少女と戦車と役人と   作:夜郎自大

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 いつの間にかUAが1千件を超えていました。こんな内容なのに多くの方に読んでいただき本当にありがとうございます。
 ですが、今回の内容は怒られるかもしれません…。


第3話:負担金、出します!

「それが、「廃校」にする気はないって今回も言ってるんですよね、県の教育委員会。」

 

 角谷の一言で左右に座る大人たちは一斉に彼女の方を見た。

 既に腰を浮かしかけていた児玉は再びソファにかけ直した。

 

「それはどういう意味かな?」

 

「私は全国大会前に話を聞いてるから何となく分かってるんですけど、上手いこと説明できないんで。むしろここは本職の方に聞いていただければと思います」

 

 角谷はあっけらかんと辻にお鉢を回した。辻は苦笑するしかなかった。彼女たちにとっては些細な問題であろうと思い、あえて指摘するのを避けてきたことを彼女はあっさりと口にしたのである。

 

「一般的な目から見れば県立大洗女子学園は「廃校」になると思われるかもしれません。しかし、行政で「廃校」とは行政目的の「廃止」を指すとされています。「廃止」するには茨城県県立学校設置条例から県立大洗女子学園を削除する必要があるのです」

 

 茨城県教委員会の体の良いたらい回しの口実でしかないのだが、県立大洗女子学園、正式には県立大洗女子学園高等学校及び県立大洗女子学園高等学校附属中学校は「廃校」にはならない。今年度、茨城県議会に提出される見込みである議案「茨城県県立学校設置条例の一部を改正する条例」の内容は、高等学校と中学校の位置をそれぞれ定めている設置条例の別表1と別表2について、高等学校を学園艦から大洗町大貫町へ、中学校を学園艦から大洗町成田町に改めるものになっている。なので、県教育委員会の認識としては、県立大洗女子学園を行政目的の「廃止」、即ち「廃校」にするのではなく、学園の「位置を変更するもの」、つまり「移設」なのである。

 

 ただし、単に「移設」といってもその規模は尋常ではない。何せ中学校と高等学校併せて1万人以上の生徒を抱えた学校の「移設」である。学園艦に位置していた時は中学校と高等学校それぞれが隣接していたが、移設後については隣接は愚か、移設先としている旧大洗町立大貫小学校や旧大洗町立夏海小学校の跡地でも到底生徒を収容しきれず、多数あった学科をも解体し、それぞれ陸上にある高等学校や中学校に分散配置することになっている。また、この分散配置も茨城県の水戸市を中心とした大洗町を含む旧通学区域を越え、農業科や普通科の一部に至っては、遠くは久慈郡の県立大子清流高等学校への編入を余儀なくされる者もいるほどである。

 もはや、県立大洗女子学園の移設は「移設」などではなく、学園そのものが解体されると言っても過言ではない。ましてや、それに加えて大洗女子学園が移設された後の学園艦は「処分」されるのであるから、行政のことが分からない人間から見れば、どうしても「廃校」のイメージが先行してしまうのである。

 

「現在の茨城県の方向性としては現時点においても「移設」であると私は聞いております。ですが、「移設」にともなって学園艦は「処分」されますし、学科の分散配置によって一部生徒が転学を余儀なくされることから、「学園」が、実態として無くなる「廃校」と見られても致し方のないことだとも理解しています。あなたの知る学園ではなくなるのですから」

 

 辻はさも同情しているかのような顔で角谷を見た。その辻の表情が余りにも芝居がかっていたのか今度は角谷が苦笑する番となった。

 

「ちょっと待ってください。一つお聞きしたいのですが」

 

 何かに思い当たったのか蝶野が訊ねる。

 

「私、角谷さんからは大洗女子学園の「廃校」が正式に「決定」されたというふうに聞いておりました。ですが、今までの辻さんのお話ですと大洗女子学園は「廃校」にはならないと、辻さんと我々とで一つ、前提に対する認識の違いが明らかになったのではないかと思います」

 

 この場にいる誰もが蝶野の言い回しに回りくどさを感じたが、蝶野は依然として慎重に言葉を選ぶ。

 

「そうすると、もう一つの前提である「決定」についても我々と辻さんとで、何か重大な認識の齟齬がないでしょうか。すいません、私現場主義なので行政には疎いものでして」

 

 最後の一言は辻にはもう聞こえていなかった。辻の頭は今回の件における「決定」とは何か、県と国との意思決定のプロセス、いつどこで何が「決定」されたのかを頭の中で必死に追いかけていた

 

 そもそも、大洗女子学園「廃校」に関する全ての問題は、茨城県が国に支払う「学園艦の維持管理及び運営に係る負担金」の問題から始まったのである。

 




 ハイ、というわけで第3話です。今回は少し短いです。スイマセン。
 ここから意思決定のプロセスの仮説に入ると流石に説明が長くなるなと…。小説的には蝶野さんが何か思い当たった時点で「まだ、「決定」されたわけじゃありませんよね」とかいうふうに続けた方がよかったのかなとは思ってます。

 さて、今回は書くのに今までで一番苦しみ悩みました。
 だって、辻さん劇場版で「君たちはもう生徒ではない」なんて言うから。
 
 まず、学園の定義って何なのか。確認したところ明確に法律等で定められてはいないみたいなんですよね。

(強いて学園に関する法律を挙げるとすれば「放送大学学園法」に放送大学学園の業務は「放送大学を設置し、これを運営すること」と定められていることから、何となく学園は学校の上位的存在なのかなとイメージできるかと思います)

 私最初学園の名を冠する公立学校なんか全然ないだろうと思ってたんですが想像したより結構あるんですね。びっくりしました。児童福祉法関係の施設を除いて、タイプとしては、併設型中高一貫校、定時制・通信制、その他少数といった感じでそれなりに存在しているようでした。

 ということから県立大洗女子学園は併設型中高一貫校タイプに該当するという前提で、どうしたら彼らを学園の生徒で失くせるのか考えました。(大洗女子学園高等学校にすれば良かったと激しく後悔、修正しました。)

 そのあたりの経緯はまだここでは書けませんが、最終的には「学園艦」の生徒でなくなるという無難なところに落ち着きました。

 あと、大洗戦車道メンバーの連れていかれた旧上岡小学校のある大子町って、全然大洗町から遠いじゃないですか!県立大子清流高等学校への編入・転学設定を出したのは半ばヤケクソです。関係者の方々申し訳ありませんでした。

 大洗女子学園移設先に設定した旧夏海小学校と旧大貫小学校については2017年11月末から2018年2月まで大洗町が跡地利用の提案募集をしていたようです。折角なので大洗女子学園を移設してみました。
 大洗町の財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例を適用すれば、県は学園艦よりも確実に安く学校運営ができるはず…。

次話も、もしよろしければお付き合いください。もうそろそろ、本編劇中に出てきたあるものを使って角谷さんの反撃を書きたいと思ってます。あとちゃんと戦車も出します。

お読みいただきありがとうございました。
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