東方妖々続伝〜outside and inside.   作:みかんでない

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この話はこれから起こる異変の主犯達の話になります。主人公とは別サイドです。


暗雲

無縁塚、数日前にて…]

 

ここは無縁塚、外界との境目である。外の世界のガラクタが色々落ちているので、普段は道具や機械、研究好きの変わり者がまだ見ぬテクノロジーを求めてやってきているのだが、今日はコレクター達は誰も来ていなかった。かわりに一人の少女が、咲き乱れた彼岸花を見ながら佇んでいた。

「全く…人間というのは困った生き物ですね…。意味のない争いを何度もこう繰り返して…。」

「今回の量は前回やその前、いや今まで何回か起こったこの類の異変の中でも量が多い方ですもんね。映鬼様が呆れるのもよくわかりますよ。」

「同僚の閻魔から聞いたところですが何やら二つの大きな国が衝突した事でこんなことになってしまったらしいのです。全く…幻想郷の人々は能力の使用制限でただでさえ混乱しているというのに…。まあ皆もそろそろ慣れてきた頃合いだとは思いますけどね」

「それにしてもあたいは外の世界の事情がこんなにもこちら側に影響を及ぼすとは思ってませんでしたよ。まあそのおかげで古くなった工業製品がこちらにどんどん流れ着いて幻想郷も工業化が進みあたい達も暮らし安くなったんですけどね。」

「私はこのまま幻想郷と外界の区別がつかなくなり幻想郷としての個性が失われてしまうのではないかと心配でなりません。」

「それは問題ないんじゃないですか?こちらの世界でも僅かですが魔法の道を志している者も居ますし、何より自転車や自動車が幻想入りした今だって、皆の交通手段は『飛ぶ』事じゃあないですか。そう簡単には消えたりしませんよ。」

「それもそうですね。………………ところで小町、貴女仕事はどうしたのですか?まさかここに『サボり』に来た訳ではありませんよね?」

いつのまにかもう一人、大きな鎌を担いで立っていた少女は、彼女の目論みがばれたことに驚いてしりもちをついた。

「きゃん!で、でも映鬼様だってこんなとこで休んでいるじゃないですか!」

「私は今は非番です!!」

「ファッ!?」

「さあさあ、お説教は後でたっぷり差し上げますから、さっさと仕事に戻りなさい!」

「直ちに!サー!」

小町は慌ててたちあがると、地面に突き刺していた死神の大鎌を引っ掴みながら彼岸へとかけていった。

「全く…私が目を離すとすぐこれです…。帰ったらみっちりお説教しないといけないようですね。」

 

そうブツブツ文句を垂れながら地獄の閻魔、四季映鬼は生者に説教という名の粗探しをするために外界へと歩いていった…。

 

 

 

[天界、会議同時刻にて…]

 

「あーマジイライラするわー」

天子はハブられていた。

「あんのクソババア……私になんで幻想郷の首脳陣を揃えて会議をやるなんて教えてくれなかったのよ。」

「しかもさっきちょっと覗いてみたらあいつが嫌っている覚り妖怪ですら呼ばれてるじゃない!!」

天子は悔しそうな表情をしながら、苛立ちを隠せずぐるぐる歩き回った。

「今あそこに飛び降りて大地震を引き起こしてやっても良いんだけど……鬼とか月人とかいるからなぁ…全てを敵に回したら確実にこっちがボコされるんだよなぁ…。今日は命拾いしても次会ったときは潰してあげるわ、紫」

以前の彼女ならば、人数など関係無しに感情の赴くまま猪突猛進に仕掛けていただろうが、経験を経て彼女は少し行動に対して慎重になったようだ。

そこに誰かがうふふと笑いながらふわふわとやって来た。

「でも総領娘様があの妖怪に勝てたのって全然数ないじゃないですか」

「なっ、うるっさいわね!竜宮の遣いの癖して!確かに一番始めに地震起こしてあいつに喧嘩売ったのは私だけど、それでもいくら私達が長生きだとはいえ1500年たった今まで嫌がらせすることはないじゃない!」

彼女は以前、異変を「退屈だったから」という理由で起こした事があり、更に幻想郷を支配下に収めようとしたため、紫にきっちり〆られていた。

「それは総領娘様があの時以来事あるごとにあの妖怪を煽るからではないのですか?もっと歩み寄る努力をしたらどうです?」

衣玖の正論に、天子は何も言えなくなり黙り込む。

「………………!」

「そ、総領娘様?どうかされたのですか?固まってますけど」

「そうよ…なんでこんな簡単なことに早く気付かなかったのかしら…!」

「?」

「衣玖、ムカついたから異変起こすわ」

「異変、ですか…。ですが巫女は今外界にいて、幻想郷内は色々と混乱しているらしいですけど。」

「それだから良いのよ!!」

衣玖はその台詞を満面の笑みを浮かべながら吐く天子の事を、心底ゲスだと思った。

「そうね、前の時は退屈だったから異変起こしたけど、今回の私は一味違うわよ。幻想郷を緋色の雲で覆い隠して、ゆくゆくは紫の胃に穴を空けてあげるわ!!」

一人で紫をぶちのめす想像の世界に入ってしまった天子を見ながら、衣玖はため息をついた。

「今度も紫に大敗して、大泣きする彼女の未来が見えますわ…。全く、少しは大人になってくだされば良い物を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[???、???]

 

ソイツは椅子に座り、何もない空間を見つめていた。いや、ただ眠っていただけなのかもしれない。

椅子の隣には積み上がった大量の魔導書が、向かい合った机には数枚の何か書かれた紙が散乱していた。

机にある時計だけが、この空間の中でひたすらに動き続けていた。

「そろそろ時間だな。今日も試すか。」

そういうとソイツは、急に立ち上がって魔法の詠唱をする。すると正面にヒトガタが浮き上がり、だんだん形を成してとある人物が姿を現す。

 

 

「あら?ここは何処かしら?」

「おおっ、マジィ!?懐かしい奴が現れたもんだな。」

「えっ?貴方は…そんな…」

「いやあ、私のランダムな魂に形を付ける魔法を毎日使い続けたかいが会った。それでもまさかあんたがやってくるとは思ってなかったがな…」

「そういうことですか。貴方、私を蘇生したという事ですね。大した事をするようになったわね。貴方も。」

「うーん、正確にいうと違うんだ。あくまで魂を見えるようにしただけであって、また見えなくなるまでには制限時間が有る。固有の能力も使えないはずだ。まあその時間まで、ゆっくり昔話でもしようじゃないか。」

「貴方は生前から変わってないのね。」

「ハッ、一度死んだみたいに言うなよ。まあ、死にたいと思うときは有るけどね。」

「ところで折角だし紙とペンはないかしら?」

「ああ、手紙でも書くのか?あの吸血鬼にはもう二度と会えないと思うけどな。」

「まさか…」

「そのまさかなんだ。あいつは幻想郷を去ったよ。さあ、どうする?手紙を書くのか?書かないのか?」

彼女は少し考えてから言う。

「書くわ。そして貴方に預ける。貴方ならいつか、あの人の元に届けてくれると信じて。」

ソイツは一瞬悲しそうな顔をするが、彼女はそれに気付かなかった。

「あまり期待はするなよ?私は1500年程ここにいるんだぞ?もしかしたら、私が届けられるのはあいつが死んだ後になるかも知れない。善処はするけどな。ほら、机はここで紙はここ、ペンはここだ。」

彼女は手紙を書きはじめた。その手紙は、彼女が生きていた頃に愛していた一人の妖怪へと宛てられた物だった。

 

 

「ここからは何も見えないのね…。」

「退屈だろ?異変の一つや二つでも起こしてやろうかね。」

「やめて。貴方が言うと、洒落にならないわ。」

「そうだな…………あっ、あったぞ。ほら、こんなもの覚えてるか?」

そしてソイツは彼女に何かを見せた。

「あら、これは…随分古びているわね。私も生前初めて見たときびっくりしたわよ。」

「あの時とは違う。もう誰にも負けないよ。」

「恐ろしいわね……。」

そうして話は異変や弾幕ごっこの話に移っていった。

 

 

 

 

「はい、手紙書けたわ。そうそう、これも一緒に持っていって。」

「あれ?これは…どうやってここに持ち込んだ?」

「これは生前の私を象徴するもの…。気づいたらポケットに入ってたわ。蘇生された時に同時に具現化したみたいね。まあどっちにしろ今の私には必要ないものだから、貴方に預けるわ。」

「わかった…いつか必ず、届けてやる。」

 

 

 

 

 

 

 

しばらくした頃、彼女の輪郭がぼやけ始めた。元の魂という、見えない存在に戻るのだろう。

「あら…もう時間みたいね…。流石の私でも、この『時間』には抗えないみたいね」

「そうだな…寂しくなるな…」

「楽しかったわ。妖怪さん。」

「じゃあな…人間…。」

彼女はすうっと消えていき、そうして彼女が消えた後にはトランプのジャックが一枚、数秒間形を保っていた。

残されたソイツは再び何もない空間を見つめながら、銀色の懐中時計と手紙を握り締めて呟いた。

「咲夜…お前は昔っから、そんな気障な事をする奴だったな…。だがもうお前の知っていた『ソイツ』はここにいないんだよ…。」

 

 

 

 

 

 




というわけでェ~
数話後から天子さんが異変を起こします!!
主人公にとっては初異変ですね。いやぁ目出度い
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