聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!EX 作:みおん/あるあじふ
沖縄某旅館内部。
ユーリの話では、主犯格の部下がこの旅館で祝賀会の為の準備をしているという報告が入っている。だが特徴が分からない以上、探しようがない。
現在判明している事は、主犯格の所属している団体名が『万国乳房研究会』という事だけである。明らかに怪しいカルト集団のような名称だが、あの九鬼財閥からクッキーを奪取した組織だ……油断はできない。
ともかく動かなければ先に進まない。燕はインカムのスイッチを盗聴モードに切り替える。
ユーリから支給されたインカムには通信用、盗聴用の二種類に切り替える事ができる。一定の距離ならば、携帯電話や無線機など、相手の会話を聞く事が可能になる。
燕は周囲に怪しまれないよう、廊下を歩きながら捜査を開始した。
『―――今旅館についたよ。景色がすごく綺麗だ』
『―――いいなあ。私もパパと旅行行きたかったな』
『―――おいおい、パパは仕事で来てるんだぞ』
単身赴任で訪れている父親と子供の会話。これは違う。
『―――例の件、頼むよ』
『―――はい、頑張ります』
どこかの会社の上司と部下のやり取り。これも違う。
『―――この旅行から帰ったら、俺たち正式に結婚するんだ』
『―――そう、おめでとう』
新婚夫婦と母親の会話。それ、死亡フラグだよと思いながら聞き流す。全く違う。
どれもこれも一般の会話ばかりである。この調子で見つかるとは思えない。
方法を変えるべきだろうか……そう思いながら歩いていた時、ある会話が燕の耳に飛び込んだ。
『―――所長。祝賀会の準備、整いました』
女性の声だった。“所長”と、そして“祝賀会”というワード。燕は耳を済ましながら、次第に音が大きくなる拾えるように廊下を辿る。
『―――ご苦労だった。奪取したクッキーの状態はどうか?』
『―――はい、既に工場に保管しています。私もこれからそちらに向かいます』
『―――そうか。くれぐれも後をつけられるなよ?』
『―――はい。では後程』
そう言って、二人の会話は途絶えた。所長。祝賀会。そしてクッキー。全てのワードが一致する。今のは間違いなく万乳研の幹部会員と所長である。
(……ビンゴ♪)
燕は既に会話をしていた女性幹部のいる所まで身を潜めていた。女性幹部はこれからクッキーが保管された例の工場に向かうと言う。
気付かれないように息を潜めながら、その女性幹部の後をつけていった。
旅館内地下駐車場。
女性幹部の後を追って辿り着いたのは、地下駐車場だった。燕は駐車している車の影に隠れながら、女性幹部の行動を伺っている。
女性幹部は黒いベンツの車の前に辿り着くと、ポケットから車のキーを取り出そうとしていた。
だが、様子がおかしい。何度ポケットを探っても、キーが出てこない。どうやらどこかに忘れてきてしまったのだろう。女性幹部は溜息をつくと、足早に旅館内へ続く階段を登っていった。
(よし、今がチャンス……)
周囲に誰もいない事を確認した燕は黒のベンツへと近付いた。
これに乗って、工場に案内してもらおう……ポケットからキーピックを取り出し、後ろのトランクについた鍵の差し込み口に差し込んだ。
この特殊キーピックは鍵穴に差し込むと、その鍵穴に対応するように変形する仕様になっていた。要するに最強のマスターキーだ。
ドラ○エでもそんなアイテムがあったな……と思い出している場合ではない。鍵が開く手応えを感じた燕はトランクを開け、中へと忍び込んだ。後は女性幹部が来るのを待つだけである。
しばらくしてキーを取りに戻った女性幹部が戻り、ドアを開けて運転席に乗り込んだ。エンジンのかかる音と振動が燕の身体に伝わってくる。
車が発進し、地下駐車場を出て目的地へと走り出す。
(このまま案内してもらうよ、お姉さん)
トランクの中で笑う燕。そしてベンツは、クッキーが保管されている工場へ走り出した。