0の僕と1の君   作:蒼氏

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7話 僕と僕

僕の彼女は病院で入院している

「病気だから」というのが理由ではあるが僕の彼女の場合は少し特殊だった

彼女が入院しだしてから僕は不思議な夢を見るようになった

その夢は彼女のこれからを映し出すかのようなモノだった

しかしその夢はある日を境に見なくなった

ある日は二月二十五日

僕が通っている高校の卒業式だった

卒業生の中に一人動けない生徒がいた

その生徒は僕の彼女だった

卒業式までの経緯を見た時は驚いた

だんだん体が弱っていき、立てなくなり、やがては手も握り返してくれなくなっていた

卒業式で僕の名前が呼ばれたあたりから目が覚め、現実に戻った

彼女が見た通りになってしまうならどうすればいいのか

森田先生なら何か知っているのだろうか

先生に聞いても何も答えてくれない

もし見たものがこれから先起こるのであれば僕の彼女は確実に消えてしまう

現実から

僕の前から

消したくない

運命だって言うのか

消えていい命なんてない

僕が変えてやる

そんな運命僕がこの手で変えてやる

卒業式の日にもし消えてしまうというなら卒業式が来る前に救ってやる

 

救う?どうやって

 

どうやって・・・病気を治す

 

治す薬でもあるの?

 

ない

 

じゃあダメじゃん

 

今はない

 

自分で作ろうってこと?

 

そうだね・・・

 

はぁ。家のポストを見てみな

 

ポスト?何かあるのか?

 

僕からはこれくらいしかできない。じゃあね、もう一人の【赤羽 真司】

 

「なんだったんだ・・・」

朝起きた真司はベッドの上で不思議な感覚を覚えた

夢を見ていたがその夢がリアルすぎていた

「ポスト!?ポスト!!ポストだ!!」

体を起こし、玄関へ向かう

「ポストポストやかましい!朝からどうした真司」

「あぁすまん・・・気をつけるよ」

ポストの中を除くと一通の手紙が届いていた

「これは・・・」

赤羽真司へ

もし付き合ってる女性がいてその女性がある病気にかかっていたならこの手紙のようにあなたも手紙を書いてください

病気の名前は脊髄小脳変性症

この病気は小脳から脊髄までの神経を消失していく病気です

神経を失えば手先や足先が動かなくなったりします

僕の彼女は寝たきりになり死んでしまいました

あなたの付き合っている女性がもし病気で苦しんでいるなら誰よりも早く気付いてください

小さなことでも気にかけてあげてください

これはあなたにできることであり、やらなければいけないことです

「なんだよこれ・・・遅いだろ・・・鈴音はもう」

自分が手紙に書いてある事が出来ていなかった真司は自分に腹が立った

「何が気付いてくださいだ!僕は全然気付けなかったっ!・・・僕はどうすればいいんだ」

 

手紙の最初を見なさい

 

「手紙の・・・最初・・・。手紙を書くのか・・・」

どこからか聞こえた声に従い手紙の最初を読み返した

「でも書いてどうするんだ・・・なっ・・・もしかして。パラレルワールドとでも言いたいのか?・・・」

目の前とは違う現実があり鈴音が助かるように違う現実へ手紙を出せとこの手紙は言っていた

しかしこの手紙を受け取った事は自分の現実では鈴音が助からないということを意味していた

「ふざけるな・・・鈴音は助からない・・・おかしいだろ!なんでもっと早く届かないんだよ!」

言っても仕方がなくても真司は口に出さずにはいられなかった

「それでも違う現実なら助けられるのか?・・・そりゃ助けたいさ・・・でも今この現実では助からない・・・」

 

それから僕は事あるたびに手紙を出した

手紙が返ってくることはなかったが違う現実で鈴音が助かるなら出す以外の選択肢はなかった

目の前の鈴音は弱っていく

それでも僕はそばに寄り添い彼女を見守った

できることなんて限られていた

その限られていることを僕は全力でやった

違う現実に手紙はうまく届いてるだろうか、鈴音は助かっているのだろうか

 

夢の中で見た二月二十五日

その日は近づいていた

鈴音は寝たきりで卒業式に参加することが決まった

それも医師に無理やり伝えたからだ

医師は最初は反対された

僕も理由を聞けば参加するべきじゃないとも思った

しかしこれは卒業式だ

一人病院で卒業式を迎えるなんて鈴音にはさせたくなかった

鈴音の両親も僕の意見に賛成してくれた

彼女とはいえ家庭の事情に僕が口を挟むことではなかったが黙っていられなかった

卒業式は無事に終わり僕は鈴音のベッドを押して退場した

体育館を出た時、鈴音が口を開いた

「ありがとう。真司」

奇跡が起こった

周りには呂律が回っていないただの音として認識されたかもしれないが僕の耳にはハッキリ聞こえていた

それは僕の勝手な思い込みかもしれない

しかしハッキリと聞こえたそれは音ではなく声だった

僕は気づかない間に涙を流していた

病院へ帰ってくると医師は答えた

そう、医師が反対した理由

それは卒業式の日が鈴音の寿命。死亡推定日だった

僕の夢で見たものは現実でも起きた

出来ることをやっても鈴音は助からなかった

これは運命だろうか

そう言ってしまえば簡単だが認めたくなかった

僕が気付くのが早ければ助かったのだろうか

医師や鈴音の両親には「馬鹿なことを言うな」と言われた

鈴音が亡くなり悲しいはずの親御さんを更に苦しめてしまった

だからこそ僕は最後の手紙を書いた

 

今日の午後16時頃、僕の彼女は亡くなりました

そして卒業式に奇跡が起きました

これ以上にないくらい涙が出ました

僕は幸せだったのかな

彼女や友達と楽しく暮らせたのかな

ねぇ僕じゃない赤羽真司くん

君は幸せ?

短い人生の中で僕の彼女は何を考えて何をやっていたのかな

そんなことを考えながら今手紙を書いています

あなたは何を考えて何をしますか

あなたは病気で苦しんでいる彼女へ何をやってあげれますか

どうか今一度考え直し、実行してください

迷わずあなたのやるべき事をやってください

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