さて、それではどうぞ!!
道場に近づくにつれ、雲行きが怪しくなってきた。そんなことを思いながら桐ヶ谷和人は、山の中をひたすら明日奈、ユイ、リーファ、一輝、綾瀬と共に走っていた。
「綾辻先輩、道場はこっちで間違いないんですよね?」
「えぇ、もう少しだよ。桐ヶ谷君。」
綾瀬は、そう言うとあれだけ遠く感じていた山道を登りながら走っていると、建物光が前から入り込んでいるのを視覚で確認すると和人は、更に走る速さを上げた。綾辻一刀流道場は、山の中にあり坂を生かした体力トレーニングなども取り組む道場として古くからあるとして有名でもあった。そんな伝統的な綾辻一刀流道場へ辿り着いた和人達は、度肝を抜かした。本来綺麗であろう綾辻一刀流道場の門がここを占領している倉敷蔵人の率いるメンバーによって落書きされており、辺りには、ゴミが散乱していた。
「いつ見てもここは酷いよ、お兄ちゃん……」
自宅にも道場のあるリーファは、この悲惨な光景を目の当たりにして怒りを隠しきれずに握り拳を密かに作っていた。そんな怒りは、誰もが密かに感じていることだが、爆発させないように精神を落ち着かせながら一歩踏み出してゆっくり歩み始めると門番の生徒が姿を現せて
「お兄ちゃんの邪魔しないで!」
リーファは、そう言いながら鞘から剣を抜き片手剣
「嘘だろ……リーファ、なんでその技を……」
「あれ?前に言わなかったけ?ついこの間にALOのアップデートが入って異世界攻略に合わせて
あまりにも知らない情報を口にしたリーファに大して和人は、頭を抱えてこれからの作戦について悩み始めた。
「やぁ、あんたがあの《破軍期待の騎士》桐ヶ谷和人か?」
「そうだけど……あんたは?」
薄暗い道場の奥で黒色を基調とした革質のソファーに腰を下ろしていた少年が声をかけられると、和人は眉間を寄せ睨みつける。
すると、少年はゆっくりと腰を持ち上げて数歩前へ出てくると外の薄い光が窓の間から彼を照らすと綾瀬は、武者震いをしているかのように手が震えていた。彼の威圧に心がダメージを受けたのだろう。
「俺は、倉敷蔵人。貪狼のエースだとでもいえば、分かるだろ?」
蔵人は、そう言うと
「じゃあ、君が去年の七星剣舞祭ベスト8の《
「その通りだ、お前のこともよく知ってるぜ、《落第騎士》。Fランがまぐれで破軍の予選勝ち抜いてるらしいじゃねぇか。」
どこから漏れていたのか、蔵人は一輝までも噂になっていることを話しながら舌で乾いた唇を舐めまわし、獲物を見つけた狼のように彼らを見つめていた。
「
大蛇丸の剣先を和人へ向けながら蔵人は、そう言うと口角を上げ、白い歯を彼らに見せるように笑みをこぼした。まるで、戦うのを楽しみにしているかのように……。
「──分かった。破軍で一番強いのは……」
「待って、お兄ちゃん!」
和人は、そう言いながら背中にある二本の
「お願い、ここは私にやらせて!」
「お前、何言ってるんだ!こんな危ないことさせれる訳ないだろ!」
「良いの!」
リーファは、和人の言い分を押し退けるように意地を張る。彼女の両手は、震えながらも目の前で仁王立ちしている倉敷蔵人から放たれる異様な威圧ににも必死に耐えながらリーファは、再び口を開いた。
「この人は、剣の道を貶したんだよ……お兄ちゃん。その道で何年も過ごしてきた私にも意地があるし、どんなことがあろうとここで負けられない!」
「スグ……」
剣の道を歩む桐ヶ谷直葉と言う1人の人間であるリーファにとって倉敷蔵人がこれまでやってきた道場破りや占領と言った行為は、決して許せる事ではない。まだ幼さが残るリーファにとって、感情が既に高揚していたのだ。
「イイぜ、見せてくれよ!お前の言う剣の道を生きた人間の力を!!喰いつくせ!蛇骨刃!」
蔵人は、大蛇丸を鞭の様に振ると刀身が伸びながらリーファの所へと向かって迫ってきた。それを手前まで引き付けたリーファは、振り被った剣を振り下ろして大蛇丸の先端の軌道を変えると、そのまま走りながら彼との間合いを縮めると剣の刀身が青色のエフェクトを放ち始めると、左から蔵人へ斬り込むと折り返す様に連続水平切りを決める。
「ソードスキル、ホリゾンタル・アーク!」
リーファは、ソードスキルで彼の身体に傷を付けると再び、また違うソードスキルを放とうとモーションを変えようとした時だった。斬られたはずの蔵人はまだ余裕の笑を浮かべながらその時が来るまでひたすら待っていた。
「まんまと俺の敷いた罠にハマってくれたな……、妖精さんよ!」
蔵人は、そう言うとリーファの刀身が緑色のエフェクト包まれ、ソードスキルをはなとうとした途端、彼女の剣は、ゆっくりと地面に落ちていた。
「す、スグ!!」
真っ先に声を上げたのは、兄の立場である和人だ。リーファによって軌道を変えられた大蛇丸は、彼の意のままに操りながら間合いを詰めてきたリーファの背中から串刺しにするかのように突いてきたのだ。勿論、リーファとしての姿はアバターとは言え見ているだけで刺された場所から痛みを感じる様な不思議な感覚になっていた。そんな光景が目に映り込む和人は、迷わず背負っていたエリュシデータの柄を握り締めるとそのまま鞘から引き抜き蔵人へ向けてヴォーパル・ストライクを放つも意図も簡単に和人の攻撃を避けた蔵人は、再び距離を取りながら大蛇丸を元に戻す。大蛇丸を抜かれたリーファは、あまりの衝撃にそのまま地面に座り込む。刺された場所には、赤色の破壊エフェクトが残っていた。
「スグ、大丈夫か?」
和人は、慌ててリーファの所へと向かい彼女の上体を起こすとそこには、涙を堪えながら和人の心配そうな顔を見つめていた。
「ごめんね、お兄ちゃん……。あんだけわがまま言ったのに……」
「良いんだ、スグは何も悪くない。」
一撃受けただけなのに、その前から彼の放つ威圧と戦い疲れたリーファは、彼と己との力の差を感じてしまっていた。戦いの中で絶対に埋まることの無い差を……。そのせいか、彼女は戦意が喪失してしまった。そんな妹を和人は、優しい口調で言うと彼女の頭を撫でる。
「あん、なんの真似だ?」
「何って、ただの選手交代だ!一輝、スグを頼む。」
和人は、リーファから手を離すとゆっくりと立ち上がり蔵人を睨みつける。その間にリーファは一輝と共に彼らから離れると安全な場所でこれから起きようとしてる戦いをひたすら見るしかなかった。和人は、左手を動かしてもう一本の剣の柄に手をかける。
「──倉敷蔵人、ここからは俺が相手だ!」
「待ちくたびれたぜ、桐ヶ谷和人!!」
大蛇丸を振り、伸びた刀身が和人の方へと向かって進む中、和人は、ダークリパルサーを鞘からぬき、大蛇丸の先端を弾くと、右手に持っているエリュシデータでヴォーパル・ストライクを放つも蔵人は、上半身を逸らしながら躱す。
「お前の力は、こんな程度か?」
「まだだッ!」
和人は、そう声を張り上げると二本の剣を時計の様に振るも蔵人は、上体を逸らして躱してしまう。まるで、こちらの攻撃が読まれているかのように……。
「さぁ、今度はこっちの番だ!」
蔵人は、鋭い眼光を和人に向けながら大蛇丸を振り再び、和人の所へ先端を伸ばした。
《次回予告》
倉敷蔵人の《マージナル・カウンター》に苦戦する和人は、愛剣のエリュシデータとダークリパルサーを振りそれに何とか対応していると言った状況だった。そんな中、蔵人有利のまま戦いは、進んでいく……。
第17話「マージナルカウンターを超えろ!」