ハゴロモ達を森へ見送った後、ルートとメアリーは早速調理場の準備を始める。
「と言っても、六人分の料理なんてしたことないからよくわかんないなぁ・・・」
ルートが料理をするときは大抵一人の時かメアリーもしくは師匠の分もというくらいなので二人分以上は作ったことが無いのだ。
「まぁ初日なんだし全部網焼きでいいんじゃないかい?まだどんな食材採ってくるかも分かんないんだしさ」
たしかに、今日の食べっぷりや食の好みを聞いてから判断していこう。
増えたと言ってもいつもの3倍程だ、たいした手間じゃない・・・こともないかもしれない。
昨晩はなかなかの食いっぷりを発揮していた。
特にカンナとハゴロモが。
その思いに答えるかのように森の方では時偶轟音が響いてくる。
「派手にヤってるッスね~狩り尽くしちゃうんじゃないッスか~?」
寝床の用意が終わったのか森の方を眺めて呟きながら近づいてくる。
ロックが作ったであろう寝床を見ると・・・それは立派な屋根つきの寝床ができていた。
一部屋一部屋区切られており壁には棚まで設置してある。
一部屋少なくとも三畳はあり寝るだけなら何ら問題ない広さだ。
部屋は円状に隣接しており真ん中には団欒スペースまである。
この短時間でこの仕事ぶり、流石ドワーフというべきかはたまたこの少年の創作意欲が凄すぎるのか・・・
「いや~、作り始めたら止まらなくなっちゃったッス~・・・いずれは内風呂付きなんかも作りたいッスね!」
すでに頭の中で設計し始めているのか、『あれをこうして・・・いや、それだと収納が・・・』等と自分で作った寝床を見ながらブツブツと考え込み始めた。
そんなことをしているうちにハゴロモ達が帰ってきた。
「大漁じゃぞ~・・・ホレ~~ッ!」
ボトボトボトッ!!
普通の鳥や魔物の鳥、猪など大量の動物の死骸の小山が出てきた。
一応山菜や木の実などもちょこっと確認できる。
というか、あんな轟音を響かせていたわりには獲物に傷が少ないような・・・
「途中何度か力加減を失敗してしまってのぉ~、本当はこの倍はあったのじゃが・・・」
こちらの思いを察したのか自白してくる。
というか今日の晩ごはんの為にどれだけ狩ったんだろう。
「ですから事前にやり過ぎないようにと注意をしたのに!あれでは生態系が狂ってしまいます!」
「ぬぅ・・・か、カンナだって槌で思いっきりぶっ叩いておったではないか!」
「カンナは食べられなくするほど攻撃していません!」
「ツバキちゃんが山菜や木の実を採ってる間に『監視がない今がチャンスじゃ~!』とか言って魔物と一緒に木々を5.6本薙ぎ倒してたよねぇ~。魔物はグチャグチャになっちゃってたけど」
「あっ、あれはたしかにちぃとばかしやり過ぎたかもしれぬが・・・むぅ~~~、これでは妾が野蛮だと思われてしまうではないか!」
「「別に間違ってません(ないよ)」」
「なぁッ!!?」
本当に護衛なのかどうか怪しい。
主の心を攻撃しまくっているが、友だと言っていたしあれが通常運転なのだろう。
「よいではないか少々浮かれすぎたって!妾達以外と初めてのお泊まりなのじゃぞ!?」
「ならばなおのこと直してください。お父上にも注意されていたでしょう?」
「むっ!い、今は父上のことはよいではないか!分かった分かったのじゃ!妾が悪かった早う飯にしようぞ!」
このままでは言い負かされると悟ったのか、早く飯を作れと目で訴えかけてくる。
しかしこの量、下処理だけでもけっこう時間をくいそうだな。
少し時間がかかると伝えるとハゴロモから『え~~~すぐ食べられないのぉ~~~』と泣きそうな目で見られたが・・・君のせいだよ・・・
下処理を始めて数十分、始めは物珍しそうに見ていたハゴロモ達だが、飽きたのか今は相撲をしている。
カンナとロックが戦っていてハゴロモは行司だ。
ちなみにツバキは量が多いので手伝ってくれている。
更に数分後、ようやく準備が終わったので後は焼くだけだ。
もうすぐ食べられると伝えると、『わ~~~い!』と無邪気な子供のように走って寄ってくる。
ジュージューと肉の焼けるいいにおいがする。
ほとんど肉だけなのが残念だが致し方ない。
一応手持ちの食材もあったので今回は米を炊いた。
やはり肉には米が合うし、ハゴロモ達がヤマト出身だからなのも大きい。
肉ばかりで早々に飽きるかとも思ったが、採ってきた肉の種類が多かったからなのかお腹一杯食べられた。
食事後、明日に備えて早めに寝ることにして寝床へと向かうと、ハゴロモ達が寝床の内装に感動していた。
野宿なんて洞窟などが無ければテントが精一杯だと思っていたのでまさかこんな立派な所で眠れるとは思っても見なかったらしい。
ロックも満更でもない様でこの辺に拘ったとか熱く語っている。
その後団欒スペースで軽く雑談した後就寝についた。
皆が寝静まった夜更け、ルートは寝床の屋根の上にいた。
宿と違って野宿は魔物などの襲撃があるためこうやって見張りをつけるのが基本なのだ。
ルートは慣れた様子で周りを見渡している。
そんなルートに近付く影が・・・しかしルートは警戒もしていない。
とうとう影はルートの背後まで接近してきた。
「どうしたの?こんな夜更けに・・・夜明けはまだまだだよ?・・・ツバキちゃん」
「いえ、私はしっかり寝ました。見張りを代わりに来たんです」
ツバキもこういうことに慣れているのだろう。
しっかり寝たというのも嘘じゃないようだ。
「僕は大丈夫だからまだ寝ててもいいよ?」
「そういうわけにはいきません。我々は今一緒に旅をしているのですからこちらも見張りをしなければ不公平です。」
「真面目だなぁ~~・・・じゃあ一緒に見張りをしよう」
「・・・・・まぁそれならいいでしょう」
何を言っても無駄だと思ったのか折衷案を呑んだ。
「・・・今日のハゴロモ様は実に楽しそうでした。いつも楽しそうに生きてはいらっしゃるのですが今日は特にです・・・」
ルートの隣に座ると語りだした。
「カンナも同年代の友が増えたみたいで嬉しそうでした。私も久しぶりに他人と寝食を共にして楽しかったです・・・・ありがとうございました。」
今日の出来事を振り返っているのか、小さく、しかしハッキリとした笑顔で感謝を告げられる。
「いやいや、こちらこそ賑やかで楽しかったよ」
どうやら今日はお互いに有意義な時間になったようだ。
その後も二人は見張りをしながらたまに語り合いながら朝をむかえていった。