Empty of the story   作:うえすぎけんしん

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第15話 クローバー公爵

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ガルパスとかいう男爵と騒ぎになり店の外に出た。

外に出るとおそらくガルパスの護衛なのだろう、武装した男達が複数人いた。

ガルパスの秘書らしい男が店での出来事を隊長らしき男に伝える。

部下達は『またか・・・』という顔を浮かべている。・・・ということはいつものことなんだろう。

外交を任されている者がこんなので大丈夫なのだろうか?

・・・おや?部下達は呆れ顔だが隊長は違うようだ。

秘書から話を聞き、こちらを物凄い表情で睨んでいる。

どうやら隊長はガルパスと同じような考えのようだ。

 

「なんとぉっ!?ガルパス様に対してそのような暴言をぉっ!?是非ともこのプレスリーに奴等の処刑許可をぉっ!!」

「うむ!吾輩への非礼をあの世で後悔させてやれ!」

「必ずやぁっ!!よし、お前達いくぞぉっ!!」

 

どうやら本気で自分達をここで叩き斬るようだ。

・・・しかしなんというか、あの隊長うるさいな・・・・・

 

「話は終わったのかの?ならば早うせい」

 

ハゴロモが少しイラついている。

 

「ふん!!直ぐにその余裕も無くなるわぁっ!!」

 

街中で周りにまだ一般人もいるのにも関わらず即座に抜刀して斬りかかってきた。

「ふん、ここで蕎麦打ちの鬱憤を晴らしてやるわ!」

 

どうやらまだ根にもっていたようだ・・・

とりあえずプレスリーの剣を横に受け流しできた隙に相手を後ろに蹴り飛ばす。

 

「ぬおぉっ!?」

 

受け身もとれずに一回転して倒れた。

彼は本当に隊長なのか?今の一振りも素人同然だし受け身もとっていない。

立ち上がって剣を構え直しているが隙だらけで本当に剣術を習ったのか疑問に思うレベルだ。

確かに体格はいいがあれではデカイだけのいい的だ。

はっきり言って後ろの部下達の方がまだマシだろう。

 

「なんじゃその程度か?大口を叩いた割には大したことないのう・・・」

 

ハゴロモが何かしたわけではないのだが・・・まぁ彼女が手を下すほどの相手でないことは確かだ。

 

「ええいうるさいぃっ!!お前達、奴等を囲めぇっ!!」

 

その命令で部下達は僕たちを囲んで剣を向けてくる。

この人数相手なら楽勝だと思うが、あの隊長には少し痛い目を見てもらった方が良さそうだな。

そう思い刀の柄に手をかけたその時、

 

「そこで何をしている!」

 

ようやく騎士団の到着だ。

こちらも注意を受けるだろうが面倒事は回避できるはずだ。

ガルパスは騎士にガミガミと何か言っているようだが騎士もきちんと注意している。

たまに「これは国際問題~」とか「吾輩は男爵で~」とか聞こえるが騎士は相手にしない。

それでもガルパスはしつこく食い下がっているのでこれは時間がかかりそうだなぁ・・・と思っていると、

 

「はいはいそこまでそこまで~」

 

謎の男が乱入してきた。

ボサボサ頭に無精髭、丸眼鏡で顔はよく分からない。

そういえば蕎麦屋でカウンター席に座っていた男だ。目撃証言でもしてくれるのか?

 

「なんだ貴様は?貴様のような下民が吾輩に話しかけるな!」

 

確かに男の格好は一般的な服装よりはやや汚れているが下民は言い過ぎだろう。

いや、あの男にとっては周りの者は皆下民なのだろう。

 

「いやいや~自分こういう者なんですが~、ここは自分に免じてどうか穏便に~・・・ね?」

 

そう言って名刺のようなものを渡すと騎士は少し驚いた顔をした。

が、直ぐに真面目な顔に戻すと

 

「分かった。・・・ではガルパス殿、こちらに着いてきてもらいます」

 

そう言ってガルパス一行を連れて行ってしまった。

周りからは「おぉ~~~!」という歓声が聞こえる。

皆ガルパスの言動にイラッときていたようだ。

 

「むぅ~、お主のせいで鬱憤を晴らせなかったではないか!」

「えぇ!?あのままだと無駄に時間がかかると思って助けたんだけど・・・おじさん傷つくわぁ~・・・」

 

いいおじさんがショボーンとしている。

見ていて気持ちいいものでもないので助け船を出そうか

 

「まぁまぁ、あのままじゃお昼の時間がなくなりそうだったし良かったじゃない」

「そうそう!お嬢ちゃん達お昼途中だったろう?それを思っての行動だったんだから~、ささっ早く店に戻ろうぜ」

 

とりあえず店の自分達の席におじさんを連れて戻る。

 

「しかし、お主何者じゃ?騎士にも影響を与える程とはさぞ名のある者なのじゃろう?」

「いや~そんな大層なもんじゃないよ・・・ただちょっといいところで働いてるだけさ」

「・・・そんな身なりでかの?」

 

彼の言う『いいところで働いてる』という言葉の割には服が薄汚れているのでその疑問ももっともだろう。

 

「ハッハッハ~!うちは見た目は関係ないところだから問題ないのさ。それに今日は休日だからね~見た目も気にせず馴染みの蕎麦屋に来たらこの騒動だよ~」

 

皆なるほど~と納得していっているが僕は騙されない。

この人は嘘をつくのがうまい。

人を騙すのに大切なことをよく分かっているし騙し慣れている。

ポーカーフェイスは完璧だし嘘と実話を矛盾させないよううまく混ぜて話しているので僕以外だと気付かないのも無理はない。

まぁ僕らに対して悪意や敵意は感じないが・・・

 

 

その後蕎麦を食べ終わって店を出た後、色々な出店を回り旅館にてヤマト懐石料理を堪能した。

 

「それでは妾達は露天風呂に入ってくるぞ」

「行ってらっしゃ~い」

 

食後に少し休憩を挟み女性陣は風呂に入りにいった。

ロックは食後直ぐに風呂に入って今はもう寝てしまっている。

静かな部屋で起きているのは自分一人、頃合いだと思い自分も部屋を出て中庭に向かう。

決して覗きをしようとしているのではない。

ただ今なら"彼"と話しやすいと思ったのだ。

 

中庭には既に彼がいた。昼間のおじさんが・・・

ボサボサだった髪は綺麗にオールバックに固められ、丸眼鏡は無く無精髭も無くなっている。

汚れた服ではなくオーダーメイドであろうキチンとした服を着こなしていて、見るからにできる人というオーラを放っている。

 

「やっぱりそっちの方が似合ってると思いますよ?」

「おや?この姿で君に会ったことがあったかな?」

「いえ、ないですよ・・・ただそっちの方が違和感がないので・・・」

「やはり君だけは騙せなかったか~・・・どこで気づいたの?」

 

純粋な疑問と興味から聞いてくる。

 

「最初からです。髪はボサボサに見せているだけで痛んではいなかった。服は安物でもわざと自分で汚した感じだったし、それに・・・店内に一般客に扮した護衛が3人はいましたしね」

「ほぉ~~~、そこまで分かっていたとは・・・・・まぁ店の常連だっていうのは本当なんだけどね」

 

感心したのか拍手をしてくれる。

 

「でしょうね。店主とのやり取りも馴れた様子だったし他の常連客とも普通に話してました。その辺りの真実が嘘を分かりにくくしてたんです。」

「ほぅ、ならその嘘を見破った君からは私は何者に見えるのかな?」

 

今までの軽い態度から一変してルートを見極めるように目を細めて少し低い声で聞いてくる。

 

「『いいところで働いてる』っていう発言、騎士への発言力、腕利きの護衛、男爵相手でも力を発揮できるとなると侯爵、もしくは公爵あたりですかね」

「!?」

 

恐らく当たっているのだろう、凄い驚きようだ。

それでも直ぐに顔を戻すと

 

「いやぁ~参った参った・・・君の観察眼は恐ろしいね・・・・・彼女達には話したのかい?」

「いえ、別に話すことでもないと思いますし、誰にでも秘密くらいあるでしょう?」

「ありがとう・・・いや、どこから情報が漏れるか分からないからね~。ああ、自己紹介がまだだったね。私はアール王国公爵、グリーン・フォン・クローバーだ」

「冒険者のルートですよろしく」

 

改めてお互いに自己紹介をして握手をする。

 

「それにしても、よく中庭にいると分かったね?もう少ししたら遣いをだそうと思ったのだけど」

「それは、今も見えないように貴方を護衛している人達の気配ですよ。僕に話を聞きに来るだろうと思ってましたから。」

 

昼間に僕だけ彼に疑惑の視線を送っていたのを気付いていたのをこちらも気付いていたのだ。

彼の立場や性格上夜一人になる時間帯に話を聞きに来るだろうと思ってここに来たが正解だった。

 

「さて、あまりここで時間を取らせるのも悪いだろう。手間をとらせたね?ありがとう」

「もういいんですか?」

「今回は君という人間を見極めに来ただけだからね~・・・君とはいい関係が築けそうだ。君とは友達でいたいんだけど、どうかな?」

「公爵様が一冒険者と対等な関係を?」

「勿論プライベート限定だけど・・・嫌かい?」

「まさか、こちらこそよろしく」

 

再び握手をするとクラブは帰っていった。

護衛の気配も少しずつ消えていく。

中々面白い人だな・・・そう思いながら部屋に戻る。

 

 

馬車の中、執事らしき男がクラブに問いかける。

 

「よろしかったのですか?プライベート限定とはいえ対等な関係など・・・見所はあると思いますがまだまだ子供ですぞ?」

 

その問いにフッと笑みをこぼすクラブ

 

「歳は関係ない。力があるのは確かだからな・・・それに、彼の人間関係を考えてもここでコネを作っておいた方がいいだろう。・・・彼の情報は常に集めておけ」

「ずいぶん彼が気に入ったようですね」

「そうだな、否定はしない。彼ほどの逸材は中々いないだろうからなぁ。・・・少なくとも敵対する理由がない」

 

長い付き合いである執事にはクラブの心情が分かっているのか、普段見ることのない主の嬉しそうな顔をこれまた嬉しそうな顔で見つめている。

そんな暖かい空気をまとった馬車は夜のタマツクリの中に消えていった。

 

 

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