デスマーチからはじまる異世界空我   作:naogran

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DEATH MARCH76「舞踏」

『BGM:懊悩』

 

思う存分魔法が使いたいと言う有紗の要望を受け、迷宮遺跡の中層へ向かう。

 

アリサ「ふーん。ここで魔王と戦ったの?」

 

サトゥー「いや、もっと下だ。」

 

アリサ「行ってみたい!」

 

ライト「何もねえぞ?」

 

アリサを抱えたサトゥーが高速移動、ライトはビートチェイサー2000で遺跡の中層へ向かう。

 

 

 

 

 

 

迷宮遺跡・中層。

 

アリサ「し・・・死ぬかと思った。」

 

サトゥー(大袈裟な奴だ。ちゃんと曲がる時は減速してたのに。)

 

ライト「ここが例の中層だ。」

 

セーラが祀られた台の上にアリサが立つ。

 

アリサ「ねぇご主人様。ライト様。魔王を倒したって事は『真の勇者』の称号を得たの?」

 

2人はアリサに真の勇者の称号を見せた。

 

アリサ「本当なんだ・・・だったらさ・・・やっぱり・・・その・・・やっぱり・・・日本に帰っちゃうの!?」

 

サトゥー「はて?」

 

ライト「何言ってんだ?ミーアを送らねえといけねぇだろ?」

 

サトゥー「その後は迷宮都市で修行だろ?それから強くなった皆と世界中を冒険して回るんだから。日本に帰るにしても、もっと先の話だよ。」

 

ライト「世界中を思う存分冒険する。俺達の楽しみだろ?」

 

だが日本へ帰る方法は未だに不明。

 

サトゥー「でも突然どうしたんだ?」

 

アリサ「だ、だって!歴代の勇者は魔王を倒して『真の勇者』になったら、神様から送還のオファーが来てたってハヤトpが言ってたんだもん!」

 

神の問いに『是』と答えると、聖剣を残して元の世界に送り返される。極悪な事に、問いは一度だけ。答えなかった場合は、そのまま『否』と答えたと同じ扱いになってしまうらしい。

 

サトゥー(全く。帰るタイミング位選ばせてやれよ。)

 

もしライトとサトゥーに送還オファーが来ても、皆が魔族に勝てるくらいに強くなってからじゃないと安心して帰れない。

 

サトゥー(そもそも俺がこの世界に来たのが普通の勇者召喚じゃない以上、帰還方法がそれかどうか判らない。)

 

ライト(俺は急に神様からクウガの力を授けられて転移されたからな。そもそも何で神様がクウガの力を持ってたのか判らねぇし。)

 

もし帰る準備が整う前にオファーが来たら、家族に手紙を届けて貰う。

 

ライト「安心しろ。勝手に居なくなったりしないから泣くな。」

 

アリサ「う、うん・・・そう言えば、ご主人様の勇者スタイルって、前に見た銀仮面に金髪カツラのままなの?姿を隠すなら、何時も同じようなローブじゃその内バレるんじゃない?」

 

サトゥー「いや。銀仮面が割れたんで、今は白仮面に紫髪のカツラだよ。服は聖職者風の高級ローブだ。」

 

一瞬で勇者ナナシに変身した。

 

アリサ「うっは!早!何その着替え!?まるでクウガとアギトみたいな変身じゃない!」

 

ナナシ「中々便利だろ?」

 

アリサ「ショタ聖職も良いわね・・・じゃなくて。衣装も普段と違うようにした方が良くない?」

 

ナナシ「そうだな。忍者か侍の格好でもするか?」

 

アリサ「そうね・・・そうだ!陰陽師!コンセプトは陰陽師で行きましょう!」

 

サトゥー「陰陽師の服装って狩衣か?」

 

アリサ「そうそれ!」

 

ライト「狩衣か。確かにしっくり来そうだな。」

 

アリサ「白をベースにして。烏帽子は落ちそうだし。仮面を隠すサークレット付きのベールを着けて。ちょっと地味だから狩衣を金糸とかで飾って・・・」

 

イメージを膨らませて、イリュージョンを発動。陰陽師スタイルのナナシの幻影が出現。

 

ライト「おお!良いじゃん!違和感ない!」

 

サトゥー「それでも地味じゃないか?」

 

アリサ「おお!素敵じゃない!でもお確かに地味ね。魔法かマジック・アイテムで派手なエフェクトを出しましょう!背中に仏みたいな光背を出すとか。天使みたいな翼を出すとか。」

 

ライト「いや、狩衣に天使の翼は合わねえだろ。」

 

ナナシに光背のエフェクトを付けてみた。

 

ライト「どうだアリサ?」

 

アリサ「ちょっと地味ね。三重にして中央から放射状の光も足しましょう。後はそうね・・・ご主人様は飛べるから足元にジェット炎を出しましょう。」

 

ライト「要望が多いわ。」

 

放射状の光を足してみた。

 

ライト「良いんじゃないか?」

 

アリサ「声とか話し方は今のまま?」

 

サトゥー「ムーノ男爵領や巫女長と話した時はこの作り声で横柄な口調。公爵の時は性別不詳の声で最小限の単語のみ。」

 

アリサ「途中で帰っちゃったのか〜。」

 

サトゥー「横柄口調の方は声こそ違ったけど、俺を連想出来ない事なかったから、公爵の時にちょっと変えてみたんだよ。」

 

アリサ「どうせなら多重人格勇者とか多人数勇者みたいにするのも良いかもね。」

 

サトゥー「それは演じ分けが面倒そうだな。」

 

ライト「声が枯れるな。」

 

アリサ「なら、デフォルトのキャラ設定をご主人様から縁遠い性格にして。さっきの横柄キャラとか、無口キャラをサブにしておけば良いんじゃない?」

 

ライト「ゲームのメインキャラとサブキャラみたいだな。」

 

サトゥー「じゃあ、俺から縁遠い性格ってどんな感じだ?」

 

アリサ「ご主人様の要素は、『老成ショタ』。『無自覚ハーレム主人公』。『理不尽チート』。それからねー・・・」

 

サトゥー「アリサ!色々不満があるのは判ったから、俺への揶揄を混ぜるのは止めろ。」

 

アリサ「そうね。ご主人様から縁遠いキャラなら、『子供』、『馴れ馴れしい』、『誰に対しても敬意を持たない』、『空気を読まない』辺りを混ぜれば良いんじゃない?」

 

 

 

 

それから小一時間。有紗にナナシ・バージョンⅢの演技指導を受けた。

 

 

 

 

アリサ「おっけー!これでどんな乙女ゲーにも出演出来るわ!」

 

ライト「ギャラ高そうだな。」

 

サトゥー(取り敢えず、この演技の出番が当分ない事を祈りたい。)

 

アリサ「何かレアドロップ無かったの?デーモン・コアとか。」

 

サトゥー(そう言うのはなかったな・・・)

 

魔王を倒した後に、地面で割れていた紫色の球体がデーモン・コアなのかも知れない。

 

サトゥー「魔王の使っていた巨大な柳葉刀とか、魔王が自分の骨から作った槍とかかな?」

 

ライト「まぁどちらにせよ。でっけェし、壊れたりするからあんまり良いアイテムじゃねぇな。」

 

アリサ「へー。」

 

この最下層にアジトでも作っていたのか、『自由の翼』の遺留物が大量にあった。

 

サトゥー「他には魔法書なんかが色々あったよ。」

 

魔王戦の戦利品には、『魔族召喚』を始めとした各種魔法書に加え、例の短角を召喚する為の特殊魔法陣の資料なども色々あった。資料の中にあった『ユリコの髪』と言う紫色の髪を編んで作られた召喚用のブーストアイテムは呪われそうだったのでストレージに送り返した。

 

アリサ「魔族召喚ってケータイとかノートPC使うんじゃないでしょうね。」

 

サトゥー「それはないよ。」

 

ライト「だとしたら世界観に合わねえだろ。」

 

 

 

 

アリサが空間魔法の慣熟訓練をする間、サトゥーもスクロールを順番に使って、魔法欄に登録し魔法欄から威力を確認していく。

 

サトゥー(念導力的な術理魔法『マジックハンド』の操作は難しいな)

 

1本の手をイメージした時は簡単だったのだが、2本に増やした別々の対象を操ろうとした途端に難易度が跳ね上がった。因みに『マジックハンド』で触った物もストレージに収納出来た。中級攻撃魔法の『アイス・ストーム』、

『サンダー・ストーム』、『インプロージョン』はアリサを屋敷に返してから実験するつもり。

 

アリサ「この『マナ・トランスファー』と『マナ・ドレイン』ってチートねぇ。」

 

サトゥー(レベル差があると言っても、対魔法使い戦で『マナ・ドレイン』はズル過ぎると言えるだろう。)

 

そして一緒に通信系や諜報系の空間魔法の使用感を試した。『遠耳』や『遠見』をお互いに使う実験をした所、サトゥーとライトは僅かに違和感を得る事が出来た。

 

ライト(勘の良い人間は嫌いだな。そいつのような奴に使うのは注意必須だな。)

 

サトゥー「刻印板を作ってここに置いておく予定なんだけど、アリサもいるだろ?」

 

アリサ「刻印板って『帰還転移』の転移先の目印に使う奴よね?それならもっと浅い階層に欲しいかな。」

 

サトゥー「それからここだけじゃなく、何箇所かに設置しよう。」

 

アリサ「刻印板ってそんなに気軽に作れるの?」

 

ライト「ああ。こいつは複雑な仕組みじゃないから作りやすいんだ。コスパも良いし。」

 

アリサ用にも予備を何個か作ってアイテムボックスにストックさせておく。

 

サトゥー「空間魔法の達人なら、1人で貿易が出来そうだな。」

 

アリサ「そんなのご主人様とライト様にしか無理よ。私じゃ精々1キロ位しか届かないもの。本当の緊急時なら『全力全開』も併用して全員で脱出出来そうよ。」

 

サトゥー「それは心強いけど、本当に必要な時以外は使うなよ?」

 

アリサ「了解!」

 

嘗て『不死の王』ゼンが死に際にくれた忠告があった。彼はユニークスキルの濫用は破滅に繋がると言っていた。

 

サトゥー(あれ?そう言えば俺のメニューにもユニークスキルだったが、何ヶ月も常用しているのに身体に異状はない。パッシブ的なスキルだから違うのだろうか?)

 

なお翌朝。『マジックハンド』を使った空中遊泳は年少組に大受けした。

 

 

 

 

 

 

『BGM:世界』

 

その夜。舞踏会のパーティー会場。

 

ルル「うわぁ〜!ご主人様見て下さい!天井が凄いですよ!」

 

アリサ「流石大国シガ王国の公爵家の舞踏会場ね〜!」

 

今日のアリサとルルは、ライト、サトゥー、タスクの調理助手として会場に訪れている。

 

メイド「士爵様。配置はこのような感じで宜しいですか?」

 

サトゥー「えぇ。素晴らしいですね。料理が更に美味しそうに見えます。」

 

ライト「お。サトゥー、来客が入り始めたぞ。」

 

サトゥー「でもあの2人は公爵と一緒に城の会議室でお仕事中のようだ。」

 

ライト「ホーエン伯爵とロイド侯爵か。」

 

本日用意した料理は4つ。1品目は公爵からリクエストを受けた特製コンソメスープ。因みに午前中にテニオン神殿に差し入れ済み。

 

貴族A「おお!これがロイド家の若者が絶賛していたスープだ!」

 

貴族B「だが水のようだぞ?」

 

貴族C「見た目に騙されるようでは美食家は名乗れぬぞ!」

 

貴族A「まさにこの芳醇な香りが実に素晴らしい。」

 

コンソメスープを実食。

 

貴族A「美味い!何だこれは!?」

 

貴族D「まさに天上の滴!馥郁たる香りに負けぬ素晴らしい美味さだ!」

 

貴族A「あぁ・・・私はこのスープを飲む為に生まれて来た!」

 

タスク「大袈裟過ぎる食レポだな。」

 

1人で何杯も飲む人が続出した為、1人3杯までと制限を付けた。

 

 

 

 

2品目の料理であるテンプラ。コンソメスープ程絶賛されなかったが、こちらも全種類を制覇する人達が続出した。

 

アリサ「こっちはイマイチね〜。結構綺麗だと思うんだけど・・・」

 

3品目の料理は、大市場の観光中に見付けた『煮凝り』をアレンジした物。貴族の食卓には並ばない種類の庶民料理と言う話だったので、京都の料亭に出て来そうな雅な工夫をしてみた。更にアリサの提案で、茶色ベースで地味にありながら、煮凝りをカラフルな食材を使う事で色鮮やかに見えるように工夫してある。

 

ライト(カラフルなのはもう1つ意味があるんだな〜これが。)

 

???「ほぅ。料理で我が公爵家の紋章を描くとは天晴れだ。王祖ヤマト様の伝記にあるゼリーと言うもののようだ。」

 

そこにリーングランデと1人の貴族がやって来た。そう。煮凝りは公爵家の紋章を描いてしまった為に、その形を崩す事を厭った貴族達が遠巻きに眺めるだけで誰も手を出さなかったのだ。

 

リーングランデ「新作なのね。3人の料理はどれも美味しいから楽しみだわ。」

 

???「ほぅ。彼らがリーンの言っていた人物か。」

 

サトゥー「初めてお目に掛かります。サトゥー・ペンドラゴン名誉士爵と申します。こちらはライト・アイラ名誉士爵、そしてタスクです。」

 

2人が一礼する。この紳士は次期公爵でリーングランデの父親。

 

リーンの父親「ペンドラゴン?アイラ?サトゥー、ライト、タスク、君達はトルマが言っていた『ムーノ市防衛戦の英雄』殿と同一人物だったのか。私が想像していたよりも華奢な若者だったのだな。」

 

ライト(トルマの野郎。後で恥ずかしい二つ名を広めるのを止めさせ姉ねえと。)

 

 

 

 

アリサ「ロビー活動とは、やるわねトルマ。」

 

隠れて料理を食べてるアリサ。

 

 

 

 

リーンの父親「トルマが自分の事を君達の活躍を語っていたよ。グルリアンでも魔族を退治したそうじゃないか。完成された美を崩すのは偲びないが、私も君達の料理には興味がある。1つ貰おう。」

 

タスク「どうぞ。」

 

公爵の紋章が描かれた煮凝りを2人に渡した。

 

リーンの父親「ふむ。初めて食べるが、実に深い味わいだ。」

 

リーングランデ「本当ですわね。この魚の物も美味しいけど、こちらの野菜のも美味しい・・・幾ら美味しくてもセーラを嫁にするのはダメよ。」

 

リーンの父親「セーラは優しい良い子だが、優し過ぎて貴族の生活に向いてないのだよ。それに今は公爵家を離れて神殿に籍を置いている。あの子を還俗させたければ、まずテニオン神殿の聖女様を口説きたまえ。」

 

サトゥー「私がセーラ様に言い寄っていると言うのはリーングランデ様の誤解なのです。」

 

2人が紋章の形を崩した事で心理的なハードルが下がったのか、他の貴族達も煮凝りに手を出し始めた。

 

タスク「俺ちょっと厨房へ行って来る。料理の手伝いをお願いされてな。」

 

ライト「おう。また後でな。」

 

厨房へ向かったタスクと入れ替わって、あの男がやって来た。

 

シャロリック「ほぅ。『辺境の英雄』から『使用人』に鞍替えしたのか?」

 

ライト(出たな無能王子。)

 

サトゥー(ってか、何処からムーノ市防衛戦の話を仕入れたのやら。)

 

リーンの父親「王子。彼は公爵家の賓客だ。今日は父が無理を言って『奇跡の料理人』として有名な彼らに料理を作って貰ったのだよ。」

 

シャロリック「!」

 

リーンの父親「彼らは私の下の娘の恩人であり、このリーンの友人でもある。彼らへの侮辱はたとえ王子でも看過出来ない。」

 

ロイド「サトゥー殿!ライト殿!究極のエビ天はまだ残っているかね!」

 

ホーエン「至高のベニショウガのテンプラは無事か!」

 

ライト(美食家のお2人が来たぞ。)

 

ロイド「うん?シャロリック王子ではないか?」

 

ホーエン「リーン様に不義理を働いただけでは足りず、サトゥー殿とライト殿の腕に傷を付けようとした愚か者か。」

 

ロイド「まさにまさに!リーン様の剣技やサトゥー殿とライト殿の料理と言う芸術を解さぬ者にセーラ様の伴侶の座は遠い!」

 

サトゥー(ちょっと2人共!)

 

ライト(庇ってくれるのはありがたいが、王族に喧嘩を売るのはどうかと思うが・・・)

 

怒りが湧いたシャロリックが剣を抜こうとした時。

 

貴族娘「まあシャロリック殿下!こんな所にいらしたのですね。こちらで是非王都のお話を聞かせて下さいな。」

 

怒りを抑えて剣を納め、貴族の女性達の方へ向かった。

 

リーンの父親「あの方も少し丸くなってくれれば良いのだが・・・」

 

リーングランデ「無理でしょう。10年前から変わりませんもの。」

 

リーンの父親「剣の腕なら王国でも屈指の腕前なのだが・・・」

 

リーングランデ「お父様。強さと人格は比例しないわ。もし比例するならハヤトだってもっと・・・はっ・・・」

 

ライト「?」

 

 

 

 

慰めるのも変なので、公爵が顔を見せたタイミングで皆にコンソメスープを勧めて、場を和やかムードに書き換えた。

 

サトゥー(やっぱり料理は楽しく食べないとね。)

 

公爵達やリーングランデと共に年配の貴族達が去ると、遠巻きにこちらを見ていた貴族の若者達が興味深そうに集まって来て、3人の料理を我先にと確保した舌鼓を打っていた。

 

カリナ「ペンドラゴン卿。アイラ卿。少し良いかしら?」

 

そこにカリナが、1人の若い男性を連れてやって来た。

 

サトゥー「これはカリナ様。そちらがご自慢の弟弟君ですね。初めまして、私はサトゥー・ペンドラゴン名誉士爵と申します。以後お見知り置きを。」

 

ライト「ライト・アイラ名誉士爵だ。」

 

オリオン「うむ、オリオン・ムーノだ。ペンドラゴン士爵。アイラ士爵。よしなに頼む。」

 

挨拶した2人が向かった会場の中央ではダンスが盛況だ。ダンスエリアの外縁では、若い男性貴族が貴族娘を口説いてダンス会場へと誘っている。

 

 

 

 

ラストの4品目はデザートのクレープ。立食だが手掴みはNGらしいので一工夫してある。

 

カリナ「・・・・・!!」

 

実食したカリナが感動し、オリオンが他の貴族娘にダンスの誘いをしている。

 

サトゥー(頑張れ少年少女。)

 

アリサ「ちょっと年寄り臭い顔してるわよ。」

 

ライト「誰かの父親になってんぞお前。」

 

そう言いながらクレープを手で持って食べるライトとアリサ。遠くから、やんわりと見守る姿勢で・・・

 

 

 

 

少女達の求めに応えて、クレープを焼き続ける。貴族の礼服を着ているせいか、お互い自己紹介し合うので、100人以上の少女の名前を覚えてしまった。途中で用意していた材料が尽きたので、ルルとアリサに頼んで、作り置きして冷やしてある生クリームやイチゴを厨房まで取りに行って貰う。

 

サトゥー(これでちょっと休憩出来る。)

 

貴族娘「し、士爵様!宜しかったら私と踊って頂けませんか!」

 

そこに、1人の貴族娘がサトゥーを踊りに誘った。

 

サトゥー「はい。私で宜しければ喜んで。」

 

 

 

 

誘われたサトゥーが貴族娘と踊る。娘は少々緊張している様子。

 

サトゥー「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。周りの人は木石とでも思えば良いんです。私の事は、父親や兄のようなものと気楽に思って下さい。」

 

 

 

 

ライト「流石サトゥー。フォローも上手い。」

 

貴族娘「士爵様、私と踊って頂けませんか?」

 

ライト「えぇ。宜しいですよ。」

 

今度はライトも踊りに誘われた。

 

 

 

 

その後は次々と娘達からダンスパートナーの申し込みがあった。

 

サトゥー(社交界デビューの丁度良い練習相手と判断されたようだ。)

 

その折に、何人かの少女から家に遊びに来ないかと誘われた。なるべく承諾するようにしておく。

 

サトゥー(彼女達の実家が見学を希望していた工房のオーナーだった事もあるが、それよりも王子のような権力を持った敵対者対策として多くの貴族達と交流を持っておこう。)

 

そして、補充した材料も消費し尽くしたので、帰る事にする。

 

ルル「厨房に忘れ物をしたので取って来ますね!」

 

タスク「俺も厨房に忘れ物があった。すぐ戻って来る。」

 

忘れ物を取りに厨房へ走った。

 

 

 

 

 

 

『BGM:平穏』

 

中庭。ここに居るのは、ライトとサトゥーとアリサ。

 

アリサ「ここまで会場の音楽が聞こえて来るのね。」

 

サトゥー「そうだな。」

 

ライト「中庭で聞くと心地良いな。」

 

アリサ「随分ロリっ子達にモテてたわね?」

 

サトゥー「そうか?男性に慣れる為の練習相手だろ。」

 

そう言って椅子から立った。

 

アリサ「・・・怒った?」

 

サトゥー「まさか。それよりお嬢様、私めと1曲踊って頂けませんか?」

 

アリサ「ええ?え〜っと・・・えぇ!喜んで!」

 

一瞬戸惑ったアリサだが、サトゥーの申しを受け踊った。

 

ライト「ほほ〜。ショタとお姉さんの念願の踊り。」

 

そこに、ルルとタスクが戻って来た。

 

ルル「お待たせしましたご主人様。アリサ。」

 

タスク「ライト、お待たせ。」

 

ルル「遠くから見ても綺麗ですよね。」

 

外から見るホールが綺麗に輝いている。

 

サトゥー「お嬢さん、1曲如何ですか?」

 

ルル「は、はい!喜んで!」

 

今度はルルと踊る。

 

ルル「あぁ・・・夢みたいです!」

 

サトゥー「それは良かった。」

 

アリサ「ちょ、ちょっと!何時までも2人だけで踊ってないで代わってよ〜!」

 

ルル「うふふ。アリサったら可愛い。」

 

ライト「我慢しろアリサ。」

 

サトゥー(たまにはこんな日も良いものだ。)

 

 

 

 

その日から多忙な日々が始まった。令嬢や夫人方が開催するお茶会にお邪魔している。こっちの習慣では、初参加のお茶会に招かれた時に贈り物をするのが普通らしい。

 

トルマ「こんばんは。お嬢さん達からお茶会に誘われたみたいだから、派閥とか姻戚なんかを教えてあげようかと思って。」

 

お陰で分厚いノート1冊分の情報を入手出来た。

 

トルマ「ま、犬猿の仲のロイド侯とホーエン伯の仲を取り持った2人には余計なお世話かも知れないけどさ。」

 

ライト「え?あの2人犬猿の仲だったの?」

 

トルマ「仲良しね。本当に2人は不思議な少年だよ。」

 

そんな援護射撃の甲斐があり、お茶会は順調に進んだ。贈り物は自作して用意してみた。2人が作ったペンダントとイヤリング。

 

貴族娘「お母様ご覧になって!」

 

貴族夫人「まぁ!なんて素敵なのかしら!」

 

光石に魔法文字ルーンを刻んであり、魔力を流すと光るだけの単純な物だが、これが好評。

 

貴族娘「素敵ね!招福のルーンよ!」

 

貴族夫人「こちらは武勇のルーンだわ!街道巡回を指揮するお父様に持っていただきましょう!」

 

 

 

 

因みにこれらの作者を聞かれた時は、適当な名前で応えてある。ただ、このお土産は受け過ぎたようで、隔日程度の予定が毎日になり、1日1軒のはずが、最終的に1日3軒にまで増えた。

 

ライト「うへ〜忙しい忙しい〜。」

 

お陰で仲良くなった貴族家が保有する工房の見学許可を貰えたり、処分に困っていた食料品をムーノ男爵領への支援物資として格安あるいは無料で提供して貰えた。

 

 

 

 

『BGM:安穏』

 

最も、知り合いの貴族が増えるのは良い事ばかりではない。

 

アリサ「おかえりー。ご主人様、ライト様、お手紙と見合い写真が来てたわよ。」

 

サトゥー「またか・・・」

 

ライト「忙しいな俺ら。」

 

タマ「カリナ大丈夫〜?」

 

ポチ「しっかりするのです!傷は浅いのですよ!」

 

メイリン「カリナ様!お気を確かに!」

 

ぐったりしてるカリナをポチとタマとメイリンが慰める。

 

カリナ「・・・タマ・・・ポチ・・・メイリン・・・」

 

彼女の交友範囲を広げようとお茶会に連れて行ってるのだが、今1つ芳しくない。

 

 

 

 

サトゥー「ルル。悪いけど、青紅茶は書斎の方に持って来て。」

 

ルル「はいご主人様!」

 

アリサ「写真も見ずに断るの?」

 

ライト「見てから断る方が失礼だろ?」

 

2人が手紙を書いた。

 

サトゥー「ルル。これを執事に。」

 

ライト「これも頼む。」

 

ルル「はい。」

 

手紙をルルに渡し、持って行ってもらった。

 

ミーア「サトゥー?ライト?」

 

ナナ「マスター。また出掛けるのですかと問います。」

 

サトゥー「ごめんね。ロイド侯爵の晩餐会に呼ばれているんだよ。」

 

アリサ「え〜!またぁ?昨日はホーエン伯爵のトコだったじゃない!」

 

ライト「ここん所日替わりでお茶会が開かれるからな。」

 

ドロシー「人気者ねライトも。」

 

ローズ「あんまり無茶して飲み過ぎないようにね?」

 

ライト「紅茶だから酔わねえよ。」

 

両家の料理人にテンプラのレシピを提供してあるので、ちゃんと客として招かれている。

 

 

 

 

 

 

ロイド侯爵家。

 

料理長「士爵様。先程の料理は如何でしょうか?」

 

サトゥー「素晴らしい鴨肉料理でした。とても美味しかったですよ。」

 

ライト「どれも絶品だ。素晴らしい。」

 

アドバイスを引き換えに、見知らぬ調理技法を教えて貰った。

 

 

 

 

ロイド侯爵「サトゥー殿。ライト殿。今宵も励むのかな?」

 

サトゥー「えぇ。お許しいただけますなら。」

 

許可を貰ってロイド侯爵の書庫へと足を踏み入れる。これらの閲覧許可は、コンソメスープのレシピ公開と調理に必須なオリジナル水魔法の提供と引き換えに得られた。ホーエン伯爵やオーユゴック公爵滞在先のウォルゴック前伯爵ともどうようの契約を結んで、貴重な書籍を閲覧させて貰っている。

 

サトゥー(お陰で上級魔法のラインナップがかなり増えた。自分には使えないけどね。)

 

称号『書庫の主』と『書を司る者』を獲得。

 

 

 

 

 

 

夜会から6日目の朝を迎えた。

 

サトゥー(前衛陣が戦闘訓練をしている。)

 

ライト「おーいお前達ー!」

 

タマ「ご主人様〜!ライト様〜!」

 

ポチ「ご主人様とライト様なのです!ポチの修行の成果を見て欲しいのです!」

 

リザ「2人共、汚れた手でお2人の外出着を触ってはいけません。」

 

ナナ「マスター。修行の成果を褒めて欲しいと訴えます。」

 

カジロ「折角の若様のおいでだ!2対2に分かれて修行の成果を見せてやれ!」

 

武術指導をしてくれているカジロの言葉で模擬戦が始まった。

 

カジロ「何時もの様に隙だらけだと、アヤウメが奇襲をしてくるから注意しろ!」

 

この訓練は対盗賊戦を想定している。

 

サトゥー(確かに以前よりも隙がない。)

 

特に攻撃一辺倒だったポチが周囲にも気を配るようになっている。たまに隙が出来ると、的確にアヤウメの射る矢が飛んで来たり、樹上から奇襲されて小枝で叩かれるそうだ。この奇襲を受けた回数で罰訓練が行われるらしい。訓練はリザとタマのコンビの勝ちだったが、ナナとポチのペアも中々だった。

 

的確な訓練で、増強されるパワー!

 

 

 

〜ツヅク〜




         キャスト

       ライト:山崎大輝

      サトゥー:堀江瞬
        ポチ:河野ひより
        タマ:奥野香耶
        リザ:津田美波
       アリサ:悠木碧
        ルル:早瀬莉花
       ミーア:永野愛理
       ジーク:相葉裕樹
       タスク:小林裕介
      ドロシー:山村響
       ローズ:藤田咲
      メイリン:佐藤亜美菜

   カリナ・ムーノ:川澄綾子
  オリオン・ムーノ:広瀬裕也

        女性:衣川里佳
       カジロ:田中進太郎

   リーングランデ:Lynn
    リーンの父親:咲野俊介

    シャロリック:松風雅也

DEATH MARCH77「決戦」
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