ケンカ祭り初日、Jブロックの試合は残り4人となっていた。
ラリーゴ、テラカ、フィウチー、ルートの4人である。
ラリーゴ達は、ルートがこのブロックで最も手強い相手だと分かっているのか、相談しあったわけでもなく本能的に3人でルートを倒すのがベストだと感じたようで3人ともがルートに向かって臨戦態勢をとっている。
ルートはそのような状況下でも至って冷静に、マイペースに一見隙だらけとも思えるようなユラユラっとした体勢で3人を見つめ返していた。
「(ラリーゴは見たままのゴリ押しパワータイプ、でもスピードも結構あるしリーチも長い。生半可な防御じゃそのまま吹き飛ばされるな・・・テラカは攻撃も防御も上手いテクニックタイプで常に自分の間合いをキープしてペースを乱さない・・・フィウチーはその持ち前の速さで虚をつき急所を的確に突くスピードタイプか・・・・・)」
先程の彼らの戦闘を見て分析をする。
正直やりづらい。というのが今の心境だ。
パワー、テクニック、スピードタイプときれいに別れている上にその3人が結託して自分に迫ってくるのだから当然である。
しかし、ラリーゴ達も攻められないでいた。
今日あったばっかりで、しかも倒すべき敵であるため簡単に背中を許す気にはなれない。
お互いに協力してルートを倒すべきだとは分かっているのだが動けない。
それはそうだろう。
仮にルートを倒せれば後は3人で戦わなければならない。
体力はできるだけ残しておきたいし、なんならルートと戦っている最中相手の隙をつけば一人楽に倒せるのだから。
勿論協力してルートを倒すのがベストであるのは皆理解している。
理解しているからこそその裏をかかれたら?と疑心暗鬼になってしまう。
3人ともルートに向かって臨戦態勢をとっているが意識や視線は互いを警戒している。
洞察力、観察力に長けたルートがそれを見逃すはずなく行動を起こす。
「「「・・・・・・・・・・ッ!!!!??」」」
注意力が散漫になっていた3人は当然反応が遅れる。
「まずは君からだ!」
一気にラリーゴに近づくとまだ反応しきれていないところに連激を浴びせる。
しかし流石はパワー自慢のラリーゴ、筋肉の鎧で受けとめ反撃とばかりに右腕を振りかぶる。
勿論それは想定済みでスッとバックステップでリーチの外へ避ける。
そこにテラカが迫ってきて突きを放ってくる。
ルートはなるべく3人に囲まれないように移動しながらテラカの猛攻を捌き続ける。
すると、ラリーゴが距離を詰めてきて振りかぶった右腕を放ってくる。
テラカをも巻き込みかねない一撃であったためルートと共にテラカも避ける。
テラカとルートの距離が空き仕切り直しかとテラカが再びルートに詰め寄ろうとしたところでルートの背後に影が・・・
フィウチーであった。
彼は、テラカとルートが戦い油断しているところを背後から襲おうと機会を伺っていたのだ。
ルートはまだ気づいていないのか視線をテラカに向けたままだ。
「(やれる!)」とそう思った瞬間、
「来ると思ってたよ」
そう声が聞こえた瞬間、ルートを襲おうとしていた右腕が捕まれたと思ったらそのまま背負い投げの要領で地面へと倒されてしまった。
「・・・・グハッ・・・・・ッ!?」
直ぐに体勢を整えようかと思ったがもう遅かった。
ルートの拳がフィウチーの鳩尾に入り意識を奪った。
「「・・・・・・・・ッ!?」」
「ふぅ~、まずは一人・・・・・」
あまりにもアッサリとやられてしまったことで二人に動揺が走る。
まるであのタイミングで背後から襲いかかってくるのが分かっていたかのような動きだった。
「ルートすごーい!」
「何スか今の!?完全に後ろとられたと思ったッス!」
フィウチーを返り討ちにしたルートにカンナとロックが興奮している。
「とられたんじゃない、背後をとらせたのさ・・・」
メアリーが視線をルートに向けたまま訂正してくる。
「どういうことッスか?」
「フィウチーが自分を仕留めに来るように敢えて隙を作って誘い込んだのさ」
「で、でも、相手も流石に罠だと気づくんじゃあ・・・」
「冷静じゃなかったんだろうねぇ・・・ルートがいきなりラリーゴに攻撃して戦闘が始まったもんだから罠だと気づく前に体が反応しちまったってとこかねぇ」
なるほど、ルートなら相手の出方を伺うためルートから仕掛けるのに違和感を感じていたがそれなら納得がいく。
相手の注意が完全に自分一人に定まってしまえば連携されやっかいになりかねない。
だからその前にこちらから動いて相手の隙を突いたわけだ。
ロック達が感心していると場がまた動いた。
このままではまずいと判断したラリーゴとテラカは、ルートを倒すために今度こそ本当に協力しようと決めた。
まずテラカがルートと打ち合い隙を見てラリーゴが一撃を狙う戦法のようだ。
テラカの連激をいなすルート。スッとテラカが引いたと思ったらラリーゴの強烈な一撃が襲ってくる。
その後も何度かその戦法を使ってくるがラリーゴの一撃は未だルートを捉えない。
しかし、このまま続ければ2対1のルートの体力が先に尽きるはずとテラカは信じていた。
ラリーゴの一撃を避けたルートをまた攻撃する。
ある程度攻撃し、ラリーゴが攻撃できるタイミングで身を引く。
すると、引いた体が前に引っ張られる。
何事だと引かれている箇所を見ると、自身の腕に布のようなものが巻かれていた。
完全に油断していたので引かれる力に抗えない。
ルートの体が近づいてくる。
次の瞬間、ルートはサッとテラカと自分の立ち位置を入れ替えた。
当然ラリーゴの一撃はルートのいた位置に迫っている。
ゴッッッッッ!!!
テラカはラリーゴの一撃をモロにくらい意識を失った。
「なっ、何ッ!!?」
テラカを殴ってしまい困惑するラリーゴ。
これで自分一人でルートと戦わなければならなくなってしまった。
とりあえず一旦退こうとバックステップをすると
「よそ見してていいの?」
退くことを読まれていたのかルートが先に回り込んでいた。
「うっ、ウオォォォォォォォォッ!!」
とっさに振り向きながら渾身の一撃を繰り出す。
パコンッ!
小気味良い音が響いたと思ったらラリーゴの体がゆっくりと倒れていく。
どうやら意識がないようだ。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
会場全体が沈黙に包まれるが、ルートはこの試合勝利した。