東方妖々続伝〜outside and inside. 作:みかんでない
ブォン
「あらあら、山登りしてたの?しかもアリスと一緒とはねぇ。」
突然空間が裂け、紫が戻ってきた。
「きゃっ!びっくりした。」
「紫か。どこに行っていたんだ?」
「ちょっと命蓮寺まで。」
あ、あの聖さんのお寺か。
「ああ、例の件か。」
紫は頷いて、俺に話しかけた。
「ねぇ葉一、貴方飛べる?」
紫は外の世界の人間が生身で飛べると思っているのだろうか。それとも幻想郷の人間は生身の体で飛ぶのだろうか。
「いや…飛べないが…。それがどうかしたのか?」
「この異変、敵は雲の上にいるわ。敵を倒すには空を飛べる事が絶対条件よ。」
ムゥ…。ジェットパック持ってくればよかったな。
「なるほど、そりゃ困ったな…。アリス、飛べるようにしてもらえる魔法とかないか?」
「うーん、それが幻想郷の殆どの知り合いが空を飛ぶからねー。私もまさかそんな魔法、使う日がくるとは思ってなかったわよ。今魔法をゼロから構築するのもちょっと時間がかかりすぎるわ。」
悩む二人の様子を見て、紫は言った。
「なら決まりね。私のスキマで、とりあえず天界まで運んであげるわ。」
「あー、その手があったか!何とも便利なもんで。」
「じゃあ紫、お願いするわ。」
「お安いご用よ。さあ、入って!」
決闘好きの霧女ーSTAGE4ー
BGM:雲外蒼天
「ここが天海か…。ちょっとドキドキしてきたな。」
「さーて、ラスボスにご登場願いますか!」
「待って。まだ、あれを超えて行かなきゃならないわ。」
紫が指差したのは、小さな人影。
「待っていたぞ、人間。」
その妖怪は確かに小さかったが、彼女の影はとてつもなく大きかった。
「あ、貴女は…!」
彼女はにやりと笑い、こんな台詞を吐いた。
「我は魔王城の門番にして鬼の頂点を極めし者、スウィーカである!魔王に挑戦するというのであれば、この私を超えてみせるが良い!」
………………。
おお…いかにもテンプレートなラノベに有りそうな台詞がとび出して来たぞ。隣の二人を見ると、可哀相な物を見る目を彼女に向けている。ははは…
アリスは嘆いた。
「鬼の四天王ともあろう者が、遂に酒の飲み過ぎで頭がおかしくなってしまったのね…。」
紫は露骨にめんどくせーなという表情をしながら話しかけた。
「萃香、馬鹿なことやってないで、さっさとどきなさい。その先に用があるのよ、私達は。」
萃香は薄い笑いを浮かべる。
「そんな事は百も承知さぁ…!ゴホンッ、魔王に仇なす妖怪ども、よくもそのような口がきけたものだ!黙っていろ!我と勇者の戦いに手をだすな!」
紫はお手上げの仕草を僕に見せる。
「あくまでもそのキャラでやり通すつもりなのね…。」
「さあ勇者よ!我と一戦、交えようではないか!!」
「やれやれ……混沌と破壊をもたらす魔王の使者よ!!我が霊剣にて滅せよ!!」
周りが固まる中、萃香は俺の言葉に一瞬目を見開いた後、嬉しそうに頷く。
「それそれ!その遊び心が大事だよ!やっぱ外の奴は違うね~!」
「萃香に気に入られたみたいね。」
その代わり仲間には萃香と同様「可哀相な人」認定され、もしかするとドン引きされたかも知れないがな。
「そうだな。でも気に入られたからといって戦わずして通れるという訳ではなさそうだ。俺はここで彼女と戦うから、紫達は先にむかっていてくれ。必ず追いつく。」
喋っている途中で俺はハッと気づく。またもやテンプレの負けフラグを立ててしまったということに。
紫は心を読んだかのようにニヤリと笑い、俺を励ました。
「それが遺言にならないように、精々頑張る事ね。」
ブォン
「さーて、いっちょやりますか!」
萃香は口調を戻した。
「口調、戻るのか…。」
「あー、この喋り方邪魔くさいし、闘う時は必要ないしね。じゃあ、そちらから遠慮なくかかってきな!!」
「おう!霊弾『スプレッドシュート』」
萃香は俺の、彼女がいる場所とは逆方向に広がっていく弾丸を見ながら酒を飲んでいる。これが強者の余裕という奴なのか…?
そして、俺の弾丸が向きを変える。
「おおっと!追尾弾か!」
萃香は戻ってきた弾丸に気がつき、なんと瞬時に姿を消した。弾丸は空を切り、空の彼方へ飛んで行く。
「消えた!?」
と、もといた場所に彼女がまた現れる。
「甘いねぇ!そんなんじゃ甘いよ!あんたは、弾幕ごっこにおいてはまだまだだねぇ。素材は良さそうなんだけどなぁ…。」
萃香は悩み始める。
「まあでも、軍人とはいえあちらの世界基準だからねぇ……。もしかするとそんなに強くないのかもしれないなぁ…………。よし!決めた。次の私のスペルカードによる攻撃を喰らわなかったら、ここは通してあげるよ。」
葉一は怪訝な表情をして、萃香に質問する。
「それはハンデ、ということか?」
萃香は首をふって答える。
「違うねぇ!これはハンデじゃなくて、『ゲーム』だよ。勿論ゲームということで、私の攻撃には攻略法が存在する。それを見つけられたら、あんたの勝ちというわけだね。」
「攻撃を喰らわない、というのは、攻撃を全て避けきる、という事だよな?」
「ああ、そうだが……。それがどうかしたのか?」
「いや、いいんだ。始めよう。」
「OK。ゲームを始めよう。忘れ去られた鬼の力、篤と味わうがいい!!鬼気『濛々迷霧』」
そして萃香は霧と化し、逃げ場を塞ぐように弾幕を展開する。
葉一はだんだん迫って来る弾幕を見据えながら呟いた。
「こりゃキツイかもなあ…。」
決闘評価
損害評価 神
時間評価 良
取得評価 神
萃香はぽかんとしながら、酒を飲むのも忘れて去っていく葉一を見つめていた。
「これは…。少し使うスペルを間違えたかもなぁ…。」
葉一は、そのスペルの「攻略法」を見つける事ができなかった。
しかし、彼はあの時、鬼の追跡をかわし、弾幕を全て避けきった。
彼自身の純粋な速さで。驚くべき反射神経で。
「天狗にも劣らぬスピード……。あんな身のこなしができるのはこの幻想郷でもそうそういないはずだぞ…。そういや、最盛期のあの庭師はあのぐらいの速度を瞬間的に出していた気がするが…………あいつは………………………本当に人間なのか???」
しかし萃香は、考えるのをやめた。今、彼の種族について考えても無駄だ、そして必要ないことだと諦める。そうして、彼女はただ笑う。久しぶりに、面白い「ゲーム」ができる相手を見つけたから。
「クックック……ハッハッハ!面白い!気に入ったよ!軍人!また勝負をしようじゃないか…。」
[時間を少し遡り、葉一とアリスが人里で弾幕勝負をしていたころ…]
ブォン
「ハロー聖、調査は進んでるかしら?」
紫がスキマを開いたのは、命蓮寺の一室。そこには聖と星が、葉一から預かった本にかかっている結界の解除をするために力を合わせていた。
「わっ!紫さんですか…。入るならきちんと玄関から入って下さいよ~。」
「あらあら、驚かせちゃってごめんなさいね。聖一人で作業中だと思いまして。」
聖は紫の来訪に驚かなかった。大方妖気を感知する結界を周囲に張っていたのだろう。そして彼女は紫に進捗状況の説明をする。
「この古本に張られた結界は三重。それぞれがかなり強力な物ですね。解析の結果を説明させて頂きますと、まず一つ目は、『不可視の結界』。霊力がない、普通の人間にはこの本自体を見えないようにする結界です。まあこれは、我々には関係のない物ですね。二つ目に、『不開の結界』。例え誰かがこの本を見つけたとしても、開くことができないようにする結界です。ここまでは私の解除魔法で、破る事ができました。」
「ここまでは、ということはまだ三つ目の結界は解除できていないのね。三つ目の結界は相当くせ者なのかしら?」
「はい、三つ目の結界は、『不読の結界』です。例え不可視の結界を解除し、不開の結界を解除しても、中身は真っ白のまま、書かれた文字は隠蔽されて読むことができないのです。これがまた強力で…。私の魔法をもってしても厳しいので、永遠亭にこれからいって来ようと思うのです。月の技術を借りようと思いまして。」
紫は聖をも困らせる結界に純粋に興味が湧いた。
「その三つ目の結界、ちょっと見せて。」
「はい。これです。」
「ん?…これは……!!」
「どうしたのですか?」
「これは博麗の結界よ!この結界の配列に見覚えがある。保証するわ。この最後の結界は、博麗神社の巫女によってかけられたものね!」
命蓮寺の二人はとても驚いている。関わってきた歴代の博麗の巫女を思い出しているのだろうか。
「ということは、この本は幻想郷で何者かによって書かれ、当時の巫女によって結界をかけられた、ということですか?」
「そうね…。私はそんな本が作られたなんて聞いた記憶ないんだけど…。まあ、中身が楽しみね。にしてもこの結界、三つ目だけ巫女にかけられたみたいね。私が一つ目の結界を見たとき、気付かなかったもの。」
星は昔、巫女と戦った時の記憶を思い出して苦笑いしながら言う。
「巫女の創りだす結界は超強力ですからね…。よっぽど他人には読ませたくなかったのでしょう。とはいえ、巫女に依頼するとかなりの額を取られますからね…。全てやって貰わなかったのも変に人間味があって頷けます。」
紫はうんうんと頷く。
「それならば……聖、永遠亭に行くのは止めて博麗神社に向かってくれるかしら?私は急ぎの用があってついていく事は出来ないけど、本社に博麗大結界について書かれた本がしまってあるはずよ。」
「その本に似たような結界の解除方法が書いてあるということですね?わかりました。行ってきましょう。星、貴女も来る?」
「はい。」
紫はスキマを広げ、妖怪の山に出口を繋げる。
「ありがとう、恩に着るわ。」
ブォン