変の軌跡〜帝国の闇を一閃する獅子達〜(現在、戦姫絶唱シンフォギアの世界) 作:光三
ここは、旧校舎の1階だ。俺を含めた10人の生徒がいる。すると、女教官が壇上に上がり自己紹介を始めた。
「サラ・バレスタイン。今日から君達Ⅶ組の担任を務めさせてもらうわ。宜しくお願いするわね♡」
「(ん?サラ・バレスタイン。やっぱり、どっかで見たことがある。聞いたこともある。ん〜どこで誰から聞いたっけ。まあ、そのうち思い出すだろ。)」
俺は、とりあえずサラ教官の話を聞くために思考を打ち切った。すると、眼鏡をかけた男子生徒が驚きをあらわにする。
「な、Ⅶ組……!?」
「そ、それに君達って……」
「ふむ……聞いていた話と違うな」
「あ、あの……サラ教官?この学院の1学年のクラス数は5つだったと記憶していますが。それも各自の身分や、出身に応じたクラス分けで……」
「お、流石首席入学。よく調べているじゃない。そう、5つのクラスがあって貴族と平民で区別されていたわ。あくまで『去年』まではね」
「え……」
「今年からもう1つのクラスが新たに立ち上げられたのよね〜即ち君達
「特科クラスⅦ組……」
「み、身分に関係ないって……本当なんですか?」
「(今の話のどこにそんな驚くことがあったんだ?普通のことだと思うが……?)」
アクロスは身分制度など関係がない集落で暮らしていたため、教育は全員が平等に受ける権利を持っているという考えなのだ。能力がある生徒と、無い生徒を分けることはしない。学ぶ意欲さえあれば、子供でも大人でも学校に行っている。アリスからエレボニア帝国には身分制度があると聞いてはいたが、そこまで差別意識があるとは思わなかった。
「(まあ、それだけ平民と貴族の間の溝があるということか……)」
それが証拠にさっき驚きをあらわにしていた眼鏡をかけた男子生徒がサラ教官に噛みついた。
「冗談じゃない!身分に関係ない!?そんな話は聞いていませんよ!?」
「えっと、確か君は……」
「マキアス・レーグニッツです!それよりもサラ教官!自分はとても納得しかねます!まさか、貴族風情と一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?」
「うーん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだからすぐに仲良くなれるんじゃない?」
「(その通り!……なんだがおそらくマキアスは……)」
「そ、そんな訳ないでしょう!」
「(あ〜やっぱり……)」
「フン……」
「…君。何か文句でもあるのか?」
「別に。『平民風情』が騒がしいと思っただけだ」
「これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度…さぞ名のある家柄と見受けるが?」
「ユーシス・アルバレア。『貴族風情』の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが」
「!!!」
マキアスが、思わず怯んだ。
「し、『四大名門』…」
「(四大名門って確か今年のトールズの入試で出題された問題にあったな……付け焼き刃で暗記したから全く覚えてねぇ〜)」
アクロスは、元々物覚えが良い方だ。そのため故郷の集落では、スポンジや神童なんて渾名で呼ばれていた。しかし、付け焼き刃で暗記したものや右から左に受け流した話などはすぐに忘れてしまう。当たり前の話だが、知識というのは教えてくれる人の話を真剣に聞き、復習することで定着するものだ。
「東のクロイツェン州を治めるアルバレア公爵家の…」
「…大貴族の中の大貴族ね」
「なるほど……噂には聞いていたが」
「…………?」
「……ふぁ………」
「だ、だからどうした!?」
「その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!いいか、僕は絶対に……」
「(一体、このコントみたいなやり取りはいつ終わるんだよ!いい加減うざくなってきたな……)」
その時、サラ教官の声が聞こえた。
「はいはい、そこまで。色々あるとは思うけど文句は後で聞かせてもらうわ。そろそろオリエンテーリングを始めないといけないしねー」
「(漸く本題に入ったなぁ…ここまでが長ぇ〜)」
「くっ……」
「オリエンテーリング……それって一体、何なんですか?」
「そういう野外競技があるのは聞いたことがありますが……」
「「(ん?……あっ!)」」
俺は、話を聞きながらあることを思い出した。表情を見るにどうやらリィンも気づいたようだ。
「もしかして……門の所で預けた物と関係が?」
「あら、良いカンしてるわね」
そう言ってサラ教官は、なぜか俺達の方を見ながら後退していった。
「(ん?一体何をしようとしてんだ……)」
「それじゃ、早速始めましょうか♪」
すると突然、大きな振動が発生した。そして、床が傾いた。俺は、何とか堪えそのまま落ちるという事態は避けることが出来た。出来たのだが……
「お、お前ら邪魔だ!!ぶつかる、死にたく無かったら道を開けやがれ〜!!」
「(あ、あっぶね〜あの教官、一体何考えてんだよ!)」
そんなことを考えていると、全員落ちて来たようだ。ただ、銀髪の女子生徒だけは見事な着地を決めていた。
「…クッ……何が起こったんだ……?」
「いきなり床が傾いて……」
「……やれやれ。不覚を取ってしまったな」
「ここは……先程の建物の地下か」
「フン……下らん真似を」
「はああ〜っ……心臓が飛び出るかと思ったよ。リィン、アクロスは大丈夫?」
「俺は、なんとか大丈夫だったぜ」
「なんかアクロス、鬼気迫る表情で床を駆け降りていったもんね…」
「ほとんど、落ちているのと変わりは無かったけどな…」
「あはは……」
「ところでリィンさっきから気になっていたんだが隣にいる金髪の人は誰なんだ?」
「わたしは、アリサ・ラインフォルトよ。宜しくね」
「おう!俺は、アクロス・ローグレスだ。こっちこそ宜しくな」
「僕は、エリオット。エリオット・クレイグだよ」
「俺は、リィン・シュバルツァーだ。宜しくな。それよりも、怪我はないか?」
「だ、大丈夫よ。あ、ありがとう」
「そうか、良かった。それにしても、ここは一体……?」
「うん……何か置かれてるみたいだけど」
その時、音が鳴り響いた。
「わわっ……!?」
「これは……」
「あの、装置か!?」
そんなことを話していると、全員装置をポケットから出したらしい。
「入学案内書と一緒に送られてきた……」
「携帯用の導力器か」
すると、導力器からサラ教官の声が聞こえてきた。
「それは特注の戦術オーブメントよ」
「この機械から……?」
「つ、通信機能を内蔵しているのか……?」
その時、アリサが何かに気づいたようだ。
「ま、まさかこれって……!」
「ええ、エプスタイン財団とラインフォルト社が共同で開発した次世代の戦術オーブメントの1つ。第五世代戦術オーブメント、
「ARCUS……」
「戦術オーブメント……
「そう、
「ふむ……とにかくやってみるか」
「全く……一体何のつもりだ……」
「…………」
「俺の武具は……あった!」
「俺のは…あれか」
「僕のはあっちだ……行ってくるね」
「おう!行ってこい」
すると、エリオットは自分の武具のところに走って行った。
「じゃあ、俺らも行くか!」
「そうだな」
こうして俺達は、それぞれの武具のところに行った。
「(この真ん中のところにクオーツを嵌めれば良いのか?)」
嵌めると突然、身体とARCUSが光り始めた。
「な、なんだ!?」
「君達自身とARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法が使用可能になったわ。他にも面白い機能が隠されているんだけど…ま、それは追々ってところね。それじゃあ早速始めるとしますか」
「(またか……今度は俺達に何をさせるつもりだよ……)」
「そこから先のエリアはダンジョン区画になってるわ。割と広めで、入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど……無事、終点までたどり着ければ旧校舎1階に戻ることが出来るわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね。それではこれより、士官学院・特科クラスⅦ組の特別オリエンテーリングを開始する。各自、ダンジョン区画を抜けて旧校舎1階まで戻ってくること。文句があったらその後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ♡」
「(いらねぇ〜よ!!)」
それっきり、サラ教官の声は聞こえなくなった。
「え、えっと……」
「……どうやら冗談という訳でもなさそうね」
「フン…」
なんと、ユーシスが1人で行こうとしていた。それを見ていたマキアスが、ユーシスを止めた。
「ま、待ちたまえ!いきなりどこへ……1人で勝手に行くつもりか?」
「馴れ合うつもりはない。それとも『貴族風情』と連れ立って歩きたいのか?」
「ぐっ……」
「まあ…魔獣が恐いのであれば同行を認めなくもないがな。武を尊ぶ帝国貴族としてそれなりに剣は使えるつもりだ。
「だ、誰が貴族ごときの助けを借りるものか!もういい!だったら先に行くまでだ!旧態依然とした貴族などより上であることを証明してやる!」
「……フン」
そう言って、2人は先へ進んでいってしまった。
「(アイツらには、集団行動をするという概念はねぇのかよ……)」
「…………」
「…えっと……」
「ど、どうしましょう……?」
「とにかく我々も動くしかあるまい。念のため数名で行動することにしよう。そなたと、そなた。私と共に来る気はないか?」
そう言って、青髪の女子生徒が指名したのはアリサと首席入学の女子生徒だ。
「え、ええ。別に構わないけれど」
「私も……正直助かります」
「それに、そなたも…」
しかし、青髪の女子生徒が新たに指名しようとしていた銀髪の女子生徒は1人で行ってしまった。
「ふむ……?まあいい。後で声をかけておくか。では、我らは先に行く。男子ゆえ心配無用だろうがそなたらも気をつけるがよい」
「あ、ああ……」
「そ、それでは失礼します」
「リ、リィン…その、さっきはありがとう。私のこと心配してくれて」
「あ、ああ……アリサが無事で良かったよ」
「なあ、リィン。あのアリサって子どう思ってるんだ?」
「あ、ああ。その……仲良くなりたいと思ってるよ……そんなことより、そろそろ俺達も行った方がいいと思うんだが?」
「まあ、そうだな(ニマニマ)」
「あはは(ニマニマ)」
「か、勘弁してくれ……」
「冗談は、そこまでにして本当に先に進んだ方がいいよなぁ」
「その前に……みんなの武器をみせてくれないか?」
全員リィンの言ったことに異存はないようだ。
「ガイウス・ウォーゼルだ。帝国に来てから日が浅いから宜しくしてくれると助かる」
なぜか、自己紹介が始まった。
「そうか、留学生だったか。こちらこそ、宜しく。リィン・シュバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ。それにしても……その長いのって武器なの?」
「ああ、これか」
「十字の槍…」
「槍を見ると、アリスを思い出すなあ…まあ、アリスの場合
「!?まさか……いや、でも」
「リィン、どうした?」
「い、いや。なんでもない」
「(露骨に話をそらしたような気がするんだが……なんだ?)」
「「……??」」
「それにしても、その十字の槍なんだかカッコイイね」
「故郷で使っていた得物だ」
「そちらはまた……不思議なものを持っているな?」
「あ、うん、これね」
「杖……?いや、
「新しい技術を使った武器で
「なるほど。そんなものがあるのか」
「俺も聞いたことがないな」
「うーん、何でもまだ試験段階の武器なんだって。それで……リィンの武器はその?」
「ああ」
「それって……剣?」
「帝国のものとは異なっているようだが……?」
「これは太刀さ」
「うわあぁぁ……綺麗な刀身……」
「……見事だな」
「東方から伝わったもので切れ味はちょっとしたものだ。その分、扱いが難しいからなかなか使いこなせないんだが」
「え〜、なんだか凄くサマになってたけど……」
「ふふ、せいぜい、当てにさせてもらおうか」
「ところでアクロスの武器は、一体なんなの?」
「ああ、俺の武器か?それはな……剣だ」
「へえ、双剣か?」
「いや、俺は特別剣術を習っているわけじゃねぇよ。両方、思い入れがあるから持ってきただけだ。左手に持っている、新しめの剣は俺がトールズ士官学院に合格した時にアリスがプレゼントしてくれたんだ。そして、右手に持っている、年季が入った剣は俺が10歳の誕生日を迎えた時両親にプレゼントされたものだ」
「物には、渡した人の想いが宿ると言うが……」
「今まで、その剣を大切に扱ってきたんだな。剣身を見れば分かるよ」
「当たり前だ!俺は、アクロス・ローグレスだ。みんな改めてよろしくな」
「「「おう!!」」」
俺達は、想い新たに先へと進んだ。