お待たせしました。
基本骨子はできてるのに、肉付けで試行錯誤を繰り返したので前より時間がかかりました。
お気に入り、感想ありがとうございます。自己満足で書いているので一切なしでも続けるつもりでしたが、やはりあると嬉しいものですね。
「ふっ」
改造した三式戦術槍が中型2足の機械生命体の頭部に刺さる。取り付けれられた炸薬が爆発し、機械生命体との距離が開いた。
片手で操作しているコンソールに一瞬だけ目をそらし、修復状況を確認。50%完了。もう少し時間はかかる。意識を機械生命体にむけると、廃墟となったビルの壁に叩きつけられた機械生命体はもう眼前まで迫ったいた。
振り下ろされた腕を回避し、もう一度槍を当てる。怯んだ隙に槍に炸薬を装填し、今度は胴体と頭部の間を狙った。
「はっ」
短い掛け声を発すると同時に、槍は寸分違わず狙ったところに命中し爆発する。機械生命体は吹き飛ばされたが、体勢をすぐに立て直し、スパークした状態でこちらに突っ込んできた。
回避するのは簡単だが、後ろには私が修復中のアンドロイドが倒れている。咄嗟にコンソールから手をはなし、両手で背中の盾を前に展開する。手のひらサイズだった金属の盾を基点に半透明のバリアが広がり、その機能を十二分に果たし、機械生命体は辺りに転がる死体の一つとなった。
爆発した機械生命体の頭部が転がってくる。その姿に少し悲哀を感じつつも、盾を収納しコンソールを再び開く。修復作業を再開した途端、ビルの間から新手が4体接近してくるのを見て、炸薬の装填を優先する。
修復状況を見ると、まだ62%だ。四体同時に相手するとなると作業効率の低下は否めない。少なくとも、戦闘中には終わらないだろう。
「はぁ、今回の訓練はハードですねぇ…」
思わずそんな言葉が口から漏れ出た。周りには十数体の停止した機械生命体が転がっている。修復作業にも集中できず、ずっと片手操作のせいでいつもより3倍は時間がかかっしまっている。
もう一度ため息をつきながら機械生命体へと槍を投げた。
電子音だけが、静かに響く静寂なバンカー司令室。
巨大なスクリーンが薄暗い部屋を淡く照らしているなか、床に刻印されたエンブレムの上に立つ金髪の女性に、口をヴェールで覆い隠した女性が近づいてくる。
「司令官。少しお伝えしたいことが」
「なんだ。…また24号か」
司令官と呼ばれた女性がその女性を見た瞬間、眉をひそめた。彼女はヨルハ部隊司令官。名をホワイトと言う。ヴェールで覆い隠した女性はオペレーター17O。24号の専属オペレーターである。
「はい。シュミレーションルームを映してもらえませんか」
「ああ」
ホワイトが目の前の小さなモニターにシュミレーションルームを映すと、24号が槍をふるう姿が映し出された。画面を見たホワイトは頭をおさえ、
「また武器を無断で改造したのか…」
24号が使っている三式戦術槍は明らかに通常より短かった。持ち手の部分は削られ、刃はナイフほどの大きさしかない。これは以前からである。だが複数装填可能な炸薬が1つしか装填できないのか、爆発が起こる度に装填しなおしている。ただ、その爆発の威力は小型機械生命体なら一撃で機能停止まで追い込むほどの威力に上がっていたが。
武器を改造するのは別に規定違反ではない。だが24号は武器を改造する際、無断での改造を禁じられている。理由は一度武器の威力を上げすぎてシュミレーションルームを傷づけてしまったことがあるからである。それ以降、改造を監視下で行うことを義務づけられた24号は、それを嫌い無断で改造するようになった。
まあ、物を破壊するようなことはもうなかったので注意するのみにとどまっている。
「止めることができず、申し訳ありません」
「お前に命令したのは報告義務のみだ。謝る必要はない」
「いえ、今回は資材を倉庫から無断で使用したようなので」
「…あとで24号には言っておく」
訂正、今回はそうもいかないようだ。
「報告はそれだけか」
「はい。…あの、使用した資材は重要度の低いものです。なので」
「罰は軽めにお願いしますか? 随分と優しくなったな」
「い、いえ、そのようなことは。ただ私は、作戦が近づいているなか、重い罰は作戦成功率を引き下げる可能性があると考えたまでです」
そう言いながら17Oは24号の最初の地上任務、廃墟都市の機械生命体破壊任務を思い出す。バンカーでのシュミレーションでは好成績を収めているので、問題なく達成するだろうと思っていた。だが、地上に降り立った24号は、任務こそ何の障害もなく達成したものの、何が楽しいのかあちこちを歩き回り、眺めのいいところに行っては写真を撮ったり、旧世界の文献を見て回ったりと奇行を繰り返したのだ。同行していた2号はバンカーに帰還した時、
「24号はデータオーバーホールをもう一度受けるべきだと思います…」
と言っていたが、旧世界の文献(マンガと言うらしい)をデータ状に残しているあたり、2号も影響を受けていることは明白だった。
かくゆう17Oも苦言を呈してはいるが、24号から送られてくる旧世界の建造物の写真を個人サーバーに保存してからは、今回のようなことが多くなったが。
それに、理由はまだあった。
「…確かに作戦の前に士気の下がるようなことはやめておくべきだろう」
「…ありがとうございます」
これで24号は喜ぶだろうと考えると、何かこみ上げてくるものがある。それが何なのかは17Oには分からなかった。24号の笑顔を見る度また感じてみたいと願いたくなるそれは、17Oだけでなく、全てのアンドロイドが感じていることかもしれないと、奇妙な考えを抱いていた。
去っていく17Oから、モニターに映る24号に視線を移す。
今まさに訓練が終わり、廃墟都市の風景から白一色のシュミレーションルームに戻った部屋でのびをしている24号に通信をかけると、24号は笑顔で通信画面に出てきた。
「こちら司令官だ。24号、応答を」
「こちら24号、聞こえまーす。いやー、司令官から訓練終わりのお疲れ様が聞けるなんて、嬉しいですね!」
呑気なことを。頰がぴくりとひきつった。
「言っていない! …要件はわかっているだろう」
「この槍のことですよね! 威力は向上しましたが、やはり再装填が毎回必要だというのが厳しいですねぇ…。おかげでいつもより時間がかかって」
「無断で資材を使用したそうだな」
「しまいまして…」
黙ってしまった24号に畳みかけるように言う。
「17Oから報告があった。罰としてお前に資材収集任務を命じる。今すぐだ」
「あのー。司令官は今回の訓練内容を知っていらっしゃいますよね? 少しぐらい休んでも」
「不許可だ」
「ですよねー」
相変わらずの間延びした口調に、何故か私は腹をおさえていた。前に24号自身に、司令官の胃はよく痛みそうですねー、と言われた時に本気で胃が痛くなったから癖になっている。
「分かりましたよ。すぐに行きます。あ、ところで司令官」
「なんだ」
「部屋の清掃、そろそろしますか?」
今度は私が黙る番だった。24号が私相手にもこんな口調になったのは、足の踏み場もないほど脱ぎ捨てた服が散乱する自室を見られてからだった。それ以降、24号は部屋を定期的に掃除してくれるようになった。
「司令官の弱み見つけちゃいましたね、ふふふ」
と、笑いながら。嫌な予感しかしなかった。
「…まだいいだろう。前回から一週間しか経っていないぞ」
「一週間も、ですよ。司令官、4日で部屋汚くしてたじゃないですか」
「あれはだな、その、部屋に帰る機会が多くて、次いつ戻れるか分からないからその度着替えてたらな、いつのまにかなっていただけだ。ともかく、まだいい」
「本当にいいんですかー? 司令官は真面目なイメージなのに、私以外に部屋見られたらイメージ崩れますよー」
「ぐ…」
「はい、その反応で察しました。というわけで今から」
「それは駄目だ」
「…はーい。任務を終わらせてからにします。通信終了」
「待て。掃除はまだいいと」
ぶつん、と通信が切れた。話を聞かないやつだ、と胃をおさえつつそう思った。
ヨルハ部隊には、服を洗濯することを専門とする洗濯班というアンドロイドがいる。2部屋がよほど汚くなった時はいつも洗濯班に掃除してくれと頼んでいた。その時は全く何も思わなかったのだが、24号に掃除を定期的にするようになってからは、何故かコアの温度が上昇するのだ。
これが、恥ずかしいという感情なのだろうか。
あまり感じたくはないものだ。今回は仕方ないが次は自分で掃除しようと毎回する決意を固めて、24号の任務の詳細を決めることにした。
その後、やたらと機嫌がいい24号を凄まじい数の資材回収任務が待っていたが、ホワイトが感じたこととは一切関係ないことをここに記しておく。ちなみに部屋は汚いままだった。
オペレーターはもう出てきません。
17Oって原作にいませんでしたよね? いたら申し訳ないです。
次はヨルハ実験部隊との話の予定です。