黒の剣士の英雄譚(キャバルリィ)   作:ミヤイ

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ちょーーー久しぶりになってしまいすみませんでした。
でも、皆様の待ってますの言葉を励みに今日、投稿できることが出来て嬉しく思います。

その前に少し言っておこう、タイトル回収が出来ないですけど、あまり気にしないでくださいm(*_ _)m



第15話アルブヘイム・オンライン

 

ステラが居なくなり、特訓所ではなくなった一輝達は、その場で解散した。和人達は、寮まで戻るとALOのアバター姿のリーファと合流して状況を聞いていた所だった。

 

「つまり、ALOでは異世界(こっち)に向かって侵略組織(攻略組)を作ってやって来るってことか……」

 

「そうなの、お兄ちゃん。サラマンダーのユージーン将軍やサクヤ達もこの攻略に参加するみたいで、ALOでもトッププレイヤーが来ると見て間違いないと思う。」

 

和人の問にリーファは、端的に答えて状況を説明していた。それが、ステラが居なくなった理由と繋がれば良いのだが……。そう考える和人と違い、一輝は自室に戻り、時間が過ぎるのを待っていた。自分の想い人が突然いなくなるなんて事は、生まれて初めての彼にとっては、とても受け止めきれない事実だったのだ。

 

「ステラ……君は一体どこへ行ってしまったんだ?」

 

そう呟居た彼の部屋の扉がコンコンとノックされた。誰だろう?一輝は、その重たい腰を持ち上げるようにして立ち上がると、鉛の足を前へ踏み出してドアの前まで向かった。

 

「どちら様?」

 

一輝は、鍵を開けて扉を開けるとそこに居たのは、桐ヶ谷和人だった。背中には、二本の片手剣を背負っている事から彼がこれから何処へ行こうとしているのかは、明確だった。

 

「やぁ、一輝。今からALOへ繋がっているゲートへ行こうと思うんだけど一緒に行くか?」

 

和人の誘いに一輝は、目線をそらすと何も言えなくなってしまった。一体どう言えば世界なんだろう?彼の心中を察した和人は、眉間にシワを寄せた。

 

「何もしなければ解決すらしないぞ?」

「桐ヶ谷君……」

「俺も答えがわかんなくなって、迷ったりもした。なんせ、死と隣り合わせで攻略に励んでいたんだからな。でも……黙って何もしなかった事はしなかったぞ。」

 

「何もしなかったことは無い」その言葉に反応した一輝は、目線を逸らした。和人は、他人のことになると鋭く何でもアドバイスをくれるし、強い。そんな彼の精神的強さを一輝は、とても羨ましく思っていたと同時に彼のようにな精神の強さなんて自分にないと決めつけていた。

 

「──僕は、桐ヶ谷君とは違う!」

「一輝……何言ってるのさ、違くなんて……」

「違うよ……。そのぐらい分かってるさ。僕は君なんかとは──」

 

一輝の言葉が途絶えると同時に部屋の中ではパチンと言った音が響き渡ると周りは一気に静まり返った。一輝の自分を貶す発言に堪えられなくなった和人は、容赦なく彼の頬を右手で叩いたのだ。一輝は、その反動で床に雪崩るように尻を着け、左頬を抑えながら和人の方を睨みつける様に見ていた。

 

「一輝、君は強い。弱いなんて言うな……不可能だと周りに言われ続けても自分の目指すべき物を見失わずに剣技を鍛えてきたんだろ?俺のは、ほとんどシステムアシスト感覚だけだから、本当の実力とは言えない。お前には、それだけの強いんだよ一輝。それに心だって、何度も折れそうになっても立ち上がってここまで来た心が。決して折れなかったその強い心があるじゃないか!」

 

和人の言葉に励まされた一輝は、自分が何をしないといけないのようやく見えてきた気がした。そうと分かれば、ここでいつまでもぼーっとは、していられない。

 

「ごめん、桐ヶ谷君。君の言う通りだったよ。」

 

再び立ち上がった一輝は、そう言うと和人に向かって頭を下げた。自分を叱ってくれた彼への感謝の現れだった。そんなことされたこと無かった和人は、少し困った笑みを浮かべるもすぐ彼に背を向ける。

 

「じゃあ、分かったようだし行こうぜ!アスナやみんなが待ってる。」

「あぁ、それにステラも待ってるしね!」

「そうだな!」

 

二人は、ドアを開け部屋から出ると寮の前では、それぞれ準備を終えた明日奈やリーファ、ユイ達が待っていた。彼らからすれば、自分たちの慣れ親しんだ世界と戦うというのにやけに冷静な態度で待っていた。

 

「悪い、待たせた。」

「別に気にしてないから安心して。」

 

和人が明日奈にそう言うといよいよ準備が整った。そう思えた頃だった。

 

「待ってください、私達も行きますから!」

 

5人は、その声に反応して声が聞こえた方を見るとそこに居たのは、一輝の妹である、珠雫と彼女と同室の有栖院凪と一輝に特訓をお願いしていた

絢辻綾瀬も居た。

 

「珠雫がどうしても行くって言って聞かないのよ。」

「だって、お兄様が心配で……」

「気持ちは、嬉しいけどこれは僕の問題なんだ。珠雫達はここで帰りが来るのを待っていてくれたいかな?」

「分かりました……」

 

行きたい気持ちを全面に押し出していた珠雫も兄である一輝の言うことならただ黙って従うしかなかったのか、渋々納得したが綾瀬は、引き下がることをしなかった。

 

「私は、行かせてください!これから黒鉄君が行くところは、私の父の道場でもあるんです!」

 

絢辻綾瀬の父、綾辻海斗の剣術綾辻一刀流の道場が今回のゲートの場所だと言う綾瀬の言い分を聞いた和人は、案内も兼ねて綾瀬の同行を認める事にした。

 

「分かった。けど、仮想世界は出来ない。向こうは、俺らを本気で人間とは思ってない。死んでも生き返るゲームキャラでしかないんだ。だから、こっちで待ってて欲しい。」

「それには、納得してるから。見送りや迎えはすぐ近くでさせて欲しいの。その方が、いくら怪我しても直ぐに治療も出来るし。」

「あぁ、分かった。」

 

和人は、そういい綾瀬の同行に許可を出すと出発するメンバーが揃った。挑む場所は、かつて自分たちが慣れ親しんだ仮想世界……。和人は、眉を寄せて、ただ夕日を眺めていた。これが自分たちにとって最後の夕日にならないように……そう心の奥底で祈りながら。

 

「みんな、ヴァーミリオンを連れて無事に帰ってこよう!」

「「「おう!!」」」

 

和人の呼びかけに明日奈、リーファ、一輝に綾瀬がほぼ同時のタイミングで答えるとそのまま綾辻一刀流道場へと向けて出発した。

 




《次回予告》
綾辻一刀流道場へ無事に着いた和人達の前に、「剣士殺し(ソードイーター)」の異名を持つ倉敷蔵人が長々と暇を持て余しながら待っていた。彼は、破軍で1番強い剣士を出せと要望する中、和人が出した決断とは……。


第16話「剣士殺し」


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