聖痕のクェイサー×真剣で私に恋しなさい!EX   作:みおん/あるあじふ

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mission4.「stand by ready」

沖縄県内某工場地帯。

 

 

駐車してエンジン音が消えたベンツのトランクの中。人の気配が完全になくなった事を確認した燕はトランクを開け、外へ出て状況を確認する。

 

 

燕がいる場所には、映画に出てくるような薄汚れた工場が一軒。それだけである。人気は全く感じない。感じなさすぎて気味が悪い程に。

 

 

先程の女性幹部はどこへ行ったのだろう。燕は周囲を警戒しながら工場内へ進んでいく。

 

 

「おじゃましまーす……」

 

 

緊張感のない台詞を小声で言いながら、工場内部へ侵入する燕。中は何かを生産する為の機械があるが、錆び付いていて使われている形跡はない。どうやら長い間放置された廃工場なのだろう。しかし幸いな事に、電気は通っているようだった。

 

 

この場所に、次世代クッキーが保管されている……燕は歩きながら周囲を確認する。しかし、それらしい物も、人影すらも見当たらない。

 

 

(人気がなさ過ぎる……こういう時って……)

 

 

罠か、とも思う。尾行されている事に気付かないフリをして、最後の最後で罠にかけるというよくあるパターン……気が付けば、もう工場の一番奥に差し掛かっていた。

 

 

周囲を隈なく探したつもりだったが、何もない。場所を間違えてしまったか……それはない。工場の建物は一つであり、ベンツの止まっていた場所もこの工場の前である。

 

 

だとしたら、この状況はどう説明する……考えに耽っていると、突然複数の気配を感じ取った。周囲には燕を取り囲むように、アサルトライフルを構えた黒いスーツの男達と、尾行していた女性幹部の姿があった。

 

 

状況を分析する。いや、分析する必要すらない。そして燕は理解した。罠であると。

 

 

「一体どんな人間が後をつけていると思えば……まだ子供じゃない」

 

 

拍子抜けだわ、と女性幹部は笑う。尾行には最初から気付いていたようだが、相手が学生だという事までは分からなかったようである。

 

 

「う~ん……結構自信あったんだけどなぁ」

 

 

残念、と燕。男達に囲まれ、命の危険に晒されているというのに、彼女には緊張感がまるでない。その燕の態度に、女性幹部は表情を歪ませながら苛立ちを見せる。

 

 

「自分の置かれている立場が分かってないみたいね……いいわ。大人しく投降しなさい。そうすれば命までは取らないわ」

 

 

悪人の決まり文句を吐く女性幹部。そう言われても、任務を遂行しなければならない燕にとっては聞き入れられない条件である。

 

 

仮に投稿したとしても、いずれは始末されるだろう。燕は女性幹部に微笑んだ。

 

 

「嫌です、って言ったら?」

 

 

一種の挑発である。一応確認のつもりだが、つまり返事はNO。投降拒否と受け取った女性幹部はそう、言って男達に顎で合図をする。男達はアサルトライフルのトリガーに指をかけた。

 

 

それは燕に対する死の宣告。もう後戻りはできない。

 

 

「撃てっ!!」

 

 

女性幹部の合図と同時に、アサルトライフルの銃口から大量の銃弾が燕に向けてばら撒かれる。四方八方からの銃弾……常人の人間ならば逃げる事はできない。

 

 

だが燕は動かない。ただ、余裕の笑みを浮かべているだけ。何か策があるのか、それとも諦めているのか……どの道回避する事は不可能。避けきれる数ではなかった。

 

 

燕の身体が大量の銃弾の雨を浴びる。これで終わり。若い命を摘み取る事はしたくはなかった、と女性幹部は嘆いた。しかしそんな事は微塵も思っていない。何故なら彼女は笑っているから。

 

 

しかしその笑みも、次に見る光景で消える事になる。

 

 

「な―――!?」

 

 

絶句する女性幹部。燕は銃弾を浴びて絶命している筈だった。それなのにも関わらず、傷一つない燕が、目の前に立っている。

 

 

そして、燕の傍に現れた白でカラーリングされた蜘蛛型の機械が、今まで景色に溶け込んでいたかのようにその姿を現した。

 

 

――――ステルス機能。今までずっと、燕の側で身を潜めていたのである。燕を銃弾から護ったのは、他ならぬ“彼女”の存在。

 

 

Is it safe, master?(無事ですか、マスター)

 

 

機械蜘蛛から発せられる電子エコー。燕はありがとう、と彼女にウインクをする。

 

 

そう、これが燕の持つ“保険”。燕の切り札。九鬼と辻堂財閥、アトスと久信の技術の粋を集めて作られた最強の兵器。

 

 

エレメンタルギアの後継機である―――“ネオ・エレメンタルギア・バーストアームズ”である。名称が長いので燕は彼女を“ネオちゃん”と呼んでいる。

 

 

突然出現したネオの存在に、男達が狼狽していた。アサルトライフルの銃弾を、糸も簡単に弾いてしまう強固な装甲。そんな機械を相手に敵うはずが無いと徐々に後退を始める。

 

 

「何を躊躇っているの!?相手は小娘一人と一機よ。撃て、撃ちなさいっ!」

 

 

余裕のなくなった女性幹部が声を荒げながら男達に命令を下す。今の男達に戦う意志を感じない。ただ燕という敵に怯えるだけの、軟弱な存在。

 

 

燕は声高らかに告げる。燕とネオが始める戦いという名の狼煙を。

 

 

「それじゃあネオちゃん、そろそろ始めようか……今日が私とネオちゃんの初陣だよ!」

 

 

OK.(了解です)

 

 

燕と、そしてネオが動き出す。男達は来るな、と叫びながら銃を乱射する。その瞬間、ネオが複数のパーツに分離し、燕の周囲を渦巻き、迫り来る銃弾を弾き飛ばした。

 

 

「劔の理、ここに在り!……なんてねっ」

 

 

複数のネオのパーツが、燕の四肢を包むように装着されていく。そのパーツの一つ一つが燕の武器となり、鎧となる。

 

 

そして最後のパーツが燕の背中に装着され、飛行装置(ブースター)が完成する。虹色で彩られた粒子エネルギーが、天使の翼を形取るように放出していた。

 

 

これが、燕の有する決戦武装。空を駆ける戦場の天使が、今ここに舞い降りる。

 

 

「さぁて、ここは一つ――――派手に暴れるとしますか!」

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