聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!EX   作:みおん/あるあじふ

3 / 8
mission2.「拠点」

那覇空港ロビー。

 

 

手続きを終えた燕は、荷物のキャリーバッグを引き摺りながら外へと続く道を歩く。

 

 

長いようで短いフライトであった。これなら態々ファーストクラスにする必要はなかったのではないかとさえ、思うくらいに。

 

 

しばらく進むと、高校生の団体が列を作って歩いていた。修学旅行で沖縄を訪れたのだろう。

 

 

(ふ~ん。あれが……)

 

 

白に包まれた制服。燕は彼らが川神学園の生徒であると直ぐに分かった。

 

 

強い武士娘がいるという名門高校……その生徒達を興味津々に眺めていると、その中にいる一人の男性の姿を発見した。銀髪の少年、サーシャである。

 

 

ユーリから聞いた話では、サーシャ達も別件の任務で動いているらしい。燕が依頼された任務と関連性はあるが、接触は禁じられていた。別行動でお願いしますとユーリから念を押されている。

 

 

(あ~あ……)

 

 

残念と肩を落とす燕。遠目でサーシャを観察しながら悪戯に笑い、

 

 

「また遊ぼうね、サーシャ君」

 

 

小声でそう呟いて、燕は足早に先へと進み出した。

 

 

 

 

沖縄某旅館前。

 

 

旅館のロビーに到着した燕は、カウンターの受付嬢に声をかけ、チェックインを行う。旅館の手続きは全てユーリが手配していた。

 

 

「予約した松永ですが」

 

 

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

 

 

受付嬢に連れられ、燕が宿泊する部屋へと案内される。最もここで寛ぎながら身体を休める時間はない。一種の拠点として利用する為の部屋である。

 

 

「松永様、ユーリ様からお荷物を預かっております」

 

 

受付嬢からアタッシュケースを手渡され、失礼しますと言って部屋から立ち去っていく。燕は受け取ったアタッシュケースをテーブルの上に置き、開いて中身を確認する。

 

 

「わお……」

 

 

思わず歓声を上げる燕。アタッシュケースの中身は、盗聴用にカスタマイズされたインカムとテディベアのキーホルダーがついた特殊キーピック。

 

 

さらにカモフラージュ用のカバーに入ったフックショット一丁が収納されていた。これらを任務で使用してくれと言う事だろう。

 

 

燕は早速インカムを耳に装着し、キーピックをポケットに入れ込み、フックショットをベルトに取り付ける。使用方法の説明書もあるが、機械を扱う事が多い燕には触ればだいたい理解できる。

 

 

これで準備は整った……と、燕はアタッシュケースが二段式になっている事に気付く。中身を探り黒いシートの蓋を開けると、指紋認証式のパスコードが付いた小さなケースが収納されていた。

 

 

燕は指紋認証のパネルに自分の指を当てる。すると小さな電子画面から“UNLOCKED”と表示され、ケースのロックが解除された。燕はそっと蓋を開ける。

 

 

「これって……」

 

 

中には蜘蛛型のシルバーアミュレットが入っていた。燕の位置を知らせる発信装置である。

 

 

さらに、中には燕宛のメッセージが書かれたメモが挟まっている。

 

 

“燕ちゃん、ちゃんと無事に帰ってきてよ! 久信”

 

 

そのメッセージは久信からのものだった。燕は嬉しくなり、涙が込み上げるのを堪える。

 

 

今は、泣いている暇はない。

 

 

「おとん……ありがとね」

 

 

取り出したアミュレットを、ぎゅっと握りしめる。必ず任務を成功させよう……アミュレットを胸に着け、部屋から出ようとした時、ケースの中にもう一枚のメモが入っていた。

 

 

“燕ちゃんへ 押入れの中に着替えを入れておいたから、よかったら使ってね”

 

 

“もちろんフックショットとセットで♪ 麗より”

 

 

今度は麗からのメッセージ。麗はユーリと協力関係にあるとは聞いているが……顔はまだ合わせていない。その彼女が、一体何を用意したのだろう。燕は押入れの中を開ける。

 

 

そこには、麗の用意した衣装がハンガーにかけられていた。

 

 

「…………」

 

 

無言になる燕。露出度の高いスリットに蝶の刺青が施され、大人の女性を思わせるような雰囲気の紅いドレス。明らかに麗の趣味である事は間違いない。

 

 

「………私は某ホラーゲームの女スパイかっての」

 

 

時間がない。燕はインカムのスイッチを入れて部屋を飛び出していく。当然、麗が用意した衣装を着る事はなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。