ。」
「まずは剣術についてじゃ、誰かに師事し習ったのではないということが信じられない動きであったな。最初の動きは儂ら隠密機動の者どもの動きに近い。真正面から攻撃を受けることなく、避けるか流すかして、相手の隙を引き出しそこを突くという高度な技術であったよう見える。まだまだ甘さは残るがの。」
「ボクも最初はそう思ってましたが、最後の方はとてもじゃないけどそういう動きでは無かったっスねぇ。頭を使って戦うタイプだと思ってましたが、後半は意思というものを感じられない、ひたすら目の前の敵を殺すことだけを目的とする動きに見えた。無表情だし話しませんしまるで殺戮人形っス。どちらにせよ、強い。死神の候補生ですらないのに、規格外っスね。」
夜一さんの発言に浦原が付け足した。はい、おっしゃる通りです。殺戮人形とは言い得て妙だな。あの状態は、更木で培った毎日毎日戦い抜いた経験に基づいた動きをほぼ考えなしにやっている。
たまに本気でまずいときは直感というか、生存本能というか、何かが警告を発してくるのでそれに従い動いているだけだ。死を目の前に飛雷神を発動したときも同様である。
もう少し戦闘中に考えながら、忍びっぽい動きを出したいのだが、脳筋戦法と忍の動きの両者を結合し自身の剣として昇華させるのはいったいいつになるのやら。
斬魄刀については不確定要素が多すぎるので後回しにし、霊圧の話に入る。始解をするため、多少でもいいので霊圧を感知、使用できなければどうにもならない。
「さて、問題の霊圧についてだが、そもそもそれが何なのかすら分からないと言うておったな。」
「そうですね、何が何やらさっぱり。」
「うーん、そうっスねえ。普通感知できるものなんですが、それではこれでどうです?」
浦原が何かしたらしい、威圧感が増し何かしてくるかもしれないとの恐怖を感じたので距離を取る。
俺と浦原の様子を見て、何かを考えるようなポーズだった夜一さんの眉がぴくっと動いた。
「波風、おぬし更木でどういう生活をしておった。日々の生活の仔細を語れ。」
夜一さんにそう言われ、あばら家に住み、毎日刀を振るい、狩猟生活をメインに本当の肉食生活していたこと、集落や他の集落に行ってみては少なくとも2日に一回は更木の住民に襲われ返り討ちにしていたこと。そこで、安眠のために、気配を消すことや気配を察知することが必須だったのでそれらは剣術とともに特に鍛えられたこと等など話した。
「なるほどな、そのような生活をどれほどつづけておったのじゃ。」
「3…いや5年?数年間はそうやって過ごしていましたよ。毎日代わり映えなく荒くれた日々でした。生き残るため強くならざるを得なかった」
「何年そのような生活を送っていたことすら曖昧とはどういうことじゃ。まあよい。おぬしが霊圧を使えない理由が分かった。気配を消すことを意識するあまり、霊圧に蓋をし無意識に抑えておるのだ。儂や喜助のような者でないと霊圧を悟れないほどの隠蔽能力じゃな。霊圧を消す意味がなく、霊圧を纏わねば危険という状況でやっと高まるといったところか、喜助の霊圧を感じて、蓋をしたままではあるがおぬしの霊圧が高まった。」
「…突っ込みどころはたくさんありますが、ひとまず、気配を悟られないよう抑え込みすぎて、霊圧に蓋をしていたという理解でよろしいですね。そうであるならここでは気配を消す必要もないですし、蓋を開けることが最優先でしょうか。御助力願えますか?」
「安心せい、元よりそのつもりじゃ」
「ボクもそのつもりっスよ。何やら面白い能力を持っているみたいですしね。気になる点は他にもありますが、段階というものがありますし、まずはその蓋を取っ払っちゃいましょう☆」
禁術能力持ちなのに見捨てずコントロールに付き合ってくれることに感謝しかない。浦原に関しては禁術禁止事項破りまくってそうだし、俺の能力は研究者魂をくすぐるのだろう。
夜一さんは単純に懐の広さだな、きれいでナイスバディで懐も広く黒猫になれるとか神だな、拝んどこう。
今回の話でいろいろと解決するどころか、疑問点が一気に増えた。死にたくないあまり気配を殺し生きてきたので、霊圧に蓋をしていたということが分かったのはいい。更木剣八が襲ってきたのは強者の勘みたいなものかよく分からないが、もうあれは規格外なので考えないようにする。必ずしも霊圧が強い=戦闘力が高いというわけでもなさそうだしな。
しかし、ラスボス一派に実験体として拉致されたのは……
あの時は確か、更木から出ようと他の地区との境界線近くを歩いていた、遠出するので荷物の中に食料を持っていたし、自家製干し肉をかじっていたようにも思う。腹が減るのは力がある証拠、そもそも下っ端であれば霊圧の知覚なんてろくにできないだろう。
しかし、何か違和感を抱いて目を付けられた可能性も捨て切れない。対藍染関係に関して不安が残ったままというのは辛すぎる。この世界、ラスボスと主人公に設定盛りすぎだろう、ラスボスに関しては世界征服どころか改変や掌握を願っており超危険人物だ。多少の情報を握っていたところで出し抜ける未来が見えないが、
次、更木生活の記憶についてである。もちろん鮮烈な記憶ははっきり残っている。しかしそれ以外のもの、代わり映えのない血みどろの日常だったとはいえ何年間過ごしたかすら曖昧なのは少しおかしい。記憶が不自然に飛んでいるとかでなく、単純に記憶が薄く忘れているという感じなのである。
逆に現代日本人として生きていたころの記憶ははっきりしている、前日の講義だとか友人の顔や名前だとか。その頃読んでいた漫画や本の内容も思い出せる。
記憶している部分が違うか、記憶方法が異なるのか。また分からないことが一つ増えた。何なんだもう、どうせ異世界にやってくるならはっきりと能力だとか状況だとか理解して来たかった。
───
あの後、修行は次の日からとひとまず解散し貸してもらっている自身の部屋へと戻って寝た。一気に情報が増え頭がパンクしそうだったので睡眠学習である、現実逃避とも言う
これまで余裕の無い生活しか送ってこれなかったので、朝起きて畳に転がってなんの緊張感もなく考え事にふけれるこの状況に涙がでそうだ。
背中が畳に張り付いてもう動きたくないと考えていたのだが、いきなり思いっきりふすまが開けられた。気が緩みに緩みまくっていたので、肩が大きくはねた。
「部屋の片付け終わりましたか?隣の部屋がボクの部屋なんでよろしくお願いしますっス。早速ですが部屋大きすぎません?場所空いてますよね?」
「は、はあ。そう思ってはいましたけど」
「それなら少し物置かせてください、この通りっス!もともとここはボクが勝手に物置にしてた部屋なんですよ、それを全部移動しちゃって部屋全く整理できなくなりまして。自分のせいっスけど」
浦原はパンっと手を合わせて頼み込んで来る。
「それくらいならお安い御用ですよ、明日から修行つけてもらう立場ですし」
「ありがとうございます、それならついて来てくださいっス。物を運びましょ」
これ断らないことを前提とした頼み事だな、結構な量の箱の量を見てちょっと引く。本当に大事なものは自身の部屋で保管してあるとは思うが、重要度や使用頻度が低いものを場所がないが捨てられず、ここに置いておきたいのだろう。
「よし、完了!片付けも終わりましたし、ボクと鍛錬場に行きましょう。」
そう言うや否や抱えられ、瞬歩で連れてこられた場所には見覚えがあった。双極の丘の地下巨大空間じゃねえかここ。
「ここ地下なんっスよ、驚きました?アナタの能力はそうそう人前で見せるようなもんじゃないのでね、人目につく危険のないところに連れてきました。」
「ここ地下なんですか?すごいですね。」
「反応薄いっスね、一応秘密の訓練場っていうワクワク感満載のとこなんスけど……まあいいっス、さっそく修行を開始しましょ」
反応薄くてすまんな、このままの時系列で原作まで行くのなら俺のせいで一護が浦原商店の地下巨大空間に連れて行かれたとき、浦原が代わりに大げさなリアクションをしていたのかもしれないな…
霊圧に関してはこれまでの苦労は何だったのだというくらいあっさり解決した。浦原が霊圧を出しこちらを威圧する、その霊圧を意図的に纏ったまま俺に斬りかかったり殴りかかったりとすることで、俺も引っ張られて霊圧を出すようになっていたらしい。
黒崎一護と更木剣八の戦いにあったように、死神は無意識に皮膚や刀にそれを纏わせ戦うのだと思う。一護は最初、更木剣八の皮膚に纏っていた霊圧が高すぎて傷つけられなかったが、より集中し霊圧をコントロールすることで斬れるようになったのだ。
俺の場合は、気配を出すよう意識し、周囲を威圧するような雰囲気を作ろうとすることで蓋が外れたようだ。霊圧というものを、相手のものも自分のものも知覚できるようになっていた。
「今日はこれでお終いっス。お疲れさまでした~」
「はい、付き合っていただいてありがとうございます。なんとなく霊圧の出し方が分かりました。」
「それが良かったっス。あ、普段は前してたように気配を消す感じで抑えといてくださいね、波風サンの霊圧はかなり高いですから。」
そのまま抱えられて屋敷へと帰る。さっさと瞬歩を覚えたい、男に抱えられての移動を繰り返すなどごめんである。
そのまま部屋に帰りまた畳へ突っ伏す。言われたように今までと同じく、気配を消したまま寝る、もはや習慣である。
───
浦原喜助は科学者であり、発明家であり、研究者だ。理解ができないもの、他と異なるもの、珍しいものに興味を惹かれるのは当然だろう。縁側で座り込み、柱に体重を預ける形でちょうど紅葉の葉が美しい庭を眺めていた。残念ながらその美しい光景には目を向けているだけで、頭の中は昨日から屋敷で共に居候の身となった珍妙な男のことでいっぱいだった。
男は、斬魄刀が空間移動とか言うとんでもない能力を持ち、始解もろくにできないのに非常時に刀が変化し能力を使えたと言う。
斬魄刀は日々を共に過ごすことで、持ち主自身の魂を元にそれぞれの形に成る。自我を持っており、それと対話することで、己の魂を知り能力を使えるようになる。
つまり、精神世界での対話・同調なしで始解をすることなどあり得ないのである。しかし、彼はその過程を飛ばし、始解らしき状態になった斬魄刀を使った。
剣術は更木出身ということであの強さは理解できる。ただ、あの物腰と頭の回転の速さ、言葉使いや礼儀などはどこで学んだのだろうと疑問に思っていたら、人間だった時の記憶があると言う。
ソウル・ソサエティは魂魄だけの者の世界だ、現世の死者の魂が更木に居たところで全くおかしいことはないのだが、現世の死者の魂にしてはあの霊圧の高さは珍しい。
その他にも気になる点はあった、霊圧の質である。本人には、霊圧が高いので抑えておけと伝えた、それも嘘ではないが隠さねばならない点は別にある。
あれは死神の霊圧というよりはむしろ───人間のそれに近い。
「やれやれ、夜一サンもとんでもないものを引き込みましたねぇ。興味は尽きないので少しずつ探っていきますか。」
思考の淵から帰ってきて立ち上がる。ずいぶんと考え込んでいたようだ、足先が冷えている。庭の赤い紅葉が舞う中で、一枚だけ緑のままの葉があった。クルクルと舞うその緑の葉はいつの間にか消えていた。見間違えだったのかもしれない
霊圧感知、多少使えるようになったイメージとしては、ハンターハンターの念みたいなもの。
オリ手は普段から絶をしていたから相手のも自分のも感じられなかった。まあそもそも霊圧は目覚める目覚めないではなく、あるか無いかなの違いますが、あくまでイメージとして。
原作の魂についての設定は曖昧なところもあるので独自解釈している部分もあります。
・死神と人間、虚と人間の魂は異なる
・斬魄刀は死神の魂があって初めて使えるもの。
・現世の人間は死んだらソウルソサエティに来る。
・人間の魂は虚に変化orソウルソサエティに来た時点(もしくはハンコ押されて魂葬された時点)で変質。
・人間と虚、人間と死神の魂の境界線ははっきりとしたものではない。一方、虚と死神は対極の存在、本来どちらの力も持つのはあり得ない。
・生粋のソウルソサエティ生まれの死神の方が力が強いが、ソウルソサエティにいる現世の死者の魂が死神の力を全く持たないというわけではない。死神になるための力の最低量が100、隊長格10000の差だとすれば1くらいは存在。
・生粋の人間の魂とは、現世で今生きている人間の魂。