東方妖々続伝〜outside and inside. 作:みかんでない
続いて、二つ眼がついた帽子を被った少女が立ち上がった。彼女のネームプレートには、「神」と書いてあった。
「私ね。私は守矢諏訪子、守矢神社に祭られてる神だよー。えーっと能力は、坤を創造する程度の能力でー、貴方と同じように昔外の世界からやって来たんだよー。今度遊びに来てねー。」
「彼女が祭られている神社は、妖怪の山という所の頂上にある神社で、危険も有るから昔は中々参拝に行けなかったのよ。まあ私なら能力使えば何時でも行けるけど」
もう大抵の事には驚かないけど、随分フランクでフレンドリーな神様だな…今度その神社を訪れてみようか。
次にさとりが立ち上がった。彼女のネームプレートには、「最恐の妖怪」と書かれていた。
「あらためまして古明地さとりです。私は普段地底にある地霊殿に住んでいるので、今度遊びにでも来て下さい。妹が喜ぶと思いますし、私も貴方のような博識そうな人とは話してみたいと思いましたから。」
紫は僕にしか聞こえないような声でこっそり言う。
「彼女の持つ心を読む能力のせいで、彼女を嫌っている妖怪も多いのよ。どうやら貴方は良い人間として彼女に認められたようね。まあ地底は遠いし危険だから今度スキマで送ってあげるわ。」
確かに心を読まれる、ということは、戦闘においては致命的で、敵に回したくない人間も多いだろう。裏を返せば味方にいると大きなアドバンテージを得られるということだ。彼女が好意的な妖怪で良かった。うむ……、いかん、なんでも戦闘に結び付けてしまうのが僕の悪い癖になってきつつある。これも戦争のせいか……。
そして、髪を紫と金の綺麗なグラデーションにした優しそうな女性が立ち上がった。その人のネームプレートには、「僧侶」と書かれていた。
「私の番ですね。私は聖白蓮。人里のそばにある命蓮寺という寺の僧侶です。後日あらためて挨拶に来ていただけると嬉しいです。」
「彼女はこう見えても魔法使いという種族の妖怪で、彼女の身体能力は魔法による強化をする事によって目茶苦茶に高くなるらしいわ。私は戦ったことないから知らないけど」
そうなのか。日本の尼さんとは全然違うな…。髪を切ってないどころか染めてるし。てか地毛かもな…。ここだったら有り得る。そもそも妖怪の中にも仏教を信仰している人がいるというのが意外だ。多分この人は妖怪の中でも相当イレギュラーに違いない。名前に「聖」とか入ってるし。
「紫さん、今度手合わせしますか?」
「……遠慮しておくわ……」
次に、ヘッドフォンを付けて、薄いブロンズ色の髪を猫耳の様に上で二つに分けて固めた髪型をして、先程の閻魔の様な笏を持った隣の女性が立ち上がった。彼女のネームプレートには、「仙人」と書かれていた。
「私の名は豊郷耳神子。最近はたまに人里で道教を教えたり、説法をしたりしている。普段は仙界というこの世界と連結した異世界の様な所に居るぞ。今の日本についても興味が有るから又の機会にご教授願いたい。」
「彼女の能力は十人の話を同時に聞く事が出来る程度の能力で、彼女が付けているヘッドフォンは音が聞こえ過ぎないように調節する為の物らしいわ。彼女の事は貴方も習ったことがあるのではないかしら。」
10人の声を聞き分けたといわれ、豊郷耳神子と呼ばれる人物……それは間違いなく今から3000年近く前に生きていたとされ、日本の発展に貢献したあの人物に違いない。しかしそうなると疑問が残るな。
「あの、聖徳太子さんですよね、飛鳥時代の。」
「ははは、昔はそんな名前で呼ばれたこともあったな。」
「貴方は女性ですよね?」
「そうだがそれがどうかしたのか?」
「聖徳太子ってたしか男性じゃありませんでしたか?」
豊郷耳は可笑しそうに笑う。
「ああ、なんだそういうことか。後の世の人は私のかどうかも分からない肖像画を見て勝手に私を女性だと決めつけたようだが、それは私ではなく、私の当時の側近なんだよ。日本が今教えている歴史には間違ったところがあって、私の性別もそのうちの一つというわけなのさ。」
凄いことを聞いてしまった……。とすると日本が2000年以上に渡って教えてきた聖徳太子についての説明は間違っていたということなのか……。
これで一応一周したかな。でもまだ来ていない人がいるな。席がポツポツ空いてる。
「それはですね、いろいろ理由があって来ていないのですよ。」
とさとりが言った。
「紫さん、空いている席に関しての説明をお願いします。」
「わかったわ。まず、あの『吸血鬼』と書かれたネームプレートがある席だけど、彼女はレミリア・スカーレット。まあ書いてある通り吸血鬼よ。彼女は自分の意思で幻想郷から出ていってしまったの。彼女が出ていった理由は二つあるらしくて、一つは大切な人間を亡くしたこと。もう一つは知らないわ。次に、その隣、『冥界の姫』と書かれたプレートよ。彼女の名は幽々子。彼女もまた、大切な人を亡くして100年間の喪中に入っているの。だから今日来てないのよ。」
「100年!?流石寿命の長い妖怪だな…。」
「彼女は妖怪ではないわ。亡霊よ。だから寿命なんてないようなもんね。」
亡霊か。足はあるのかな…。それにしてもこの幻想郷、本当に沢山の種族がいるらしい。
「続けるわね。次に、そこの空いている席。彼女は当代博麗の巫女、博麗霊真の物よ。」
「博麗の巫女?」
「この神社の巫女よ。この神社の名前は博麗神社。博麗の巫女は代々幻想郷を外界と隔離している結界の守護者なの。ちなみに私も結界の管理に関わっているわ。幻想郷にとっては必要不可欠の仕事なのよ。」
紫の説明を聞いて、俺は一つの疑問をおぼえる。
「なぜそんな重要な人間が今ここにいないんだ?」
「実は、彼女も外に出ているの。彼女は外界で次の代の博麗の巫女を見つけるつもりらしいわ。後これは私が個人的に頼んだことなんだけど出来れば戦争を終わらせる手助けを向こうでしてきてって言ったんだけど……。私の能力の調子が悪くて変なとこに送りだしちゃって、行方が分からないのよ。」
完全に貴女のせいだろ、それ……。
「まああの子は強いから私が何もしなくてもひとりでに帰ってくるでしょうけど。」
よっぽどその霊真という子は信頼されているんだな……。
「紫、私からもいいかな?」
とその時諏訪子が口をはさんだ。
「ええ、いいわよ。」
「葉一、さっきも話したと思うけどー、私は守矢神社の神様をしているんだけど、実は守矢神社にはもう一人の神様と、巫女がいるんだー。守矢の二柱とその風祝ってね。その二人も訳あって地上に出ているんだ。私はお留守番ってわけー。」
そうなんだ。巫女さんや神様が今のご時世で何をしているのかというのが少し気になった。
「そういや紫、まだ大事なことを話してもらってないぞ。」
「あら、何かしら」
「そろそろ僕がこの幻想郷に呼ばれた本当の理由、教えてくれないか。」
「そうね。皆に話さなくてはならないこともあるし、今からこの会議の本題に入っていきましょうか。」
そう紫は言った。
俺が一息ついた瞬間、またも謎の感覚が起こる。
『私は貴方がここに来るのを、永遠に待っているわ。』
その女性は美しかった。だが、肝心な顔はぼやけてしまいよく見えない。
記憶の断片だろうか……?そして、何故このタイミングで……?