「こりゃあ、、、」
連邦軍ルナ2基地から派遣された調査団の団長、ルドルフ・ウエストウッド大尉は言いかけた言葉を飲み込み、唇を噛み締めた。
さること5日前、ここサイド7はジオン軍の襲撃を受けた。
連邦軍が新たに開発し、稼働実験が行われていた新型モビルスーツの情報を入手した「赤い彗星」こと、シャア・アズナブル率いる部隊が襲ったためだ。
その襲撃をなんとか乗りきったのだが、どうも民間人が主体で迎撃したという、噂が基地内でまことしやかに囁かれていた。
その噂を耳にした直後、ルドルフは基地からもっとも近いコロニーであるサイド7への調査を命じられたのであった。
ちょうどサイド7へと出港しようというときに管制官から出港延期のアナウンスが入った。
サイド7から脱出してきた船が入港するというのだ。
入港してきた船は今まで見たことがない戦艦だった。開いた左舷のカタパルトには件の物と思われるモビルスーツが収容されていた。まるで木馬だな、、とルドルフは艦橋から出港までの暇潰しに入港してきた戦艦を見ていた。
「大尉、向こうは酷い有り様です。」
部下の一人が駆け寄ってきて、担当の住居地区の報告を告げた。
今にも泣き出しそうな顔をしている。
無理もない、これだけの数の死体を見れば自分だってここから逃げ出したい気持ちだ。
ルドルフが同じ思いをしたのは、8ヶ月前にジオン軍が行った地球への「コロニー落とし」による攻撃を受けたオーストラリア以来だった。
あのときも攻撃を受けた9日後に現地調査へ入ったのだが、それは酷い有り様であった。
XXXのような顔になった水死体、脂肪がXXXのように見える焼死体、、、人が行う行為としてここまで下劣なことができるのかと神を憎んだ。
もうあんな光景は見たくないと、配属されていたトリントン基地から、「戦地」へもっとも遠いルナ2基地へ転属願いを出したのに、運命とは皮肉なものだ、ルドルフは戦争に遠いも近いもないのだと感じた。
「住居地区の調査は一通り済んだだろう。あとは回収部隊に遺体の埋葬は任せよう。我々の仕事はあくまでも『調査』なのだからな」
ルドルフは住居地区からモビルスーツのに実験場・宇宙港へと調査の場を移すことを部下達に伝えた。
宇宙港近くの貨物庫はナパーム兵器が使われたのか焦げ臭い匂いが漂った。
おそらく機密漏えいを防ぐための処置であったのであろう。
旧世紀の映画でナパームの匂いは最高だと言った軍人がいたが、冗談ではないとルドルフは思った。
だだっ広いフロアを見回っていると、左奥にエレベータを見つけた。下への矢印ボタンが押し、地下へと足を進めた。
地下のフロアは真っ暗で、なにも見えなかった。
無線機で部下を呼び、懐中電灯を持ってくるよう指示した。
2、3分すると暗闇でなにも見えなかったフロアがエレベータ内の電灯でほんの少しだが照らされた。
目が暗闇に慣れたのであろう、さきほど自分がこのフロアに着いた時よりだが、周りが見えた。
「こんなに真っ暗だと幽霊でも出そうですね」という部下の冗談は、ルドルフの耳に届いていなかった。
ルドルフは、部下の持ってきた懐中電灯を無言で取り上げ、自分の視線の先に光を当てた。
そこにはルナ2基地で新型戦艦に収容されていたモビルスーツと同じものがあった。