東方妖々続伝〜outside and inside. 作:みかんでない
紫はスキマに円形テーブルと椅子をしまうと、変わりに長くて背が低いテーブルと座布団、酒や肴を出した。
「今日はこの会議の幹事である私の奢りよ!」
「酒だ酒ー!」
そういって飛び出したのは鬼の萃香である。彼女は本当に酒が好きなのだろう。会議前も飲んでいたが、二日酔いをしないのだろうか…。
「鬼は種族的にうわばみなんです。彼女らを二日酔いさせようと思ったら、酒瓶の100本や200本では済まないでしょう。」
さとりが俺の心を読んで答えた。しかし危ない種族だ…。飲み比べなんかしようものなら、確実にこっちが潰れてしまう。かといって断るというのも相手に悪いし…。
そんなことを考えながら、俺は近くの座布団に腰を下ろした。
「ふーっ、やっと終わりましたか。」
そう言って会議場に入って来たのは、例の新聞記者である。どうやら外で会議終了を待っていた連中が居るらしく、何人か入って来て宴会に加わった。
「ああ、一緒に飲まないか?」
「ええ、すみません。お邪魔します。」
文は俺の反対側に座り、ペンと手帳を取り出した。
「会議に参加しなかったのか?」
「ええ、私達が住んでいる地域の代表は諏訪子さんですから。後で彼女から説明を聞きます。それでは早速申し訳ないのですが…取材をさせていただいても?」
「OK、いつでもどうぞ。」
文は酒に一口手を付けて取材を始める。
「まず年齢と職業を教えて下さい。」
「年齢は22歳、職業は軍人だ。」
「ふむ、22歳、軍人と…。ということは外は戦争中ですか?大変ですねぇ。」
「ああ、色々とな。」
「じゃあ二つ目の質問です。今外で流行っているものは何ですか?」
「日本の流行って事か…?50年ぐらい前まではVRゲームという物が大流行してたな。」
「してそれとは?」
「バーチャルリアリティ…仮想現実って奴だな。まるで自分自身がゲームの世界の一人になってしまったかのような体験が五感で味わえるらしい。まあ今は戦争中だしそれらの金属製品は全部熔かされて武器や基地の材料に変わっちゃったけどな。残念だ。」
文は手帳に凄いスピードで俺の話したことを書き留めている。かなり手慣れているようだ。
「漫画はありますか?」
「漫画?まだあるぞ、全て電子化されたけどな。」
「おお、それは嬉しいですね。私、外の世界の『ジョジョの奇妙な冒険』という作品のファンでして…最近よく単行本が幻想入りするので、外の世界でもしや、漫画という文化が忘れ去られたのではないかと思いまして…安心しました。」
「ジョジョか…俺も昔よく読んだなあ…。結構ハマってたんだよ。」
「えっ、貴方もファンなんですか!ジョジョって今外ではどんな感じになっているのですか!?」
「俺は13歳の時にジョジョを知ったけど、何せあまりの人気で中々連載が終わるに終われず、読んでも読んでも最新巻に追いつかなくてさ…。読むのを止めちゃったんだ。」
「因みに今は何部がやってるんですか?」
射命丸文は少し引き攣った顔で質問した。
俺が覚えている数を答えようとすると、彼女はそれを止めた。
「やっぱり遠慮します。聞くのが怖いですから…。作者、やっぱり究極生命体なのかな……。」
そうか…。そういえばさっき漫画の話をし始めた時から、妙にあちらこちらからの視線が有る気がする。単に外来人が珍しいってだけかもしれないが、文も先程、貴方「も」と言っていたしきっとこの世界には他にも漫画好きやジョジョラーが居るのだろう。
「ところで文、取材の方は良いのか?」
………………。
「ハッ!失礼しました。つい夢中になっちゃって…続けましょう。何か能力はありますか?」
「ああ、癒す程度の能力だそうだ。だがついさっき知ったばかりで、自分でも使い方がイマイチわからない。」
「強く念じればわかるかも知れませんよ?」
「わかった。やってみるよ。…………。」
心に「能力」と強く念をかけた。すると奇妙な事に心に言葉が浮いてきた。
「えーっと、生命体の怪我、病気を治癒させる。死体を蘇らせる事と、自分を回復することはできない。だそうだ」
「これは…ヒーラーですね。パーティーに一人欲しい能力です。」
文は、自分と同じような事を考えていたらしい。
「だがッ……イマイチ応用性がないよなあァ~ッ、この能力ッ!」
「ジョジョですね!?その喋り方ッ!」
俺の能力は正直ここ、異世界では使いにくいと思っている。何せこの能力、攻撃目的で使う事ができないのだ。まあその分は素の武力と武器で何とか補うって感じだが…。幻想郷にも通用するといいのだが。
「あ~、私にもスタンド発現しないかな…………ハッ!またもすみません。ジョジョの話になると盛り上がってしまう性質でして。」
「楽しいから全然いいよ。それより文の能力は何なんだ?よろしければ教えてくれないか?」
「私の能力は風を操る程度の能力です。」
風…………ワムウッ!いかん、頭がそっちの方向に…
「程度のをつけるのはルールなのか?」
「知らないです。そんなもんだと思ってください。」
「そうか。」
「ところで葉一さん、これから幻想郷巡りとかされる予定はありますか?」
「ああ、一度は行ってみるつもりだが…。どうかしたのか?」
「幻想郷にはもちろん友好的な妖怪も多いですが、排他的な種族や攻撃的な妖怪もいます。幻想郷を回るには、自衛という観点から見るとその能力だけだと少し不安ですね。」
「まあ確かに…」
「そこで身を守ってくれるのが、スペルカードです。」
「すぺるかーど?」
「そう、スペルカード。幻想郷での争いや揉め事、異変などはほぼ全て弾幕ごっこによって解決されます。その弾幕ごっこのルールとして、スペルカードルールという物が存在しているのです。」
「まてまてまて。一つづつ解説してもらっていいかな?まず、異変ってなんだ?」
「異変は、まあ戦争とかテロとかと同じようなもんですね。幻想郷の妖怪が異変を起こし、巫女がそれを解決する。」
「あれ?でも今って巫女は不在なんじゃなかったっけ?大丈夫なのか?」
「私にそれに対応できる案が有るわ。」
突然、隣の空間がさけ、杯を持った紫が現れた。
「ああ、紫さんですか。それで?その案っていうのはどういうものなんですか?」
直感でわかった。紫は何かまた企んでいる。
「I have a bad feeling about this.」
「葉一に巫女の変わりをやってもらう。」
見事的中した己の勘を褒めるに褒められない。
「やっぱり~。でも俺はその弾幕ごっこっていうのできないぞ?どうすんの?」
「今から練習しましょう。」
そういうと紫は、俺を外へと手招きした。
「私も行きますよ~!その人の弾幕やスペカも取材のうちです!」
「よし、外に出るか。」
紫を追って縁側に出ようとした瞬間。
俺の視界は暗転し、意識を飛ばされた…。