とある魔術の熱操作(ヒートオペレーション)   作:レオパル02

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木山春生

幻想御手を調べて数日後。

玲は久しぶりのパトロールをしていた。みんなが、幻想御手を調べている中、申し訳ない気がしたが。

今は、自分がやるべき事をやろうと思い。パトロールしていると、電話がかかってきた。

電話番号を見ると、それは、警備員である黄泉川からだった。

正直面倒くさいし嫌な予感しかしなかった。

 

「はいはーいこちら、玲ですが、先生から電話なんてめずらしいですね、何かあったんですか?」

 

「めずらしいか……確かに、私からかけるなんてめずらしいじゃん」

 

「で、何の用っすか?別に、メールでも、良かったんじゃないっすか?」」

 

「ちょっと伝えたい事があって電話したんじゃん」

 

「伝えたい事?」

黄泉川から、伝えたい事なんてはっきり言って嫌な予感しかしなかった。

昔、電話された時は、ちょっとこっちに来るじゃーんと言われ、行ってみたら、黄泉川は酔っていて3時間も愚痴を聞かされたのだ。それから、俺は黄泉川から電話がかかってくるといつも覚悟して電話を出るのだ。

 

「山野玲!!」

 

「はっはい!」

突然大声で呼ばれ、電話越しなのに背すじを伸ばしてしまった。

 

「これにて、ジャッジメントの補充要員としての任務を終了するじゃん!」

 

「えっああ、はい」

 

「じゃあ、私から支部のみんなへ、連絡しとくから玲は、もう家に帰るなり自由に過ごすじゃんよー」

 

電話が切れた。玲は、突然の解任通知に戸惑っていた。しばらくたちすくんでいたが、自分で切り替えて今後の予定を考えていた。

(これから、どうするかな。あれ、俺ってジャッジメントをやる前何してたっけ。)

真剣にジャッジメントをやる前の事を思い出す。

 

(そうだ、あの、ラノベの新巻買ってなかったな。)

そう思い出し、本屋へと向かっている途中ふと、ケーキ屋が目に入った。確かあれは初春が欲しがっていた幻のショートケーキだった。しかもちょうど切りがよく残り1個しか売っていなかった。もちろん玲には買う気がなかったのだが、先日初春からクッキーを貰っていた事を思い出し借りを返す為にケーキ屋に入りケーキを買った。

ショートケーキの箱を受け取り彼女がよろこぶ姿を想像しながら支部へ向かう途中黄泉川との電話を思い出した。

(俺は、もう解任されてんだった!)

玲は自分の社畜っぷりにショックを受けていると、前から声が聞こえた。

 

「あー玲さん」

前を見ると、見覚えのある黒髪の少女が手を振って俺の事を呼んでいた。佐天さんだ、格好を見ると私服でどうやらこの後遊びに行こうとしているのが分かる。

 

 

「どうしたんですか?こんな所で、ってあっ!これ初春が欲しがってたケーキじゃないですか、もしかして、初春にプレゼントですか?」

 

「ああ、プレゼントしようと思ったんだけど、ちょっと色々あってな」

 

玲は彼女のマシンガントークにも、難なく対処できているのには理由がある。

この夏休みの間に玲は、女性ばかりのジャッジメントの支部で仕事をこなしており女性への耐性がかなりついた最初は初春にもキョドッていた自分が今では、こんなに普通に会話している事に成長を感じた。

 

「それは、興味深いですねぇ」

 

「実はさ、俺ジャッジメントの補充要員を解任されてさ、ちょっと白井達に会いにくくなちゃって」

 

「へぇ〜そんなことが、でも、別に会えばいいじゃないですか」

 

「いや、ジャッジメントを辞めた訳だし、支部に行くのは申し訳ないだろ?」

 

「そんな事言ったら私なんて、ジャッジメントでも、ないですよ!」

 

「もしかして玲さんは、私達の関係は仕事だけだったんですか!?」

 

「そんなことない!!」

俺は、はっきりと否定した。この夏休みの間俺はみんなと過ごした日々が本当に楽しかったからだ。

 

「だったらいいじゃないですか」

 

「へっ?」

 

「ジャッジメントなんか関係無しに会いに行けば、いいじゃないですか。みんなもそう思ってますよ。みんな玲さんの事が好きですし…あっへんな意味じゃ無いですよ!友達としてですからね!!」

 

「そこまで言われると傷つくんだが」

 

「まぁいいじゃ無いですか」

笑いながらそう言ってくれた彼女の表情は明るかった。

そんな彼女の答えを聞き自分がこんな小さい事に悩んでいたのかと少し恥ずかしくなる。

 

「とっとにかく初春に会いに行きましょう!初春は、今木山先生のところにいるらしいし」

 

「木山先生って事は、幻想御手か?」

 

「多分そうだと思います」

 

「じゃあ差し入れついでに行くか」

 

「はいっ」

 

俺たちは、ケーキ屋に戻りショートケーキ以外にもケーキを買った。ケーキ代は全て自分持ちだったがたまには人に奢るのも悪くはない。

信号待ちの時、窓をぼーっと見ていると一台の青いスポーツカーが目に入った。

普通の乗用車ばかりだったので、あれは目立つなぁと考えていると、信号が変わりバスが進む。

 

 

この時、気づいてしまった。その青いスポーツカーに木山春生が乗っていたことを。

助手席に初春を拘束して運転しているところを。

その光景を見てしまい、俺は、硬直してしまった。

何故、木山が初春を拘束しているんだ?

木山は、どこに向かっているんだ?

木山とは、何者何だ?

様々な考えが一瞬で頭の中で巡る。俺は考えがまとまらないでいた。

 

「れ…さん…玲さん!!」

 

「どうしたんだ」

 

「どうしたんだじゃありませんよ、急にぼーっとしてたんで何か、考え事でも、してたんですか?」

どうやら佐天が俺のことを呼んでいたらしい、佐天はあのスポーツカーを見ていなかったようで玲の顔を心配そうに覗き込んでいると、バスがゆっくりと速度を落としていることが分かった。どうやらバスが止まるようだ。この次が木山の研究室に一番近いが今は、とにかくやるべき事がある。

 

「佐天、ジャッジメントと警備員に連絡をしてくれ」

 

「何かあったんですか?」

 

「初春が木山に攫われた」

佐天の顔がみるみるうちに青くなっていった。仕方ないだろう親友が攫われていると分かれば慌てるのも仕方ない。

 

「嘘…それって本当なんですか!?」

 

「ああ、だから俺は、今から木山を追うから連絡を」

 

「いやです!!」

それは、はっきりとした拒否だった。

 

「もう、何も出来ないのは嫌なんです」

弱々しい口調で佐天が言っている。

 

「話は終わってないだろ、佐天の仕事は何だ?…初春を助けることじゃないだろ」

 

「でもっ!」

 

「帰ってきた。初春を暖かく迎えることだろ初春の親友は、佐天しか居ないんだからさ」

そこで、佐天の顔つきが変わった。どうやら、わかってくれたようだ。

 

「そうでしたね。親友である私が初春を迎えなきゃいけなかったな…玲さん。ごめんなさい」

 

「いやもういいんだ。だから、連絡を頼むな」

 

「わっかりました。だから、玲さん!初春のこと」

 

「分かってる!!」

最後まで、聞く前に玲は、すぐにバスから出た。

多分ここから、全力疾走したところで、木山に追いつくわけがない。自分は全力で走りながらも冷静に思考をまとめていく。

(確かここの付近には…)

このバス停の近くには、あの男がいる。俺は、走ってがいるあの男のいる場所に着いた。

その場所は、この辺りの研究所などの化学施設が多い学区には似合わない赤色の屋根で木製の家で建てられたパン屋だった。玲は、急いでドアを開けパン屋に入り周りを見渡しあの男を探す。

 

(いたっ!)

その男はパン屋で働くにはいささか不似合いな青い髪と耳にはピアスを付けており鼻歌を歌いながらパンを並べている。この男の名前は通称青髪ピアス略して青ピ、学校のクラスメイトで全員が未だに本名も知らないという変人だ。

 

 

「何や玲くんやないのー」

 

青ピは俺に気づいたようで、のんびりとした口調のエセ関西弁で喋りかけてきた。

急に押しかけた自分が悪いのだがこの男の態度に少しムカついた。

 

「ちょっと来い!!」

 

「何で、僕バイト中なんやけど」

 

「女の子の為でもか?」

 

 

「話、聞いてええか?」

 

「とにかく今は、バイクに乗せてくれ!!」

 

「分かった。いいでぇ」

そう言って青ピは、バイトをばっくれた。女の子の為ならこいつは、何処にでも行くだろう。

バイクに乗ってスポーツカーが通った道路を走っている中、聞いてきた。

 

「で、何で女の子を助けることにこれが繋がるん?」

 

「女の子が攫われてたんだ、だから助けるためにな」

 

「ふーんで、今走ってるんだけど何処に行きゃあいいの?」

 

「ちょっと待っててくれ」

バイクに乗りながら、電話をかける。器用なものだ。

 

「白井か?」

 

「わたくしですわ、玲さん!」

 

「事情はわかっているな?」

 

「ええ、少し困惑してますが…」

 

「初春が何処に行ったか分かるか?」

 

「多分、初春は木山に連れられて高速道路に向かっていますの」

 

「そうか、ありがとう」

 

そう言って電話を切った。

 

「青ピ、高速道路だ!!」

 

「わかったでー」

俺たちは、バイクを加速させ高速道路に向かっていった。

高速道路入りを走り続けていると。

「警備員だ!止まれ!!」

前から、警備員達に止められた。理由は容易に想像出来た、木山春生が警備員達と交戦をしているのだろう。

だったらこんなところで、警備員達に止められるわけにわいかない。なんとしても初春を取り戻さなければいけない。

「青ピお前に、頼みたい事があるのだが」

 

「何や、まさか警備員を止めろとか、言わへんよな」

 

「そのまさかだ」

 

「ええ、無茶言うなや!玲くん」

青ピなら、警備員を少しの間止められるだろう。と思い頼んでみたが、さすがに青ピも捕まるのが嫌なようで完全な拒否をしてきた。

「安心しろ、お前が捕まっても俺が、ちゃんと言って釈放してやるから」

 

「そんなこと言っても…」

渋っている青ピに俺は、絶対あいつがやる気になるためのはっぱをかけてやった。

 

「お前が捕まったら、事情聴取で、黄泉川先生を用意しとっから」

そう言った青ピは俺と黄泉川先生が仲がいいのを知っている。そんな俺から、こんな提案をすれば、乗ってくるだろう。

 

「それ、本当に用意してくれんやな」

 

「ああ、」

 

「分かった」

そう言って青ピは、警備員達に掴みかかった。突然掴みかかってきた青ピに対して警備員達は、

何だ、こいつは!離れなさい!など注意をして青ピを引き剥がそうとしているようだ。

その隙に、俺は、走った。後ろから、待ちなさい!という制止の声が聞こえたが木山のところに走って行った。

 

木山のところに着くと、そこには、木山と交戦しただろうと思われる。跡がしっかりと残っていた。

倒れているトラックや壊れている警備用ロボット・怪我をしていて意識を失っている警備員が数名そして、その先には、元凶とされる木山春生がいた。

 


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