前回2話で終わると言ったがあれは嘘だ また話が長くなって3話になった
有言実行が出来ねぇ…… ヒロアカSSの沼に嵌っていく…… 「予定」とは?……
まぁ それは置いといて
本編をどうぞ
ピピピピッ ピピピピッ ピッ__
「__朝だ‥‥」
窓から柔らかな光が注がれる 気持ちの良い朝
「眠っている訳じゃない」
目の前には 日常とはかけ離れた光景
「夢じゃなかったんだ‥‥」
夢と思うような記憶は現実であった
肩の付け根から右手の先に至るまで 緑谷の体に繋がってはいるが全く別の生物になり 部屋の本を読みあさっていた
「何をやっているの?」
目を疑うような非日常を前にしても 受け入れてしまえばどこか冷静になり ごく普通に元右手に話しかける
「見ての通りさ 勉強だよ」
右手だったソイツは図鑑を広げながら そこに載る生物に次から次へと体を変化させていた
「普通に喋れるようになったんだね‥‥君は何なの 誰かに作られたの?」
「分からん」
「でもあのヘビみたいなのが 君の正体なんでしょ もしかして宇宙人?」
「宇宙人?なんだそれは?」
「宇宙から来た人‥‥君の場合は生物か」
「確かに地球上の生物の本を調べても わたしの事は載っていなかった」
「何か覚えている事は無いの?」
質問を終えるたびに疑問が出る緑谷
「私は自分がどこから来たのか知らない 私の一番古い記憶は"脳を奪えなくて残念"という気持ちだ」
「脳を⁉ まさか右手の次は僕の脳を奪うつもりじゃ‥‥」
「それが出来るならとっくにやっているさ だが無理だ 脳を食わずに成熟してしまってはもう遅い 残念なことだ」
まるで人間が項垂れるような動作で残念がる
「もし脳を奪えてたら?」
「多分頭が変形する人間に似た生物になっていただろうな」
「それは気持ち悪いね‥‥そもそも何で僕だったの」
「偶然だ 君を選んだわけではない」
あらかたの質問を終えた緑谷は考え込む
(これは誰かの“個性”なのか? だとしても生物を生み出すような“個性”何て聞いたことが無い‥‥他人の体に侵入して寄生する“個性”? 自分の体を分裂させる“個性”? 肉体を変化させる“個性”? 動物になる“個性”? “個性”だとしたら複合型の可能性が高い‥‥仮に“個性”だとして 使った本人の意思が全く反映されていない そんな事があるのか? でも もしこれが
「何をブツブツ言っているんだ イズク」
「‥‥もしかして声に出てた?」
「何を喋っているかは分からんが うるさい」
「ごっ ゴメン」
「なにか言う事があるなら言ってくれ」
緑谷は自身の考えをまとめ まだ聞きたいことはあったが一つ提案をする
「取りあえず病院に行こうと思うんだけど‥‥」
「何のため?」
「色々検査した方がいいと思って‥‥もしかしたら君が切られるかもしれないけど」
「それは困るな わたしは出久の血液から養分をもらって生きている」
「なんだかダニみたいだね」
「したがって もし実験や研究のために切断されると 枯れて死んでしまうのだ」
「そうなんだ」
「それにイズクだって右手を失うことになるんだぜ お互い損じゃないか」
「お互いっていうか‥‥僕の右手を君が食べちゃったんじゃないか」
不満を聞き考える右手
「ならばこうしよう 私が眠っている間は今まで通り 君が自由に動かせるように回路を繋ぐ」
「はぁ?」
「それで良いだろ?これからはお互い協力し合い生きることだ それ以外に道は無い」
自分の命にかかわることになるとよく喋るようだ
「そんな事勝手に決められても」
「疲れたので眠る」
「ちょっと待ってよ 都合が悪いからって」
「大事に使えよ」
右手は元の姿に戻り 同じく感覚も戻った
「これ僕が片づけるのか」
散らかるだけ散らかった自分の部屋を見て 緑谷はため息をついた
階段を下りると緑谷の母がどこかに電話をかけているようだった
「もしもし緑谷インコです はい昨日の事故で体を痛めたので‥‥今日は自宅で安静にさせます ええ はいご迷惑をお掛けしてすみません はい では」
「お母さん おはよう」
「今学校に休むって連絡したから 今日は家でゆっくり休みなさい」
確かに昨日の事故で一応体は無事だったとはいえ あまり外に出て活動しない方が良いだろう
「うん わかった ありがとう」
「朝ごはんもしっかり食べてね」
「はい」
朝ごはんは焼き魚とみそ汁だった
「お母さんリモコンは?」
「食器棚のとこ 天気予報でも見るの?今日は学校行かないのに」
「ちょっとね」
ピッ
_続いてのニュースです
昨日 静岡県あたりの○○市▷∇で 殺害事件が発生しました
この家には夫婦と息子二人が住んでおり 殺されたのは妻と息子二人と見られていますが 遺体の損傷が激しく殺害方法・凶器などについては一切分かっていません』
「家から結構近いじゃない 怖いね」
「家庭内での犯行はヒーローも警察も止めるのが難しいからね 早めに捕まればいいけど」
今の超常社会になってから 強盗や万引き・誘拐などの目に見える形の犯罪はもちろん増加したが 家庭内・近隣住民間での殺人事件の発生件数や 実際に殺害まで至った割合も増加している
多くの専門家が「一昔前のアメリカの銃社会」の状態になったから とこのデータを評しているが具体的な解決策などは出ていない
『警察は事件以来 行方不明の夫が犯行に及び逃走したとして調査しています』
(僕みたいな人のニュースはやってないのか‥‥)
実際には同じような目にあった人のニュースなのだが 分かるはずもなかった
『続いてのニュースです
東京都◆◆区のアパートで火災が発生し 焼け跡から二人の遺体が発見されました
この家には20代の夫婦二人が住んでおり 遺体はこの二人のものと思われます 火元は不明ですがこの夫婦が二人とも燃焼系“個性”の為 “個性”が暴走した可能性があるとして警察は調査をしています』
「珍しいね」
「何?出久」
「このニュース “個性”の暴走なんて小学校位にはなくなるのに‥‥」
『なお 遺体は二体とも頭部に激しい損傷がありましたが 原因は不明です』
「僕の(右手の事)とは関係ないか‥‥」
この事件も関係しているのだが この時はまだ知る由もない
「ごめんね 出久」
「エッ あ」
先の発言は 右手の事を知らない母からすれば『“個性”ない僕には “個性”の暴走は関係ない』という意味に取れる
息子__緑谷出久が“無個性”で生まれたことに 少なからず責任を感じている母にとっては 聞かなかったことには出来ない言葉だったのだろう
「ちっ 違うよお母さん さっきのはそうゆうのじゃなくて 大丈夫 気にしてないから‥‥」
母は返事をせず その後も重苦しい空気の中 朝食の時間は過ぎていった
「ごちそうさまでした 部屋戻ってるね」
「うん」
緑谷は自室に戻るまでのほんの短い距離がとても静かに感じられた
「“個性”とは何だ? イズク」
「起きてたんだ」
部屋のドアを閉めた途端 右手が喋り出した
「さっき君の脈拍が変化した その様な状況では目が覚める」
「そうなんだ それで?“個性”について知りたいの」
「ああ ノートに色々書いてあったが 理解が完全には出来なかった」
「僕も完璧に分かってる訳じゃないけど‥‥ていうかアレ読んだの⁉」
「読んだよ『将来のためのヒーロー分析』 “個性”の説明がとても分かりやすかった」
『将来のためのヒーロー分析』__緑谷がヒーローになるべく 様々なヒーローの“個性”や技の長所・短所などを記したノートである
「あ ありがとう(あんまり
出久は持ち前の知識を全て__“個性”の発現から現代までに変化した社会や “個性”の考察に至るまでを右手に説明した
「ふむ 大まかな分類や特徴は分かったが‥‥根本的なことはいまひとつだな」
「今も研究している人がいるけど 発生原因とかは分かって無いみたい」
「‥‥ふむ‥‥」
どうやら右手には まだまだ“個性”に疑問が残っているようだった
「あのさ 僕から提案なんだけど」
「なんだ?」
「君の名前を決めたいんだ」
「いらん わたしは人間ではないしペットでもない」
「でも 名前が無いと話するときに不便だし」
「‥‥では『ミギー』と呼んでくれ」
「何でミギー?」
「右手を食って育ったからミギー」
なんとも安易な名前の付け方である
「ミギーか‥‥ずいぶん単純だね」
「わたしからすれば 名前にそこまでの意味があるとは思えん そういえば‥‥君は一度『デク』と呼ばれていたな」
「かっちゃんのこと?」
「『かっちゃん』? 人間にしては変わった名前だな」
「名前じゃないよ 『かっちゃん』はあだ名 本名は
「“個性”が“爆破”の」
「そう そして『デク』っていうのはあだ名‥‥と言うより蔑称だよ 何もできない木偶の芒の意味でね」
「‥‥そうか わたしは疲れたので眠る」
右手__ミギーは再び眠りに就き 緑谷に感覚が戻った
「なんか‥‥色々ありすぎたな」
遡ること30時間 そこから今に至るまでは 間違いなく人生で最も濃厚な時間 見たことのない生物が体内に侵入し‥‥腕が変形し‥‥喋り出し‥‥“個性”が溢れかえる超常社会においても 中々考えられないようなことが起こった
無論 この出来事が彼に良い影響を与えるとは限らない だが…彼が背負って生きてきた"無個性"の烙印 無条件に否定され 馬鹿にされ 見下された8年間
もし"無個性"じゃなければ
何度そう思ったことだろう
「僕はもう‥‥」
夢と思うような記憶は現実であった
今の彼には他者と違う特徴__
「"無個性"で‥‥平凡な」
自在に変形し高い知能を持つ右手__ミギー
「デクじゃ無い!!!」
夢では無かったのだ
"無個性"では無い 別の何かになった その事実が緑谷にとっては嬉しかった
如何だったでしょうか?
分かった方がいるか分かりませんが
正直途中から「早く正体不明の生物からミギーになれよ……」
と思いながら書いてました(地の文めっちゃ面倒)
次回は犬との戦闘シーンまで書く予定です(あくまでも予定だ 予定なのだ)
最後まで読んで下さった方々ありがとうございました
おまけの没ネタ
ピッ
_続いてのニュースです
本日未明 静岡県あたりの○○市▷∇で 四人家族の内三人が殺害される事件が発生しました
この家には夫婦と息子二人が住み その内の一人 夫である範馬勇次郎(38歳)の行方が分からなくなっています 警察は行方不明の夫が犯行に及び逃走したとして調査しています』