少女と戦車と役人と   作:夜郎自大

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更新遅くて申し訳ありません。


第4話:行財政改革です!

 そもそも、大洗女子学園「廃校」に関する全ての問題は、茨城県が国に支払う「学園艦の維持管理及び運営に係る負担金」の問題から始まったのである。

 

 「学園艦の維持管理及び運営に係る負担金」は茨城県の学校施設管理事業で支出される歳出費用の一つである。県立大洗女子学園及びその学園艦を運営するにあたり、学園艦を維持管理している国に対して、消耗品費や燃料費をはじめとして入渠費用や大洗港以外の港湾施設・通信施設の使用料といった費用の3分の1を負担する経費である。この負担金の費用が経常的に茨城県の教育費を圧迫し、学校としての実績に乏しく、生徒数が減る中で、その費用対効果は厳しい目で見られていた。

 

 事の発端は、今から5年前、茨城県行財政改革推進懇談会が県に提出した「茨城県行財政改革大綱(案)」にあった。この大綱自体は平成7年に策定されてから数次にわたる改定や変更が重ねられており、特に目新しいものではないのだが、5年前に提出された案に基づき改定された大綱の「補助金等の見直し」の項目に「施設等に係る負担金の見直しを検討する。」との文言が加えられたことから大洗女子学園の運命は一変する。

 

 策定された大綱を基に茨城県側は、まず負担率の見直しを国に求めた。勿論国として、国側の負担が増える負担率の見直しは応じるわけにはいかない。学園艦の維持管理に関する費用は、国においてもその費用対効果を長年疑問視され続けてきた。国の行政刷新会議における事業レビュー等で度々槍玉に上がるのを、この負担金の存在によってかわし続けてきたのである。

 次に、県は国に学園艦に対する新たな補助金の創設を求めるも、これも陸上にある高等学校との公平性の観点から無理な相談であった。

 そして最後の手段として県は、学園艦の維持管理及び運営に係る負担金の「抜本的見直し」、即ち5年後の負担金の予算措置を取り止めることとし、県立大洗女子学園の「移設」を前提とした「高等学校再編整備のための基本計画」を茨城県高等学校審議会の同意を得て策定、茨城県執行部の県立大洗女子学園「移設」の「方針」が正式に決定されたのである。

 

 国側の動き自体は、茨城県執行部の「移設」の「方針」が決定された後から進み始めている。文科省としても将来的に県立大洗女子学園の、学園艦の学園たる実態がなくなるにあたって、その学園艦の在り方について検討がなされた。検討がなされたといっても、財政的余裕がない中で行政として必要とされない学園艦を保持できるわけもなく、かといって老朽化が進み民間の貰い手があるわけがないのである。文科省としては、茨城県が県立大洗女子学園を移設させるのに伴い、学園艦を「処分」する以外考えられなかった。

 

 これらを踏まえて、3年前に文科省と茨城県とで、大洗女子学園及び大洗女子学園が位置する学園艦の扱いについて協議がもたれ、その協議を要約すると以下の事項が両者によって確認されたのである。

 

1.3年後、茨城県が次年度の学園艦維持管理及び運営に係る負担金を予算計上しないと認められる場合、国は茨城県と締結している学園艦に係る貸与契約を解除する。

 

2.茨城県は学園艦に係る貸与契約が解除される場合、茨城県県立学校設置条例の一部を改正し、現在学園艦に位置する大洗女子学園の位置を変更する。

 

3.国は改正茨城県県立学校設置条例の施行の後、現在大洗女子学園が位置する学園艦を処分する。

 

4.学園艦処分の際、学園艦に事業所を置く者並びに学園艦内の事業所に雇用される者の退艦にあたっては、茨城労働局が事業所の再開又は雇用について補助又は優先的な斡旋を行う。

 

5.県立大洗女子学園生徒は原則として一部学科を除き引き続き同校の生徒とする。なお、一部学科の生徒については他の県立学校への転学の扱いとする。

 

 そして、この両者の確認事項を基に、2年前の3月、茨城県執行部は、1.の経緯を茨城県議会に説明した上で、県立大洗女子学園の移転先となる旧大洗町立小学校2校の譲与受け入れと、その改修に係る業者との工事請負契約の締結、その予算計上について諮り、結果それらは全て可決されている。文科省もその県の動きと併せて次年度の「学園艦」の「処分」に向けた準備を粛々と進めてきたのである。

 

 ここまでの経緯についての説明を終えて、辻は一息つく。

 

「かかるように、「移設」についての「方針」は既に決定されておりますので、認識についての祖語はないように思っております」

 

 蝶野は自らの疑問が氷解したかのように晴れやかな顔になった。そして意地悪く辻に尋ねた。

 

「「移設」についての「方針」が決定されたことは分かりました。ですが「移設」そのものは決定されているのでしょうか?また、「処分」についても決定されていないんじゃないですか?」

 

「確かに、「移設」そのものについての決定はされておりません。また「処分」についてもあくまでも担当部局の「考え」にとどまっております」

 

 必死に他の説明を考えはするものの辻には、こう答えるしかなかった。

 茨城県県立学校設置条例という条例を改正する必要がある以上、「移設」そのものは茨城県議会の議決が不可欠であるし、国にしても、その茨城県議会の議決がなければ具体的に動くことはできないのである。

 

「何かおかしいと思ってたんですよね。最初は年度末で「廃校」って言われてたものが、8月31日付けで「廃校」って言われたものですから」

 

 半ば棒読みのような口調で角谷が話に加わる。

 

「いえ、ですから8月31日の件に関しては、学園艦に重大な損傷が認められたことから、その安全性の観点から学園自体は臨時の休校の措置とし、住民の方々には当初の予定より早く退艦していただいただけでして」

 

「それは本当なのですか?」

 

 辻の苦しそうな説明に対して西住が噛みつく。

 辻は嘘は言っていない。全国大会後、国が「処分」を再検討する際に学園艦の点検を実施したのだが、その際に重大な損傷は見つかっている。辻として後ろめたいのは、県立大洗女子学園の「移設」と学園艦の「処分」が半ば既定路線として進んでいただけに、国も県も当初に予算計上していなかった巨額の工事費用の工面と執行とをためらい、国・県とが協議して、当初は年度末の茨城県議会第1回定例会(通称:3月議会)に「移設」を提案しようとしていたものを、第3回定例会(通称:9月議会)に前倒ししようとしていたところにある。

 

「「決定」されてないってことは、まだチャンスはあるってことですよね?」

 

 角谷が辻に詰め寄る。

 

「まあ、そういうことになるのでしょうか?」

 

 正式な決定はなされていない。確かにそのとおりではある。だが、県立大洗女子学園が生き残るためには、9月議会において、茨城県県立学校設置条例の一部を改正する条例が否決される必要がある。しかし、これまでの経緯がある以上それは高い壁であるように辻には思えた。

 

「とにかく、その議会に間に合うように大学選抜との試合をセッティングしてください。話はそれからです」

 

「しかし、急に言われましても…。議会も9月に入る前には日程等が決まるため、今週中に準備を整えなくてはなりませんし。事前の調整等もあるので全国戦車道連盟としても困るのではないですか」

 

 角谷に詰め寄られた辻は、あえてここで児玉に話を振った。急な試合のセッティングとなるため、全国戦車道連盟としても調整が難しいのではないだろうかという計算が働いた。

 

「そんな厳しいスケジュールになるのですか…」

 

 辻の想定通り、ここで児玉が渋った。しかし、ここで角谷は一枚の紙を取り出した。

 

「試合、セッティングしてもらわないと、これを提出せざるを得なくなるかもしれませんね」

 




 ハイ、というわけで第4話です。期間が開いた上、拙い文章で大層読みにくかったと思います。お読みいただきありがとうございました。

 今回は色々面倒な中二的な単語が大量に出て来て面倒臭かったです。

 まず、茨城県側の主体の使い分けが非常に面倒臭い。茨城県なのか、茨城県議会なのか、教育委員会なのかといった感じの奴です。
 自分としては・・・
 茨城県=茨城県議会+茨城県執行部
 茨城県執行部=茨城県知事部局(トップが県知事)
        +茨城県教育委員会(トップが教育長or委員長(?))
        +各種行政委員会(今回は出番は無いけど…一応)

 (というイメージなのですが、合ってるかな?)
 という感じで使い分けたかったのですが、特に茨城県と茨城県執行部の使い分けが多分上手くいってないので、最後まで書いた段階で整理しようかなと思ってます。

 
 行財政改革推進懇談会と高等学校審議会の二つの外部有識者の会議体。この関係性も面倒臭いなと思いまして…。名前的に行財政改革推進懇談会の方が偉そうな感じがするのですが、格的には、高等学校審議会の方が格上なわけですよ。高等学校審議会が茨城県行政組織条例第22条に定められた、教育委員会の求めに応じて審議して意見を言える会議体なのに対して、行財政改革推進懇談会は、あくまでも「懇談会」、言ってしまえば自由に「お喋り」する会なわけですよ(要綱の定めはあります)。
 ただ、この懇談会で出た結論が、行財政改革推進本部っていう知事を中心とした教育長もメンバーに含めた内部の会議で決定されるので、教育委員会にしか意見が言えない高等学校審議会よりも発言力はあるわけですね。


 あと今回、負担金とは何ぞやという話だと思いますが、負担金とはざっくり言うと、国や地方公共団体、民間団体が実施している事業や活動について、その事業や活動が自分たちの利益になってる場合支出できるお金になります。研修会や会議の会費だったり、場合によっては実態として施設の使用料のようなものを負担金として支払ってる場合もあるようです。
 では、なぜその負担金が「補助金等の見直し」に引っかかるかと言うと、行政の歳出科目には節という区分があるのですが、その第19節にあたる区分が負担金補助及び交付金となっており、補助金、負担金、交付金と一括りにされているのです。なので補助金「等」というわけです。

 次回にはようやく戦車の話も出せるし、あと2話程度で終わりかなと思ってます。
 今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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