デスマーチからはじまる異世界空我   作:naogran

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名誉士爵を与えられたライトとサトゥー。
家名を決めるのだが、サトゥーの家名の候補は決まりつつある。


DEATH MARCH62「家名」

『BGM:平穏』

 

その後、きっちり2日悩んだ末に家名を決めた。そして叙爵の儀式。

 

ムーノ男爵「ーーーーー叙爵(コンファリング・ビレージ)。」

 

ライト(ん?)

 

サトゥー(ステータスの欄が・・・)

 

階級ステータスに帰属『士爵』が表示された。先程の『叙爵』でスキルを覚えてなかったのは、都市核(シティ・コア)の機能を使った儀式魔法だからだろう。

 

ムーノ男爵「サトゥー君、ライト君、このヤマト石に触って儀式が成功したかどうか確認してくれたまえ。」

 

サトゥー「はい。」

 

ライト「おう。」

 

今回、ヤマト石に触る前に交流欄の値を変更していた。少し頼りないとは言え、後ろ盾も出来た事だし、もう少し動きやすいようにレベルやスキルなどの開示量を増やした。叙爵儀式が終了すると、ニナ女史やサトゥーの子達やライトの仲間達に男爵令嬢姉妹が入室。最後に入って来たのは、文官のユユリナだ。

 

ユユリナ「では始めます。ーーーーー命名(ネーム・オーダー)。」

 

まずはライトから。

 

ユユリナ「ライト・アイラ。」

 

命名スキルを得た。次はサトゥー。

 

ユユリナ「ーーーーー命名(ネーム・オーダー)。サトゥー・ペンドラゴン。」

 

その後にヤマト石で確認して、新しい身分証明書を用意して貰う事になった。

 

サトゥー(平民用とは違って、銀製のプレートだ。)

 

ライト(ん?)

 

カリナ「ふふふ。カリナ・ペンドラゴン・・・悪くないですわね。」

 

アリサ「アリサ・ペンドラゴンか。アーサーみたいだけど、語感が良いわ。」

 

ライト(・・・・)

 

ルル「何時か、ルル・ペンドラゴンとか言われると良いなぁ。えへへ〜。」

 

サトゥー(ルル、君もか・・・)

 

ポチ「ポチ・ペンドラゴンなのです!」

 

タマ「タマ・ペンドラゴン〜!」

 

この2匹ははしゃいでる。

 

リザ「ご主人様、立派です。」

 

ミーア「むぅ、ボルエナン・・・」

 

ナナ「マスター。マスター、ペンドラゴン、どちらでお呼びしましょう?」

 

サトゥー「マスターで良い。」

 

タスク「やっと決まったようだな。」

 

ライト「あぁ。」

 

ドロシー「ライト・アイラ。覚えやすくで良いわね。」

 

メイリン「でも、パスクゥムも捨て難いですのに。」

 

ローズ「メイリン、我儘言わないの。」

 

ライト「気持ちだけ貰っとくぜ。」

 

ニナ「では、サトゥー・ペンドラゴン士爵。ライト・アイラ士爵。今後とも宜しく頼むよ。」

 

サトゥー「はい。ニナ・ロットル士爵。」

 

ライト「此方こそ宜しく頼むぜ。」

 

 

 

因みに口頭で爵位を呼ぶ時は「名誉」を付けないらしい。自分で名乗る時は。

 

サトゥー『サトゥー・ペンドラゴン名誉士爵です。』

 

ライト『ライト・アイラ名誉士爵だ。』

 

と告げる必要があるとの事。

 

 

 

ニナ「後は出発までに紋章を決めておいてくれ。」

 

サトゥー(今度は紋章ですか・・・)

 

ライト(爵位って大変だなぁ・・・)

 

 

 

翌日から、男爵や執事に社交界について授業を受け、ユユリナに紋章学についての授業を受ける事になった。『社交』『紋章学』スキルを得た。

 

サトゥー(新しい紋章は、こんな意匠にしておくか。)

 

ペンとドラゴンを併せた紋章。

 

ライト(クウガと剣のクロスで良いか。)

 

クウガの紋章に剣がクロスした紋章。

 

 

 

魔族が復活を企んでいた『黄金の陛下』とやらが気になるが、復活に必要な邪念壷(カオス・ジャー)もストレージに死蔵してあるし、彼等が公都を通過する間位は安全でいて欲しい。

 

サトゥー(勿論、ピンポイントに復活するかも知れないから、それまでに色々と準備するとしよう。)

 

交流欄を確認する。

 

 

 

 

名前・サトゥー・ペンドラゴン

種族・人族

レベル・30

所属・シガ王国ムーノ男爵領

職種・なし

階級・貴族『士爵』

称号・なし

スキル・『剣術』『弓術』『格闘』『投擲』『回避』

    『調理』『算術』『錬成』『魔法道具製作』

    『相場』『値切り』『社交』『紋章学』

 

賞罰・『ムーノ男爵領蒼輝勲章』

   『ムーノ男爵軍一等勲章』

   『ムーノ市民栄養勲章』

 

 

 

 

名前・ライト・アイラ 

種族・人族

レベル・30

所属・シガ王国ムーノ男爵領

職種・旅人

階級・貴族『士爵』

称号・クウガ、戦士

スキル・『格闘』『棒術』『狙撃』『剣術』

    『回避』『ライセンス』

 

賞罰・『ムーノ男爵領蒼輝勲章』

   『ムーノ男爵軍一等勲章』

   『ムーノ市民栄養勲章』

 

 

 

 

ライト・サトゥー(俺の異世界生活は、明日からも忙しそうだ。)

 

 

 

 

その後、1人の人物が来た。

 

セーラ「お初にお目にかかります。テニオン神殿の巫女セーラと申します。」

 

ライト(綺麗な人だ。髪色が不思議だ。)

 

サトゥー(プラチナブロンドの髪と言う奴だろうか?)

 

”つんつん”

 

サトゥー(はっ!)

 

ニナにつんつん突かれ、サトゥーがすぐに挨拶する。

 

サトゥー「初めましてセーラ様。私はムーノ男爵の家臣サトゥー・ペンドラゴン士爵と申します。」

 

ライト「同じく家臣のライト・アイラです。」

 

サトゥー「名誉士爵の叙爵を受けたばかりの若輩者ではございますが、何卒お見知りおき下さい。」

 

これは、教育係のユユリナ仕込みの定番の挨拶。

 

 

 

セーラ一行は、魔族に襲われたムーノ男爵領の治安回復や復興支援の為に来てくれたようだ。

 

城外の広場には騎士8名、神官4名、兵士300名、荷馬車40台の大所帯が待機している。

 

ライト(滅茶苦茶多いな。)

 

サトゥー(これだけの戦力があったら、ムーノ城を落とせそうだ。)

 

お人好しのムーノ男爵は兎も角、辣腕のニナ女史が入城させたからには友好的な相手なのだろう。

 

ニナ「それにしても、公爵閣下がよく可愛い孫を領外へ出す許可を出したね。」

 

セーラ「家を出た私は、公爵家とは関係ございません。」

 

 

 

交流欄

 

名前・セーラ

レベル・30

スキル・『神聖魔法:テニオン教』

    『神託』『瞑想』

    『悪意感知』

 

詳細情報・オーユゴック公爵の直系の孫

 

 

 

サトゥー(AR表示にはセーラ嬢の家名が出ていないが、ニナ女史の言う通りだ。)

 

ニナ「神殿もそうさ。貴重な『神託の巫女』をよく危険な旅に出したもんだね。」

 

セーラ「()()()()が後押しして下さいましたから。」

 

ライト(巫女長様?)

 

サトゥー(今の言葉に少し引っ掛かりが・・・)

 

ニナ「テニオンの聖女様は、淑やかな癖に豪胆なのは相変わらずのようだ。」

 

ライト(巫女長と聖女は同一人物なのか。)

 

サトゥー(噂の聖女様か・・・てっきりセーラ嬢が聖女かと思っていたけど違うみたいだ。公都に寄ったら、遠くでも良いから是非ともお目にかかってみたいものだ。)

 

セーラ「それに巫女長様がやり残した『死者の王』の呪いの跡を清める役割もありますから。」

 

ニナ「聖女様の体調が思わしくないのかい?」

 

セーラ「はい。最近では神殿の聖域からお出になられない程なのです。」

 

ライト(聖域ってのは判らねえが、病院の集中治療室みたいなものか?)

 

サトゥー(高位の神聖魔法で何でも癒せそうなイメージがあるけど、魔法も万能と言う訳ではなさそうだ。)

 

 

 

 

『BGM:懊悩』

 

その後、場所を応接間に移し、ニナがセーラ達にこの間の魔族襲撃事件を語った。

 

ニナ「ーーーと言う訳さ。最後は、仮面の勇者様や古代の戦士や森巨人(フォレストジャイアント)達が魔族の軍勢を蹴散らしてくれたけど、ペンドラゴン士爵様とアイラ士爵様が居なかったら、援軍が来る前に城が落とされていたね。」

 

騎士「その若さで魔族と相対し、無傷で生き残る所か、倒してしまうとは素晴らしい武勇だ。我が騎士団に欲しい位だよ。」

 

イバーサ・ロイド。レベル33

 

サトゥー「いえ、そんな・・・」

 

ライト「それ程でも。」

 

騎士「俄かには信じられぬ。こんな若者共が魔族を倒しただと?」

 

ケオン・ボビーノ。レベル31。

 

イバーサ「ケオン卿、口が過ぎるぞ。」

 

ケオン「例え下級魔族でも騎士中隊が半壊する覚悟で挑まねば勝てぬような相手なのだぞ?それを女子供や他の若者共だけで?ありえん!!」

 

先程の話しを信じようとせず、ライト達が魔族を全滅させた事を真っ向に否認したケオンにニナが。

 

ニナ「・・・どうやら神殿騎士殿は、私の言葉が信じられないようだ。」

 

神殿騎士殿は、ご不満なようで・・・!!

 

文官「ケ、ケイン卿!ニナ様、申し訳有りません!彼も悪気がある訳ではないのです!ど、どうかお怒りをお収め下さい!」

 

サトゥー(今の俺の姿は15歳の華奢な少年だ。信じられないのも無理は無い。だが、こう言う雰囲気は好ましくない。)

 

信じないケインに、サトゥーが口を開いた。

 

サトゥー「騎士様のお言葉は尤もです。ですが、私1人の力ではありません。魔族を一時的に弱体化させる秘宝(アーティファクト)や、頼もしい仲間達の助力があってこそです。

 

文官「成る程!そんな秘宝(アーティファクト)が!」

 

ライト「しかもそれは、森巨人(フォレストジャイアント)の親分から預かった魔封じの鈴と言う秘宝(アーティファクト)だ。」

 

文官「おぉ!素晴らしい!」

 

サトゥー「騎士様もどうぞお掛け下さい。」

 

2人の騎士を座らせてあげた。イケメン文官とのタッグで気まずい空気を有耶無耶にし、話題は仮面の勇者と古代の戦士と魔族の戦いへと移行した。

 

イバーサ「ヒュドラと同化!?亜竜を乗っ取るなど下級魔族では不可能だ!」

 

セーラ「中級魔族ですね・・・」

 

マップ探索では『下級魔族』となっていたが、2人は黙秘する。

 

ケイン「それで、魔族は何が目的でこの領地を襲ったのだ?」

 

ムーノ男爵「うむ。『魔族の目的は魔王の復活ではないか』と、仮面の勇者様の手紙に書かれてあった。」

 

その手紙は事件の後に、魔族の企みを伝える為にサトゥーが書いた物である。

 

イバーサ「何と魔王!?」

 

ケイン「それは一大事ではないか!」

 

セーラ「お2人共、落ち着いて下さい。」

 

イバーサ「し、しかし!」

 

ケイン「落ち着いてる場合ではありません!!」

 

セーラ「それでも、オーユゴック公爵のお守りする近衛騎士とテニオン神殿を守護する神殿騎士ですか?ムーノ男爵がこれだけ落ち着いておられるのです。恐らく、復活の企みは阻止されたと言う事で宜しいのですよね?」

 

ムーノ男爵「うむ、その通りだとも。魔族の企みは仮面の勇者様と古代の戦士様によって阻止された。」

 

イバーサ「ふー・・・」

 

ケイン「魔族はどのような企みを?」

 

ムーノ男爵「魔族は人々を虐げて、領内から負の想念を『邪念壺(カオス・ジャー)』と言う呪具に集めていたそうだ。その呪具を勇者様と戦士様が魔族と一緒に破壊して下さったのだ。」

 

ケイン「邪念壺(カオス・ジャー)・・・そうか、破壊されたのですね。」

 

応接室での会議を終え、これからは事務方の仕事が始まる。ニナ女史とイケメン文官の2人が執務室に向かった。

 

 

 

 

2人はセーラに頼まれて、城内や市内を案内する事になっている。騎士2人はそれぞれ仕事があるとかで、セーラ嬢の傍らから去り、彼等に変わって、若い男女の神殿騎士が護衛に就いた。

 

イーナ。レベル13。

 

ヒース。レベル13。

 

ライト「じゃあ、まずは何処を案内しようか?」

 

セーラ「まずはムーノ市のテニオン神殿に案内して戴けますか?その後に市内の養護院の慰問に伺いたいのですが、宜しいかしら?」

 

サトゥー「申し訳ありませんが、養護院にご案内するのは不可能です。」

 

セーラ「どうしてでしょう?どのような環境でも私は忌避したり致しませんよ?」

 

ライト「いや、そう言う訳ではないんだ。実は魔族が化けた前の執政官が2年前に市内の養護院を閉鎖してしまったんだ。」

 

セーラ「では、子供達は・・・」

 

サトゥー「ご安心下さい。子供達は城内で保護しています。(保護したのは、魔族襲撃事件後で、つい最近の話なのだが。)」

 

市壁沿いの区画整理で住む所を失った住民2000人が、城内の空き兵舎で暮らしていたのだが、既に仮設住宅の方へ移動を終え、現在では子供や老人等の一部だけが残留している。仮設住宅の者達には、区画整理で空いた土地に飢饉対策のガボ畑を作って貰っている。

 

セーラ「城内にですか?」

 

ライト「あぁ。もし良かったら案内するぞ。それとも、最初の予定通りにテニオン神殿から案内しようか?」

 

セーラ「いえ、慰問から行います!案内をお願い致します!」

 

サトゥー(・・・)

 

彼女を見て、サトゥーが何かを感じた。

 

サトゥー「・・・では、馬車に乗るまでもない距離なので、徒歩で向かおうと思いますが。」

 

セーラ「分かりました。」

 

仮設住宅へ向かう。

 

サトゥー(長旅で疲れているはずなのに、精力的と言うか、焦っているような印象を受けてしまう。丸で、余命宣告をされた人が時を惜しんでいるかのようだ。)

 

 

 

 

『BGM:平穏』

 

仮設住宅へ向かう途中、何処からか音が聞こえた。

 

セーラ「あら?変わった音色・・・」

 

ヒース「確かに聴き覚えがございませんが、心沸き立つ曲です。」

 

その曲を奏でているのは。

 

ミーア「サトゥー。ライト。」

 

ヒース「エ、エルフ!?何でこんな場所に歌姫シリトーアが?」

 

イーナ「いや、歌姫なら片手は動かないはずだから別人だ!」

 

セーラ「2人共静かに。曲が聞こえません。」

 

サトゥー「やぁミーア。」

 

ライト「良い音色だ。」

 

ミーア「・・・むぅ?」

 

彼女はセーラを見て目を細めた。

 

セーラ「初めまして。私はテニオン神殿のセーラと申します。」

 

ミーア「ん。ミーア。」

 

セーラ「演奏されているのは、ボルエナンの里に伝わる曲でしょうか?」

 

ミーア「わぐなー。」

 

首を振ってわぐなーと答えた。ミーアが奏でているのは、リヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレの騎行』。楽器が違うが、そこはミーアが自己流のアレンジを施したようだ。因みにこの曲は、サトゥーの携帯の着メロ。ミーアが一度で完璧に耳コピしたのだった。

 

ライト「ミーア、その様子だと訓練する兵士達の応援をしてるのか?」

 

ミーア「頼まれた。」

 

 

 

 

しばらくして、模擬戦が始まった。

 

ゾトル「次!ナナ殿とカリナ様の組で、リザ殿とジーク殿と対戦だ!」

 

この時のリザはレベル14まで上がってる。ジークはレベル29。

 

ライト「おぉ、リザの鎧似合ってんな。」

 

彼女が身に帯びる黒い鎧はサトゥーのお手製。ヒュドラの革と堅穀果実から作られており、鋼鉄製の物よりも格段に防御力が高い。

 

イーナ「ねぇ、あの亜人の持つ槍を見てみなよ!」

 

リザの持つ魔槍ドウマ。

 

ヒース「魔物の部位を使った武器か・・・珍しいな。」

 

イーナ「元迷宮探索者か、元魔狩人のどちらかね?」

 

サトゥー(魔狩人とはまた強そうな名前だ。後で教えて貰おう。)

 

ナナ「マスター。」

 

そこに、鎧を身に纏ったナナが来た。この時彼女のレベルは10。

 

ナナ「リザ、彼処でマスターが観戦していると報告します。」

 

サヤ「あ!ライトさん!」

 

そこにサヤがライトの隣に来た。

 

ライト「ようサヤ。ジークの観戦か?」

 

サヤ「はい!兄さんも模擬戦に誘われたので。兄さーん!頑張って下さーい!」

 

ジーク「おう!」

 

すると、カリナが大ジャンプからの宙返りで現れた。レベル8。

 

ヒース「凄い・・・!」

 

イーナ「モゲちゃえば良いのよ。」

 

彼女の魔乳にイーナが嫉妬した。

 

 

 

 

『BGM:危急』

 

ゾトル「始め!!」

 

最初にリザが走り、魔槍ドウマをナナに突き立てるが、ナナが大盾でガードした。

 

 

 

ヒース「ふむ、大盾の娘は術理魔法使いか。杖無しと言う事は触媒は指輪辺りか。」

 

ナナが使ったのは術理魔法ではなく、ホムンクルスの持つ『理術』と言う種族固有技能だ。詠唱が必要ないのが利点だが、最初から用意(プリセット)された術しか使えないのが欠点。因みに兜は魔法陣隠し。

 

サトゥー(追加インストールには専用の施設が必要らしい。)

 

イーナ「巻き髪の娘は・・・青い光ですって?」

 

ヒース「まさか、聖鎧の一種か?」

 

 

 

 

ラカ『カリナ殿!』

 

カリナ「はい!ラカさん!」

 

高速でナナの後ろを回って、リザに急接近する。

 

 

 

 

ヒース「速い!何だあの動きは!」

 

 

 

 

ジーク「ハァッ!!」

 

剣を地面に振り、風を巻き起こしてカリナを退がらせる。

 

ナナ『魔法の矢(マジック・アロー)!』

 

魔法の矢(マジック・アロー)を一斉発射。

 

 

 

 

ライト(あの野郎、模擬戦で攻撃魔法使いやがって。)

 

サトゥー(後で注意しないと。)

 

ヒース「おお!何て速い詠唱だ!」

 

イーナ「嘘でしょ!?あれを防げるの!?」

 

 

 

 

ジーク「リザ!」

 

リザ「はい!」

 

左右に避けた。

 

ナナ『シールド・バッシュ!』

 

 

 

 

サトゥー(盾の位置が少し高い。それに・・・)

 

 

 

 

カリナが誤ってナナの大盾に激突して吹き飛ばされた。

 

 

 

 

サトゥー(カリナ嬢、ナナとの連携を考えずに飛び込んだな?)

 

ライト(無闇に行くなよな。)

 

イーナ「あらら、同士討ちか・・・」

 

セーラ「大丈夫でしょうか?」

 

サトゥー「大丈夫ですよ。ほら、元気に立ち上がったでしょう?」

 

ライト「あの位元気ピンピンなら問題無い。」

 

4人の戦いは、終始リザ・ジーク組の有利で進んでいる。その原因はレベル差ではなく、ナナとカリナの連携の悪さだった。

 

 

 

 

やがてナナが戦闘不能判定され、リザ・ジークVSカリナの対決となった。リザはドウマを振った。

 

 

 

 

イーナ「魔刃?」

 

ヒース「いや、成り掛けだな・・・」

 

ライト「成り掛け?」

 

ヒース「あぁ。あの娘は魔刃を物にしようとしている。私の先輩が魔刃を覚える半年程前に、あのように魔力を残滓を曳きながら戦っていた。」

 

サトゥー(成る程、良い情報だ。多分今のリザは、魔刃スキルを覚える為のスキルポイントが足りていない状況なのだろう。旅に出たら、魔物と戦う役は優先的にリザに回すとしよう。)

 

そんな事を考えている内に、4人の戦いは終わり、ジークを除いた3人がゾトル卿から試合の反省点などを指摘された。

 

サヤ「兄さん、お疲れ様でした。お水をどうぞ。」

 

ジーク「ありがとう。」

 

ライト「良い感じな連携だったぜジーク。」

 

ジーク「リザと相性良いかも知れねぇな。」

 

その後4人と別れた。

 

 

 

 

『BGM:安穏』

 

セーラ「先程の巻き毛の方は、ムーノ男爵のご令嬢だったのですか!?」

 

サトゥー「はい。先日のムーノ市防衛戦でも最前線でご活躍でした。」

 

イーナ「丸で姫様の姉君、リーングランデ様の様ですね!」

 

セーラ「姫様は止めなさい。そうですね・・・姉上も、公爵令嬢でありながら、戦闘訓練が好きでした。」

 

イーナ「魔法もですよ!王立学院で失われた二系等の魔法を復活させたり、セリビーラの迷宮で『階層の主(フロアマスター)』を倒してみせたり!極め付けは、当代の勇者様に請われて従者になってしまうんですから!」

 

ライト(セーラ様の姉さんは常識離れした凄ぇ人なんだな。)

 

サトゥー(でも、セーラ嬢はお姉さんに隔意があるのか・・・)

 

セーラ「・・・」

 

密かに両手を握り締めた。

 

サトゥー(丸で爆発しそうな感情を押さえ込んでいるかのようだ。終始穏やかな表情の下には、激情家の側面があるのかも知れない。)

 

ポチ「あ!ご主人様とライト様なのです!!」

 

タマ「本当だ〜!」

 

兵舎の窓からポチとタマが顔を出して手を振った。

 

セーラ「耳族?」

 

サトゥー「掃除は終わったのかい?」

 

タマ「あい〜!」

 

ポチ「終わった後に皆で屋根裏の探検をしていたのです!」

 

サトゥー「偉いぞ!」

 

ライト「よーしよし!」

 

褒めて2人を撫でた。

 

ライト「ん?それ何持ってんだ?」

 

タマ「獲物〜!」

 

ポチ「ご主人様!ライト様!見てなのです!」

 

2人が持っていたのは、小さな鼠。

 

セーラ「きゃっ!!」

 

鼠を見て、セーラが怯えた。

 

イーナ「セーラ様に無礼であろう!」

 

剣を抜いた。

 

サトゥー「ッ!お待ち下さい!!」

 

イーナ「この不埒者め!!」

 

剣を振り上げた。

 

ライト「なっ!?」

 

イーナ「セーラ様から離れろ!!」

 

サトゥーに刃が迫る!

 

 

 

 

『BGM:懊悩』

 

サトゥー(剣の腹で殴る気のようだが、鋼鉄の塊をこの勢いで食らったら、普通は大怪我だ。)

 

剣を避け、顔がセーラの胸に当たった。

 

セーラ「あんっ!」

 

ライト(ほえ?)

 

サトゥー(天地神明にかけて、意図しての事ではない。)

 

すぐに離れて。

 

サトゥー「失礼しました、セーラ様。」

 

セーラ「は、はい。・・・不可抗力ですもの。気にしていません。」

 

イーナ「セーラ様!私の後ろへ!」

 

彼女を後ろに下がらせたが。

 

セーラ「イーナ、剣を納めなさい。」

 

イーナ「しかし・・・」

 

ヒース「剣を納めろイーナ!」

 

イーナ「・・・はい。」

 

剣を鞘に納めた。

 

ライト「ふぅ・・・」

 

ポチ「ご主人様・・・ライト様・・・ポチとタマは、何か悪い事をしたのです?」

 

ライト「いや、してないぞ。ただ、お前達の持ってるネズミを嫌う人も居るんだ。他の人が居る前で、急にネズミを見せたらダメだぞ?良いな?」

 

ポチ「分かったのです!驚かせてごめんなさいなのです・・・」

 

タマ「ごめんなさい・・・」

 

セーラ「いえ、此方こそ・・・」

 

すると子供達が兵舎から顔を出した。

 

ライト「お?」

 

セーラ「驚かせてしまいましたね。もう大丈夫ですよ。」

 

子供A「ししゃくさま!そうじしたよ!」

 

子供B「キレイにしたの!」

 

子供C「がんばったよ!」

 

サトゥー「皆、偉いぞ!」

 

ライト「頑張った褒美だ!」

 

甘い焼き菓子をプレゼント。この子供達が掃除していた兵舎は、オーユゴック公爵領から来た兵士達の滞在用。

 

セーラ「ここの暮らしは楽しいですか?」

 

子供A「うん!ちゃんと朝晩食べられるんだよ!」

 

子供B「たまに干し肉も食べられるのー!」

 

彼等がムーノ男爵領を去った後を考えると、子供達の生活レベルを過剰に上げるのは自重しておいた。

 

サトゥー(ご褒美に美味しい物を差し入れるくらいは大目に見て欲しい。)

 

 

 

 

『BGM:平穏』

 

その後、子供達の居住兵舎へ向かう途中。

 

タマ「良い匂い〜!」

 

ポチ「ササカマの匂いなのです!」

 

セーラ「ササカマとは、どのような物でしょう?」

 

サトゥー「魚のすり身を香草と一緒に蒸してから、小さい板状に焼いた品です。」

 

ササカマ作りとは、食糧事情の改善と、ムーノ市の特産品作りの一石二鳥を狙った物である。因みにアリサが命名した。

 

 

 

 

遠くに、ササカマ作りの調理場が見えた。

 

ルル「・・・はい。手順は大丈夫です。」

 

タスク「後は焼けば完璧だ。」

 

ライト「おーい!」

 

タスク「ん?ルル、ライトとサトゥーが来たぞ。」

 

ルル「ご主人様!」

 

彼女が今着てるのは、アリサと一緒に試作したデザインのメイド服。

 

ルル「ご主人様、ゴボウとニンジン入りの試作品が出来たんです。」

 

タスク「この調子で行けば、ササカマに困りは無いぞ。」

 

イーナ「うわっ・・・すっっごい不細工・・・」

 

ヒース「止めろ。容姿の罵倒なんて、神殿騎士の品位が下がる。」

 

この世界では、黒髪の美少女は醜女と言う扱いになってる。

 

サトゥー(こんなに可愛らしいのに、実に遺憾だ。)

 

ライト「なぁタスク、ルルの姿を見てどう思う?」

 

タスク「いや、普通に可憐だぞ。俺の国では、黒髪の少女は麗しい印象を持ってる。それより、試食してくれるか?」

 

ライト「あぁ、貰おうか。そうだ、タスク、ルル、この方はテニオン神殿のセーラ様だ。」

 

ルル「は、初めまして!」

 

タスク「初めましてセーラ様、お会い出来て光栄です。」

 

タマ「試食する〜!」

 

ポチ「ポチも試食するのに()()()()ではないのです!」

 

サトゥー(ポチ、それは吝かだ・・・)

 

 

 

 

ササカマを調理。

 

タマ「良い匂い〜!」

 

ポチ「なのです!」

 

女性「士爵様。」

 

サトゥー「調子はどうだい?」

 

女性「はい。お陰様で飢える者も、寒さに震える者もなく。皆健やかに暮らしております。本日は、どう言った御用でございましょう?」

 

サトゥー「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。この方達は慰問にいらしたテニオン神殿の方達です。」

 

女性「それはそれはありがたい事でございます。」

 

セーラ「そんなに畏まらないで下さい。病に臥せている方や、怪我で働けない方を癒そうと足を運んだだけです。案内していただけますか?」

 

女性「いえ、その・・・」

 

セーラ「どうかなさいまして?」

 

女性「それが、ここには病の者も怪我人も居ないのです。」

 

セーラ「まさか・・・傷病者は別の場所に隔離しているのですか?」

 

女性「いえ、違います。ペンドラゴン士爵とアイラ士爵が・・・」

 

子供B「まほーやくだよ!まほーやくで治してくれたの!」

 

子供A「ミーア様もドロシー様も、ローズ様もメイリン様もまほーでケガを治してくれたんだよ!」

 

イーナ「魔法薬?」

 

ヒース「まさか、高価な魔法薬(ポーション)を配ったのか?」

 

女性「はい。死を待つばかりだった重病者から骨折で動けぬ者まで、何十人もの者達が士爵様の下賜して下さった魔法薬(ポーション)で癒されたのでございます。」

 

彼等を治したかったのは勿論だが、実際の所は完成した各種魔法薬(ポーション)の効果がどれ程なのか確認したかったのだ。

 

サトゥー(今回の経験は、今後の役に立ちそうだ。)

 

女性「その上、こうして将来自立出来るようにと、手に職を付ける為の訓練までしていただいているのです。」

 

セーラ「まぁ!なんて素晴らしいのかしら!」

 

 

 

 

アリサ「居たー!ご主人様ー!ライト様ー!」

 

 

 

 

そこにアリサが来た。

 

ヒース「不吉な紫髪?」

 

イーナ「呪われそう・・・」

 

セーラ「迷信で人を見下してはなりません。」

 

アリサ「見て!オニギリをゲットしたの!!」

 

立派なオニギリを見せた。

 

アリサ「ご主人様とライト様にも1個あげるね!はい!」

 

ライト「お前、白米なんて何処にあったんだ?」

 

アリサ「公爵領からの支援物資の中にあったの!で、早速料理長のゲルトさんに炊いて貰ったから、ご主人様とライト様にも食べて貰おうと捜してたのよ!」

 

サトゥー「ありがとうアリサ。」

 

アリサ「えへへ〜。ま、幸せは分かち合わないとね〜!」

 

ライト「んじゃ、戴こうか。」

 

オニギリを食べる。

 

タマ「美味しい〜?」

 

ポチ「ポチにも一口分けて欲しいのです。」

 

アリサ「ごめん、3個しか持って来られなかったのよ。厨房にあるから後で貰いに行きましょう。」

 

タマ「あい!」

 

ポチ「はいなのです!」

 

ライト「このオニギリ・・・懐かしい味がするぜ・・・」

 

サトゥー(後で食べよう。今晩は無理だが、明日の朝にもでも白米に合う日本食でも作ってアリサに振舞ってやるとしよう。)

 

その後、市内のテニオン神殿を訪問し、下町のスラム街跡地に作ったガボ畑と、長屋の建設状況を見学して廻った。

 

 

 

 

その後、ムーノ城の貴族用食堂で晩餐が開かれた。

 

ムーノ男爵「では、オーユゴック公爵と、テニオン神殿の反映と平和を願って・・・」

 

『乾杯!』

 

シガ王国では、フランス料理のコースの用に1皿ずつ順番に出て来る形式。

 

1・スープ

2・前菜

3・サラダ

4・魚料理

5・パン

6・肉料理

7・デザート

 

レシピ作成と下拵えは手伝ったが、仕上げはゲルト料理長達の腕前に任せて来た。

 

サトゥー(きっと、絶品料理で楽しませてくれるだろう。)

 

まずはスープ。

 

イーナ「ねぇヒース、領主の晩餐で塩のスープって・・・」

 

ヒース「黙れイーナ。食料不足の男爵領では止むを得ないだろう。」

 

イーナ「そうね。何処からか良い匂いがしてるし、後の料理に期待しましょう。」

 

気乗りしないままスープを啜ると。

 

イーナ「うっま!何コレ!?」

 

ヒース「話しかけるな。私はスープを味わうので忙しい。」

 

他の客達も塩のスープを頬張る。ライトとサトゥーは、後ろのメイド達にサムズアップした。

 

セーラ「こんなスープは初めて口に致しました。これは何と言う料理なのでしょう?」

 

ニナ「ペンドラゴン卿、アイラ卿、答えてやんな。」

 

ライト「それはコンソメスープと言う品だ。」

 

サトゥー「質素な料理に見えますが、様々な具材の旨みを溶け込ませた究極のスープなのです。」

 

うろ覚えの記憶を頼りにゲルト料理長と一緒に再現したスープ。本来なら琥珀色になるはずだったが、どのステップを間違えたのか、透明なスープになってしまったのだ。

 

イーナ「ねぇ、おかわりって出来ないのかな?」

 

ヒース「マナーとしては問題ないけど、実際にしている人は・・・」

 

イーナ「すみませーん!」

 

他の客達もおかわりを頼み、それはスープがなくなるまで続いてしまった。

 

 

 

 

前菜はササカマとチーズを使ったオードブル。再度にフライドポテトとポテトチップス。続くサラダには、三種のソースを用意。ムーノ城で大好評だったマヨネーズとタルタルソース。シガ王国で一般的に使われている甘いオレンジジュース。

 

 

 

 

イーナ「この白いタレ、良いね。野菜が美味しく感じたのは初めてだよ。」

 

ヒース「こっちの野菜は何だろう?白くて透き通っていて初めて食べる食感だ。」

 

イーナ「ちょっと辛いのが白いタレに合うわ。」

 

ケオン「ダイコンだと!?」

 

 

 

 

大根を選んだ時に。

 

ゲルト『公都では、大根を毛嫌いしている人も居るよ。』

 

っとゲルトが言っていた。

 

 

 

 

イーナ「ダイコンなの!?全部食べちゃったよ!」

 

ヒース「ダイコンを食べたらオークが来るなんて迷信だ。」

 

イーナ「でもダイコンだよ!?」

 

ヒース「初めて食べたけど美味かった。イーナの口には合わなかったか?」

 

イーナ「そりゃ、美味しかったけどさ。」

 

ライト(大根を毛嫌ってるのは迷信深い人か。)

 

サトゥー(公都の人に大根を使うのは止めておこう。)

 

魚料理のポジションには、テンプラを出してみた。海老天をメインに野菜三種。タレはノーマルな天つゆ。

 

イーナ「この黄色いもこもこしたのはどう言う料理なのかな?」

 

ヒース「知らないが、多分美味いと思う。」

 

サトゥー(騎士達の信頼を勝ち取れたようでちょっと誇らしい。)

 

ライト(海老天・・・久々に食えるぜ。)

 

海老天を食べる。

 

ライト(サクサクした衣に、プリプリした海老の身に甘い天つゆ・・・至福だぜこりゃ!)

 

そしてメイン料理は、毛長牛のカツレツ。ノーマルな味が3個。唐辛子の粉末を塗したのが1個。チーズと一緒に揚げたのが1個。

 

イーナ「これもサクサクで美味しい!」

 

ヒース「うん。辛い。」

 

イーナ「辛い?こっちの少し赤いヤツ?」

 

ヒース「辛いが美味い。この黄色いのはチーズがとろりと出て来てビックリするぞ。」

 

イーナ「先に言わないでよ。このサクサクとチーズのとろとろが癖になるわ。」

 

 

 

 

揚げ物続きで諄いかと思ったが。

 

ゲルト『大丈夫です!』

 

問題なかったようだ。

 

 

 

 

最後のデザートは、魅惑のパンケーキ・生クリームを載せた。

 

セーラ「まあ!最後はパンケーキですわね!」

 

文官「ほう!王都で流行と言うパンケーキですか!」

 

イーナ「この白いのって、さっきの?」

 

ヒース「あの白いタレはパンケーキには合わないと思うが・・・」

 

イーナ「食べた事ないわよ。パンケーキなんて。」

 

ライト(下級貴族クラスでも食べられないのか。)

 

サトゥー(卵が高いとかかな?)

 

イーナ「っ!?美味しい!これ凄く美味しいわよ!」

 

ヒース「本当だ!王都で食べたのより美味しいし、二重になっていて、間に薄切りにした果物を挟んであるみたいだ!」

 

イーナ「上の白いのって、どうやって作るんだろう・・・これだけでもお土産にしたいわ。」

 

ヒース「甘くて美味い。グルリアン市の銘菓と合わせたらもっと美味しいお菓子が作れそうだ。」

 

サトゥー(好評なようで良かった。)

 

ライト(大成功だな。)

 

サトゥー(男性騎士の入っていた銘菓は是非とも食べに行きたい。)

 

こうして晩餐は、招待客達の満足そうな吐息と、数々の賛辞を浴びて終了となった。

 

 

 

 

その後、ムーノ男爵の誘いで男性陣はサロンで談話と言う名の飲み会に移行し、女性陣は男爵家長女のソルナ嬢の誘いで応接室でお茶会となった。

 

 

 

 

サロンは開始1時間程で、混沌とした様相を呈して来た。

 

イバーサ「ペンドラゴン卿!アイラ卿!貴殿達は我がロイド家に仕えるべきだ!」

 

ニナ「ちょいとイバーサ卿!我がムーノ男爵領の第3位貴族を引き抜くなんて、この『鉄血』ニナの目の黒い内は決して許さないよ?」

 

途中から乱入して来たニナがイバーサに反発する。

 

サトゥー(俺達が第3位なのは、爵位持ち貴族が領内に3人しか居ないせいですけどね。)

 

ライト(貴族って大変なんだなぁ〜。)

 

ケオン「聞いておるのかペンドラゴン卿!アイラ卿!」

 

サトゥー「えぇ、聞いてますとも。」

 

ライト「そんなに近寄るな。酒臭い。」

 

ケオン「魔族と戦うなど、生涯に1度あるかどうか・・・貴殿達はその幸運に与り、私にはそんな幸運が訪れなかった!貴殿達との差はそれだけだ!判ったか?」

 

ライト・サトゥー(いや、そんな幸運は一生涯不要です。)

 

サトゥー「えぇ、その通りです。」

 

ライト「全くだぜ。」

 

ケオン「いいや!貴殿達は判っていない!」

 

文官「ケオン卿、飲み過ぎだ。ペンドラゴン士爵とアイラ士爵は此方へ。」

 

イケメン文官と勇者談義を繰り広げるムーノ男爵の所へ避難させてくれた。

 

 

 

 

『BGM:懊悩』

 

何処の世界でも絡み酒は困りもの・・・

 

イケメン文官「ーーーの書によると、王祖ヤマト様は退位後も『ミツクニ公爵』として諸領の不正を暴き、世直しの旅を続けていたと言う説があるのをご存知ですか?」

 

ムーノ男爵「うむ。知っておるとも。」

 

イケメン文官「おお!流石は勇者研究の第一人者!平民しか知らぬような物語をご存知とは!」

 

ムーノ男爵「照れますなぁ。しかし世間では、王祖ヤマト様が迷宮下層で・・・『骸の王』や『吸血鬼の真祖』を調伏し、最後に『鬼族の王』と戦って命を落とした物語『セリビーラの深遠』が有名過ぎて、そちらの世直し話は平民にしか知られていないのが悔しいですな。」

 

サトゥー(何処まで実話か判らないが、王祖ヤマトは、中々波乱万丈の人生を謳歌していたようだ。)

 

ライト「なぁ、ちょいと話を聞かせても良いか?」

 

イケメン文官「これはこれは、ムーノ市防衛線の英雄に聞いて頂けるとは恐悦至極!」

 

ライト(英雄って・・・酒に弱いのか、言葉遣いが可笑しくなってんな。)

 

イケメン文官「王祖ヤマト様の話なら、男爵閣下とも論戦を繰り広げられると自負しております!何でもお聞き下さい!」

 

ライト「王祖ヤマトが戦った魔王は、どんな相手だったんだ?」

 

イケメン文官「『黄金の猪王』ですね!」

 

サトゥー(黄金?下級魔族が言っていた「黄金の陛下」とやらの事だろうか?復活とも言っていたし、過去に出現していた魔王が蘇る可能性も考慮に入れて、ちゃんと話を聞こう。)

 

イケメン文官「黄金に輝く身体は、聖剣さえ弾き返し、両手に持った柳葉刀は2人の勇者を屠った。そう伝えられている魔王の中の魔王ですよ。王祖ヤマト様でさえ2度敗退し、3度目に天竜の協力を得て、ようやく勝てた最強と言われる魔王ですよ。」

 

サトゥー(今の話だと、勇者が3人居た計算になる。聖剣を弾き返したって事は、無敵状態とかがあるのかな?)

 

ムーノ男爵「ふむ、その見解には異議がある。最強と言うなら、神話の時代に世界中の神殿を壊して廻った『狗頭の魔王』か、パリオン神殿が勇者召還を竜神に願った『ゴブリンの魔王』ではないだろうか?」

 

イケメン文官「『ゴブリンの魔王』は、エルフ達の光舟すら沈め、神にさえ排除されなかった大魔王!そちらは判ります!ですが、『狗頭』には異論がございます!」

 

ムーノ男爵「だが、各神殿の聖典では、神敵と記される程ですぞ?」

 

イケメン文官「ええ。強いと言う点には異論がございません。ですが、かの『狗頭』は魔王ではなく、魔神の眷属。そう!『狗頭の邪神』と呼ぶべき存在だと小官は考えるのであります!」

 

ライト「激論が増していくな・・・」

 

サトゥー(うん。そう言うむやみに強そうな情報はいりません。変なフラグが立ったら、次々に復活して来そうで怖いじゃないか。特に『狗頭』さんとは絶対に会いたくないね!そうだ、話を変えよう。)

 

ここでサトゥーが割り込んだ。

 

サトゥー「王祖ヤマト様は、どのくらいのレベルか記録に残っていないのですか?」

 

イケメン文官「諸説ありますが、先程の『セリビーラの深遠』だと、レベル89と言う超人的な階位まで上り詰めたとあります。」

 

ライト(89・・・俺達から見たらまだまだだな。)

 

ムーノ男爵「ふむ。しかし歴代の勇者でレベル70を超えた者が殆ど居ない以上・・・」

 

イケメン文官「ムーノ男爵ともあろうお方が!サガ帝国の初代勇者がレベル88だったら、それに対抗して後の世のシガ王国が捏造したと言う説を推しておられるのか!?」

 

ライト(シガ王国・・・懐かしい国名だ。)

 

サトゥー(国家間の見栄の張り合いは異世界でもあるようだ。)

 

ライト「なぁ、王祖ヤマトの聖剣について話してくれるか?」

 

イケメン文官「王祖様がお作りになられた聖剣ジュルラホーンの事ですか?」

 

サトゥー(王祖が作ったのか・・・俺の持つ聖剣のレシピの出所が王祖の可能性が出て来た気がする。)

 

イケメン文官「それとも、パリオン神から授けられた『神授の聖剣』の事でしょうか?」

 

サトゥー「後者の方でお願いします。」

 

イケメン文官「実は、王祖ヤマト様がサガ帝国に勇者召喚された時の逸話は幾つかあるのですが、その時に持っていた聖剣がデュランダルかクラウソラスかで諸説ありまして・・・」

 

サトゥー(聖剣デュランダルなら、俺のストレージの中に入ってる。)

 

ライト「だったら、王祖が魔王と戦った時の聖剣の話をお願いしても良いか?」

 

イケメン文官「では、聖剣クラウソラスですね!『踊れクラウソラス!』『十三枚の刃となり天空を舞え!』と言う有名な一節がありまして・・・」

 

ホーミング機能、分身機能、伸縮機能と、信憑性の薄いとんでも話満載の聖剣の話から、王祖の色々な逸話へとシフトし、イケメン文官が酔い潰れるまで楽しい時間が続いた。

 

サトゥー(今なら、勇者ヤマトの大冒険を一冊の本に纏められそうな気分だ。)

 

 

 

 

『BGM:平穏』

 

晩餐の夜から4日が過ぎ、セーラ嬢一行が、オーユゴック公爵領へ帰還。

 

それに合わせ、ライト達もムーノ男爵領を出立する事になった。セーラ嬢一行は既に出発しており、彼等の馬車は最後の出発となる。カリナとその側仕え達もセーラ嬢一行に同行する。ムーノ男爵領での魔族騒動の顛末を認めた信書を国王に手渡す為の使者として、公都経由で王都へと向かう事になっている。

 

ルル「ご主人様、そろそろ出発のようです。」

 

タスク「ライト、出発の準備が出来たぞ。」

 

ライト「おう。今行く。」

 

ムーノ男爵「サトゥー君、ライト君、道中くれぐれもカリナの事を頼むよ。」

 

サトゥー「はい。ボルエハルト市への分岐点までですが、お任せ下さい。」

 

ボルエハルト市と言うのは、オーユゴック公爵領にあるドワーフ達の自治領の事を指す。

 

サトゥー(ファンタジー世界で超有名なドワーフにはまだ会った事がないから、非常に楽しみだ。)

 

リカルド「ライト、カリナ様を頼んだぜ。」

 

クレア「私達も、何れ追い付くからね。」

 

サヤ「それまでお会いしましょう。」

 

ライト「おう。何時でも待ってるぜ。」

 

ムーノ男爵領には、リカルド、クレア、エレナ、ロゼッタ、ティア、アイーダ、チャールズが残る事になっている。ここでの復興のボランティアとして活動するようだ。

 

ニナ「カリナ様を送ったら、帰って来ても良いんだよ?」

 

ライト「気持ちはありがたい。けど俺達にはミーアをボルエナンの森へ送り届ける使命があるからな。」

 

幾人もの有力貴族への紹介状をニナが書いてくれた。他にも彼女から配達を頼まれた書簡を何通か預かっている。

 

ニナ「アリサ殿だけでも置いて行って欲しいよ。あの子が居ないと私の仕事が倍になっちまう。」

 

アリサ「ダメよ〜。私はダーリンの側に居ないと生きていけないんだから。」

 

サトゥー(誰がダーリンだ。)

 

ライト「ん?おいサトゥー。」

 

サトゥー「何?」

 

メイド達が2人をじりじりと見てる。

 

サトゥー(え〜っと?)

 

メイドA「士爵様!行かないで下さい!」

 

突然1人のメイドがサトゥーに抱き付いた。他のメイド達もライトとサトゥーに抱き付いた。

 

メイドB「士爵様!ずっと居て下さい!」

 

メイドC「そうです!士爵様が居なくなったら誰がクレープを作ってくれるんですか!」

 

メイドD「クレープなんかよりカラアゲをもう1度!」

 

メイドE「寧ろ婿に来て、ずっとゴハンを作って下さい!」

 

メイドF「タマちゃんだけでも置いて行って下さい!」

 

メイドG「何言ってんのよ!ポチちゃんの方が可愛いでしょ!」

 

メイドH「ミーア様の曲が聴けなくなるなんて嫌ですぅ!」

 

メイドI「タスク様の料理も食べられないです!」

 

ライト(途中からタマとポチとミーアとタスクの話になっちゃった。)

 

サトゥー(餌付けしたつもりはなかったんだが、予想以上に彼女達の胃袋を掴んでいたようだ・・・おや?)

 

下を見ると、ポチとタマがメイド達と同じようにサトゥーに抱き付いてた。

 

サトゥー(メイド達の真似か?)

 

メイド長「皆さん!名残惜しいのは判りますが、士爵様が困っておられますよ!」

 

ゲルト「そうだよ。食堂に士爵様の焼いてくれたパウンドケーキがあるからね。朝の仕事が終わった順に食べに来な。」

 

メイド達「はーーい!」

 

ライト・サトゥー(ちょっと寂しい。)

 

ゲルト「朝食はまだなんだろう?士爵様の腕には敵わないが、良かったら食べておくれ。」

 

朝食が入ったバケットを渡した。

 

サトゥー「ありがとうございます。ありがたく頂きます。」

 

ニナ「旅に飽きたら、何時でも戻っておいで。」

 

サトゥー「迷宮都市で1・2年修行したら、1度戻って来ますよ。」

 

ムーノ男爵「タマ君もポチ君をくれぐれも頼むよ。」

 

ライト「おう!任せてくれ!」

 

タマ「大丈夫〜!」

 

ポチ「ポチは何処でも元気なのです!」

 

ライト「さてと。」

 

赤い球を投げ、ビートチェイサー2000を召喚した。

 

ライト「リカルド、ここを頼んだぜ。」

 

リカルド「おう!」

 

ムーノ男爵領を発ち、男爵達、リカルド達が手を振って別れた。思ったよりも居心地の良かったムーノ市に別れを告げた。

 

 

 

彼等はオーユゴック公爵領へと旅立った。旅の途中で幾度か魔物の襲撃があったが、騎士や兵隊達が始末してくれていたので、彼等は1度も出番がなかった。

 

 

 

 

 

 

『BGM:懊悩』

 

ムーノ市を出発してから5日目。ようやくボルエハルト市への岐路に辿り着いた。

 

サトゥー「では私達はここで、公都での再会を楽しみにしています。」

 

セーラ「はい。公都にいらしたら、是非テニオン神殿に尋ねてみて下さいね。」

 

カリナ「サ・・・サトペンドラゴン卿・・・どうしても一緒に公都まで行ってくれませんの?」

 

サトゥー「すみませんカリナ様。私達にはボルエハルト市までニナ様の書簡を届ける役目があるのです。」

 

セーラ「うふふ。ペンドラゴン卿とカリナ様は仲が宜しいのね。」

 

カリナ「わ、私とこの方はそのようなか、関係ではございませんわ!!」

 

ライト「セーラ嬢、カリナは純情な方だからその辺で。」

 

セーラ「うふふ。そうですわね。私達は大河沿いのグルリアン市で何日か人を待ちますので、ペンドラゴン卿とアイラ卿のご用事が短ければ、そこで合流出来るかも知れませんね。」

 

サトゥー「では、ご期待に添えるよう馬車馬達に奮闘して貰うとしましょう。」

 

こうしてセーラ嬢一行と別れ、ボルエハルト自治領に向けて馬車を出発させた。

 

 

 

 

新しいサトゥー達とタスク達の馬車は4頭曳きの箱馬車。

 

左右にドア、後ろにも窓。

 

座席を変形させるとベッドに早変わり。

 

土石を使って自作した斥力板による衝撃吸収機構。

 

新調した柔らかいクッション。

 

曳き馬が増えて、馬車本体も軽量になったので、以前よりも速力や、持久力が増して、1日の到達距離が3割増しになっている。

 

ライト「どうだタスク?新しい馬車の使い勝手は。」

 

タスク「あぁ。前の馬車より快適だ。」

 

ドロシー「本当ね。眠っちゃいそうな居心地ね。」

 

メイリン「すぅー・・・すぅー・・・」

 

ローズ「もうメイリンったら、すぐ寝ちゃって。」

 

寝てるメイリンを膝枕で寝かせてあげる。

 

サヤ「兄さん、お隣宜しいですか?」

 

ジーク「あぁ。おいで。」

 

隣にサヤを座らせ、外を眺める。

 

サトゥー「ルル。御者を替わるよ。」

 

ルル「ダメですよ。ご主人様は貴族になったんですから、御者は使用人の私に任せて貰わないと。」

 

サトゥー「そうだね。でも、横に座るのは構わないかな?」

 

ルル「はい!勿論です!」

 

アリサ「イチャイチャ野郎はここか〜?」

 

行こうとしたが、アリサに止められた。

 

ルル「アリサったら、ヤキモチ焼きね。」

 

タマ「イチャイチャ〜!」

 

ポチ「禁止なのです〜!」

 

アリサ「うげっ!」

 

今度は2人が割り込み、アリサを倒した。

 

サトゥー(タマとポチも、久々に仲間内だけなのが嬉しいのかも知れない。)

 

ミーア「禁止。」

 

今度はミーアがイチャイチャ禁止と言った。

 

ナナ「マスター、前方を見て下さいと提案します。」

 

ライト「前方?」

 

前方を見ると、何かが横たわっている。それは、大猪の死骸だった。

 

サトゥー(リザに襲い掛かって逆に倒されてしまったのだろう。)

 

タスク「サトゥー、あれで何か飯を作るか?」

 

サトゥー「そうだね。今日は猪鍋と行こうか。」

 

タマ「わ〜い!猪鍋〜!」

 

ポチ「解体は任せてなのです!」

 

サトゥー「リザ、少し先に村があるから、そこで水を使わせて貰おう。」

 

リザ「はい!ご主人様!」

 

タスク「ジーク、調理手伝ってくれるか?」

 

ジーク「あぁ。任せろ。」

 

その日の晩は、解体を行った村で猪肉を振る舞い、村の広場に馬車を停めて宿泊させて貰った。

 

 

 

 

 

 

村に泊まった翌々日。ムーノ市を出発してから7日目。ようやくボルエハルト自治領へと辿り着いた。

 

サトゥー(全マップ探査。)

 

この自治領は、オーユゴック公爵領マップの空白地帯になっていたようで、ボルエハルト自治領内には都市が1つと沢山の村がある。

 

都市の人口割合。

 

1・人族や雑多な亜人達1割

2・兎人族1割

3・鼠人族2割

4・ドワーフ6割

 

レベルで検索すると、ドハル・レベル:51の表示が出て来た。他にもレベル40超えの猛者が10人以上居た。

 

サトゥー(全てがドワーフ達だ。魔族や転移者、転生者らしき存在はオーユゴック公爵領と同様になし・・・と。)

 

ライト「ん?」

 

周囲を見ると、潅木や赤茶色に変色した茂みが増えていた。

 

ライト「タスク、どう思う?」

 

タスク「見渡す限り、何か可笑しい。何か違和感があるな。」

 

アリサ「鉱毒の影響かしら?」

 

サトゥー「さぁ、どうだろう?鉱山の近くなんて行った事がないからよく判らないよ。」

 

ミーア「むぅ。精霊。」

 

アリサ「精霊のせいって事?」

 

ミーア「違う。精霊居ない。」

 

アリサ「精霊が居ないから枯れてるの?」

 

ミーア「ん。魔素(マナ)不足。」

 

彼女が言う魔素(マナ)不足と言うのは・・・

 

 

 

〜ツヅク〜




         キャスト

       ライト:山崎大輝

      サトゥー:堀江瞬
        ポチ:河野ひより
        タマ:奥野香耶
        リザ:津田美波
       アリサ:悠木碧
        ルル:早瀬莉花
       ミーア:永野愛理
        ナナ:安野希世乃
       ジーク:相葉裕樹
        サヤ:大野柚布子
       タスク:小林裕介
      ドロシー:山村響
       ローズ:藤田咲
      メイリン:佐藤亜美菜
      リカルド:細谷佳正
       クレア:櫻川めぐ

   カリナ・ムーノ:川澄綾子
        ラカ:髙階俊嗣

      ユユリナ:青山吉能
     ムーノ男爵:田中進太郎
        ニナ:湯屋敦子
       ゲルト:定岡小百合

      イバーサ:高橋伸也
       ケオン:狩野翔
       イーナ:衣川里佳
       ヒース:興津和幸
       ゾトル:小林康介
    イケメン文官:狩野翔

       セーラ:前川涼子

DEATH MARCH63「試練」
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