東方妖々続伝〜outside and inside. 作:みかんでない
後日譚 蘇った魂
「宴会。それは、酒の注がれる音である。肴を摘む箸の音でもある。そして、一発芸に笑っている、声でもあると思う。
強者も弱者も、勝者も敗者も、近い人も遠い人も、仲良しも知らない人も、皆で集まって、呑む。そこに、法は存在しない。自分の好きなように、呑んで遊べばいいのだ。
そうして、宴会が終わった後には、名残惜しそうに、会場の方を振り返りつつ去っていく。
ある、有名なスタンド使いの言葉を借りるならこうだ。
『パーティーだとか反省会だとかそんなちゃちなもんじゃあ断じてねぇ もっと奥ゆかしい、大人の片鱗を味わったぜ……』」
「おおおっ!」
「やりますねぇ!」
「やっぱ外の奴は違うねぇ~!」
こちら、魂魄葉一である。説明するのが面倒だったので妖一という名前は使わないことにした。故に、僕の本当の種族を知る者は先程までは以外と少なかったが、文が号外を宴会でばらまいたせいで来ていた全員に知られてしまったが勿論、温かく受け入れて貰えた。
そして絶賛、酔った妖怪達に絡まれ中である。
「ここでジョジョから引用してくるとは…なかなかやるじゃない!」
文や河童が何故、このようにテンションが高いのかというと、それは勿論、鬼の卓に座ってしまったもとい座らされてしまい、人間なら致死量レベルの酒を飲まされたからである。
萃香の酒は無尽蔵だ。故に、人に飲ませるのにも遠慮がないらしい。更に今日は、地底から別の鬼もやって来ていて、彼女の持っていた杯の能力で宴会用の普通の酒が純米大吟醸酒に変わった為、非常に美味しい酒をいただいた。挨拶した時に萃香と二人でにやにや笑っていたように見えたのは気のせいだと信じたい。何やら「決闘が云々」という言葉が聞こえてきて尚更びびっているところだ。
そして今、鬼の魔の手が葉一にも迫ろうとしていた。
「飲めや唄えや、あはははは!」
そして間一髪、反対に座っていた紫のげんこつがスキマから降って来る。
「飲ませすぎよ!この酒飲みが!」
「むっきゅん!」
萃香は倒れた。
どうやら紫と萃香には、切っても切れない腐れ縁が有るらしいが、本人達はそれを大事にしているらしい。きっと相当長い付き合いなのだろう。
そういえば、と紫は思い出したように聞く。
「いつのまにか貴方、半霊を連れて居るわね。何処から出したの?というかそれ元々身体に仕舞ってたの?」
「あー、これね。別に俺から分離した訳じゃなくて、白玉楼に行ったときについてきたんだ。気に入られたみたいでね。」
「ふうん。ところで葉一、先程からさとりが貴方の方を凝視してるんだけども何か心当たりは?」
紫は笑顔だ。
……しまった。
この半霊の秘密を隠し通そうと思ったが無理らしい。流石スキマ妖怪、隙が無いな。
「紫、悪いんだが俺とさとりと紫自身を一緒に外にスキマで出してくれないか?あまり公にはしたくないんでな。」
紫はそれが何か重大な事だと悟ったらしい。黙って頷くと、僕等を外に移動させた。
月明かりで外は明るかった。
紫と、訳もわからずいきなり外に飛ばされて、混乱しているさとりに今から見せることを決して、多言しないで貰えるかと頼んだ。
さとりは先ほどの件でよほど驚いたらしく、マシンガンのように言葉の弾幕を浴びせてきた。
「あれ、どういうことなんですか!?何故貴方の中に、魂が二つ存在しているのですか?長年心を読んできた私でも、魂を二つ持つ肉体なんて初めて見ましたよッ!」
「これからおこることを見ていたらわかるはずだ。」
さとりはああ、そうなんですかと落ち着いた。これが長い間生きてきた妖怪の余裕なのだろうか。
俺は話し始める。
「俺の持っている霊刀『夢現』の能力…。それは霊体や、思念がこもった物を斬る事で発動し、この剣の使い手自身にその霊、又は思念の持ち主を憑依させる。そしてその憑依した人物の生前の容姿を再現し、精神を入れ替えることが出来るんだ。」
「ふむ、話を砕くと死んだ人を蘇らせる事が出来る、ということね。貴方の能力は『癒す程度の能力』、だったかしら。中々お似合いじゃない。」
「そういうことだ。で、今から実際に死者蘇生をやって見せる。対象はこの霊だ。」
そういうと葉一は、静かに剣を抜いて、斬る。
葉一の肉体は視覚的に変形して、精神もその霊と入れ代わった。
「そういう事です、紫様。愚弟ですが、よろしくお願い致します。」
現れたのは白玉楼の庭師、魂魄妖夢だった。彼女は三途の川を超え、地獄の裁判を終え、輪廻の中冥界に霊として戻ってきていたのであった。
彼女は若い頃と変わらぬ容姿をしていた。そして、幽々子が彼女の墓に一緒に埋めた、二振りの剣を背中に背負っていた。
紫は少し驚くが、すぐに普段通りに戻ってしまう。
「あらあらあらあら。見事、冥界に辿りついたと掛けまして、生き別れの弟と再開したと説く、ということね。うふふふ…。」
「紫さん、その心は」
「どちらも彼岸(悲願)の先に有り、ということよ」
妖夢はハハハと笑う。
「紫様は変わってないですね…。我が主もお元気そうで何よりです。最も、私を失った事でまさか100年も家に篭られるとは思いませんでしたが。」
「妖夢…。幽々子に会わなくていいの?彼女、喜ぶと思うわよ?」
「それでは、前の二の舞です。いつか妖一を失った時、幽々子様は二倍の悲しみを抱える事になるでしょう。若年者の私が言えた事ではありませんが、別れを乗り越える事も大事な事ではないでしょうか?」
「うふふ、その通りね。わかった。幽々子には黙っておいてあげるわ。」
「私も、決して妹やペット等、外部には決して漏らしませんので。四人の秘密ということにしておきましょう。」
「お二方、有難うございます。それでは私はこれで。」
妖夢がそう言うと、葉一が肉体に戻って来る。
「そういう訳で、よろしく頼む。それはそうと、さとりはともかく、紫はあまり驚かないんだな。」
「ええ、まあね。薄々察してはいたから。幽々子ももしかしたら、既に感じているかもしれないわね。既に死んだ人の気配が身近にあることを。」
心なしか、もともとほんのり青白かった半霊の色がさらに青くなったように見えた。
「げっ……確かにあるかもな…」
「紫ィ~!何やってたんだい?」
「秘密よ、秘密。」
「ええ~」
その後、宴会は順調に進んでいった。
一人、二人と寝たり、帰ったりして段々、宴会を楽しむ連中は減っていった。
「ようむう~」
「!?」
驚いて横を見ると、幽々子が机に突っ伏していた。
「いつも通り…あるてぃめっと盛りで……むにゃ」
寝言だった。夢を見ているらしい。
まあ、せめて夢位は見せてあげよう。
葉一はそう思い、上からタオルケットをそっとかけた。