夏だというのに冷んやりとした風が闇夜に消えて去く。
軍から支給された毛布の隙間に顔を埋めると同時に、ニコラス・ライドンは砂浜へ身体を横たえた。
旧世紀の大戦でも、この海辺まで追い詰められ海峡を渡り撤退したらしいが、今回はそうはいかない。
明日、自分達は反転攻勢に出る。
戦力の差は圧倒的で、あのジオン軍の開発したモビルスーツというのは驚異的だ。
こちらの兵器では歯が立たない。
61式戦車6台、支援戦闘機2機でザクというモビルスーツと戦闘したが、こちらは自分達の戦車1台しか残らなかった。
次々と味方が倒されていく中で、次は自分の番というときに敵が足元をとられ、動けなくなったのだ。
もしもその奇跡がなかったら、自分は今ここにいないだろう
目を閉じ、神に家族の無事を祈っていると聞き慣れた疳高い声が耳元で聞こえた。
「ニック、寝れないのか?明日は運命の一大決戦だ、俺とお前のコンビでまたザクをぶっ潰してやろう。」
運命の一大決戦という割にお気楽なことを言ってくるのは、相棒のラルフ・マクラーレンだ。
こいつとは長い付き合いで、同じ村出身だ。
オーストラリアにコロニーが落とされ、自分の村もいつジオンに侵攻されるかわからない、それなら自分達の手で村や家族を守ろうと二人で連邦軍に入隊した。
二人とも家族に反対されたが、村で戦況を見守り、じっとしているのに耐えられなかった。
「そうだな、明日に向けて力を蓄えなきゃな」
ニコラスは、戦友の顔を見つめ微笑むと、再び目を閉じた。
朝起きると、相棒はまだ寝ていた。
ズボラな性格も、ここまで神経が図太いと逆に頼もしく思えてくる。
点呼時間に遅刻するぞと、肩を揺さぶり起こすと、ニコラスは自分の荷造りを始めた。
61式戦車は二人乗りで、自分が車長兼砲撃手、ラルフが操縦手兼通信手だ。
「今日も一丁やってやりますか。ザクの目の前に止めてやるからよ、一撃で決めてくれよ。」
こんな呑気な性格になれたなら、なんて気が楽なのであろう。
ニコラスは自分の慎重すぎる性格が時々嫌になる時がある。
随分前、村にいた頃に食料の兎を追っていた時のことだ。
ラルフが兎をおびき寄せ、草むらに銃を構えて自分が待ち構えるという算段だった。
ラルフがうまく兎をおびき寄せたが、狙いを定めているうちに兎に逃げられてしまった。
今日の晩飯を取り残してしまったと笑うラルフの優しさと豪快さに救われた。
今回こそは、、、仕留めてやる。
決意を胸に車長は操縦手にエンジンを始動させるようら命じた。
*後で大幅修正します。