東方妖々続伝〜outside and inside. 作:みかんでない
罠 ーSTAGE5ー
BGM:天衣無縫
葉一と別れた紫とアリスは、天界を歩きながら、ある人物を探していた。
その人物は、以前にも紫達と対決したことがあり、古くからの因縁のような存在だった。
「あいつ、いないわねぇ…。」
とその時、どこからか懐かしい台詞が聞こえて来る。
「天にして大地を制し、地にして要を除き」
ゴゴゴゴゴゴゴ
「人の緋色の心を映し出せ。」
地が揺れる轟音と共に、今回の異変の犯人、比那名居天子が現れる。
「ふうん?懲りないですわね、貴女も」
天子は紫を睨む。
「今の私は、もう以前の私とは違うのよ…。地上の妖怪風情が敵うと思うな……!」
「言うわね、だったら見せて貰おうじゃないの!何が違うのか、ね」
彼女は心底嬉しそうに笑った。
「アッハハハ!!今日この日を待ち望んでいたわ!私の強化スペカ、今こそ見せてあげる!緋想の剣よ!その形、負の気質を纏いて雷龍と化せ!」
ゴゴゴゴゴゴゴ
天子が剣を天に掲げると、辺りは黒雲に包まれる。そしてその雲が、剣を中心に寄せ集まって龍の形を成す。
「アハハハハ!この龍は人々の負の気質を集めて造った邪悪の化身よ!あんたらには絶対に打ち破ることはできない!!」
そう、それは人々の負の感情と、天子の霊力をエネルギーに動く巨大な黒い龍だった。
「天子のサーヴァントか……。厄介ね。恐らく龍単体の力では私達に劣るでしょうが、天子と組んでいるからそうとも言えなくなったわよ。」
「とにかく、葉一が来る前に、あのでかいのだけでも片付けましょうッ!」
「ええ、楽園に災厄を齎す者、美しく残酷にこの大地から往ね!」
紫も随分懐かしい台詞をぶつけた。
「緋想の剣よ!大地を揺るがせ!」
ドドドドドド
雷龍が地震を起こす。余りにも衝撃が大きく、地上に立つことは不可能になった。
「アリス、飛んで!奴の弱点、コアを探す!」
二人が雷龍を追って空に飛んだ瞬間、天子はニヤリ、と不気味な笑いを見せる。それは、計画通り事が進んでいる、即ち決定づけられた勝利に嫡嫡と近づいているという彼女の確信だった。
「飛んだわね……!これで我が勝利は絶対の物となった!ラストスペル発動ッ!『全人類の緋想天』始めから全力でいくわ!」
「奴のコアは恐らく緋想の剣よ!内側に潜るわ!」
バァーン
「??今、スペカの発動音がしたような……?」
ゴアアアア!
ドキューン!
その時、雷龍の口から極太レーザーが発射された。
「赤レーザー!紫!回避して!!」
「くそ、飛行じゃ間に合わない!!スキマ!」
ブォン
紫は取り敢えずスキマに身を隠した。
「身体強化!これで取り敢えず逃げ切れるっ!」
アリスは身体強化魔法で、スピードを瞬間的に上げた。
「チッ、コアの周りがどす黒い雲に覆われて、全く視認できない!一時撤退を……!?」
なんと気づいた時には、既に時遅し。星々が煌めき、母なる地球、幻想郷は遥か真下にあった!
「紫ッ!いつのまにか周りが宇宙だわ!」
ブォン
「一杯食わされたわね…。これはおそらく、天子のラストスペル、『全人類の緋想天』が発動しているのよ。さらに、あのコアとなっている剣は天子のいわば霊力の器のようなものであり、叩くことができない。そして弾幕ごっこのルールで、弾幕結界が周囲に張られ宇宙に隔離されてしまっている…。これは地上の天子が力尽きるまでの、ほぼ時間無制限の耐久スペルよ!」
ドキューン!
二人はレーザーを避ける。
「そんな……。なんとか切り抜ける方法はないの!?」
「私のスキマでも抜けられそうにないわ!弾幕ごっこ中だから、結界で抜け出せないようになってるの!」
そこで紫は一呼吸置く。
「でも、一つだけ希望がある。私達は彼を信じ、その時まで弾幕をよけ続けること。それが今私たちに出来る、最善の方法よ!」
天の娘、地の神、人の心 ーSTAGE6ー
BGM:有頂天変~wonderful heaven
天子は雷龍と眼を同期させ、必死に逃げ回る紫とアリスを笑いながら見つめていた。
「アハハハハ!永久に弾幕ごっこをしていてもらいましょうか、紫!」
そこに、ある男が到着する。
「おい…。あんたがこの異変の元凶だな?」
「ん?人間…?貴方、面白い気質を持っているわね。どうやってここまで来たの?」
「質問を質問で返すなあ~っ!!疑問文には疑問文で答えろと幻想郷では教えているのか?俺が『異変の元凶か否か』と聞いているんだッ!」
「ふーん、予定外ね…。まあ人間如き、すぐにやれるでしょう。
そうよ!私が異変の主にして天界の支配者、比那名居天子よ!」
「早速だが紫とアリスはどこに行ったんだ?」
「ハッ!あいつらの仲間か、あんた!なら容赦しないわよ!あいつらはねぇ、今頃無限耐久スペルを攻略しているところよ!」
「無限耐久スペル……?なんだそれ?」
天子は驚く。何故耐久スペルも知らない奴が、こんな所までたどり着いたのか、と。
「耐久スペルも知らないの!?なんでこんなとこにきてんのよ!」
葉一は痛いところを突かれ、強引に話を進めた。
「なんにせよ俺はこの異変を解決しに来た。あんたが異変の主なら、戦わなくてはならない。」
天子は葉一を煽った。
「あんたが?私の異変を?ムリムリ、止めときなさいよ!だいたいあんた、どーせ紫達にくっついて来ただけでしょうが!私は紫を苦しめられればそれで十分なのよ!!私の気が変わらないうちにさっさと帰りなさい!」
「断る。紫はともかく、アリスまで巻き込むのは許せん!それに、友人を見捨てるのは文字通り『寝覚めが悪い』からな。」
彼自身を信じる者の為に、葉一は戦うことを選択した。
「そう……。精々自分の愚かな選択を、地獄で悔いることねッ!」
天子は瞬時に要石を構え、赤レーザーを撃つ。
要石レーザー!
瞬時に決着がつくだろうと、その時天子は確信していた。こんな弾幕初心者なんかに、天人である自分が負ける訳無いと。
だが、現実は大きく異なった。
「何処を見ている?」
「は?」
天子は振り返る。
真後ろに、ハンドガンを構えた葉一がいた。
天子は信じられなかった。ただの人間の動きに自分がついていけなかったことに。
そのまま葉一は弾丸を撃ち込む。
ダンダン!
天子は衝撃で片膝をつく。
そして、葉一は跳んで距離をとる。
「やったか……?」
天子は立ち上がり、鬼の形相で葉一を睨みつける。
「この私に怪我を負わせ恥をかかせるとは!!人間如きが……許さないわ!」
「流石に天人といったところか…。やはり、厳しい耐久戦になりそうだ…。」
「要石『天空の霊石』乾坤『荒々しくも母なる大地よ』霊想『大地を鎮める石』天地『世界を見下ろす遥かなる大地よ』!!!」
「げっ!そんなの有りか!?」
スペカの連続発動。それは卑怯な手段だが、それをルール違反として取り締まれるほど、葉一は弾幕ごっこのルールに詳しく無かった。
今までとは桁違いの量の弾幕が迫って来るが、葉一は一つ一つ丁寧に、弾幕を避け始める。どういう訳か彼の身体に染み付いた弾幕の感覚が、彼を反射的に動かしていた。
そして、葉一は何かを回想していた。
(不思議な感覚だ…。弾幕を避けていると、妙な既視感が沸き上がってくる…。というか既動感、か?思い出せ葉一…。忘れた何か、今必要なはずの何かを、記憶の底から掘り起こせ…。)
弾幕はどんどん激しくなる。
葉一の動きも、いよいよ人間の限界に到達しようとしていた。
(遠い記憶…。僕は弾幕ごっこを、以前したことがあったのか?いや…。そんな馬鹿な。第一僕は、幻想郷に来ていないはずだし、僕の知る限りでは…。)
葉一は、妖怪レベルのスピードで、弾幕を避け始めている。しかし、いくら葉一が速く弾幕を避けても、弾幕は崩れぬ壁のように積み重なり、ついに葉一は押されはじめた。
「まだまだ小手調べよ!!」
その瞬間。
葉一に、全てが流れ込む。
それは、とうの昔に無くした記憶…。
(『今からお前の記憶を封印する。』
記憶の中の祖父は、優しい人だった。
『なんでですか!僕、貴方との思い出が無くなるなんて嫌ですよ!』
二人はとある、綺麗な庭で話していた。
『いずれわかる日がくるだろう。お前も、いつかここに……幻想郷に再び足を踏み入れる日が来るはずだ。それまで記憶を封印するってだけだ。大した事じゃあないさ。』
『どうやったら記憶は戻ってくるんですか?』
『記憶を取り戻す引き金はお前が幻想郷に来て、始めてピンチになった時。その時、お前は全てを思い出すだろう。自分が何者なのかを、そして何処に帰るのかを!!』
バチッと魔法を使う音がして、視界が暗転し、記憶は封印される。
『さらばだ、我が孫よ!!』
小さい時のこと…。懐かしい記憶だ。今まで幼い時の記憶は外で生きるには不便だ、必要ないと彼が封印していたが、自分が何者かで、何のためにここに来たのか、思い出してしまった以上は仕方ない。必ずあの場所に到達する。俺の目的を果たす為に!!!)
ピチューン!
葉一は、ついに被弾してしまった。そして彼は、そのまま大地に倒れ込む。
続くぜ!